ブラウザ操作系AIとは?

以下では、最近話題になっている「ブラウザ操作系AI」について、代表的なプロジェクトとその特徴をまとめました。自動でWebページの閲覧や入力、クリックなどを行う「AIエージェント」はどのように進化しているのか、ぜひ参考にしてみてください。


ブラウザ操作系AIとは?

従来、ブラウザの自動操作はSeleniumなどのツールを用いて行うのが一般的でした。しかし近年は、大規模言語モデル(LLM)を活用したAIエージェントにより「視覚的な情報」と「HTML解析」の両面を駆使して、より柔軟かつ高度な自動化を目指す取り組みが進んでいます。タブの切り替えや画面スクロール、クリック操作だけでなく、サイト独自のUIやセキュリティプロンプトにもある程度対応できるようになってきました。


主要なブラウザ操作AI

1. OpenAI Operator

  • リリース日: 2025年1月23日
  • 概要: ChatGPT Proユーザー向けに提供されている最新のAIエージェント。
  • 特徴:
    • 独自のブラウザを使用し、Webページの閲覧・入力・クリック・スクロールなど各種操作を実行可能
    • ユーザーインタラクションの自動化とセキュリティ面の考慮(支払い操作の承認など)

OpenAI Operatorは、LLMの言語理解とブラウザ操作機能を統合し、「ユーザーが欲しい情報を得るためのWeb操作」を極力自動化することを目指しています。企業サイトのデータ取得やフォーム入力など、幅広いユースケースで活用が期待されています。


2. Browser Use

  • 概要: Python製のオープンソースライブラリ
  • 特徴:
    1. ウェブ要素の抽出と操作
    2. 複数タブの同時管理
    3. カスタムアクション機能
    4. 自己修正機能(失敗時のリトライなど)

成功率としては40~60%ほどと報告されており、まだ不安定な面はあるものの、オープンソースプロジェクトならではの柔軟な拡張性が魅力です。コードベースで制御したい開発者向けのアプローチといえます。


3. Google Project Mariner

  • リリース時期: 2024年12月発表
  • 概要: Chrome向けの実験的拡張機能として提供されているGoogleのAIツール。
  • 特徴:
    • 企業情報の検索やメールアドレスの収集など、複雑な操作を自動実行
    • Google公式の拡張機能であるため、Chromeとの親和性が高い
    • 主に企業向けやマーケティング分野での利用を想定

Project Marinerは、既存のGoogleサービスとの連携も期待されており、GmailやGoogleドライブなどの操作とのシームレスな統合が進む可能性があります。


さらに広がるオープンソースの「Open Operator」プロジェクト

OpenAI Operatorとは別に、「Open Operator」というオープンソースのAIエージェント開発プロジェクトも存在します。こちらは広範囲なコンピュータータスクの自動化を目指しており、Webだけでなく開発やデータ管理、システム運用といった領域への応用も検討されています。

  • ベンチマーク
    • WebArenaやOSWorldというテスト環境で性能評価を実施
    • 代表的なモデルの評価例:
      • Learn-by-Interact: WebArenaで48.0%
      • UI-TARS-72B-DPO: OSWorldで24.6%
      • OS-Atlas: OSWorldで14.63%
    • 一方、OpenAI OperatorはWebArenaで58.0%、OSWorldで38.0%と比較的高い数値を示している

Open Operatorはまだ性能面で課題があるものの、誰でも参画できるオープンソースプロジェクトであり、今後の成長が期待されています。


技術的特徴と課題

上記のブラウザ操作AIには共通して以下の特徴があります。

  1. 視覚的情報とHTML解析の併用
    フロントエンド上のボタンやリンクの見た目、HTML構造を理解することで柔軟な操作を実現。
  2. マルチタブ管理と自動化
    複数のタブやウィンドウを横断しながら作業を行うケースに対応。
  3. セキュリティ面での考慮
    クレジットカード情報の入力や支払い操作などは人間の承認フローを挟むなどの工夫がされている。

一方で、実運用レベルでは次のような課題も残っています。

  • BOT検知リスク: 大量アクセスや特定の挙動を繰り返すとサイト側のBOT検知に引っかかる可能性
  • 操作精度: 複雑なウェブページの構成や動的コンテンツがある場合、要素特定が難しく失敗するケース
  • 学習コスト: 新しいUI設計やサイトデザインに合わせて学習・適応が必要

今後の展望

ブラウザ操作系AIは、データスクレイピングやフォーム入力、複雑なリサーチタスクなどを大幅に効率化する可能性を秘めています。特にLLMの進化とともに、単に「手順どおり操作する」という段階を超えて、「意図をくみ取って実行する」高度なエージェントへと進化していくことが期待されます。

しかし、まだBOT検知や操作精度の問題が解決しきっておらず、全自動で安心して任せられる段階には至っていません。今後は各社・各コミュニティでの研究開発がさらに進み、より安定した自動化が実現するでしょう。


参考リンク(Citations)

(他にも本記事で言及したメディアやNote、Zennなどのリンクがありますので、詳しくはそちらもご参照ください)


まとめ

ブラウザ操作系AIは、今後のWeb自動化や業務効率化において大きな可能性をもつテクノロジーです。OpenAI OperatorやGoogle Project Marinerなど大手企業のソリューションから、Browser UseやOpen Operatorのようなオープンソースプロジェクトまで、多彩な選択肢が存在します。

一方で現時点では操作精度やセキュリティ、サイト側のBOT検知などの課題が残っているのも事実です。今後これらの問題を解決することで、誰もが「Web上での複雑な手動作業」を自動化し、よりクリエイティブな業務に集中できる時代が訪れるかもしれません。これらのAIエージェントの進化に、今後も注目していきましょう。