アジャイル開発とウォーターフォール開発のポイント比較8つ|メリットなども紹介

アジャイル開発とは

アジャイル開発とは、システムやソフトウェアの開発手法の1つです。要件定義、設計、コーディング、テスト、リリースを短い期間で繰り返していく手法になります。

一度で全ての要件を達成できるわけではないので、定期的に顧客と話し合い、次の開発期間で何を作るかを決める必要があります。

ウォーターフォール開発とは

ウォーターフォール開発とは、アジャイル開発と同じく、システムやソフトウェア開発手法の1つです。

要件定義、設計、コーディング、テスト、リリースを、水が上から流れ落ちるように逆戻りせずに綺麗に順番にこなしていく手法です。シンプルな構成で、採用しているプロジェクトがとても多くあります。

アジャイル開発とウォーターフォール開発のポイント比較8つ

アジャイル開発とウォーターフォール開発は、それぞれ真逆の立ち位置にいる開発手法です。対応できるプロジェクトも、真逆の性質のものになります。

前述した大まかなタスクの回し方以外にも注目すべきポイントが幾つもあるので、それぞれ詳しく紹介します。

ポイント比較1:開発計画

ウォーターフォール式は基本的に前の工程に戻る事が出来ないので、まず綿密な計画を立てます。それに対してアジャイル式は定期的に顧客と要件を話し合う事、小さなプロジェクトを何度も繰り返す手法であることから、アウトライン的な計画になります。

開発計画の立て方はそれぞれ全く違う物になるので、プロジェクトの性質によってそれぞれ向き不向きがあります。

ポイント比較2:途中仕様変更

途中仕様変更をする場合、アジャイル式とウォーターフォール式ではコストに大きな差が生じるので、注意する必要があります。

アジャイル式の場合、次のイテレーションから対応可能なので、途中仕様変更にも柔軟に対応する事が出来ます。対してウォーターフォール式の場合、振り出しに戻りますので、時間とコストの損失が激しく、途中仕様変更をする場合は慎重な判断が求められます。

ポイント比較3:サービス提供

サービスの提供時期はアジャイル開発はイテレーションごとの、小刻みな期間で提供可能です。それに対してウォーターフォール開発は製品の完成後になり、プロジェクト発足からかなり長い期間を経た後になります。

従って、アジャイル開発はモバイル関連のプロジェクトなど、毎日少しずつ技術が進化し、サービスの方向性を調整しなければならないようなプロジェクトに適しています。また、ユーザーの生の声をすぐに取り入れ、修正する事も、アジャイル開発では可能になります。

ポイント比較4:テスト確認

テスト確認については、ウォーターフォールは最終テストでの確認になり、基本的に回数は1回のみです。それに対してアジャイル開発はイテレーション単位ごとに短い期間でテストを繰り返していきます。

一見するとアジャイル開発のテスト確認は面倒に見えますが、バグを早期に発見するチャンスが多く、長期的なサービスの停止を防げるというメリットがあります。

ポイント比較5:ドキュメント

基本的にウォーターフォール開発はステージ毎にドキュメントの作成と提出が必要ですが、アジャイル開発の場合、必ずしもドキュメントの作成は必要ありません。

ウォーターフォール開発の場合、事前に綿密に計画を立てる事、基本的に前の工程に戻らない事から、顧客側としても開発チームの進捗を綿密に確認したいと考えます。なので、それぞれの工程ごとにドキュメントの作成と提出が求められます。

それに対し、アジャイル開発はイテレーションを反復するシステム開発の手法なので、イテレーションによってはドキュメントの修正や作成が無いこともあれば、開発や修正に手一杯であれば、次のイテレーションでドキュメントを作成する事も許されます。

ポイント比較6:開発者対応

開発者の対応としては、ウォーターフォール開発はそれぞれのステージごとに専業の担当者がいます。それに対して、アジャイル開発は一人の担当者が全てのステージを担当します。

アジャイル開発においてはチーム一丸となり1つのプロジェクトに立ち向かうので、開発の枠組みを指すとき、まるでラグビーの戦術の1つであるスクラムを組む様である事から、「スクラム」と呼ばれることもあります。

アジャイル開発の担当者になった際は大変な事も多いですが、一人で全てのステージを担当できるので、長い目で見ると、キャリアにおいて貴重な経験を出来るという利点もあります。

それに対して、ウォーターフォール開発では担当する工程が少ない事から覚えなければならないスキルや知識が少なく済むので、IT業界の経験が少ない人物がチームメンバーとして参加しやすいです。

ポイント比較7:プロセス改善

プロセス改善において、ウォーターフォール開発は基本的に前の工程に戻ることが無いので、改善点がわかるのは完成後ですが、アジャイル開発であればイテレーションごとに改善点がわかり、イテレーションの数をこなすごとにプロセスを洗練させる事が出来ます。

人の入れ替わりが無ければ、アジャイル開発を開発方法に採用している組織は、時を経るごとに高い生産性を誇るようになります。

ウォーターフォール開発は、途中のプロセス改善が難しいですが、事前に綿密な計画を立てる事から、そもそもプロセスの改善が必要ないという考え方も出来ます。ウォーターフォール開発は事前にプロセスの細かい部分まで考えて結論を出さなくてはなりません。

ポイント比較8:人材育成

人材育成に置いて、ウォーターフォール開発はそのステージに対応したスキルを習得すれば対応可能ですが、アジャイル開発は全行程でのスキルの取得が求められます。

ウォーターフォール開発は人材育成がアジャイル開発よりも簡単かつ短期間で出来ますので、途中で新しく参画したメンバーを戦力にしやすいです。

アジャイル開発に対応するには幅広い知識と経験が必要なので、対応できる人材は組織にとって需要が高く、市場価値は高くなる傾向にあります。

アジャイル開発とウォーターフォール開発のメリットについて

アジャイルとウォーターフォールは、それぞれ異なったメリットとデメリットがあります。なので、プロジェクトや顧客によって、適切な物を選択する必要があります。

適切な手法を選択できた場合、ストレスなく、効率よく良質な製品やサービスを提供する事が出来ます。プロジェクトの立ち上げ段階で綿密な情報収集とシミュレーションが必要になります。

アジャイル開発の場合

アジャイル開発の場合、大きな特徴として、早いスピードでサービスや製品を顧客に届けられ、顧客の意見に合わせてサービスや製品の質や方向性を調整できる事があげられます。つまり、顧客の生の声を聞きながら開発が出来る、と言うのがアジャイル開発のメリットの根本です。

この根本のメリットを生かせるようなプロジェクトかどうかをまず調査する事が、成功への第一歩となります。

開発期間を短くすることができる

アジャイル開発のアジャイル、とは素早い、機敏などの意味があります。アジャイル開発の開発期間の短さにより、納期の短縮の他に、早い時期から顧客側がサービスや製品を操作できるので、顧客側のシステム開発の知識を上げやすい、と言うものがあります。

また開発期間が短い事で、費用に小回りを利かせる事が出来、人員や設備の確保の契約に柔軟性を持たせる、というメリットもあります。例えば、次回のイテレーションが大変そうなので、1か月だけ人を雇う、等の対応も可能になります。

開発期間の短さは一見すると納期に常に追われる、というようなマイナスのイメージがありますが、上手く使えば多大なメリットを開発チームと顧客にもたらすことができます。

可変的で双方向的である

アジャイル開発のメリットとして、可変的で双方向的であるという点が挙げられます。アジャイル開発はサービスの提供と開発が平行するので、サービスのフィードバックや意見交換が顧客と開発チーム側で多く出来ます。

定期的にプロジェクトに関わる人間と全体とコミュニケーションが取れ、認識の齟齬やそれによって生じる出戻りや修正の期間を最小限に抑えることができるので、無駄なお金と時間のロスを少なくする事が出来ます。

このメリットを生かすためにも、顧客側に隠し立てをせず正直に状況を話せる度胸と、祖語なく物事を伝えられるコミュニケーション能力を持った人間がチームのリーダーやマネージャーに適しています。

イテレーションごとに仕様変更が可能である

アジャイル開発は出戻りが発生してもそこまで工数を無駄にしないので、イテレーションごとに仕様の変更が可能になります。

出戻りが発生してもシステム全体の開発やテストをやり直す必要はないので、顧客側の要望に柔軟に対応する事が出来ます。

顧客側としても、そこまで時間と費用のロスをする心配が無いので、ユーザビリティを高くする要望や変更を出しやすくなります。

試作品を迅速に作成できる

アジャイル開発は開発期間の短さから、試作品を迅速に作成し、顧客に見てもらう事が可能になります。

試作品のように目が見える物があると、顧客の理解度や顧客からの信頼を飛躍的に高める事が可能になり、後々余計な苦労をせずに済みます。

試作品を早めに作る事が出来ると、チームメンバーにプロジェクト内容を早く理解させる事に効果がありますし、改修の際も改修する部分の目途もつけやすくなります。

開発途中でのデモ確認ができる

アジャイル開発は開発途中でデモ確認が出来ます。これにより、顧客側と開発チーム側の認識の齟齬を早い段階で解消する事が出来ます。またそれだけでなく、早めにデモ確認をする事で改善点や問題点が早い段階で判明する、というメリットもあります。

デモで使用したものは、途中で新しくプロジェクトに参画するメンバーがプロジェクトや業務を理解するのにも役立ちます。

開発途中でもユーザー要望を反映できる

アジャイル開発は開発途中でもユーザー要望を反映する事が可能です。そもそも計画段階で綿密に計画を立てずに変更の余地を残しているからです。

アジャイル開発は製品やサービスのリリースと製品開発が並行して行われるので、ユーザーの生の声を反映する事で、よりユーザビリティの高い物を作り事が出来ます。

ウォーターフォール開発の場合

ウォーターフォール開発の大きな特徴の1つとして、計画の構成がわかりやすいという点が挙げられます。

また、事前に綿密な計画を立てる、と言うのも一見すると融通が利かなくなりそうですが、ウォーターフォールのメリットにつながっていきます。

簡潔で分かりやすい

簡潔でわかりやすい点はスケジュールやチームの進捗状態の管理のしやすさに繋がります。その時点で取り組んでいるステージがチームメンバーは皆共通なので、仕事に融通も利かせやすくなります。

顧客側にとっても、サービスが予定通りの日程でリリースできそうかがわかりやすいので、無駄な説明の手間が省かれます。開発チームはシステムの開発、顧客側はサービスの質や売り上げの向上と言った本来の目的に集中できます。

高品質が確保しやすい

ウォーターフォール開発は高品質が確保しやすいです。事前に目標だけでなく、目標に進むための道筋や進み方まで綿密に計画を立てるので、プロジェクトに参画したばかりの人間でも業務やプロジェクトへの理解が容易になります。

業務やプロジェクトに慣れるのも早いので、質の良い仕事を短時間で行えるメンバーが増えやすいです。

広い適用性

ウォーターフォール開発は適用事例が過去に沢山あります。その事から、広い適用性があり、様々な状況に応用できます。

開発計画の立案の経験に乏しくても、自分たちと似たようなプロジェクトを探しやすい事から、過去の計画を焼き直して修正をすれば良い事も多いです。プロジェクト発足段階での労力を大幅に減らすことができますし、プロジェクト自体の成功確率も上がります。

アジャイル開発とウォーターフォール開発のデメリットについて

ウォーターフォールとアジャイルにはそれぞれメリットだけではなくデメリットも存在しています。完璧な計画は存在しないので、どちらの計画を採用するかは、デメリットも含めてよく考える必要があります。

アジャイル開発の場合

アジャイル開発は開発期間の短さからくる、計画や仕様の変更に柔軟に対応できる点がメリットでした。しかし、このメリットが時にはデメリットに変わってしまい、プロジェクトの進行に支障をきたす場合もあります。

頻繁な仕様変更により品質確認が後手に回る可能性がある

アジャイル開発のデメリットとして、頻繁な仕様変更により、品質の確認が後手に回ってしまうという点があります。イテレーションごとに開発を繰り返せることから、場当たり的な開発に終始し、システム全体の品質を見落としてしまう可能性があります。

プロジェクトの開始段階で開発時の方向性やコンセプトを顧客側としっかり話し合って、お互いの認識をすり合わせていかないと、このような状況に陥る可能性が高いです。

大きすぎる開発規模では制約ができる場合がある

アジャイル開発は、開発チームや顧客間で活発に意見を交換する事が出来ます。しかし、大きすぎる開発規模ではそれに比例してプロジェクトに関わる人間も多くなります。

大きすぎる開発規模のプロジェクトで、あまりに多くの人間と活発に意見交換がされすぎると、大事な決定がなかなか出来ず、プロジェクトの進行の足かせになる場合もあります。

仕様変更・改善が延々と続く可能性がある

アジャイル開発の場合、目標や目的がぶれやすいため、延々と仕様変更や改善が続く可能性もあります。最初に大まかなプロジャクトやチームの方向性を決めておかないとこのような状況になる可能性があり、費用や時間を無駄に浪費する事態となってしまいます。

ウォーターフォール開発の場合

ウォーターフォール開発にもデメリットは存在します。前のステージに戻らない、現段階のステージが完了しなければ次のステージに行かない、等の単純な構造が時には仇となる可能性があります。

開発に時間を要す

ウォーターフォール開発は、製品やサービスのリリースまで時間がかかりすぎるという点がデメリットにあげられます。リリースまで何年もかかるシステムもあります。

開発に時間を要する事から、最後の最後で顧客の思っていた物と違うものが出来た、という事もあり得ます。

時間に比例して費用がかさむ

ウォーターフォール開発は開発に多大な時間を必要とする事から、費用がそれだけかさみ、会社の経営をそれだけ圧迫します。

開発に何年もかかってしまうと、費用がかさむだけでなく、投資を回収しきるまでの期間も長くなるので、会社の収益力にも影響を及ぼしてしまいます。

途中での仕様変更はロスが大きい

ウォーターフォール開発では、基本的に前のステージに戻る事はしません。なので、もし成果物を作った後に仕様変更などが発生すると、前のステージを全てやり直すことになり、非常に大きなロスを抱えてしまいます。

膨大なドキュメント作成が必要

ウォーターフォール開発は各工程で成果物が必要になりますが、それはソースファイルだけではなく、要件定義書や設計書、テストのエビデンス等非常に多岐にわたります。

各工程での成果物は顧客側が開発チームの進捗を把握する数少ない資料なので手抜きは許されませんが、その分本来の目的とは異なる方向に割かれる労力も大きくなります。

開発途中でのユーザー要望は反映できない

ウォーターフォール開発では基本的に前のステージに戻る事を想定していません。そのため、開発途中でのユーザーの要望を反映する事が出来ません。

もし仕様変更をする場合、製品やサービスのリリースまでの日数が伸びることは勿論、費用も増大しますので、顧客側は非常にタフな決断を強いられます。

アジャイル開発で採用される3つの手法を紹介

アジャイル開発の中にも様々な種類があります。様々な状況に対応するために、アジャイル開発のそれぞれの特徴や利点を強調させる幾つかの開発手法が考案されてきました。

アジャイル開発の手法1:スクラム

アジャイル開発の手法の中でもメジャーな部類に入るのがスクラムと言われる手法です。スクラムマスターと言われる役割の人物の元で、計画をチームメンバーで綿密に話し合いながらプロジェクトを進めていきます。

強いリーダーシップとマネージメント力を持った人物が、スクラムマスターになれるかどうかがプロジェクトの成功の鍵です。

アジャイル開発の手法2:エクストリーム・プログラミング(XP)

エクストリーム・プログラミングとは途中の仕様変更にも柔軟に対応できる事を特に重視した開発手法です。柔軟な対応力が求められるため、高いプログラミングの技量持っているかが非常に重要です。

アジャイル開発の手法3:ユーザー機能駆動開発(FDD)

ユーザー機能駆動開発(FDD)は顧客目線での機能開発を重視する手法です。ユーザー側が何を必要としているか、という根本的な要望を重視することから、アジャイル開発の弱点の1つである、品質を担保できる開発手法になります。

開発に合わせてアジャイル開発かウォーターフォール開発を選択することが大切!

ウォーターフォールとアジャイルの違いには様々な点が挙げられるので、それぞれ使い分けが必要になります。目標やゴールが明確であるならウォーターフォール開発を採用すべきですし、目標やゴールが定めにくく、変更が生じやすい場合はアジャイル開発が良いでしょう。

ウォーターフォールとアジャイル開発を併用する、ハイブリッド開発という手法もありますが、何れにせよ、プロジェクト開始前によく考えてから採用すべきです。

それぞれのプロジェクトの性質にあった開発手法を選べば、最小限のコストで、効率よく良質なサービスや製品を提供できます。