フリーランスは女性エンジニアにおすすめの働き方|案件獲得のコツとは?

はじめに

適切なスキルを持つエンジニアに開発プロジェクトを任せたい、人件費の最適化を図りたいといった企業側の思惑もあり、ITエンジニア向けのフリーランス案件が増加しています。この状況は、実力に見合った報酬を得たい、スキルを活かせる案件に参画したいITエンジニアにとっては好都合ですが、保障が得られない、収入が不安定というフリーランスならではのデメリットがあるのも事実です。特に女性エンジニアであれば、少なからずリスクのあるフリーランスへの転身を、決断できないでいる方も多いのではないでしょうか?

しかし、女性ITエンジニアにこそ、フリーランスという働き方はおすすめなのです。その理由とはいったいなにか?IT業界における女性エンジニアの立ち位置・仕事事情などを解説するとともに、独立の手順、案件獲得のコツなど、女性エンジニアがフリーランスとして活躍するための情報を紹介していきます。

女性エンジニアは少数派?

そもそも男性社会のイメージがあるIT業界ですが、エンジニア職という観点で見れば、女性が少数派であるのは事実です。ただし、状況に変化が生じはじめているのもまた事実でしょう。情報サービス産業協会が毎年実施している基本統計調査によれば、IT系企業で働くエンジニアの男女比は、2014年の84.6:15.4%から、2019年の79.6:20.4%へと女性比が増しているのです。

また、男性エンジニアの就業者数が約1万8,000人減少しているのと反対に、5年間で女性エンジニアが約8,000人増加しているのも興味深い点です。むしろ、業界全体で減少傾向にある就業者数を補う存在なのが女性エンジニアであり、IT業界に女性が就業しにくかったのではなく、単にエンジニア職にチャレンジする女性が少なかっただけなのだともいえるでしょう。

女性エンジニアの平均年収は低い?

しかし、男性社会であるIT業界では、女性エンジニアの年収は低めに抑えられてしまうのではないか?そう感じている方も少なくないかもしれません。実際、厚生労働省の調査による2017年の賃金調査では、男性プログラマーの平均年収が426万円であったのに対し、女性プログラマーの平均年収は364万円にとどまっています。ただし、これを額面通りに受け止めて、女性プログラマーの年収は低いと思う込んでしまうのは早計です。

女性はライフイベントの影響を受けやすい

同じ厚生労働省の調査では、年齢・男女別の平均年収も公開されていますが、新卒入社から数年までの20〜24歳では、男性314万円に対して女性318万円と、年収がほぼ同水準なのがわかります。しかし25〜29歳になると男性392万円、女性356万円と男性の年収が女性よりも高くなり、50〜54歳までこの傾向は続きます。これは、男性よりも女性の方が、ライフイベントの影響を強く受けている可能性を示唆しています。

つまり、出産・育児などのライフイベントで休職、もしくは退職する女性エンジニアが多く、復職しても時短勤務になりやすい、トータルの就業期間が短く管理職に就きにくいなどの要因が、男女間に存在する平均年収差に現れていると考えられます。

スキルの高い女性エンジニアは年収も高い

それは、55〜59歳までの男女別プログラマー平均年収を見ても顕著です。この年齢層の平均年収は男性574万円に対して女性が697万円となっており、女性が男性を大幅に上回っているのです。ライフイベントの影響を受けない女性エンジニアがこの年齢層に多いこと、ベテランの域に達した高いスキルを持つ方が多いことなどが数字に現れていると考えられますが、それでも性別の関係なく、エンジニアはスキルさえ高ければ高年収を得られる証明にもなる数字だといえるでしょう。

実力主義が進むIT業界

まだまだ年功序列の傾向はあるものの、スキルに見合った年収を得やすいIT業界は、働く女性にとって魅力的な環境が整えられつつあるといえます。それは、アメリカにおける2017年のITエンジニア男女比、81:19%に日本が追い付いたことにも顕著に現れており、性別を問わない実力主義が進むIT業界に、多くの女性が参入しはじめているのです。

女性エンジニアは復職・転職しやすい

IT業界への女性参入が増えているのは、女性活躍推進法、ダイバーシティ経営により、ライフイベント後の復職・転職がしやすくなったという一面もあります。実際、ある調査によると、2009年と比較した女性エンジニアの転職決定者数は、2018年に3.95倍に増加しており、35歳以上に限定すると9.54倍もの女性が転職に成功しているのです。

もちろん、業界全体でITエンジニアが慢性的に不足しているという状況も、女性エンジニアに有利に働いているといえるでしょう。転職先の企業の多くが、採用時に重視した項目として技術力・実績・コミュニケーション能力を挙げており、年齢・性別は重視されていないことが明らかになっています。

フリーランスは女性エンジニアに最適

ここまでは、正社員として働く女性エンジニアのIT業界事情を紹介してきましたが、性別を問わない実力主義というIT業界の特徴は、フリーランスとして働くことによって最大化できます。フリーランスとして働くITエンジニアが増えているのはこのためですが、女性エンジニアに最適な特徴も持ち合わせているのもフリーランスという働き方なのです。

ライフイベントにあわせた働き方ができる

フリーランスであれば、報酬を重視してフルタイムで働くのも、ライフスタイルに合わせて時短で働くのも自由です。ライフイベントに応じて働ける状況が変化する女性エンジニアにとっては、参画する案件を選べるのは大きなアドバンテージだといえるでしょう。まだまだ客先常駐の多いフリーランス案件ですが、在宅案件を選んで働けば休職する必要もなくなります。

実力次第で高額報酬が期待できる

女性エンジニアが復職・転職しやすくなったのは事実ですが、それまでの年収やポジションが保障されるわけではありません。フリーランスとして働けば、スキルに応じた高額案件が獲得できるだけでなく、会社運営に関わる余分なマージンを抜かれることもありません。スキル・実力を磨いていけば、それだけ高額報酬が期待できるのもフリーランスの大きなメリットです。

フリーランスとして独立する手順

スキル・実績を積み重ねてきた女性エンジニアの方であれば、フリーランスという働き方に興味が湧いてきたかもしれません。それでは、フリーランスとして働くためにはなにから手を付ければいいのか?まずは、個人事業主として会社から独立するための手順を簡単に紹介していきましょう。

健康保険・国民年金への変更

会社員として働いていた女性エンジニアの方であれば、健康保険・厚生年金を含む社会保険に加入していたはずですが、退職と同時に社会保険の資格は喪失します。そのため、健康保険を国民健康保険に、厚生年金を国民年金に切替える手続きをしなければなりません。配偶者や家族が社会保険に加入していれば、年間収入103万円以下、かつ加入者の年収50%以下の収入という条件で扶養家族に入るという選択肢もあります。フリーランスとして独立する際の状況・タイミングによっては、扶養家族も選択肢になりますが、条件を上回る収入が見込まれるのであれば国民健康保険・国民年金への切替えが必須です。

個人事業主届出・青色申告承認申請書提出

社会保険の切替えを済ませたら、所轄の税務署に個人事業主としての届出を済ませてしまいましょう。最大で65万円の税控除が得られるため、同時に青色申告承認申請書も提出してしまうのがおすすめです。どちらも届出に関連する手数料は無料ですが、青色申告で確定申告するにはある程度の経理知識が必要です。近年では簡単に確定申告できるクラウド会計ソフトが多数登場しているため、賢く活用するといいでしょう。

フリーランス案件を獲得するには?

それでは、個人事業主として独立した女性エンジニアが、安定的にフリーランス案件を獲得するにはどうしたらいいでしょうか?フリーランスが高額報酬の案件を獲得するには、クライアント企業との直接取引がベストであり、そのための営業力が重要になります。ただし、現在ではフリーランスを強力にサポートする各種サービスが存在します。こうしたサービスをうまく活用することで、営業力の不足も補えます。

エージェントを活用する

女性エンジニアに限らず、多くのITエンジニアが案件獲得に活用しているのがフリーランスエージェントです。10〜15%程度の手数料がかかるものの、エンドユーザーからの直接案件が多く、会社員時代よりも収入の大幅アップが期待できます。ほとんどすべての案件が男女を問わない、スキル・実績重視であるのがポイントですが、客先常駐案件が多くなるのには注意が必要です。

クラウドソーシングを活用する

フリーランスエージェントよりも報酬単価が低くなる傾向はありますが、在宅案件を獲得したい女性エンジニアであれば、クラウドソーシングを活用するのもひとつの方法です。特にWeb制作、Webデザイン系の案件が多いため、専門分野によっては使いにくいかもしれませんが、ライフイベント時で働き方に制限がある女性エンジニアにはおすすめです。

フリーランス案件獲得のコツ

フリーランスとして安定的に活動していくためには、いかにリピーターとなってもらえるクライアントを数多く獲得するかが重要です。そのためには、エージェントなどを活用しながらも、参画した開発案件それぞれで幅広い人脈を築けるよう、ポイントを押さえてうまく立ち回るコツを掴むといいでしょう。フリーランスとして活躍する、女性エンジニアの体験談をもとに紹介していきます。

正確かつスピーディー

IT開発の現場に限ったことではありませんが「正確かつスピーディー」な仕事は、どんな業界でも高い評価が得られます。プログラミング・コーディングが速い方は正確性を心がけ、作業が慎重な方はいかにスピード感を高めるかを心がけ、貴重な戦力として認めてもらえるように立ち回るのが肝心です。

アピールできる得意分野

実力主義が進むIT業界は、実力のある女性が活躍しやすい一方、女性だからといって待遇面で優遇されることもありません。こうした特徴がより一層鮮明になるフリーランス市場では、自身の価値をわかりやすくアピールできる得意分野を持つのが重要です。もちろん、ITスキルだけがアピールポイントになるわけではありません。ブリッジエンジニアとして活躍する女性エンジニアの例があるように、英語をはじめとした語学力を強みにするという方法もあります。

コミュニケーション能力

転職時の採用ポイントとして重視されるコミュニケーション能力は、フリーランスエンジニアにも求められる重要な要素です。積極的なコミュニケーションはチーム内での仕事をスムーズに進めるだけでなく、関連する部署との連携にも役立ちます。関わる範囲を徐々に広げていくことで人脈の形成につながり、リピーターとして得意先になってもらえた、別のプロジェクトを紹介してもらえたという女性エンジニアも多いようです。

まとめ

女性エンジニアにとって、フリーランスという働き方がいかに適しているのかを紹介してきました。少なくとも、IT業界においては女性であることがハンデとならないのがおわかりいただけたと思いますが、フリーランスで働くからには性別に関係なくある程度のリスクを背負わなければならないのも事実です。ライフスタイルも含めた将来の展望を描き、会社員なのか、フリーランスなのか、自身にもっともマッチした働き方を選択するのが重要です。