フリーランスで働く人が知っておきたい年金の知識

フリーランスで働く人が知っておきたい年金の知識

フリーランスで働くということに憧れる、もしくはすでにフリーランスだという方が徐々に増えています。サラリーマンとは違い、様々なリスクを背負うフリーランスという存在ですが、それだけ自由な時間を自分でコントロールできるという点に魅力があると言えるでしょう。フリーランスにとって気になるのはリスクについてですが、具体的には何が含まれるでしょうか?仕事が無くなる不安、収入の不安定さ、色々考えられますが、最も漠然としていて大きな不安は老後の問題≒年金の問題ではないでしょうか?フリーランスであるということは個人事業主であることを意味します。そして個人事業主とサラリーマンとでは、そもそも年金を受け取る制度が異なります。この記事では、具体的にフリーランスとサラリーマンとの年金制度の違い、受け取ることのできる金額の違い、さらにそれらを踏まえた上でフリーランスとしてどのような備えをすると効果的であるのかを解説していきます。老後2000万円問題に対して自助努力は必須な時代です。まずはこの記事を通して知識武装をしていきましょう。知っているだけで特な情報がたくさん詰まっています。

そもそも年金とは何なのか?その基本的な仕組みについて

冒頭の記事を読んで、フリーランスとサラリーマンの年金は違うの?同じ日本の年金なのだから、みんな一緒なのでは?と思われている方もいるかもしれません。しかしそれは間違いです。フリーランスとサラリーマンの年金の間には決定的な違いが存在します。年金の話をするときに、日本の年金は「2階建て構造」という言葉を聞いたことがないでしょうか?ややこしいから無視していたという人はこれを機に確認しておくと良いでしょう。フリーランスの年金は1階のみ、サラリーマンの年金は2階建てです。つまり、フリーランスの年金の受取額は仕組み上、サラリーマンより少なくなってしまうということを意味します。以下詳しく見ていきましょう。

サラリーマンの年金について

先述しましたが、サラリーマンの年金は2階建てです。2階建てとは、1階に国民年金、2階に厚生年金という仕組みが用意されているということです。国民年金は、20歳〜60歳未満の全ての人が加入する義務のある年金制度です。一方厚生年金はサラリーマンが加入する義務のある年金制度で、フリーランスにはこれがないのです。

国民年金の現状について

20歳〜60歳未満の全ての人が加入する国民年金ですが、2020年4月からその保険料は値上がりし、月額16,540円の支払いをしなければなりません。サラリーマンの場合、ほとんどの人があまり意識のないまま、上記の金額が給料から天引きされています。月16,540円がどの程度家計にダメージを与えるかはそれぞれですが、注目すべきは値上げが段階的に行われているという点でしょう。2020年4月以前の国民年金保険料は16,410円でしたから、130円の値上げが実施されています。また10年前の2010年は15,100円、2000年は13,300円ですから、段階的に値上げが繰り返されていることがわかります。現在の急激な少子化を考えると、この流れが止まることは考えづらく、更なる値上げが繰り返されることが予想されます。サラリーマンにとってもフリーランスにとっても支出は多くなりそうです。

厚生年金の現状について

サラリーマンは1階部分の国民年金に加え、2階部分の厚生年金が加算されます。この部分がフリーランスと違う点です。では、サラリーマンは厚生年金を月々いくら払っているのでしょうか?シンプルにまとめると、標準報酬月額×保険料率(18.3%)となります。例えば標準報酬月額が240,000円であった場合、その18.3%ですから、43,920円が厚生年金として毎月天引きされる金額となります。

サラリーマンの厚生年金負担額は50%

サラリーマンの厚生年金負担の計算方法は以上ですが、これを全額支払う訳ではありません。会社が天引きしているので実感のない方がほとんどではありますが、厚生年金の支払いは会社が50%を負担してくれています。つまり、標準報酬金額が240,000円の方が18.3%、43,920円の年金を支払う時、会社が半分の21,960円を負担しており、自分の支払いも21,960円となります。受け取り時には、43,920円を支払ったとカウントされていますから、その分の年金をもらえると考えるとサラリーマンはフリーランスに比べて年金面で有利と言えます。

では年金はいくらもらえるか?

サラリーマンとフリーランスでは年金を納める方法が違うことを述べてきました。厚生年金を受給できるサラリーマンは、会社が半分を支払ってくれるため安心という部分が強いかと思います。では、国民年金と厚生年金の受給額は現状どのくらいなのでしょうか?あくまで平均値とはなりますが、国民年金のみを受け取った場合、月約56,000円、会社員や公務員で国民年金+厚生年金を受け取った場合、約145,000円となります。また、国民年金は20歳から60歳までの間漏れなく納めた場合、65,000円受け取ることができます。厚生年金は収入によって開きが大きくなるため、男性の平均は約165,000円、女性の平均は約10万円強となります。老後豊かに暮らしていくために必要な月の額は24万円以上とも言われていますから、国民年金+厚生年金を満額納めていたとしても、もらえる額は24万円まで達しません。そしてこれが老後2000万円問題の発端ともなっています。

フリーランスの年金に関しては、国民年金しかない訳ですから、ただでさえ少ない年金額を自助努力によってカバーしなければならないという厳しい現実が突きつけられることになります。

日本の年金は賦課方式

フリーランスの年金は国民年金のみ、サラリーマンの年金は国民年金+厚生年金であることを述べてきました。厚生年金は会社が半分肩代わりしてくれているので、年金面でサラリーマンが有利であることは抑えておくべき事実です。さらに年金に関してもう1つ認識すべきなのは、日本の年金は賦課方式であるということです。以下、詳しく述べていきます。

年金の賦課方式って何?

年金には国民年金と厚生年金とがあり、私たちはそれぞれの保険料を月々個々の給与水準に沿って払い続けています。そしてその払い続けた額が65歳になった時にそのまま返ってくる・・・そう思ってはいませんか?しかし実際はそうでありません。今現役世代が払っている年金保険料は、現代の受給世代、つまり65歳以上の引退した方へと支払われているのです。簡単に言えば、現役世代から引退世代へ月々仕送りが行われているというイメージです。このことを賦課方式と呼びます。

現役世代の年金は誰が払うのか?

では、今現役世代であるフリーランスやサラリーマンの将来の年金は誰が払うのでしょうか?当然かも知れませんが、今の子供達の世代です。少子化が叫ばれて20年以上が経ちます。国力の衰退と同様、年金の支給額についても非常に大きな問題となっています。ベビーブームの時代は8人以上で1人の老人を支えれば良かったのですが、それが現代だと現役世代2人に対し老人1人を支えなければならない構図となっており、ベビーブームの引退世代の人数が更に増す2025年には1.8人で1人を支えなければなりません。国民年金の保険料が増加傾向にあることを先述しましたが、その背景には圧倒的な人口動態の変化の流れがあることを理解しておきましょう。

フリーランスの年金の備え方

年金に関して悲観的な状況にある現代ですが、どうすればこの状況に立ち向かうことができるのでしょうか?答えはシンプルで「自分で年金を用意する」です。昨今の副業解禁や、iDeCoつみたて・NISAなどの税制優遇制度を国が推奨しているというニュースを良く耳にするようになりましたが、これは言い換えると今までの時代と比べて、自分でも資産形成をできる時代になったということです。

特にフリーランスにとっては自分の身は自分で守るという意識が強く要求されますから、知識を活かして実践を試みたいですよね。ここでは年金対策として有効な手段を2つ紹介します。

iDeCoを利用する

iDeCoは個人型拠出年金と呼ばれ、その名の通り、自分で自分の年金を拠出するというものです。資産運用を通して積み立てた資金は60歳以上になった時に引き出すことができるようになります。iDeCoは各種金融機関を通じて加入することができます。フリーランスの場合、月額5,000円〜68,000円まで掛け金を積み立てすることができる仕組みとなっています。厚生年金のあるサラリーマンの上限は23,000円に設定されていますから、フリーランスは掛け金を大きくできるのが特徴です。iDeCoの制度を利用して保険商品や投資信託を運用し、老後の年金として自ら積み立てるわけですが、得られた運用益に対して税金がかからないというのがiDeCoの最大の特徴です。通常、資産運用益で儲けた利益分は日本において、約20%の納税が義務付けられていますから非常にメリットが大きいことが分かります。デメリットは60歳になるまで特別な理由がない限り引き出すことが出来ないという、強い拘束力が挙げられます。また運用で損失が出る可能性もゼロではありません。ただし、長期運用に適した運用の仕方をすれば将来的に利益が出る可能性は高く、そうした銘柄を金融庁が厳しい審査を設けてあらかじめ選んでくれています。また長期・積み立てを見越した制度でもあります。生活や将来的に使うであろう資金を現金などで保有しつつ、余剰金を無理なく積み立てることが有効になります。

国民年金基金に加入する

国民年金基金は、上記で述べた1階建部分の国民年金に上乗せすることが可能となるシステムです。サラリーマンは加入することが出来ず、フリーランスや個人事業主など、第一号保険者が対象となります。基本的に65歳から受給がスタートします。掛金は全額控除となるため、節税に繋がることが大きなメリットです。掛け金は上限68,000円まで増やすことができるため、iDeCo同様、余剰金を考えながら積み立てることが可能です。反対にデメリットは受給額が固定化しているため、将来のインフレにより貨幣価値が現在より上昇してしまうと損をする可能性があるかも知れないこと、一度加入すると途中で自由に退会が出来ないことが挙げられます。iDeCo同様拘束力の強い制度であることが分かりますから、計画的な運用が求められますが、将来の備えとして知っておいた方が良い選択肢です。

まとめ

フリーランスと年金について述べてきました。まとめてみましょう。サラリーマンとフリーランスの年金は1階建、2階建ての違いがあり、1階部分は国民年金、2階部分は厚生年金を意味します。フリーランスは1階部分の国民年金しか受け取ることが出来ないため、サラリーマンと比べると年金の支給額は不利になります。現状、国民年金の平均支給額は56,000円、厚生年金の平均支給額は145,000円で、不自由のない生活を送るために自助努力は必須の状況です。しかも年金制度は賦課方式であり、少子化が進むと将来的には納付額は大きくなり、支給額は少なくなる可能性が極めて高い状況です。そんな中、特にフリーランスは自分自身で年金を用意する必要があります。フリーランスが自分で年金を用意するために有効な制度として、iDeCoと国民年金基金があります。2つとも長期で運用を行いながら、節税ができるメリットがある一方で、拘束力が強いことがネックとなるため、計画的に資金を投入していく必要があります。フリーランスの方が年金で不利になることは国も理解はしており、それに対するセーフティネットは用意されています。フリーランスの人も、これからフリーランスを目指す人も、知っていると得な制度は多々ありますからどれも有効活用する心構えが必要となります。