プロジェクトマネージャーの必須知識『PMBOK』について

最終更新日:2026年8月6日

はじめに

IT業界で仕事をしていると『プロジェクト』という言葉を耳にする機会が増えると思います。『プロジェクト』とは、ある課題や目的に対して、チームを編成し、開始から終了までの計画を事前に立てた上で遂行していく一連の活動を指します。インフラ、開発問わず、こういったプロジェクトチームに所属して仕事をする機会も多いでしょう。プロジェクトにおいて、チームのメンバーやスケジュール、コストなどを管理する指揮官にあたる重要な役割が『プロジェクトマネージャー』です。今回はプロジェクトマネージャーの役割やプロジェクトマネジメントの技法を体系的にまとめたPMBOKについてご紹介いたします。

プロジェクトマネージャーの役割

プロジェクトには当然納期があり、限られた予算の中で業務を遂行していかなければなりません。配置する人、使える予算、目的達成までのスケジュールやタスクや成果物の品質といったプロジェクトに関する管理業務の責任者がプロジェクトマネージャーです。プロジェクトマネージャーが行うべきプロジェクトマネジメントの技法を体系的にまとめたものとして、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)があります。

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、米国のプロジェクトマネジメント協会がまとめたプロジェクトマネジメントの知識体系で、プロジェクトマネージャーが行うべきプロジェクトマネジメントの技法の国際標準となっています。従来のマネジメントは『QCD』と呼ばれるQuality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の3つに着目した管理手法が一般的でしたが、PMBOKでは次の10個の知識エリアをもとに管理すべきであると示されています。

  1. 統合マネジメント
  2. スコープマネジメント
  3. スケジュールマネジメント
  4. コストマネジメント
  5. 品質マネジメント
  6. 人的資源マネジメント
  7. コミュニケーションマネジメント
  8. リスクマネジメント
  9. 調達マネジメント
  10. ステークホルダーマネジメント

PMBOK 10知識エリア早見表

# 知識エリア 主な役割 代表的な作業・成果物 主な対象フェーズ
1 統合マネジメント プロジェクト全体の統括・調整 プロジェクト憲章作成・全体コントロール 全フェーズ
2 スコープマネジメント 作業範囲の定義・管理 要求事項定義・WBS作成 計画・監視
3 スケジュールマネジメント 期限内完了のためのスケジュール管理 アクティビティ定義・全体スケジュール作成 計画・監視
4 コストマネジメント 予算内完了のためのコスト管理 コスト見積り・予算設定・コスト管理 計画・監視
5 品質マネジメント 成果物・プロセスの品質管理 品質計画・品質改善活動・品質検査 計画・実行・監視
6 人的資源マネジメント チームの組織・管理・育成 RACIチャート・チーム編成・パフォーマンス管理 計画・実行
7 コミュニケーションマネジメント 情報の正確な伝達・管理 コミュニケーション計画・情報配布・管理 計画・実行・監視
8 リスクマネジメント リスクの予防・対処 リスク計画・リスク対応戦略の実行 計画・監視
9 調達マネジメント 外部からの機器・サービス調達管理 調達計画・契約管理・検収・終結 計画・監視・終結
10 ステークホルダーマネジメント 関係者の参画・関与強化 ステークホルダー分析・コミュニケーション計画 立上げ・計画・監視

各知識エリアの詳細

1.統合マネジメント

統合マネジメントは、プロジェクトの目的を定め、目的達成に向けてプロジェクト全体を管理・統一する役割があります。プロジェクトはスケジュールやコスト、人員の管理など様々な作業を並行して遂行していく必要があるため、プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの立ち上げから終結までのすべてのフェーズにおいて、他9個の知識エリアをとりまとめ、分野ごとの連携を行い、マネジメントしていく必要があります。

2.スコープマネジメント

スコープマネジメントは、顧客満足度を高めるために、顧客のニーズにあったプロジェクトの最終成果物を明確にし、必要な作業範囲を管理する役割があります。具体的な作業内容としては、顧客の要求事項の定義化やプロジェクト成果物から作業を細分化・階層化したWBS(Work Breakdown Structure)の作成、スコープの管理やコントロールがここにあたります。

3.スケジュールマネジメント

スケジュールマネジメントは、プロジェクトを期限内に完了させるために、スケジュール管理を行う役割があり、タイムマネジメントとも呼ばれます。具体的な作業としては、WBSをもとに詳細なタスクを割り出すアクティビティ定義や、定義したアクティビティの順序設定、全体スケジュールの作成・コントロールがここにあたります。

4.コストマネジメント

コストマネジメントは、プロジェクトを承認された予算内で完了させるため、必要なコストの見積りや予算の設定、コントロールを行う役割があります。具体的な作業内容としては、タスクに必要な資源の概算金額を算出するコスト見積りや、予算からのコスト・ベースライン作成、コスト超過を防ぐ調整がここにあたります。

5.品質マネジメント

品質マネジメントは、顧客のニーズを成果物として正確に形にするために、プロジェクトのプロセスや成果物の品質を管理する役割があります。QC7つ道具などを活用し品質改善活動を支援し、品質検査で成果物のパフォーマンスを測定します。

6.人的資源マネジメント

人的資源マネジメントは、プロジェクトの成功に必要なチームを組織するため、人員の計画や配置、管理や育成を行う役割があります。役割を明確化するRACIチャートを作成し、チーム編成・スキル強化・パフォーマンス維持を行います。

7.コミュニケーションマネジメント

コミュニケーションマネジメントは、チームメンバーだけでなく、ステークホルダーも含むプロジェクトに関わる人員が必要とする情報を把握し、正確な情報伝達を行う役割があります。相互型・プッシュ型・プル型といったコミュニケーション手段を使い分け、情報の収集・配布・管理を行います。

8.リスクマネジメント

リスクマネジメントは、プロジェクトにおけるリスクを予防し、対処を行う役割があります。脅威になるリスクに対しては回避・軽減など対処が行われますが、リスクの中には好機になるリスクもあり、そのような場合は活用・強化といった対処が行われます。

9.調達マネジメント

調達マネジメントは、プロジェクトの作業を遂行するために必要な機器やサービスを外部から調達する際の、契約や計画といった管理を行う役割があります。内製か外注かの判断から、調達計画・進捗管理・検収・契約終結まで一貫して管理します。

10.ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトに影響のあるステークホルダーを特定し影響度を分析した上で、プロジェクトの進行に大きな影響を及ぼすステークホルダーに対して、プロジェクトの意思決定や実行に関与してもらえるように働きかける役割があります。ステークホルダーの権力と関心度を分析し影響度を明確にし、プロジェクトへの関与を強化します。

プロジェクトマネージャーは、これら10個の知識エリアをもとに管理業務を行うことがプロジェクトの成功のカギとなります。また、マネジメント知識はもちろん必須ですが、技術的な知識を持つことでより正確なマネジメントが行えるようになるでしょう。

まとめ

  • プロジェクトマネージャー(PM)はスケジュール・コスト・人員・品質を管理する指揮官で、PMBOKはその技法を体系化した国際標準
  • PMBOKでは統合・スコープ・スケジュール・コスト・品質・人的資源・コミュニケーション・リスク・調達・ステークホルダーの10知識エリアを管理する
  • 従来のQCD(品質・コスト・納期)管理を超え、リスクやコミュニケーション・ステークホルダーの関係管理まで含む包括的なマネジメントが特徴
  • PMBOKの知識はプロジェクトマネージャー試験(PMP)などの資格取得にも役立ち、ITエンジニアのキャリアアップに有効な知識体系
  • 資格より経験・知識によってPMに就任する場合が多いため、まずPMBOKを理解した上で実務での上流工程経験を積んでいくことが近道

よくある質問

プロジェクトマネージャーになるにはどのようなキャリアが必要ですか?
プログラマーやシステムエンジニアとして実務を経験した後、プロジェクトリーダー→プロジェクトマネージャーへとキャリアアップするのが一般的なルートです。技術的な知識に加え、スケジュール・コスト・人員・リスク管理のスキルと高いコミュニケーション能力が求められます。PMBOKの知識習得やPMP(Project Management Professional)などの資格取得も有効です。
PMBOKとはどういうもので、どのように学ぶことができますか?
PMBOKは米国PMI(プロジェクトマネジメント協会)が発行する「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」で、プロジェクトマネジメントのベストプラクティスをまとめたものです。PMIが公式ガイドブックを発行しており、書籍やオンライン講座で学習できます。PMP資格取得を目標に学習を進めると体系的に習得できます。日本ではPMBOKに基づいたプロジェクトマネージャー試験(IPA)もあります。
プロジェクトマネージャーの平均年収はどのくらいですか?
日本のITプロジェクトマネージャーの平均年収は650〜900万円程度が目安です。大手SIer・外資系IT企業では1,000万円以上も珍しくありません。フリーランスPMは月単価80〜150万円程度の案件も存在します。PMP資格やPMBOK知識を持ち、大規模プロジェクト(複数億円規模)の管理実績があると高単価が期待できます。
ITプロジェクトマネージャーに必要な資格は何ですか?
代表的な資格は2つです。①IPA「プロジェクトマネージャー試験(PM試験)」:国家資格で合格率15%前後の難関資格。日本のIT企業で高い認知度を持ちます。②PMP(Project Management Professional):PMI認定の国際資格で、グローバルに通用します。受験には3〜5年のプロジェクトマネジメント経験が必要です。どちらもPMBOKの知識が基盤になるため、まずPMBOKを学んでから受験準備を進めると効率的です。

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