ハギング・フェイスにおけるLLMの現状と展望について

最終更新日:2026年8月7日

本記事は2025年1月公開の記事を、2026年8月時点の情報に基づいて全面的に刷新したものです。オープンウェイトLLMの世代交代は非常に速く、当時の主要モデルであったMistral-7BやLlama 2、BLOOM、Falconなどは、すでに実務での採用が大きく減少しています。本稿ではHugging Face Hubの最新動向、現行の主要ベースモデル、日本企業の取り組み、そしてBERTの現在地までを改めて整理します。

Hugging Face Hubにおける LLM の現状

2025年1月時点の本記事では「100万以上のAIモデルがホストされている」としていましたが、この数字はすでに大きく古くなっています。2026年に入り、Hugging Face Hubにホストされるモデル数は200万を超え、テキスト・音声・画像・動画・時系列・マルチモーダルなど扱う領域も一段と広がりました。特筆すべきは増加ペースの加速で、最初の100万モデル到達には1,000日以上を要したのに対し、2つ目の100万モデル到達はおよそ335日と、3分の1以下の期間で達成されています。

一方で、利用の実態は一部への集中が強まっています。ダウンロード数の上位50組織・アカウントが全体の8割前後を占めるとされ、またパラメータ数10億未満の軽量モデルがダウンロード数の9割以上を占めるという分析もあります。「モデル数の爆発的増加」と「実際に使われるモデルの寡占化」が同時に進んでいるのが2026年のHugging Face Hubの特徴といえます。

主要なベースモデルの世代交代

元記事で紹介したMistral-7B、Llama 2、BLOOM、Falconはいずれも2023〜2024年前半のモデルであり、2026年8月時点では実運用の第一選択にはほぼ挙がりません。現在Hugging Face上で存在感を持つオープンウェイト系LLMは、おおむね以下のように世代交代しています。

モデル系統開発元特徴
Llama 4(Scout / Maverick)MetaScoutは最大1000万トークン級の超長文コンテキストを謳い、Maverickも100万トークン級に対応。Llama 2からアーキテクチャ・学習規模ともに刷新
Qwen 3 / 3.5 系Alibabaコーディング・推論性能で高評価。MoE構成の大型モデルから、少数パラメータのみ活性化する軽量派生モデルまで幅広く展開
Mistral Large 3Mistral AI2025年12月公開。総パラメータ675B(アクティブパラメータは41B程度)のMoE構成で、Apache 2.0ライセンスで公開。長文コンテキストにも対応し、Mistral-7B/Mixtral時代から大幅に規模拡大
Gemma 3Google27B等の中型密モデルが中心。量子化すれば一般的なGPU1枚でも動作し、エッジ・オンプレ用途での採用が進む
DeepSeek V4(Pro / Flash)DeepSeekMoE構成で総パラメータ最大1.6兆(アクティブ約490億)まで拡大した最新世代。前世代の推論特化版(V3.2 Speciale)に続き、数学系ベンチマークで高スコアを記録し、コスト効率の高い学習手法で引き続き注目
Phi-4 系Microsoft推論とビジョンを統合した小型モデルを2026年3月に公開するなど、小型・高効率路線を継続
Kimi K3Moonshot AI2026年7月公開。オープンウェイトとして最大級の規模とされ、知識・推論系ベンチマークで上位に位置

BLOOMやFalconのように「多言語対応」「非欧米圏発」を売りにしていた初期のオープンモデルは、上記のような後継世代に事実上置き換わりました。現在は単一の巨大モデルを追いかけるだけでなく、同じファミリー内で「最大規模のフラッグシップ」と「エッジ向けの軽量版」を併存させる開発方針が主流になっています。

日本企業の取り組み

元記事で紹介したサイバーエージェント・楽天の取り組みも、この1年半で状況が変化しています。

サイバーエージェントは、2024年7月に225億パラメータのスクラッチ開発モデル「CyberAgentLM3-22B-Chat」を公開して以降、大規模基盤モデルをゼロから開発する路線からは距離を置いています。2026年6月には、Qwen3をベースに日本語での推論能力を強化した継続事前学習モデル「CAT-Thinking-8B」「CAT-Paws-8B」を公開するなど、既存のオープンウェイトモデルを土台にした特化開発へと軸足を移しました。広告・クリエイティブ領域や業界特化型LLM、企業連携でのビジネス活用など、既存モデルの実装・応用を重視する方針は一貫しており、汎用の基盤モデル開発そのものを競うフェーズから、自社サービスへの組み込みを重視するフェーズに移行したと見られます。

楽天は対照的に、モデル規模を大きく引き上げました。2026年3月に公開した「Rakuten AI 3.0」は、約6,700億パラメータ規模のMoE(混合専門家)構成で、経済産業省・NEDOのGENIACプロジェクトの支援を受けて開発されています。日本語の文化知識・歴史・大学院レベルの推論・競技数学・指示追従などの評価軸で高いスコアを示したとされ、Apache 2.0ライセンスでHugging Face上から商用利用可能な形で公開されました。元記事で紹介した「Rakuten AI 7B」「Rakuten AI 2.0」からは、パラメータ規模・性能ともに大きく前進しています。

両社の方向性の違いは、「基盤モデル自体の規模競争を続けるか、既存モデルの実装・特化に集中するか」という、国内企業のLLM戦略の分岐を象徴しています。

BERTの現在地

元記事ではBERTのアーキテクチャ(双方向コンテキスト処理、エンコーダー構造、事前学習と微調整の二段階学習)を「今後を左右する重要技術」として紹介していました。2026年時点では、この位置づけは修正が必要です。

生成AI・対話AIの主役は、BERTのようなエンコーダー専用モデルではなく、デコーダー構造を持つLLM(Llama 4、Qwen、Mistral Large 3など)に完全に移っています。この点でBERTを「今後のLLMの中心技術」として語ることはもはや適切ではありません。

一方で、BERT系の双方向エンコーダーが完全に不要になったわけではありません。検索エンジンの再ランキング(クロスエンコーダー)、文書・クエリの埋め込み(エンベディング)生成、分類タスクなど、「文章全体の意味を短いベクトルに凝縮する」用途では、2026年現在も本番システムで使われ続けています。ただしこの分野でも、より長い文脈長やMoE構造を取り入れた新世代の埋め込み専用モデルが登場しており、BERTそのものは「現役の主力技術」というより「特定用途で今も使われる基礎技術」という歴史的・実務的な位置づけに落ち着いたと言えます。

今後の展望

元記事で述べた「モデルの集約傾向はLinuxディストリビューションに似ている」という見立ては、2026年時点でもおおむね妥当性を保っています。Llama系・Qwen系・Mistral系・Gemma系・DeepSeek系といった少数の有力な「ファミリー」に開発リソースと利用者が集約され、それぞれが商用・研究・軽量派生モデルを枝分かれさせていく構造は、むしろより明確になりました。

利用形態についても、ファインチューニングによる自社特化、業界特化型モデルの構築、エッジデバイス向けの軽量化という3つの方向性は継続していますが、2026年時点ではさらに以下の傾向が加わっています。

  • 超長文コンテキスト(数十万〜数百万トークン)を前提としたRAGレスの直接読み込み型ワークフローの増加
  • 推論特化(reasoning)モデルと通常の対話モデルの使い分けが一般化
  • MoE(混合専門家)構成の採用拡大により、総パラメータ数は巨大でも実際の計算コストを抑える設計が主流化
  • 日本企業においても、汎用モデルの規模競争に参加する企業(楽天)と、既存モデルの実装・特化に集中する企業(サイバーエージェント)への方針分岐

Hugging Face Hub上のモデル数そのものは今後も増加を続けると見られますが、実際に企業活用で選ばれるのは、上記のような少数の有力ファミリーとその周辺の派生モデルに引き続き集中していくと考えられます。

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まとめ

  • Hugging Face Hubにおける LLM の現状について:2025年1月時点の本記事では「100万以上のAIモデルがホストされている」としていましたが、この数字はすでに大きく古くなっています。
  • 主要なベースモデルの世代交代について:元記事で紹介したMistral-7B、Llama 2、BLOOM、Falconはいずれも2023〜2024年前半のモデルであり、2026年8月時点では実運用の第一選択にはほぼ挙がりません。
  • 日本企業の取り組みについて:元記事で紹介したサイバーエージェント・楽天の取り組みも、この1年半で状況が変化しています。
  • BERTの現在地について:元記事ではBERTのアーキテクチャ(双方向コンテキスト処理、エンコーダー構造、事前学習と微調整の二段階学習)を「今後を左右する重要技術」として紹介していました。
  • 今後の展望について:元記事で述べた「モデルの集約傾向はLinuxディストリビューションに似ている」という見立ては、2026年時点でもおおむね妥当性を保っています。

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