最終更新日:2026年8月5日
複数のLLMを組み合わせて進化させるアプローチをしているようです。
Sakana AIは、日本を拠点とするAIスタートアップであり、独自の技術である「進化的モデルマージ」を中心に開発を進めています。進化的モデルマージとは、生物の進化における自然選択の仕組みをヒントにしたアルゴリズムで、複数の既存モデルのパラメータをレイヤー単位・重み単位で組み合わせ、より優れた性能を持つ新しいモデルを効率的に生み出す手法です。ゼロから大規模モデルを学習させる従来のアプローチと比べて、少ない計算資源で高性能なモデルを構築できる点が特徴です。
この手法を用いて、日本語に強い大規模言語モデル「EvoLLM-JP」、画像理解モデル「EvoVLM-JP」、画像生成モデル「EvoSDXL-JP」などを開発・公開してきました。さらに、日本の伝統的な浮世絵のスタイルで画像を生成する「Evo-Ukiyoe」や、白黒写真・古い浮世絵をカラー化する「Evo-Nishikie」といった、日本文化を意識したユニークなモデルも発表しています。開発したモデルの多くをオープンソースで公開し、研究コミュニティ全体でのAI開発の民主化を掲げている点も大きな特徴です。設立当初から海外投資家・海外の技術者コミュニティとのつながりを重視しており、東京発でありながらグローバルな展開を志向する姿勢を一貫して見せています。
Sakana AIについてのまとめ
Sakana AI(サカナAI)は、2023年に東京を拠点として設立された日本発のAIスタートアップ企業で、生成AI(Generative AI)技術を中心に革新的なAI開発を行っています。設立からわずか1年強で企業評価額10億ドルを超える「ユニコーン企業」となり、2025年11月には評価額26.5億ドル(約4,000億円)に達し、日本国内の未上場スタートアップとして最高評価額を更新しました。
設立背景と創業者
Sakana AIは2023年7月、Google出身のエンジニア2名によって東京で設立されました。共同創業者のライオン・ジョーンズ氏は、Transformerアーキテクチャを提唱した論文「Attention Is All You Need」の共著者の一人であり、現代の生成AIの基礎技術を築いた人物の一人です。もう一人の共同創業者であるデイビッド・ハ氏は、Google Brain東京の研究者を経て、Stability AIで研究部門を率いた経歴を持ちます。社名の「Sakana(魚)」は、個々では小さな存在である魚が群れをなすことで大きな一つの生命体のように協調して行動する様子に由来しており、複数の比較的小規模なAIモデルを組み合わせることでより高い知性を生み出すという同社の思想を象徴しています。
技術的特徴
バイオミミクリーに基づくAI開発
Sakana AIは、自然界の進化・群知能の仕組みを模倣する「バイオミミクリー(生体模倣)」の発想をAI開発の中核に据えています。単一の巨大モデルをスクラッチから学習させるのではなく、既存の複数モデルを進化的アルゴリズムで組み合わせて新しい能力を引き出すアプローチを取っており、これが計算コストを抑えながら高性能なモデルを生み出す原動力になっています。
進化的モデルマージ技術
レイヤーレベル(モデルの層単位で入れ替える)とパラメータレベル(重みそのものを混合する)の2種類のマージ手法を進化的アルゴリズムで最適化することで、人手による試行錯誤に頼らず、タスクに適したモデルの組み合わせを自動的に探索できる点が特徴です。
日本語対応の生成AI
日本語は英語などと文法・文字体系が大きく異なるため、海外発の大規模モデルでは性能が十分に発揮されないことがあります。Sakana AIは日本語に特化したモデル開発・チューニングに力を入れており、後述する「TinySwallow-1.5B」のような軽量モデルから、2026年に公開された日本語チャットサービスまで、日本語ユーザー向けの最適化を継続的に進めています。
資金調達と成長
Sakana AIは2024年1月、NTT・KDDI・ソニーグループや海外VC(Lux Capital、Khosla Venturesなど)から約45億円を調達したことを発表し、NTTグループが日本国内の筆頭株主となりました。同年9月には、NVIDIAに加え三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、みずほ銀行、伊藤忠商事、NEC、富士通など国内外の投資家からシリーズAの追加出資(約214百万ドル規模)を受け、企業評価額は約15億ドル(当時のレートで約2,200億円)に到達。設立から1年余りでの到達としては日本発スタートアップとして最速のユニコーン入りとなりました。
さらに2025年11月には、三菱UFJフィナンシャル・グループやKhosla Ventures、Macquarie Capital、NEA、Lux Capital、In-Q-Telなどから135百万ドル(約200億円)規模のシリーズBを調達したと発表され、企業評価額は26.5億ドル(約4,000億円)に倍増しました。これによりSakana AIは、Preferred Networksなど従来の有力スタートアップを上回り、日本の未上場スタートアップとして史上最高の評価額を記録しています。
ビジョンと目標
Sakana AIが掲げるビジョンは、単一の巨大モデルが万能に振る舞う世界ではなく、それぞれ得意分野の異なる比較的小規模なAIモデル群が協調し合うことで、全体として大規模モデルに匹敵、あるいはそれを上回る知性を実現するというものです。自然界の生態系が多様な種の相互作用によって成り立っているのと同様に、AIの世界でも多様性と協調こそが持続的な進化の鍵になるという考え方を一貫して掲げています。また、開発したモデルを積極的にオープンソースとして公開する姿勢を通じて、AI技術の恩恵を特定の巨大テック企業だけでなく、研究者や開発者コミュニティ全体に広げる「AIの民主化」も重要な目標としています。
今後の展望
Sakana AIは、自然界の知恵を活用した独自のアプローチで、今後も日本語・日本文化に根ざした生成AIの開発と、複数モデルを協調させる「集合知」型のAIアーキテクチャの研究を両輪で進めていくとみられます。国内の金融・製造業をはじめとする大手企業や政府機関との連携も強化しており、単なる研究開発型スタートアップから、実際の企業導入を伴う事業基盤の構築フェーズへと軸足を移しつつあります。次章の追記でも触れる通り、2025年後半から2026年にかけては新モデル・新サービスの発表が相次いでおり、日本発AI企業として存在感を高め続けています。
【2026年8月追記】その後の動向
本記事の初出(2025年1月)以降も、Sakana AIは開発を継続し、多くの発表を行っています。まず2025年1月30日、新たな知識蒸留手法「TAID(Temporally Adaptive Interpolated Distillation)」を用いて構築した軽量な日本語特化モデル「TinySwallow-1.5B」を公開しました。15億パラメータという小規模ながら、スマートフォンやPC上でオフライン動作が可能で、同規模クラスの他モデルと比較して高い性能を達成しています。
2025年11月には前述の通りシリーズBで約200億円を調達し、企業評価額は約4,000億円(26.5億ドル)に到達、日本の未上場スタートアップとして最高評価額を記録しました。
2026年に入ってからは、コンシューマー向け・エンタープライズ向け双方でサービス展開を加速させています。2026年3月24日には、日本語チャットサービス「Sakana Chat」を一般公開しました。DeepSeekの「V3.1-Terminus」やMetaの「Llama 3.1(405B)」、OpenAIのオープンモデル「gpt-oss-120B」をベースに、独自の追加学習で日本語のニュアンスや日本文化への理解を高めた「Namazu」シリーズのモデルを搭載しており、アカウント登録不要・無料で、国内からのみアクセス可能という「Sovereign AI(国内主権AI)」の考え方を体現したサービスとなっています。
さらに2026年6月22日には、複数の専門AIエージェントを単一のAPIの背後で動的に選択・協調させるマルチエージェント・オーケストレーションシステム「Sakana Fugu」を商用公開しました。同システムは、ICLR 2026に採択された同社の2本の論文(学習によるモデル編成に関する研究)の成果に基づくもので、ソフトウェア開発タスクのベンチマークにおいて、公開当初から既存の主要な単体フロンティアモデルを上回るスコアを記録したと発表されています。2026年7月にはNVIDIAとの提携をさらに拡大し、NVIDIAのオープンモデル群「Nemotron」ファミリーをFuguの専門エージェントの一つとして統合することを発表するなど、「単一の巨大モデルではなく、協調するモデル群こそが最も高い能力を発揮する」というSakana AI設立当初からのビジョンを、着実にプロダクトとして具現化しています。
よくある質問(FAQ)
Q. Sakana AIとはどのような会社ですか?
A. 2023年7月に東京で設立された日本発のAIスタートアップです。元Googleのエンジニアであるライオン・ジョーンズ氏とデイビッド・ハ氏が共同創業し、複数のAIモデルを組み合わせて進化させる独自技術を強みとしています。2025年11月時点で企業評価額は約4,000億円に達し、日本の未上場スタートアップとして最高評価額を記録しています。
Q. 「進化的モデルマージ」とはどのような技術ですか?
A. 生物の進化における自然選択の仕組みをヒントに、複数の既存AIモデルのパラメータをレイヤー単位・重み単位で自動的に組み合わせ、より高性能な新しいモデルを効率的に生み出す技術です。ゼロから大規模モデルを学習させる場合と比べて、少ない計算資源で成果を得られる点が特徴です。
Q. これまでにどのくらいの資金を調達していますか?
A. 2024年1月に約45億円、同年9月にNVIDIAや国内大手企業などから追加出資(シリーズA拡大)を受けて評価額約15億ドルのユニコーン企業となりました。さらに2025年11月にはシリーズBで約200億円を調達し、企業評価額は約4,000億円(26.5億ドル)に達しています。
Q. Sakana AIの主なAIモデル・サービスには何がありますか?
A. 日本語大規模言語モデル「EvoLLM-JP」、画像理解モデル「EvoVLM-JP」、画像生成モデル「EvoSDXL-JP」、浮世絵スタイルの画像生成モデル「Evo-Ukiyoe」、軽量日本語モデル「TinySwallow-1.5B」、日本語チャットサービス「Sakana Chat」(Namazuモデル群)、マルチエージェント・オーケストレーションシステム「Sakana Fugu」などがあります。
Q. 社名「Sakana」の由来は何ですか?
A. 個々では小さな存在である魚(Sakana)が群れをなすことで、大きな一つの生命体のように協調して行動する様子に由来します。比較的小規模な複数のAIモデルを組み合わせることで、より高い知性を実現するという同社の技術思想を象徴した社名です。
この記事のポイント
- Sakana AIは2023年7月、元Googleのライオン・ジョーンズ氏とデイビッド・ハ氏が東京で設立した日本発のAIスタートアップ。
- 「進化的モデルマージ」という独自技術により、複数の既存AIモデルを組み合わせて効率的に高性能なモデルを生み出すアプローチを取っている。
- 2024年9月に企業評価額約15億ドルで日本発スタートアップとして最速のユニコーン入りを果たし、2025年11月には約4,000億円(26.5億ドル)に評価額を伸ばし、日本の未上場スタートアップとして最高評価額を記録。
- 2026年には日本語チャットサービス「Sakana Chat」、マルチエージェント・オーケストレーションシステム「Sakana Fugu」を相次いで一般公開し、NVIDIAとの提携も拡大するなど、研究開発から実用サービス展開のフェーズへと進んでいる。
- 開発したモデルの多くをオープンソースで公開し、AI技術の民主化を掲げている点も大きな特徴。
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