AWSのGlacierとは?その読み方と概要について

最終更新日:2026年8月4日

AWS(Amazon Web Service)といえばクラウドストレージサービスであるS3を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。今回はS3の中でも長期保存向けのサービスであるAmazon S3 Glacier(グレイシア)について紹介します。

そもそもAmazon S3とは?

Amazon S3(Simple Storage Service)とはAWSのクラウド型オブジェクトストレージサービスです。各地の物理的なデータセンターに分散して保存されていることで障害に強く、オブジェクト単位でのバージョン管理も可能です。

S3へオブジェクトを保存すると、S3内でのファイル変更・追記はできません。一旦取り出して変更し、再度アップロードする動作が必要ですが、即時反映されるため煩わしさは感じられません。

Amazon S3 Glacierとは?特徴と概要

Amazon S3 Glacierは、使用頻度の少ないファイルを長期的に保存するためのストレージサービスです。「氷河」を意味する「Glacier」が名前の由来で、コールドデータ(めったにアクセスしない大量データ)の保管に適しています。

低コストで利用可能

Amazon S3 Glacierのストレージ料金はS3 Standardと比べて大幅に安価です。セットアップ料金も不要で、従量課金制のため小規模から始められます(具体的な料金は後述の比較表を参照)。

高い耐久性(99.999999999%)

Amazon S3 Glacierは、平均年間耐久性が 99.999999999%(イレブンナイン)となるように設計されています。これはS3 Standardと同等であり、データは1つのAWSリージョン内の地理的に分離された少なくとも3つのアベイラビリティゾーン(AZ)にまたがって自動分散されます。

3つのストレージクラス比較

2021年以降、Amazon S3 Glacierは用途に応じた3つのストレージクラスに分類されています。旧「Amazon S3 Glacier(無印)」は「Amazon S3 Glacier Flexible Retrieval」に名称変更されました。

S3 Glacier 3ストレージクラス 比較表
ストレージクラス データ取り出し時間 料金目安(1GB/月) 主な用途
S3 Glacier
Instant Retrieval
ミリ秒単位(即時) 約$0.004 年1〜2回程度アクセスするメディアアーカイブ等
S3 Glacier
Flexible Retrieval
(旧 Glacier)
標準:3〜5時間
急ぎ:1〜5分(追加料金)
一括:5〜12時間
約$0.0036 災害復旧・バックアップ・コンプライアンス保管
S3 Glacier
Deep Archive
標準:12時間以内
一括:48時間以内
約$0.00099(最安) 7〜10年以上の長期法令保管・磁気テープ代替

※料金は東京リージョン概算。最新の正確な料金はAWS公式サイトでご確認ください。

構成要素(アーカイブ・ボールト)

アーカイブ

アーカイブとは、長期保管する情報のまとまりです。Amazon S3 Glacierでは、データは「アーカイブ」に保存されます。写真・ビデオ・文書などあらゆるデータが構成可能で、個々のアーカイブのサイズ上限は40TBです。

保管できるデータの総量とアーカイブの数に制限はありません(1回にアップロードできるアーカイブの最大サイズは4GB)。アーカイブはアーカイブIDという一意の番号によって管理され、アーカイブIDおよびアーカイブに入れたファイルは変更不可能なため、長期保存・改ざん防止用途に適しています。

ボールト

ボールトはアーカイブをグループ化するコンテナです。IAMを使ってユーザーごとの権限設定が可能で、タグを付けてコスト管理もできます。ボールトは1アカウントで1リージョンあたり最大1,000個まで作成できます。

料金について

Amazon S3 Glacierはセットアップ料金なしの従量課金制です。アーカイブのアップロード・使用ストレージ・データ取り出しに応じて課金されます。

ストレージ料金計算例(S3 Glacier Flexible Retrieval の場合):

アーカイブ 1 つ当たり(インデックス 32 KB を含む)
1.000032 GB × 100,000 アーカイブ = 100,003.20 GB

1 か月間の保管料金($0.0036/GB):
100,003.20 × $0.0036 ≒ $360

注意:アーカイブは最低3カ月保管が前提です。3カ月未満で削除した場合でも3カ月分の料金が請求されます。データの取り出しには標準で3〜5時間かかります(急ぎの場合は1〜5分の「即時取り出し」オプションを利用できますが追加料金がかかります)。

S3 Standard vs S3 Glacier 比較

Amazon S3 Standard vs S3 Glacier 比較
項目 S3 Standard S3 Glacier Flexible Retrieval
料金(目安) $0.025/GB/月 $0.0036/GB/月(約1/7)
データ取り出し速度 即時(ミリ秒) 3〜5時間(標準)
耐久性 99.999999999% 99.999999999%
主な用途 頻繁にアクセスするデータ 使用頻度の低い長期保存データ
最低保存期間 なし 90日(3カ月未満で削除すると90日分課金)

よくある質問(FAQ)

Q1. S3とS3 Glacierはどちらを使えばよいですか?

アクセス頻度で判断します。頻繁にアクセスするデータはS3 Standard、年に数回しかアクセスしないバックアップ・監査ログ・法令保管データなどはS3 Glacierが適しています。S3 Lifecycle Policyを使えば、一定期間後に自動でS3 StandardからGlacierへ移行する設定も可能です。

Q2. 3種類のGlacierストレージクラスはどう使い分けますか?

「Instant Retrieval」は取り出し速度がミリ秒で、年1〜2回アクセスするメディアアーカイブ向け。「Flexible Retrieval」はコストを抑えつつ標準3〜5時間で取り出せ、バックアップ・災害復旧用途に最適。「Deep Archive」は最安値で磁気テープの代替として7年以上の超長期保管に使います。

Q3. S3 Glacierに保管したデータはいつでも削除できますか?

削除自体はいつでも可能ですが、最低保存期間(Flexible Retrieval: 90日、Deep Archive: 180日)を下回ると削除しても残り期間分の料金が請求されます。また Vault Lock を設定した場合は、コンプライアンス目的でデータの削除・変更が法的に制限されます。

Q4. S3 Glacierのデータを急いで取り出したい時はどうすればよいですか?

S3 Glacier Flexible RetrievalおよびInstant Retrievalには「迅速」取り出しオプションがあり、1〜5分程度でデータを取り出せます(標準より割高)。深刻な緊急性が想定される場合は、S3 Glacier Instant RetrievalまたはS3 Standard-IAを検討してください。

まとめ:Amazon S3 Glacierで低コスト長期保存を実現

Amazon S3 Glacierは使用頻度の低い大容量データを低コストで長期保存するのに最適なAWSサービスです。

  • S3との違い:S3 Standardより料金が安い(約1/7)反面、データ取り出しに時間がかかる(標準3〜5時間)
  • 3つのストレージクラス:Instant Retrieval(即時)・Flexible Retrieval(3〜5時間・旧Glacier)・Deep Archive(12時間・最安)を用途に応じて使い分け
  • 耐久性:99.999999999%(イレブンナイン)でS3 Standardと同等
  • 最低保存期間:3カ月未満で削除しても3カ月分の料金が発生するため、短期保存には不向き
  • 活用シーン:バックアップ・監査ログ・法令保管データ・磁気テープ代替など企業のコールドデータ保管に最適

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