Azure VMの高速ネットワーク設定
最終更新日:2026年8月5日
1.はじめに
| 項目 | Microsoft Azure | AWS | Google Cloud |
|---|---|---|---|
| シェア(国内) | 約30% | 約35% | 約15% |
| 強み | Microsoft製品連携 | サービス数・実績 | データ分析・AI |
| 無料枠 | 12ヶ月無料 | 12ヶ月無料 | 常時無料枠あり |
| 主な資格 | AZ-900 / AZ-104 | CLF / SAA | ACE / PCA |

Azureにおける仮想マシン(VM)では、既定のネットワーク設定がありますが、Azure PowerShellを使用することでネットワークスループットを向上させて「高速ネットワーク」として最適化することが可能です。
当記事では、Azureの「Windows VM」と「Linux VM(Ubuntu、RHEL、AlmaLinux、Rocky Linuxなどの主要ディストリビューションを含む)」のネットワークスループットを最適化する方法とメリットおよび「Azure portal」を使用した高速ネットワークが有効なVMについてご紹介します。
2.高速ネットワークを使用する

1.メリット
- 1.待ち時間の短縮/1秒あたりのパケット数(pps)が向上する
- 2.ジッターの消滅
- 3.CPUの使用率の削減
データパスから仮想スイッチがなくなるため、パケットからホストでポリシー処理される時間がなくなります。これに付随して仮想マシン(VM)内で処理ができるパケット数が向上します。
仮想スイッチの処理は、適用の必要があるポリシーの量によって異なり、処理を行うCPUのワークロードにも依存します。ハードウェアをオフロードしてポリシーの適用をした場合、パケットが仮想マシンに直接送られるので、その変動が解消されます。また、オフロードを行うことで、ホスト先から仮想マシンへの通信、すべてのソフトウェアへの割り込み、加えてすべてのコンテキストの切り替えもなくなります。
ホスト先の仮想スイッチをバイパスにすることで、ネットワークトラフィックを処理するために使用するCPUの使用率を削減することが可能です。
2.使用するしないでは大きな違いがある
高速ネットワークを使用することで仮想マシンとの間で「シングルルート I/O仮想化(SR-IOV)」することが可能となり、ネットワークパフォーマンスが大幅に向上します。高いパフォーマンスのパスにより、データパスからホストがバイパスされ、サポートされている仮想マシンの種類において、最も要求が厳しい「ネットワークワークロード」での、待ち時間、ジッター、CPUの使用率が低下します。
また高速ネットワークを使用するしないとでは、仮想マシン間での通信状況が大きく事となります。
まず「高速ネットワークを使用する」場合、ネットワークトラフィックは、仮想マシンのネットワークインターフェイス(NIC)に到達して仮想マシンに転送されます。仮想スイッチによって、すべてのネットワークポリシーの適用内はオフロードされ、ハードウェアでの適用となります。ハードウェアに適用したポリシーは、ネットワークインターフェイスでネットワークトラフィックを仮想マシンに直接転送することができます。
一方で「高速ネットワークを使用しない」場合、ネットワークセキュリティグループ、アクセス制御リスト、分離、そのほかのネットワーク仮想サービスなどのポリシーが適用されている「仮想スイッチ」と「ホスト」を、仮想マシンを出入りするネットワークトラフィックがスキャンしていく必要があります。
3.サポートされているオペレーティングシステム(2026年8月時点の最新情報)
Microsoft Learn公式ドキュメントを確認したところ、対応OSの一覧が刷新されており、特にCentOS・Ubuntu 14.04/16.04・Windows Server 2012 R2・CoreOS Linux・FreeBSD 10系は現行のサポート対象一覧から外れています(CentOSはAzure Marketplaceの認定パートナーイメージから既に除外済み)。以下は現行(2026年8月時点)の一覧です。
Azure ギャラリーにおける「Windows系」では、以下のバージョンが直接サポートされています。
- Windows Server 2022
- Windows Server 2019
- Windows Server 2016
- Windows 11
Azureギャラリーにおける「Linux・FreeBSD系」では以下のディストリビューションが既定でサポートされています。
- Azure Linux 3
- Ubuntu 24.04 LTS/22.04 LTS
- Red Hat Enterprise Linux 10.0/9.6/8.10(8.10はテクニカルプレビューのみ)
- AlmaLinux 10.0/9.6
- Rocky Linux 10.0/9.7
- SUSE Linux Enterprise Server 16/15 SP7/15 SP6
- Debian 13「Trixie」/12「Bookworm」
- Oracle Linux UEK R8/R7
上記に該当しないディストリビューションやカスタムカーネルを利用する場合は、Linuxカーネル6.14以降を推奨するとMicrosoft公式ドキュメントに記載されています。
3.仮想マシンのネットワークスループットの最適化

1.Windows VM
「Windows」搭載の仮想マシンで「高速ネットワーク」のサポートが有効である場合、スループットにとって最適な構成となります。そのほかすべての「Windows VM」では、「Receive Side Scaling(RSS)」を使用すると、使用していない仮想マシンよりも高いスループットを実現できますが、既定により使用できない場合があります。RSSが有効になっているかを判断するには、「Azure PowerShell」を使用して確認していきます。
- Name:Ethernet
- InterfaceDescription:Microsoft Hyper-V Network Adapter
- Enabled:False
1.RSSが有効かを「Get-NetAdapterRss」PowerShellコマンドで確認
上記のようなコマンド出力例で返信された場合、RSSは無効になっています。
- Get-NetAdapter|%{Enable-NetAdapterRss-Name $_.Name}
2.RSSが無効の場合、以下のコマンドを入力します。
ただし、上記コマンドの出力はありません。このコマンドによつてネットワークインターフェイスの設定が更新され、一時的に接続が切断されます。接続が切断中は、再接続を示すダイアログボックスが表示されるほか、通常は3回目の試行後に再接続されます。
- Name:Ethernet
- InterfaceDescription:Microsoft Hyper-V Network Adapter
- Enabled:True
3.再度「Get-NetAdapterRss」コマンドを入力し、有効になっている場合は以下のコマンドで出力が返信されます。
2.Linux VM
「Azure Linux VM」は、「Windows VM」におけるRSSの既定とは異なり、RSSは既定で常に有効となっています。これは、Linuxカーネルには「Linux VM」がより高いネットワークスループットを実現できるネットワーク最適化オプションが含まれているからです。
- 1.新規デプロイ用のUbuntu
「Ubuntu Azureカーネル」は、Azure上における最適なネットワークパフォーマンスを提供する既定のカーネルとなっています。現行では上記の「サポートされているオペレーティングシステム」で紹介したUbuntu 22.04 LTS/24.04 LTSを利用することが推奨されます。
- “Publisher”:”Canonical”,
- “Offer”:”UbuntuServer”,
- “Sku”:”latest”,
- “Version”:”latest”
JSON(記事作成例)
上記のコマンドの入力が完了したら、以下のコマンドを入力して、更新プログラムを入手していきます。この手順は「Ubuntu Azureカーネル」を実行している仮想マシンでも使用することができます。
- #run as root or preface with sudo
- apt-get -y update
- apt-get -y upgrade
- apt-get -y dist-upgrade
Bash
次に以下の省略可能なコマンドセットは、既にAzureカーネルにありますが、エラーで更新に失敗している既存のUbuntuの展開に役立ちます。
- #optional steps may be helpful in existing deployments with the Azure kernel
- #run as root or preface with sudo
- apt-get -f install
- apt-get –fix-missing install
- apt-get clean
- apt-get -y update
- apt-get -y upgrade
- apt-get -y dist-upgrade
Bash
- 2.既存のVM用の「Ubuntu Azureカーネル」をアップグレード
「Azure Linuxカーネル」にアップグレードすることで、スループットのパフォーマンスは大きく向上する場合があります。このカーネルの有無を確認するには以下のコマンドを入力して調べる必要があります。
- #Azure kernel name ends with “-azure”
- uname -r
- #sample output on Azure kernel:
- #6.x.x-azure(バージョン番号はカーネルの更新に伴い変わります)
Bash
仮想マシンにAzureカーネルが存在しない場合、Azureカーネルがない場合は、ルートとして以下のコマンドを実行します。
- #run as root or preface with sudo
- apt-get update
- apt-get upgrade -y
- apt-get dist-upgrade -y
- apt-get install “linux-azure”
- reboot
Bash
記事執筆時点で紹介していたCentOS向けの手順は、CentOSがAzure Marketplaceの認定パートナーイメージから既に除外されているため、現在は新規デプロイでの利用を推奨しません。CentOSの後継としては、AlmaLinuxまたはRocky Linuxが現行のAzure Marketplaceで提供されており、いずれもAccelerated Networkingに標準対応しています。
- 3.Red Hat Enterprise Linux(RHEL)
最適化には、上記「サポートされているオペレーティングシステム」に記載の現行バージョン(RHEL 9.6/10.0等)を使用して仮想マシンを作成することが有効的です。
- “Publisher”: “RedHat”
- “Offer”: “RHEL”
- “Sku”: “9-lvm”(バージョンは適宜最新のものに置き換えてください)
- “Version”: “latest”
JSON(記事作成例)
新規および既存の仮想マシンは、最新の「 Linux Integration Services (LIS)」をインストールすることで大きなメリットを得られる場合があります(近年のカーネルではLIS機能がカーネルに統合されているケースも増えています)。
4.ポータルを使用したVMの作成

1.ポータルで作る高速ネットワークが有効な仮想マシン
「Azure portal」を使用することで高速ネットワークが有効な仮想マシンを作成することが可能です。以下はポータルで仮想マシンを作成するときの手順です。
- 1.[仮想マシンの作成]ページで[ネットワーク]タブを選択します。
- 2.[ネットワーク]タブの中には[高速ネットワーク]のオプションがあります。
- 3.サポートされているオペレーティングシステムとVMサイズを選択した場合、[高速ネットワーク]のオプションは自動的に[オン]となります。
- 4.それ以外の場合、オプションは[オフ]設定となり、有効にできない理由が表示されます。
[注意]
ポータルからは、サポートされているオペレーティングシステムのみを有効にすることが可能です。カスタムイメージを使用して、そのイメージで高速ネットワークがサポートされている場合は、CLIもしくはPowerShellのいずれかを使用して仮想マシンを作成します。
VMを作成した後、高速ネットワークが有効であるかを以下の手順で確認します。
- 1.Azure portalに移動をして、VMを管理します。この場合、[仮想マシン]を検索して選択を行います。
- 2.仮想マシン一覧で、新しいVMを選択します。
- 3.VMのメニューバーで[ネットワーク]を選択します。
ネットワークインターフェイスの情報で、[高速ネットワーク]というラベルの横に高速ネットワークが[有効]か[無効]であるかの状態が表示されます。
2.既存の仮想マシンの高速ネットワークの有効化
既存の仮想マシンでネットワークの「高速」設定をしていないものでもあとからその機能を有効かすることは可能です。ただし、以下の前提条件を満たしているうえで高速ネットワークがサポートされているものに限ります。
- 1.仮想マシンは高速ネットワークに対してサポートされているサイズであること(現行では2vCPU以上の汎用・コンピューティング最適化VMの多くが標準対応。ハイパースレッディング対応インスタンスでは4vCPU以上が対象)。
- 2.仮想マシンはサポートされている「Azureギャラリーイメージ(および「Linuxのカーネルバージョン)」であること。
- 3.NIC上で高速ネットワークの有効を設定する前には、仮想マシンを停止し、割り当てを解除しておく必要があります(稼働中のVMに対しては有効化できません)。
5.まとめ

「Windows」「Linux」のいずれかを搭載した仮想マシンの高速ネットワークを有効するかしないかでは全体的なパフォーマンスと得られるメリットには大きな差があります。もっとも、大きな結果を得る場合であるならば、同一のAzure仮想ネットワークに接続された2台以上の仮想マシンで高速ネットワーク設定を有効にしておくことです。高速ネットワークが設定できるVMは「Azure portal」を用いて作成することが可能です。
また、他にもVMを作成する方法は存在します。それは「Azure PowerShell」を使用して「高速ネットワークを使用するWindows VM」の作成ができ、逆に「高速ネットワークを使用するLinux VM」の作成には「Azure CLI」を使用して作成を行います。また、高速ネットワークを有効にしていない既存のVMを、有効にすることは「Windows VM」「Linux VM」でも可能ですが、前提条件を満たしておくことと高速ネットワークをサポートしている必要があります。
この記事のポイント
- 高速ネットワーク(Accelerated Networking)はSR-IOVによりホストをバイパスし、待ち時間・ジッター・CPU使用率を改善する
- 対応OSは記事執筆時から刷新されており、CentOSは既にAzure Marketplaceから除外済み(後継はAlmaLinux/Rocky Linux)
- 現行では2vCPU以上の汎用・コンピューティング最適化VMの多くが標準対応
- 有効化には仮想マシンの停止・割り当て解除が必要(稼働中のVMには設定できない)
- 効果を最大化するには、同一Azure仮想ネットワーク内の2台以上のVMで有効にすることが推奨される
よくある質問
Q. 高速ネットワークを有効にすると追加料金はかかりますか?
A. 高速ネットワーク機能自体に追加料金はかかりません。対応しているVMサイズであれば無料で有効化できます。
Q. すべてのAzure VMサイズで高速ネットワークを使えますか?
A. いいえ。2vCPU以上の汎用・コンピューティング最適化インスタンスが中心で、NC・NVシリーズ等の一部サイズは対応していません。Azure CLIの`az vm list-skus`コマンドで対象VMサイズを確認できます。
Q. CentOSを使っている既存VMはどうすればよいですか?
A. CentOSは既にAzure Marketplaceの認定パートナーイメージから除外されています。新規に高速ネットワーク対応のVMを構築する場合は、後継のAlmaLinuxやRocky Linuxへの移行を検討することをおすすめします。
Q. 稼働中のVMで高速ネットワークを有効にできますか?
A. できません。高速ネットワークの有効化には、対象VMを停止して割り当てを解除する必要があります。
Q. Windows VMとLinux VMで設定方法に違いはありますか?
A. Linux VMはRSSが既定で常に有効ですが、Windows VMはRSSが既定で無効な場合があり、PowerShellコマンドで手動確認・有効化が必要になることがあります。VM作成方法もWindowsはAzure PowerShell、LinuxはAzure CLIを使うのが一般的です。
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