Microsoft Azure Recovery Services コンテナーとは?
最終更新日:2026年8月5日
Microsoft Azure Recovery Services コンテナー(Recovery Services vault)は、Azure Backupのバックアップデータや、Azure Site Recoveryのレプリケーション設定・監視情報を格納するAzureのストレージエンティティです。Azure Backupの料金体系については別記事「Azure Backup 料金」で解説していますが、本記事ではコンテナー自体の仕組み・機能・作成方法にフォーカスして解説します。
目次
Recovery Services コンテナーとは
| 項目 | Microsoft Azure | AWS | Google Cloud |
|---|---|---|---|
| シェア(国内) | 約30% | 約35% | 約15% |
| 強み | Microsoft製品連携 | サービス数・実績 | データ分析・AI |
| 無料枠 | 12ヶ月無料 | 12ヶ月無料 | 常時無料枠あり |
| 主な資格 | AZ-900 / AZ-104 | CLF / SAA | ACE / PCA |
Microsoft Azure Recovery Servicesの略称は「MARS」です。Microsoft Azure Recovery Services コンテナーとは、Azure Backupサービスにおいて、Microsoft Azure Recovery Services (MARS) エージェントを使用してコンピューターをバックアップする際に、バックアップデータと復旧ポイントを格納するためのAzureのストレージエンティティです。(エンティティ:実体)データとは、データコピー、仮想マシン(VM)、ワークロード、サーバー、ワークステーションのいずれかの構成情報です。Recovery Services コンテナーを使用することで、IaaS VM (Linux/Windows)やAzure VM上のSQL Server・SAP HANAなど、様々なAzureサービスのバックアップデータを保持することが可能です。バックアップ関連の操作を実行するためのインターフェイスも用意されており、オンデマンド(ユーザーの要求に応じてバックアップを作成すること)でのバックアップ、復元の実行、バックアップ ポリシーの作成などの操作を行うことができます。Recovery Services コンテナーは、System Center Data Protection Manager(DPM)、Windows Server、Azure Backup Server(MABS)などのバックアップ元もサポートし、管理に直接関係のない間接的な処理を最小限に抑えながら、バックアップデータを整理できる点が特徴です。
主な機能
Recovery Services コンテナーは、Azure Resource Managerモデルをベースにしており、バックアップデータを保護するための以下のような機能を備えています。
- ソフトデリート:バックアップが削除された場合(悪意のある操作・誤削除いずれも含む)でも、バックアップデータは追加で14日間保持され、データを失うことなく復旧できます。この14日間の保持に追加費用はかかりません。さらに、保持期間をカスタマイズしたり、ソフトデリートを常時有効にして無効化させないようにする「拡張ソフトデリート」も利用できます。
- クロスリージョン復元(Cross Region Restore):コンテナーで有効化することで、Azureのペアリージョンであるセカンダリリージョンに、任意のタイミングでレプリケートされたデータを復元できます。GRSによる災害時の自動フェールオーバーとは異なり、Azureが障害を宣言するのを待たずに、監査対応や訓練目的でセカンダリリージョンのデータを復元できる点が特徴です。
- Azure ロールベースアクセス制御(Azure RBAC):バックアップ・復元操作へのアクセスを、定義済みのユーザーロールに制限できます。Recovery Services コンテナーには、復旧ポイントを管理するための組み込みロールが用意されています。
- データの分離:バックアップデータはMicrosoftが管理するAzureサブスクリプション・テナントに格納され、外部ユーザーやゲストが直接アクセスすることはできません。これにより、本番環境が侵害された場合でも、既存のバックアップが改ざん・削除されにくい構造になっています。
- 暗号化:既定ではプラットフォーム管理キーによってすべてのデータが自動的に暗号化されます。加えて、Azure Key Vaultに格納した自分自身のRSAキー(カスタマー管理キー)を使って暗号化することも可能です。
- ハイブリッドIT環境の一元監視:Azure IaaS VMだけでなく、オンプレミス(System Center Data Protection Manager)資産のバックアップ状況も、ポータルから一元的に監視できます。後述のとおり、Azure Site Recoveryのジョブもあわせて監視対象にできます。
Recovery Services コンテナーとバックアップ コンテナーの違い
Azure Backupでは現在、「Recovery Services コンテナー」と「バックアップ コンテナー(Backup vault)」という2種類のコンテナーが提供されています。本記事のテーマであるRecovery Services コンテナーは、Azure VM・Azure VM上のSQL Server/SAP HANA・Azure Files・オンプレミス環境(MARSエージェント/DPM/MABS経由)のバックアップを対象とする、従来からある管理エンティティです。
一方、バックアップ コンテナーは、Azure BlobストレージやAzureディスク、Azure Database for PostgreSQL フレキシブルサーバーといった、比較的新しいクラウドネイティブなワークロードのバックアップ管理のために用意された別リソースです。バックアップ対象のデータソースの種類によって、どちらのコンテナーを作成すべきかが決まるため、Azureポータルでコンテナーを新規作成する際は、対象ワークロードに対応した種類を選択する必要があります。
Azure Site Recoveryとの関係
Recovery Services コンテナーは、Azure Backupだけでなく、Azure Site Recovery(ASR)の災害対策(ディザスタリカバリ)構成でも共通して使用される管理エンティティです。Azure VMをリージョン間でレプリケーションしてDR環境を構築する場合も、Recovery Services コンテナーを作成・選択したうえで、レプリケーションポリシーやフェールオーバー設定を管理します。ポータルの同じコンテナー画面から、Azure Backupのバックアップジョブと、Azure Site Recoveryのレプリケーションジョブの両方を横断的に監視できる点がメリットです。
ただし、内部的な仕組みはBackupとSite Recoveryで異なります。Azure Backupは復旧ポイント(スナップショット)を定期的に取得してコンテナーに格納する方式であるのに対し、Azure Site RecoveryはVMのディスク変更を継続的にキャッシュストレージへ転送し、5分ごとにクラッシュコンシステントな復旧ポイントを作成する「継続的レプリケーション」の仕組みを採用しています。そのため、Site Recoveryの構成では、コンテナーに加えてソースリージョン側のキャッシュストレージアカウントなど、Backupにはない専用リソースが別途必要になります。Azure Site Recoveryの機能・料金の詳細は関連記事で解説しています。
制限事項
・サブスクリプションで作成できるコンテナーの数
1つのサブスクリプションあたり、Recovery Services コンテナーとバックアップ コンテナーを合わせて最大500個まで作成できます。上限に達し、さらにコンテナーが必要な場合は、追加のサブスクリプションを作成する必要があります。
・Azure仮想マシンの登録数
コンテナーあたりAzure VMは最大1,000台まで登録可能です。ただし、セキュリティ上の制約により1日あたり最大250台までという登録数の制限があります。また、Microsoft Azure Backup Server(MABS)は、コンテナーあたり最大50サーバーまで登録できます。1つのバックアップポリシーで保護できるVMは最大100台です。
・コンテナーで保護可能なデータソース・項目の数
すべてのワークロード(Azure VM、SQL Server VM、MABSサーバー等)を合わせて、1つのコンテナーで最大2,000個のデータソースを保護できます。個々のデータソースの最大サイズは54,400GBです(Azure VMバックアップには本サイズ制限は適用されません)。コンテナーにバックアップできるデータの合計量には上限がありません。
・作成できるバックアップポリシーの数
1つのデータソースあたり最大5,000個のバックアップポリシーを作成できます。以前は1コンテナーあたり最大200個までという制限でしたが、現在は大幅に拡張されています。
・バックアップ回数にも制限があります。
Microsoft Azure Recovery Services(MARS)エージェントを使用して直接バックアップされるマシンは、1日3回までバックアップ可能です(1回あたり最大22TBのデータ変更量に対応)。DPM/MABS経由のバックアップは1日2回まで、Azure仮想マシンのバックアップは1日1回までです。1つの保護対象インスタンスにつき、保持できる復旧ポイントは最大9,999個です。
・コンテナー間でのデータ移動・バックアップ
バックアップは同一リージョン内で完結する仕組みのため、バックアップしたいVMが存在するAzureリージョンごとにコンテナーを用意する必要があります(異なるリージョンへのバックアップは不可)。また、一度バックアップ済みのデータを別のコンテナーへ移動することはサポートされていません。
ストレージの冗長性オプション
コンテナーのストレージ冗長性は、バックアップデータの格納前であればローカル冗長ストレージ(LRS)・geo冗長ストレージ(GRS)・ゾーン冗長ストレージ(ZRS)から選択できます。バックアップ開始後は冗長性の種類を変更できないため、運用開始前に要件に合わせて選択しておくことが重要です。リージョンをまたがる復元(クロスリージョン復元)を有効にすると、GRSは読み取りアクセスgeo冗長ストレージ(RA-GRS)にアップグレードされます。ZRS(ゾーン冗長ストレージ)は東日本を含む多くのリージョンで利用可能です。単一リージョン内の複数の可用性ゾーンにデータを複製するため、GRSほどのコストをかけずにゾーン単位の障害耐性を高めたい場合に適しています。
サポートされるリージョン
Recovery Services コンテナーが利用できるリージョンは、サービス開始以降も新規リージョンの追加により拡大を続けています。東日本・西日本を含む日本国内のリージョンではAzure Backup・Azure Site Recoveryとも利用可能です。最新の対応リージョン一覧は、Azureポータルでコンテナーを新規作成する際のリージョン選択画面、またはMicrosoft Azure公式サイトの製品別リージョン対応状況ページで随時更新されているため、構築前には必ず最新情報をご確認ください。
作成方法
Recovery Services コンテナーの作成はAzureポータルから数ステップで行えます。
- Azureポータルの検索バーで「Recovery Services コンテナー」を検索し、該当のサービスを開きます。
- 「作成」を選択し、対象のサブスクリプションとリソースグループを指定します。
- コンテナー名を入力します。名前はAzure内で一意である必要があります。
- リージョンを選択します。バックアップ対象のリソース(VMなど)と同じリージョンを指定する必要がある点に注意してください。
- 内容を確認し「作成」を実行するとデプロイが開始され、数分程度でコンテナーが作成されます。
- 作成後は「ストレージの冗長性」でLRS/GRS/ZRSのいずれかを選択します(バックアップ開始前のみ変更可能)。
- 保護したい対象(Azure VM、SQL Server、Azure Filesなど)ごとに「バックアップの構成」からバックアップポリシーを設定し、対象を登録します。オンプレミスサーバーの場合はMARSエージェントまたはMABS/DPMを別途インストールし、コンテナーに登録します。
Azure Site Recoveryの用途で利用する場合は、コンテナー作成後に「Site Recovery」メニューからレプリケーション対象のVM・ターゲットリージョンなどを設定する流れになります。
よくある質問(FAQ)
Q. Recovery Services コンテナーとバックアップ コンテナーはどちらを作ればいいですか?
Azure VM、SQL Server、SAP HANA、Azure Files、オンプレミス環境(MARS/DPM/MABS)をバックアップしたい場合はRecovery Services コンテナーを使用します。Azure BlobストレージやAzureディスク、Azure Database for PostgreSQL フレキシブルサーバーなど、より新しいクラウドネイティブなワークロードをバックアップしたい場合はバックアップ コンテナーを使用します。ポータルでコンテナーを新規作成する際に、対象のワークロードに応じて自動的に案内されます。
Q. 1つのコンテナーで複数のリージョンのVMをバックアップできますか?
できません。Azure Backupのバックアップは同一リージョン内で完結する仕組みのため、バックアップ対象のVMが存在するリージョンごとにコンテナーを用意する必要があります。
Q. コンテナー作成後にストレージの冗長性(LRS/GRS/ZRS)は変更できますか?
バックアップデータの格納が開始される前であれば変更可能です。ただし、一度そのコンテナーへのバックアップが始まると、冗長性の種類を変更することはできなくなるため、運用開始前に要件に応じて選択しておく必要があります。
Q. 誤ってバックアップを削除してしまった場合、復旧できますか?
ソフトデリート機能により、削除後も追加で14日間バックアップデータが保持されるため、その間であれば復旧が可能です。保持期間の延長や、ソフトデリートを常時有効化して無効化されないようにする「拡張ソフトデリート」も利用できます。
Q. Recovery Services コンテナーはAzure Site Recoveryでも使いますか?
使用します。Recovery Services コンテナーはAzure Backupだけでなく、Azure Site Recoveryのレプリケーション設定・監視にも共通して利用される管理エンティティです。ただし、実際のレプリケーションの仕組み(継続的レプリケーション・キャッシュストレージ等)はバックアップとは異なります。
まとめ:Recovery Services コンテナー
この記事のポイント:
- Recovery Services コンテナーは、Azure Backupのバックアップデータと復旧ポイントを格納するAzureのストレージエンティティ
- ソフトデリート・クロスリージョン復元・RBAC・暗号化など、バックアップデータを保護するための機能が備わっている
- 新しいワークロード向けの「バックアップ コンテナー」とは対象データソースが異なるため、用途に応じて使い分ける
- Azure Site Recoveryのレプリケーション管理にも共通して使用されるが、内部の仕組み(継続的レプリケーション)はバックアップと異なる
- コンテナー数・登録台数・ポリシー数などには上限があり、特にバックアップポリシー数は最大5,000個まで拡張されている(旧仕様では200個)
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