ビッグデータを解析し、活用している企業の紹介

最終更新日: 2026年8月7日

「ビッグデータ」という言葉はご存じでしょうか。多くの方は単に膨大な量のデータ群といった認識ではないでしょうか。ここで取り扱うビッグデータとはこれまでには解析が困難であった膨大な量の非構造化データのことを指します。米国のアナリストであるダグ・レイニー(Doug Laney)氏はビッグデータには3つのV「Volume(データ量)」「Variety(多様性)」「Velocity(リアルタイム性)」があると定義しました。このビッグデータを解析することによって様々なことを知見することが出来ます。近年ではビッグデータを解析し事業に役立てている企業も増えつつあります。本記事では、Honda・Intel・ユニクロ・スシローの実際の活用事例を通じてビッグデータの可能性を解説します。

Honda:電気自動車バッテリーの解析

日本の大手輸送機器メーカーであるHondaでは電気自動車の開発にビッグデータの解析結果を活用しています。電気自動車の普及を進めていくうえで問題になるのが、消費者のバッテリー状態などに対する不安などがあります。

そのバッテリー問題を解決するためにHondaではトレーサビリティーシステムを用いて、日々バッテリーの向上に努めています。トレーサビリティーシステムとは、バッテリーの情報をトレースしてその性能状態を把握するシステムです。バッテリーの使用環境・急速充電・高負荷での走行をした場合など、バッテリーにどのような影響を及ぼすかをリアルタイムで状況を把握することで、バッテリーの性能低下や残存価値との相関関係を解析することが出来ます。

Hondaはこのような電気自動車のバッテリーから出力されるビッグデータを解析することにより、バッテリーの性能変化に影響を及ぼすキー・ファクターを抽出し、バッテリーのライフサイクル全体をサポートすることを目指しています。

Intel:チップテストの効率化

半導体素子メーカーであるIntelもビッグデータを解析し、事業に役立てている企業の一つです。チップメーカーはチップを出荷する前にすべてのチップをテストする必要がありますが、そのテスト数はなんと約1万9千にも及んでいます。

その膨大なテスト数を省略するためにIntelはビッグデータで解析を始めました。その結果、特定のチップに集中してテストを行うことで、テストに掛かる時間とコストを削減しつつ、製品の品質を維持することができるようになりました。

ユニクロ:商品開発プロセスの短縮

トレンドの移り変わりが早いアパレル業界において大手メーカーであるユニクロもビッグデータを活用している企業です。ビッグデータを解析することによって、今まで多くの時間を要していた「素材調達→企画→デザイン→生産→物流→配送」といった工程を一つずつ進める必要があった商品開発プロセスを、消費者のデータをネットワークで共有することで並列に作業することができるようになり、大幅にリリースまでの期間を短縮することができるようになりました。

またトレンドを解析し開発プロセスを短縮するだけでなく、在庫の大量廃棄問題についてもビッグデータを活用することで解決に近づくことができます。ビッグデータを使った商品開発プロセスなら素材調達やデザインを並列に行うことが出来るので、余分な在庫を発生させづらくすることができます。

あきんどスシロー:需要予測と廃棄削減

全国にチェーン展開する回転寿司業界の大手企業であるスシローはビッグデータを活用し売り上げを伸ばしています。スシローは「回転すし総合管理システム」というシステムを導入しています。このシステムはリアルタイムでお客が食べているネタを解析し、需要があるネタを予測し供給することできます。

またこのシステムのおかげで余剰な供給を防ぐことが出来るので、廃棄ロスの減少にも一役買っており、廃棄量は約4分の1にまで減少しました。このシステムを導入したおかげで、二律背反であった「売り上げを伸ばしたいが廃棄ロスを減らすためには供給を下げなければならない」という状況を改善することが出来ました。

企業別ビッグデータ活用比較

企業 業種 ビッグデータの活用内容 主な成果
Honda 製造・自動車 EVバッテリーのトレーサビリティー解析 バッテリー性能劣化要因の特定・ライフサイクル最適化
Intel 半導体・製造 チップテスト(1.9万テスト)の解析によるテスト対象絞り込み テスト時間・コスト削減と品質維持の両立
ユニクロ アパレル・小売 消費者データの共有による開発工程の並列化 商品リリース期間の大幅短縮・在庫廃棄削減
スシロー 飲食・外食 回転すし総合管理システムによるリアルタイム需要予測 廃棄量を約1/4に削減しながら売上も向上

よくある質問

Q. ビッグデータの「3つのV」とは何ですか?
A. Volume(データ量)・Variety(多様性)・Velocity(リアルタイム性)の3つです。従来のデータベース管理では扱えない規模(Volume)、テキスト・画像・音声など多種多様な非構造化データ(Variety)、リアルタイムで高速に生成・処理されるデータ(Velocity)の3つが揃ったデータがビッグデータと定義されます。近年はこれに「Veracity(真実性・信頼性)」「Value(価値)」を加えた5VやさらにVisualization・Variabilityを含む7Vで定義する文献も増えています。
Q. スシローの「回転すし総合管理システム」はどのような技術を使っていますか?
A. ICタグ(RFID)を皿の底に貼り付け、レーン上の皿の動きをリアルタイムでトラッキングします。「どのネタの皿が何分間レーンに流れているか」「誰がどのネタを取ったか」を秒単位で把握し、機械学習による需要予測と組み合わせることで、「今このテーブルにはこのネタを流すタイミング」という最適制御を実現しています。廃棄ロスを1/4に削減しながら顧客満足度も向上させた事例として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功例として広く紹介されています。
Q. ユニクロのビッグデータ活用で「並列開発」が可能になった仕組みを教えてください。
A. 従来の商品開発は「素材調達完了後に企画」「企画確定後にデザイン」という直列プロセスでした。消費者のトレンドデータ・販売データ・SNSデータをリアルタイムで全工程が参照できるようにすることで、「素材調達担当がデータを見ながら素材を決める→同時に企画担当も同じデータを参照して企画を立案→並行してデザイン担当も動き出す」という並列処理が可能になりました。情報の非対称を解消することで工程の依存関係を減らし、リードタイム(開発期間)を大幅に短縮できます。
Q. 中小企業でもビッグデータを活用できますか?
A. はい。AWSのAmazon Redshift・Google BigQuery・Azure Synapse Analyticsといったクラウドサービスは従量課金制で、少量から始めて必要に応じてスケールできます。POSデータ・Webサイトのアクセスログ・顧客購買履歴などを自社で保有していれば、月数千円〜数万円の費用でビッグデータ分析の基盤を構築できます。まずは手元の販売データをGoogle スプレッドシートで分析することからスタートし、規模が拡大したらクラウドBIツールへ移行する段階的アプローチが中小企業には現実的です。

まとめ

  • ビッグデータとは「Volume(大量)・Variety(多様)・Velocity(リアルタイム)」の3V特性を持つ従来の手法では解析困難なデータ群を指す
  • Honda:EVバッテリーのトレーサビリティー解析で性能劣化要因を特定し、ライフサイクル全体の最適化を目指す製造業のビッグデータ活用例
  • Intel:1万9千のチップテストをビッグデータ解析でターゲットを絞り込み、コスト削減と品質維持を両立した製造効率化の事例
  • ユニクロ:消費者データの共有で開発工程を並列化し、リードタイムと廃棄在庫を同時に削減。アパレル業界でのビッグデータ活用の代表例
  • スシロー:ICタグとリアルタイム需要予測で廃棄量を約1/4に削減しながら売上も向上。飲食業界でのDX成功事例として高く評価される
  • ビッグデータはまだ発展途上の技術。同じデータでも視点を変えれば異なる知見が得られ、中小企業でもクラウドサービスを活用すれば手軽に始められる

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