事例から学ぶ身近なディープラーニング

最終更新日: 2026年8月7日

さまざまなビジネスにおいてAI(人工知能)が活用されている中、大きな注目を集めているのがディープラーニングです。ディープラーニングの活用事例は、インフルエンザ予報・来店客分析・タクシー需要予測など、私たちの身近なサービスにも広がっています。本記事では、ディープラーニングの概要や特徴と、実際の活用事例をご紹介いたします。

ディープラーニングとは

ディープラーニングとは、コンピューターが大量のデータを元に複雑な現象のパターンや特徴を、コンピューター自身で抽出でき、更にはその抽出方法までもコンピューター自身で学習できる技術を指します。ディープラーニングは、よく機械学習と同義で扱われることもありますが、本来は機械学習技術のうちの一つです。AI(人工知能)の分野である機械学習のうちの一つがディープラーニングという技術になります。

AI(人工知能)とは

AI(人工知能)は、今やITのニュースや日常的にもよく耳にするようになりました。AIとは、Artificial Intelligenceの略で、人間が行う思考や選択、記憶といった行動をコンピュータが再現したものを指します。身近なAIの活用例として、Google翻訳やSiriが挙げられます。これほどまでに社会へ浸透してきたAIですが、未だにはっきりと定義が定まっていません。

機械学習とは

機械学習とは、AI(人工知能)のうちの1つの技術を指します。AIが自律的に学習を行う為の技術です。示されたデータやルールから、パターンを発見し、そのパターンを利用することで判断や予測ができるのが、機械学習の特徴です。

ディープラーニングの特徴

機械学習のうちの1つの分野・技術として、近年大きな注目を集めているのが、ディープラーニングです。ディープラーニングは、深層学習とも呼ばれ、AIの機械学習におけるデータの分析や学習を強化したものと言えます。例えば、「空」という言葉に対して、「青い」「広い」といった返答しかできなかったシステムが、ディープラーニングを活用することで「青くて広い」や「雲が増えたので雨が降る可能性がある」などといった返答をすることができるようになります。与えられたキーワードに対して、プログラミングされたデータの中から特定のワードを抽出するだけでなく、コンピュータ自身が学習を行い、より人間に近い判断や行動をとることが可能となります。

AI・機械学習・DLの関係

技術 定義 特徴 身近な例
AI(人工知能) 人間の思考・判断をコンピュータで再現 最も広い概念・明確な定義なし Google翻訳・Siri・ChatGPT
機械学習 AIが自律的にデータからパターンを学習 データとルールからパターン発見・予測 スパムフィルター・商品レコメンド
ディープラーニング 機械学習の手法の一つ・ニューラルネットワーク多層化 特徴量の抽出も自動・複雑なパターン対応 画像認識・音声認識・自動翻訳

ディープラーニングの活用事例

ディープラーニングは、大量のデータから複雑なパターンやデータの特徴を人間の力を使わずに発見することができ、汎用性が高いことから、さまざまな業界で活用されてきています。

次に、実際に活用されている事例と実証段階に進んでいる身近なサービスの事例をご紹介いたします。

インフルエンザ予報

まず、株式会社日立製作所と損害保険ジャパン株式会社によって実証が開始された「インフルエンザ予報」の事例をご紹介いたします。

「インフルエンザ予報」は4週間先までのインフルエンザの流行予測情報をwebサイト上に掲載し、誰もが閲覧できるサービスです。全国4000以上の医療機関から集められたインフルエンザを含む感染症のデータや過去の流行地域や時期といったさまざまな情報を、ディープラーニングを用いてAIに学習させ、インフルエンザの流行の予測を可能としました。この予測情報はコミュニケーションアプリ「LINE」で配信も実施されます。2019年12月から2020年3月まで、さいたま市にて実証が行われ、サービス実証開始の2019年12月時点でLINE登録者は6000人を超え、市民から高い関心が寄せられていることがわかりました。

来店客分析

次に、株式会社パルコによる来店客分析の事例をご紹介いたします。

東京都台東区上野の大型商業施設である「PARCO_ya」では、来店客の分析にディープラーニングを活用しています。各テナントの区画ごとにカメラを設置し、来店人数を計測と、年齢・性別を画像から認識します。蓄積されたデータはAIによって学習・解析され、解析された結果がグラフや表に見える化されます。時間別の来店客数の推移などの分析結果が、ビル管理部門やテナントへアプリやwebでフィードバックされるシステムです。テナントはフィードバックされた分析結果を元に、ディスプレイや人員配置の最適化が可能になりました。このシステムによって、人が勘や経験を頼りにせず、ディープラーニングによる分析結果を用いて、最適解を判断できるようになっています。

タクシー乗車需要の予測

最後に、株式会社NTTドコモ(以下NTTドコモ)が提供する需要予測の事例をご紹介いたします。

現在から30分後までのタクシーの需要を10分ごとに予測し、タクシードライバーへオンラインで配信される「AIタクシー」というサービスが提供されています。このサービスは、日時や乗り降り場所といったタクシーの運行データや、周辺の商業施設のデータ、気象データに加えて、NTTドコモが保有する全国各地の性別や年齢といった人のデータをディープラーニングによって解析を行い、移動する需要の予測が可能となったシステムです。このシステムを利用することで、人の流れをリアルタイムで把握することができ、電車の遅延やイベント等で変動する需要にも速やかな対応できるようになります。また、経験の少ない新人ドライバーであっても、ベテラン並みのパフォーマンスができるようになるでしょう。実際に、このAIタクシーを導入した熊本タクシー株式会社では、乗客を見つけるノウハウがない新人ドライバーの売上が上がり、ベテランドライバーよりも多く売り上げる日もあったとの例があります。

よくある質問

Q. ディープラーニングが「機械学習の一つ」と言われるのはなぜですか?
A. 機械学習は「データからパターンを学習する手法全般」を指す広い概念で、決定木・SVM・ニューラルネットワークなど複数の手法を含みます。ディープラーニングはその中の「多層ニューラルネットワークを使った手法」のことで、機械学習の下位概念です。したがって「AIの一部が機械学習・機械学習の一部がディープラーニング」という入れ子構造になります。
Q. ディープラーニングは画像以外でも使えますか?
A. はい。本記事で紹介した通り、テキスト(インフルエンザ予報)・人流データ(来店客分析)・地理・時系列データ(タクシー需要予測)など幅広いデータに活用できます。音声認識・自然言語処理・動画分析・センサーデータ異常検知など、データが大量にある領域ならほぼ適用可能です。
Q. ディープラーニングに必要なデータ量はどのくらいですか?
A. タスクの複雑さによって異なりますが、画像分類では一般に各クラス数百〜数千枚が目安です。少ないデータでも「転移学習(大規模学習済みモデルをベースに追加学習)」で精度を出せるケースが増えており、データ収集のハードルは以前より下がっています。データが不足する場合は「データ拡張(回転・ノイズ付加等)」も有効です。
Q. 中小企業でもディープラーニングを活用できますか?
A. はい。Google Vertex AI・Amazon SageMaker・Azure Machine Learningなどクラウド型AIサービスが充実しており、自社でGPUサーバーを持たなくても利用できます。また、学習済みモデル(画像認識・文字認識・感情分析など)をAPIで呼び出すだけで使えるサービスも多く、専門エンジニアがいなくても一定の機能は実現できます。

まとめ

  • ディープラーニング(深層学習)は「AI → 機械学習 → ディープラーニング」の入れ子構造の最下層で、特徴量の抽出から学習まで自動化した機械学習手法
  • 与えられたキーワードに対して単純な語句の返答だけでなく「青くて広い」「雨が降る可能性がある」など文脈を踏まえた複雑な推論ができる点が従来の手法との大きな違い
  • インフルエンザ4週間先予測・PARCO来店客の年齢・性別リアルタイム分析・タクシー乗車需要の10分単位予測など、日立製作所・NTTドコモなど大企業の実証事例が積み上がっている
  • タクシー需要予測AIを導入した熊本タクシーでは、新人ドライバーがベテランを上回る売上を記録する日もあり、属人的ノウハウをAIが補完する効果が実証された
  • 分析できる対象が文字・音・画像・動画など多様な点が特徴で、クラウドAIサービスの普及により中小企業でもディープラーニング活用の選択肢が広がっている

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