金融業界におけるFintechの脅威~データ分析とAIで生き残ろう~
最終更新日: 2026年8月7日
経済産業省によりキャッシュレス消費者還元事業が採択され、現金を持たずとも決済ができるサービスが浸透するなど、生活を取り巻くお金に関する考え方や在り方が変わってきています。お金を取り扱う金融業は、この変化の大きな影響を受け、より詳細な分析によって生存競争を生き抜く必要があるのです。今回は金融におけるトレンドとデータ分析の重要性・活用例をご紹介いたします。
金融×ITの時代へ:FinTechとは
日常生活やさまざまな企業活動において、ITの技術が当たり前のように活用されるようになりました。金融業界も例外ではありません。国内国外を問わず、現在FinTech(フィンテック)というトレンドが活発化しています。
FinTech(フィンテック)とは、Finance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。IT技術が活用された金融サービスを指します。Fintechと言われるサービスには、以下が挙げられます。
1 送金と決済
電子交通マネーと呼ばれる「Suica」やLINEpay・PayPayといったキャッシュレスで決済ができるサービスや、Kyashといった利用代金を利用者で割り勘しインターネット上で送金できるアプリなどがあります。
2 融資
Readyfor・CAMPFIREといったプロジェクトへの資金提供を行えるクラウドファンディングサービスや、日々の決済やインターネット上での行動といったデータから信用度を分析し融資を行うデータレンディングがあります。かつてはSBI Social Lending(2021年清算)やKabbage(2020年AmexにM&A)が先進事例として知られていましたが、現在は国内外で多数の後継サービスが展開されています。
3 預金・資金管理
楽天銀行といったインターネットバンキング、ビットコインやGMOコインといった仮想通貨、ZaimやMoney Forwardといった財務管理アプリがあります。
金融業界は大きな節目へ
IT技術のスピーディーな進化や、金融サービスを利用するユーザーの価値観が変わったことにより、Fintechサービスをもって金融業界へ参入する企業が増加しています。既存の銀行や金融業は、こういったFintechサービスに打ち勝ち、共存していくためも、取り巻く環境を整理し、顧客ひとりひとりへ理解を深めるため活動が必要です。そのためにデータ分析は欠かせないものとなります。
金融業界におけるデータ分析
顧客理解の為の分析
もともと銀行などの金融業は顧客のデータを大量に保有しています。それらのデータから、顧客の年齢、性別、職業、年収、家族構成、信用度といった属性データや取引データに加えて、顧客の日常での行動や生活のスタイルといった行動データ加えてデータ分析を行い、顧客ひとりひとりに合ったアプローチを行うことが可能です。有効な分析手段としては、アソシエーション分析が挙げられます。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、データ間の相関関係を分析する手段です。従来の金融業では、顧客の年齢や性別といった属性データのみから分析を行ってきました。これらにどの店舗を利用しているかやATMの利用率、また顧客からの使用許可があれば、提携サービスの利用履歴やSNSデータといった行動データを組み合わせて分析します。アソシエーション分析によって、「顧客のうちの40代男性の40%が住宅購入を検討している」といった顧客を細分化し特徴や思考のデータを取得することが可能です。データとデータを掛け合わせて分析した結果を用いて、顧客に合わせたアプローチができるようになります。
また、顧客の偏りの調査にも有効でしょう。アソシエーション分析の結果から、「30代以降の男性で預金や送金のみの利用者が多い」といった結果が出たならば、「融資や資産運用の案内を強化し別の利用目的を増やす」や「若年層の顧客を掴むために、企業イメージを一新する」など、新たな施策の企画や、顧客獲得に向けた取り組みへのヒントともなります。顧客の特徴を理解することで、まだ取り込めていない層を見つけることもできるのです。
金融業界におけるAI活用
日本国内でもさまざまな分野でAI(人工知能)が活用されているが、金融業界も例外ではありません。IT技術の急速な進歩によって、インターネット取引など、サービスもデジタル化され、得られるデータが電子化し、大量に蓄積され続けています。これらの大量のデータを効率的に処理し、活かせる力が必要となります。そこで活用できるのがAIです。これまで人間が目で見て耳で聞き、判断を行っていた作業をAIの活用でコンピュータのみで完結できることも増えました。
AIの適用分野
1 データの収集と分析
保有する属性データの分析はもちろんですが、顧客からの問い合わせ内容の収集も可能です。コールセンターであれば、AIが顧客の音声を認識し、メールでのお問い合わせであれば、文字を認識し、データ化し蓄積と分析を行います。また、入力された質問を理解し、適切な返答を行うことができるチャットボットを活用することで、ヘルプデスクを自動化することができます。実際に、三菱UFJ銀行では、投資信託に関する相談に対し、自動で変更を行うチャットボットサービスが運用されています。
2 審査
融資の審査において、AIを活用する企業も増えています。企業向けの融資からカードローンに至るまで、審査を行う与信モデルを作成することで自動で審査が可能です。実際に、みずほ銀行では中小企業向けの融資審査において、AIを導入しています。決算書の提出が不要で、AI自身が口座の資金の動きを学習し、融資の貸し倒れの確立を算出して融資可能かどうか、金利をいくらにするかまで判断を行うことができます。人員の削減や業務負荷の軽減にも貢献できるでしょう。
3 マーケティング・将来予測
AIのデータ収集と分析の機能は、顧客管理や売上管理だけでなく、マーケティングや将来予測にも活用することができます。最小のコストで最大限のパフォーマンスを発揮させるために準備すべきことは何かもAIによる分析が有効です。また、ニュースやSNS、天候やイベント等の情報をデータに加えることで、需要や株価の予測も可能です。実際に、みずほフィナンシャルグループでは、株価予想にAIを導入しています。約5000ものカテゴリーに振り分けられた大量のデータを読み込ませ、そこから法則性や周期性をAIが学習し、企業の株価が30分後、1時間後にどのように推移するかを予測します。
AI活用分野まとめ表
| 活用分野 | 主な用途 | 導入事例 | 期待効果 |
|---|---|---|---|
| データ収集・分析 | 問い合わせ内容の音声/文字認識・チャットボット | 三菱UFJ銀行(投資信託チャットボット) | ヘルプデスク自動化・対応コスト削減 |
| 融資審査 | 与信モデル自動生成・貸し倒れ確率算出 | みずほ銀行(中小企業向け融資AI審査) | 審査スピード向上・人員削減・業務負荷軽減 |
| マーケティング | 顧客セグメント分析・施策効果予測 | 各金融機関でのCRM高度化 | 顧客獲得率向上・最小コストで最大効果 |
| 将来予測 | 株価・需要予測(ニュース/SNS/天候データ活用) | みずほフィナンシャルグループ(株価予測AI) | 30分〜1時間先の株価推移を予測・投資判断支援 |
よくある質問
まとめ
- FinTech(Finance×Technology)により決済・融資・資金管理の各分野でIT企業の金融参入が加速しており、既存金融機関はデータ活用で差別化が必要
- 金融業界はもともと大量の顧客データを保有しており、属性データ・取引データ・行動データを組み合わせたアソシエーション分析で、顧客ひとりひとりに最適なアプローチが可能
- AIは「データ収集・分析」「融資審査」「マーケティング」「将来予測」の4分野で活用が進んでおり、三菱UFJ銀行やみずほ銀行など大手がすでに導入済み
- AIを活用した融資審査は決算書不要で中小企業の資金調達を促進する一方、アルゴリズムの公平性担保が課題として認識されている
- IT企業の金融参入が進む中、既存の金融企業が生き残るためにはデータ分析・AI活用で顧客理解を深め、より詳細なサービス設計を行うことが鍵となる
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