テニスのデータ分析ツールとチャレンジシステムについて

最終更新日: 2026年8月7日

近年、プロスポーツの世界ではビッグデータや画像認識、AIなどのIT技術が積極的に活用されています。その目的として、アスリートやチーム全体の強化をするためのデータ分析、対戦相手への対策や戦術を立てる事、審判の補助、観戦スタイルの多様化などがあります。本記事ではテニスに用いられているデータ分析ツールとチャレンジシステムについて解説します。

テニスのデータ分析に用いられているツール

SmartCourt(PlaySight)

プレー分析システムです。テニスコートの両サイドに設置された計8台のカメラがプレーを撮影し、選手やボールの動きを追跡します。ボールの球速や回転数、ボールの落下地点、選手の動きを検出することでプレーを解析して、コート横に設置した情報端末を見ることにより、すぐに分析結果を確認することが出来るツールです。主にトレーニング用として利用されています。

SmartCourtはPlaySight Interactiveが開発し、2021年にSnapが同社を買収しました。現在はPlaySightブランドとして引き続き提供されています。

Patterns of Play

女子プロテニスで用いられるコーチングシステムです。ショットのデータなどをアプリケーションにリアルタイムに提供することで、試合中のラリーに現れるパターンを明らかにすることができ、コーチはそのデータを参考にして選手へ的確なアドバイスをすることができます。

SlamTracker

データ提供システムです。テニスの試合展開に合わせてライブでデータ更新をしていくことで、プレーのデータを取得・分析してサイトやアプリでデータ提供するシステムです。過去の対戦結果や勝利のパターン等の情報から試合に勝利するための見どころを予測し表示してくれます。グランドスラム大会(全豪・全仏・ウィンブルドン・全米)で公式採用されています。

IBM AIハイライト生成(旧IBM Watson Media)

試合映像からAIが重要な局面を自動検出してハイライトを生成するシステムです。機械学習をもとに画像・動画・言語・感情・表情を分析し、観客や選手のリアクションから試合での重要な局面を選別してハイライトを作成します。ウィンブルドンなど主要大会で採用されており、試合終了直後に自動生成されたハイライト映像を公式サイトで公開できるようになっています。

※IBM Watson Mediaのブランドは2022年以降、IBM AIスイートに統合されました。

審判の補助(チャレンジシステム)に使われているシステム

チャレンジシステムとは

線審や審判のIN・OUTの判定に対して判定が不服の場合に、CG映像での再判定を求めることのできるシステムです。判定の再確認にはホークアイやReal Bounceと呼ばれるコンピューター映像処理のシステムを利用してIN・OUTの確認を行います。

選手が申請できるチャレンジの回数は1セットあたり3回までで持ち越すことはできません。タイブレークになると1回ずつ追加される仕組みとなっていて、チャレンジが成功した場合は残り回数が減らず、失敗した場合のみ回数が減ります。

ホークアイ(Hawk-Eye Officiating System)

ソニー傘下のホーク・アイ・イノベーションズが開発した映像処理システムで、現在のチャレンジシステムで主流となっています。コートの周囲に複数台のハイスピードカメラを設置することで、テニスボールの軌道や位置を検出し分析します。その情報からコンピューターグラフィックスを生成します。誤差はなんと最大3.6ミリとのことです。

選手が審判に対してチャレンジを要求するとボールの着地点がコンピュータグラフィックスで再現されてディスプレイに表示されます。また判定のみではなくボールの位置や軌道の統計を作成し表示する事も可能なため、戦略シミュレーションを行なったり、スポーツ・コーチ向けに試合の正確なデータを提供するアプリケーションなども提供しています。

Real Bounce

FOXTENN社が開発した独自のシステムです。40台ものハイスピードカメラと高速レーザースキャナーを使用することで、テニスボールがコートにバウンドした瞬間を捉えることができます。選手がチャレンジを要求するとホークアイで用いられるようなコンピュータグラフィックスではなく、撮影した映像そのものが表示されます。実際の画像を表示するため誤差が無いことが特徴となっています。

テニスIT技術ツール比較表

ツール名 主な用途 特徴
SmartCourt(PlaySight) 選手トレーニング 8台のカメラで球速・回転数・落下地点をリアルタイム分析
Patterns of Play コーチング支援 ラリーパターンをリアルタイムでコーチに提供
SlamTracker 観戦・データ提供 グランドスラム公式採用・試合勝利の見どころを予測
IBM AIハイライト ハイライト自動生成 観客・選手の感情・表情分析で重要場面を自動選別
ホークアイ チャレンジ判定 CG再現・誤差最大3.6mm・チャレンジシステムの主流
Real Bounce チャレンジ判定 実映像表示で誤差ゼロ・40台カメラ+高速レーザー

よくある質問

Q. テニスのチャレンジ回数はなぜ限られているのですか?
A. チャレンジ回数を無制限にすると、選手が戦略的にゲームを遅延させるための手段として使用される可能性があるためです。1セットあたり3回の制限を設けることで、本当に不服な判定のみに使うよう促しています。失敗した時のみ回数が減る仕組みも、正当なチャレンジを後押ししています。
Q. ホークアイとReal Bounceの違いは何ですか?
A. ホークアイは複数カメラのデータを統合してCGでボールの軌道・着地点を再現します(誤差最大3.6mm)。Real BounceはFOXTENN社の独自システムで、40台のハイスピードカメラと高速レーザースキャナーを使い、実際の撮影映像をそのまま表示するため誤差がないことが特徴です。現在はホークアイがほとんどの大会で主流となっています。
Q. テニスのデータ分析技術は他のスポーツにも応用されていますか?
A. はい。ホークアイはサッカー(VAR)・クリケット・バスケットボールなどにも導入されています。スポーツデータ分析自体は野球(セイバーメトリクス)・バスケットボール(ShotTracker)・サッカー(Opta Stats)など多くのスポーツに普及しており、戦術分析・選手評価・怪我予防など幅広く活用されています。
Q. AIでテニスの試合判定は完全自動化されますか?
A. 2025年以降、一部のATPツアー大会でライン審判を廃止しホークアイによる電子ライン判定(ELC)に完全移行した大会も出てきています。ただし、最終的な主審判断(ネットタッチなどの接触判定)はまだ人間が担っており、完全なAI自動化には至っていません。今後IT技術のさらなる発展によって変わっていく可能性があります。

まとめ

  • テニスのデータ分析ツール(SmartCourt・Patterns of Play・SlamTracker・IBM AIハイライト)は、トレーニング・コーチング・観戦体験の向上に幅広く活用されている
  • チャレンジシステムではホークアイ(誤差最大3.6mm・CG再現)とReal Bounce(実映像表示・誤差ゼロ)の2種類が主に使われており、ホークアイが主流
  • 2025年以降、一部の大会でライン審判を廃止してホークアイ電子ライン判定(ELC)に移行する大会が増えてきた
  • テニスのIT活用はスポーツ全体のDXの先進事例として他スポーツにも応用が広がっている
  • 今後ITの発展により、完全AI判定・選手の怪我予防・観戦体験のさらなる向上が期待される

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