Oracle社が認定するJavaの資格試験[Bronze、Silver、Gold]について解説!

はじめに

IT関連の資格はたくさん有り、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の実施する情報処理系の「国家資格」と、サービスや製品を提供するベンダーが独自に認定する「ベンダー資格」の2つに大きく分けることができます。教員免許や医師免許のように、IT業界の特定の職業に就くために資格が必須ということはほとんどないですが、取得しておくと転職・就職時に有利になったり、昇給・キャリアアップができたりする可能性があります。他にも、自身のスキルを確かめる目的や、不足している知識を補完する役目もあると言えるでしょう。

この記事では、1990年代中盤にリリースされてから長い間需要のあるプログラミング言語「Java」のベンダー試験について紹介します。すでにJavaのプログラマーとして働いており、自分の実力を試してみたいという方、会社で必須となったため取得を目指しているという方、資格勉強と共にJavaを学習しようと思っている方はぜひご覧ください。

Javaという言語について

Javaは1996年に当時サン・マイクロシステムズによって正式にリリースされて以来、2023年現在も第一線で多くのITシステムの開発に利用されています。需要が高く人気のプログラミング言語としては、他にJavaScriptやPHP、Python、C系言語等が挙げられますが、それらと同じくJavaも常に上位にランクインしている状況です。

人気の理由としては、OSに依存せずに動作できるという点が大きいと考えられます。JavaはJVM(Java Virtual Machine)というソフトウェアをインストールすることで動作するため、これをインストールさえできればWindows、MacOS、LinuxといずれのOSでも動作が可能となります。なお、2023年時点においてJVM上で動作可能なプログラミング言語はJavaだけに限らず、 Groovy、Scala、 Kotlin、 Nashorn等が挙げられます。

ライブラリが豊富であることもJavaが人気の理由の一つとなります。ライブラリとは、ある機能や役割を果たすプログラムの一塊のことで、これを利用することでプログラマーはコーディングの時間を短縮することが可能となります。また、Javaやプログラミングに関する習熟度が浅いプログラマーであっても複雑な開発を行えるようになる可能性がある他、プログラマーによるコードのブレを最小限に止めることも可能となります。似たような機能に「フレームワーク」というものがありますが、こちらはライブラリよりも大きなフレーム(枠)となるため、一部のパラメータ等を少し変更するだけで一つのシステムを開発することが可能となります。ライブラリがロボットの手足といったパーツの一つ一つを指しているとすると、フレームワークはロボットの全身と表すことができるでしょう。ただし、この2つに明確な定義はなく、参考書によって解説が異なることもあるため、違いを詳しく覚える必要はありません。まずは、利用することでどちらも開発をスピードアップさせることが可能で便利なものということだけを覚えておいてください。

また、Javaはよく「オブジェクト指向型」の言語であるとの紹介をされることがあります。オブジェクト指向型の言語は他にもC#やPHP、Ruby、Python、R言語等が該当します。クラスやプロパティ、メソッドという独自の概念を持っており、それらを駆使してプログラムの一つ一つをオブジェクト(物)として扱うという特徴があり、これによってメンテナンスや機能の追加、改修をしやすくしている他、プログラムの汎用的な利用を可能としています。

セキュリティ性に優れているという点もJavaを利用するメリットとなります。Java自体がセキュリティを考慮した設計となっているうえ、プログラミングによってさらに堅牢なシステムの開発が可能となっています。さらに、事前にコンパイル(機械語への翻訳)を行うコンパイラ言語であるため、実行時にコンパイルも同時に行う「インタプリタ言語」に比べて実行速度が早いという点もメリットとして語られることが多いです。

Javaが活用されているシステムは?

すでにエンジニア・プログラマーとして活躍している方はすでにご存知かもしれませんが、Javaは前述したような特徴によって幅広い分野のシステム開発で採用されている言語です。WebサイトやWebアプリケーションの開発、スマートフォンのOSであるAndroidの開発、Minecraftのようなサンドボックスビデオゲームの開発、家電製品等の組み込み系、IoTシステムの開発、大規模な金融系システム等、次から次へと出てきます。なお、Javaの公式ベンダーであるOracle社によると、Javaは業務系システムの開発に適した言語であるということが公表されていました。

Javaに限らずですが、今後も新たなライブラリやフレームワークが開発されることでさらに多くの分野で利用される言語に進化する可能性があると言えます。また、今回のメインとなる資格にも関係してきますが、Javaは歴史が長いうえに需要も多いため、関連する情報はインターネット上にたくさんあります。学習ツールや参考書に関してもJavaを取り扱っているものが多いので、学習する際に教材に困ることはない言語です。言語によっては日本での普及が遅れていて英語の情報がほとんどで日本語の情報が限られるというものもあるので、日本語の情報が多いことはメリットの一つです。

Javaの資格の種類と選ぶポイント

プログラマーは資格が必須となる士業ではないため、フリーランスが自分でプログラマーと名乗った場合はその時点でプログラマーであり、会社でプログラミングをメインで行っていればその人はプログラマーという職種となります。それでもプログラミング言語ごとに資格は存在し、転職・就職等の場面で役立つことはあります。例えば、PHPであれば「PHP技術者認定試験」、Rubyであれば「Ruby技術者認定試験」、Pythonであれば「Pythonエンジニア認定基礎試験」といった資格があり、Javaにもそれぞれ認定団体が異なる2種類の試験があります。

Javaプログラミング能力認定試験

C言語プログラミング能力認定試験も実施している株式会社サーティファイのJava資格試験で、日本国内向けの内容となっています。3級を初級として、1級まで3段階にレベル分けされた試験体系となっています。なお2級までは筆記試験で、1級は実技試験を受けることとなり、上位の試験になるほど現場で役立つ知識が問われる傾向にあります。1級ではプログラミングの他、仕様書の作成も求められるので、システム開発に携わった経験があった方が受かりやすいと言えます。Oracle社の実施する試験は高額ですが、こちらは1級でも7,800円(税込)と、情報処理系の試験に近い金額での受験が可能です。また、試験日は運営側によって定められており、2、3級はWeb上でリモートで受験可能ですが、1級のみは会場へ出向いて受験することとなります。申し込みはオンライン上の公式ページから可能です。

Oracle認定Javaプログラマ

Oracle社が実施するJava関連の資格試験です。かつてはサン・マイクロシステムズが独自に実施している試験でしたが、Oracle社による企業の吸収合併後は試験体系を変更したうえで継続されています。詳細は後ほど紹介しますが、Bronzeを初級として、Silver、Goldの3段階にレベル分けされています。Javaプログラミング能力認定試験と異なって世界中で実施されているため、国内だけではなく海外の企業に就職する際にも有利となる可能性もあります。

Android技術者認定試験

名称からわかるようにJava専門の資格というわけではないですが、AndroidOSのアプリケーションを開発する際に欠かせないJavaの知識・スキルが問われる資格試験となっています。なお、試験はアプリケーション技術者用、プラットフォーム技術者用の2分野がある他、それぞれベーシック、プロフェッショナルと2種類にレベル分けがされており、いずれもコンピュータ上でのCBT方式で実施されます。Androidの開発に特化した知識を深めたいプログラマーにおすすめの資格です。

Oracle認定Java資格について

Javaの2023年時点の正式ベンダーであるOracle社は、自社データベース製品やその資格試験で知られていますが、同じくJavaの資格試験も実施しています。この記事の執筆時点である2023年1月時点の公式ページ内での試験名称は「Java SE」で、最新バージョンは「11」となっていました(Java自体の最新バージョンは、2022年9月にリリースされたJava19)。Javaの最新バージョンリリースに伴って仕様変更や新機能の追加が発生することもあるため、特別な理由がない限りは基本的に最新バージョンの試験を受験することをおすすめします。初級をBronze(1Z0-818-JPN)として、Silver(1Z0-815-JPN)、Gold(1Z0-816-JPN)と3つにレベル分けされていて、最上位であるGoldを受験するためには一つ前のSilverに合格している必要があります。

受験料金はBronzeのみ13,600円、その他は32,340円です。受験の申し込みは、様々なIT関連資格を運用している「ピアソンVUE社」にて行い、全国にあるピアソンVUE社テストセンターやオンラインで可能です。なおJava SEに関しては、Bronzeのみ監督なしのオンラインで受験可能、その他は監督付きでの受験となります。申し込み時はOracle公式ページ(oracle.com)においてアカウントの作成後、「Oracle University」でログインしてアカウントの紐付けを行い、「ピアソンVUE」で受験日・会場の予約、受験費用の支払いを済ませます(ピアソンVUEのアカウントがない場合は作成が必要)。もし、Oracle Universityで受験チケットを購入している場合は、支払い時に利用できます。

Bronzeの試験時間は65分、出題数が60問、合格目安は正答率60%以上となっています。SilverとGoldはいずれも試験時間180分、出題数が80問、合格目安は正答率63%以上です。試験時間からもわかるように、Bronzeはプログラミング初心者を対象とするような基礎知識が問われるもので、オブジェクト指向やJavaの基本文法等を抑えたい方におすすめです。ただし、特に上位資格の受験条件には含まれ当ていないため、知識・スキルに自信がある場合はSilverから始めても問題ないと言えるでしょう。

Silverの出題内容は、Bronzeに比べると現場で実際に必要となる知識・スキルに近くなり、管理者等の指示のもとでJavaでテスト・実装コードのプログラミングが可能な習熟レベルが求められます。すでにJavaプログラマーとして業務していて、自分の実力確認や不足している知識を補いたい、確認したいという場合におすすめです。

Goldは実際の業務で必要となる内容が問われることはもちろん、自分1人でシステム開発の工程を全てこなせるような実務経験3年以上に匹敵する程度の習熟レベルが求められます。Java SEにおける最上位の資格試験となるため取得すると評価されることが多く、フリーランスの方が案件を獲得する際にJavaスキルをアピールしたい場合や、転職・就職活動を行う際にJavaプログラマーとしての即戦力となることをアピールしたい場合等におすすめです。もちろん自分の業務知識・スキルを振り返るため、補完するために利用しても良いでしょう。

Silver、Goldは特に受験費用が高額ですが、企業によっては合格することで受験費用を補ってくれたり、報酬がもらえたり、昇給に繋がったりということもあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

Java Goldを受験するために

繰り返しとはなりますが、Goldを受験するためにはSilverへの合格が必須となるため、合格していない方はSilverの学習から始めましょう。なお、両方の受験が必要となるため、費用は全部で最低限64,680円はかかるということを覚えておいてください。また、開発経験があると有利に働くため、普段の業務内での知識習得は必要ですが、参考書や問題集を利用した学習も十分にしておきましょう。

試験時間180分に対して出題数80問であるため、1問当たり2分、かかっても3分程度のペースで回答することとなります。素早い回答が求められるので、参考書でインプットするだけではなく、問題集で実際に問題を解いて慣れておく必要があります。見直しもしたいと考えている場合は、さらに速いペースでの回答が必要になることでしょう。試験は選択式であるため、もしわからない問題に遭遇した場合も、消去法で回答しておくことをおすすめします。

参考書・問題集について

Javaの資格勉強をする際の定番の2冊を紹介します。1冊目は翔泳社から出版されている参考書「オラクル認定資格教科書 Javaプログラマ Gold」で、通称「紫本」とも呼ばれています。練習問題や模擬試験も収録されていますが、基本的にはGoldで問われる知識を体系的にインプットする際に利用しましょう。

2冊目はインプレスから出版されている問題集「徹底攻略Java SE 11 Gold問題集」で、通称「黒本」と呼ばれています。紫本で知識をインプットしたらこちらの黒本で徹底的に問題をこなし、この本の問題は100%に近い程度まで正解できるようにしておきましょう。なお、参考書と同じ翔泳社からも問題集「オラクル認定資格教科書 Javaプログラマ Gold SE11 スピードマスター問題集」が出版されていて、多くの練習問題や模擬試験を解くことができますが、良くおすすめとして紹介されているのはこちらの黒本です。向き不向きは人によって異なるため、実際に書店でどちらが勉強しやすいか見比べてみるのも良いでしょう。また、今回紹介した参考書・問題集はAmazonでの取り扱いがあった他、大きい書店であれば取り扱っていることが多いです。

まとめ

以上紹介したように、Javaには2023年時点で2つの資格があり、Oracle認定の「Javaプログラマ」にはBronze、Silver、Goldの3つにレベル分けした試験が用意されています。特にGoldを持っていると評価されやすいため、すでにBronzeやSilverを持っている方も、これからJavaの学習を始める方も、最終的にはぜひGoldの取得を目指すことをおすすめします。

なお、Bronze程度であれば問題ないですが、SilverやGoldの試験勉強を行う際は、自分が自由に利用できるパソコンにおいてJavaの開発環境も用意しておくこともあわせておすすめします。Javaの統合開発環境(IDE)としては「Eclipse」が有名ですが、Eclipseと開発環境に必須となるJDK)Java Development Kit)を一度にインストールできて、細かい設定も不要となる「Pleiades All in One」という無料のソフトウェアもあるので、速やかに開発環境を用意したい場合は利用を検討してみてください。