自社開発のメリット11選をご紹介|自社開発と受託開発の違いとは?

自社開発とは?

自社開発とは、自社の商品やサービスとしてのシステムを、企画や設計から開発まですべて自社内で行って販売または公開することです。そのシステムが他の企業などからの依頼ではないこと、また、すべての工程を自社内で行うのが大きな特徴です。

自社開発には、社内のIT部門のように「自社内で利用するシステムを開発する」のと、「企業外の不特定多数のユーザーが利用するシステムを開発する」の2つのタイプがあります。

受託開発との違い

自社開発が受託開発と異なる点は、受託開発は他の企業などからの依頼でシステムを開発することです。

業務のシステム化をしたい、または既存のシステムの再構築をしたいときに、社内で開発ができないことがあります。受託開発はシステム化などをしたい企業から依頼されて新規開発や再構築をします。システムの機能などを提案することはありますが、決定権は顧客側にあります。

自社開発のメリット11選

自社開発には受託開発にはない、いくつかのメリットがあります。

自社開発のメリットを大きく分けると、開発メンバー間のコミュニケーションを取りやすい、スケジュールを立てやすい、自分たちのアイデアをシステムに生かせる、最新の技術を導入しやすい、といったものに分類できます。

使ってみたい最新の技術も、試験的に導入してみて採用するかどうかを判断できます。採用しなくても将来のシステム開発時の参考にできるという点もメリットと言えるでしょう。

自社開発のメリット1:コミュニケーションが取りやすい

自社開発ではほとんどの開発メンバーは自社内の社員のため、お互いのコミュニケーションは取りやすくなります。また、自社内の社員であれば、作ろうとしているシステムの細かいニュアンスなども伝わりやすくなります。

受託開発の場合はシステムの使用者である顧客は他社の社員です。そのため、必ずしもIT関係に詳しくなく、説明なども必要となることがあるため、コミュニケーションが取りづらくなることがあります。

自社開発のメリット2:緩めのスケジュール

自社開発でスケジュールの調整をしやすいのは、社外の不特定多数のユーザーに向けたシステムなら納期をさほど気にすることはないこと、また、自社で使用するシステムなら多少納期が遅れても売り上げに直接影響するものではないためです。

受託開発では、顧客の業務などの都合に合わせてスケジュールを組むことになります。そのため、短納期での開発を余儀なくされることもあります。

自社開発のメリット3:スケジュールの調整がしやすい

システム開発では、開発の途中でいろいろな問題が発生し得ます。

自社開発で開発中に問題が発生したらスケジュールを変更して公開時期を延期でき、自社内で使うシステムであれば機能を限定したシステムにしてリリースするといったことができます。もちろん、むやみにリリース時期を延期したり機能を限定してよいという意味ではありません。

しかし、受託開発では、よほどのことがない限り納期を伸ばすことはできません。

自社開発のメリット4:ダイレクトな評価が得られる

システム開発に携わっていると、手掛けたシステムがどのように評価されているかが気になります。

自社開発で構築したシステムは、一般向けのサービスならインターネットのレビュー投稿や体験談を通じて、また、社内システムであれば使っている社員から直接システムの善し悪しを聞けます。これらは改善案として活かせます。

受託開発では保守作業を除いて作業は完了となるため、システムの使用感などを聞く機会がありません。

自社開発のメリット5:自分のアイデアが形になる

自社でシステム開発をするときは、各工程でメンバーがアイデアを出し合ってどのような製品にするかを決めていくのかが重要になり、自分の出したアイデアが良いものであれば採用されていきます。

しかし、受託開発では顧客が仕様を決め、使用する言語や開発手法も決まっています。開発者個人が良いアイデアを持っていたとしても、それが採用されることへのハードルは高いと言えるでしょう。

自社開発のメリット6:ヒットすれば恩恵を得られる

世の中には一般向けのシステムは多数出ていますが、「ヒット作」と呼ばれるものはごく少数です。ヒット作を作るのは容易ではないからです。

自社開発で一般向けのサービスを作りそれがヒットすれば開発会社の利益につながり、また、社内システムを使用して業務の効率が向上すれば、開発メンバーの社内での評価が上がり、昇給や昇進もあり得ます。

受託開発は顧客が使うシステム開発のため「ヒット作」という考えはありません。

自社開発のメリット7:モチベーションアップ

自社開発は企画段階からリリースまでのすべての工程に参加でき、それぞれの工程で個々のメンバーのアイデアを出せるという特徴があります。

自分の出したアイデアがシステムに活かされてヒット作になったり、社内システムを使うことで業務の効率化が上がれば張り合いが出ます。

受託開発では顧客が使うシステムのため、自分が担当した箇所でどれだけの成果が出ているかを知るのが困難です。

自社開発のメリット8:専門家になれる

自社開発では製品やシステムの企画から考えるため、業務やシステムのことを深く知ることになります。これは、開発するシステムのことを詳しく知らないと企画や設計をすることが難しいからです。

外部から業務に詳しい人を入れることもありますが、基本的には社内のメンバーだけで行います。そのため、その業務やシステムのことに詳しくなければ、それらを知るところから始めることになります。

自社開発のメリット9:スキルアップしやすい

自社開発では開発手法などを自分たちで決められるため、新しい技術を積極的に検討し、導入することでプログラミングやユーザーインターフェースの設計スキルの向上を望めます。

世の中で広く使ってもらえるシステムを作るには、業務の知識や技術的なこと以外に、企画力、スケジュール管理、宣伝(告知)などの多くの要素を知っておく必要があり、これらについても自然に身についていきます。

自社開発のメリット10:人間関係の構築がしやすい

自社開発は文字通り「社内での開発」で開発メンバーは基本的に自社の社員であり、また入れ替わりも少ないため、人間関係の構築をしやすいといえます。

受託開発の場合は、開発案件ごとにメンバーを集めて、システムをリリースすれば解散となります。保守管理は別のスタッフが行います。そのため人間関係が薄くなりがちです。

自社開発のメリット11:自由な社風の企業が多い

システム開発者は生産性の向上にならないルールを嫌う傾向があるため、自社開発をする企業やその部門は、開発手法などにとどまらずルールも自分たちで決めていくという特徴があります。

自社開発をする企業やその部門のルールは、最小限のものにして各人に任せるか、各開発メンバーが仕事をしやすいように決めます。

受託開発の場合は顧客や他の開発会社との協働となるため、多くの場合で細かいルールを決めておかなければなりません。

自社開発で求められるスキル5つ

自社開発をする企業や部署は企画から開発、そして場合によってはユーザーサポートもすべて自前で行うため、企業や開発する部署で働く社員には多様なスキルを求められます。

求められるスキルは、調査分析力、設計開発能力、変化対応力などです。

自社開発で求められるスキル1:ITに関する技術力

自社開発では、どんなIT技術を利用するかを自分たちで判断するため、どんなIT技術が世に出ているかを幅広く知り、システムに導入できるか、有用か、などを考えなければなりません。

システム開発ですからプログラミング能力は必須ですが、ITに関する情報収集力、知識や技術力、判断力が大きくかかわってきます。

受託開発ではどのような技術を使うかは決められていることが多いため、情報収集力の重要性は自社開発よりも劣ります。

自社開発で求められるスキル2:ニーズの正確な抽出

一般向けのサービスを自社開発するときは、顧客との直接の接点がないため、企画や設計の段階でシステムをどのような人が使うか、なぜ使うか、などを正確に知ることが必要です。

一般向けのサービスは不特定多数の人が使うため、IT技術に詳しくない人もいることを考えなければなりません。開発するシステムのニーズからどのような人が使うかを想定し、ユーザーインターフェースなども考えなければなりません。

自社開発で求められるスキル3:発想力

自社開発で重要なのは製品のアイデアで、企画や設計の段階でどのようにすれば製品を使ってもらえるか、を考える発想力や想像力が必要になります。

いくら製品を作っても誰にも使ってもらえないのなら意味がありません。そのためにはシステムのニーズからどのように使われるかを想像してアイデアを盛り込むことが大切です。

受託開発は使う人がある程度決まっているため、発想力などはさほど重要ではありません。

自社開発で求められるスキル4:柔軟性

自社開発をするときはユーザーの反応を直接知りえるため、ユーザーが求めているものの変化に応じてシステムを改善していく柔軟性が必要になります。

新しいIT技術が世に出ることで、ユーザーの求めているものが変化していくこともあります。ユーザーが求めているものでなくても、新しい技術を取り入れられるかを常に考えていく必要があります。

自社開発で求められるスキル5:情報収集能力

自社開発をするときは、システムの改善に生かすため、IT業界の新しい技術や考え方、人々の考え方や行動の変化を察知する情報収集力が要ります。

ここでの情報とは、IT業界のことに限らず、世の中全般の変化も含まれます。生活習慣の変化などによりシステムに求められることが変わり、それに応じてユーザーインターフェースなどを変えていくことも必要になります。

自社開発のデメリット5つ

自社開発では企画からリリースまでのすべての工程を自社内で行うために起こる、いろいろな制約やデメリットがあります。

企業としては「思ってたほど売れなかった」という、失敗するリスクがあります。

また、社内で閉じた開発のため、人脈を広げにくく、開発が長期になると同じような作業が続きます。メンバーはある程度のスキルと製品やサービスの深い知識が必要になります。

自社開発のデメリット1:失敗するリスクがある

自社開発をしている企業から見れば、ヒットすれば大きな利益を得られますが、全く売れなければ開発費全体が無駄になってしまいます。

また、失敗とは言い切れませんが、同時期に競合他社が似たようなシステムをリリースしたために、売り上げが伸びないということもあり得ます。

自社開発のデメリット2:同じような作業が続く

自社開発では失敗を回避するために実績のある技術でシステムを作る傾向にあるため、特定の言語や技術などに特化した開発者になり、開発やテストの工程では同じような作業が続くことになります。

そのため、自社開発の環境では多様な言語や技術を習得することは難しいといえます。

自社開発のデメリット3:人脈が広がりにくい

自社開発での開発メンバーは自社内のみで社外の人が入ってこないため、ごく限られた人脈での仕事になります。

フリーランスのエンジニアがサポートに入ってくることもありますが、「昔からの知り合い」などのことが多く、新鮮味が出てきません。

受託開発の場合は複数の開発会社の社員が参加しての協業になることがあるため、人脈を広げやすいといえます。

自社開発のデメリット4:ある程度のスキルが必要

自社開発をしている企業へ就職するのなら、その企業で使用している開発言語、開発手法自体、似た開発言語や手法の実務経験が必要になります。これは、未経験者では企業として利益を上げられないからです。

また、特定の開発言語や開発手法のみを使用するため、習得できるスキルが限定されるというデメリットもあります。

自社開発のデメリット5:製品やサービスの深い知識が必要

自社開発では、システムの企画から始めるため、どんな人がそのシステムを使うかなどを知っておく必要があります。

特に、画面や都度表示するメッセージの文面は、システムを使う人に合わせて設計したり考える必要があります。

自社開発のメリットを把握しよう

自社開発は企画や設計の段階からアイデアを出して参加でき、スケジュールも自分たちで組めるため、開発メンバーの自由度が高い方式といえます。

自社開発は自由である分責任も大きく、ヒットするシステムを作らなければなりません。また、開発言語などは特定のものに限定されてしまうこともあります。

自社開発をしている企業を就業先として考えているのなら、自社開発ならではのメリットを活かせるかどうかを考えていきましょう。