運用テストエンジニアになるために必要なスキル3つ!運用テストの目的とは

運用テストとはどんなテスト?

運用テストとは、システム納品前の最終チェックを行う重要な工程です。

この工程では、システムを発注した顧客の要望を満たした機能であるかチェックします。この運用テストは、ユーザー側の顧客視点で使ったときにどのような問題点が出てくるか確認、改修を行っていくものです。

今回は、運用テストを行う目的や工程について詳しく解説していきましょう。

運用テストの目的3つ

運用テストには大きく分けて3つの目的があります。

顧客の要望を満たしたシステムになっているかどうか、システムの操作感に慣れること、本格稼働する前にトラブルを見つけること、それらをクリアして初めて本格稼働に移ります。

ここからは運用テストの目的について説明します。

運用テストの目的1:顧客要件を満たした機能であるかをチェック

まず発注者である顧客の要件を満たした機能であるかをテストします。

開発者は作成したシステムが設計通りの動きをするかのみ、チェックすることがほとんどです。当たり前ではありますが、顧客側はシステムがどのように組み込まれているかは関係なく、求めている機能が正常に稼働するかがチェックする内容になります。

運用テストの目的2:システムの操作や運用に慣れるための工程

次に、顧客がシステムの操作や運用に慣れるためです。ユーザーは、開発者が想定していない操作をしてしまうこともあります。

この場合、実際に使う環境を考えながら、「この場所は誤操作してしまわないか?」「ここを押してしまったらどうなる?」などと細かくチェックします。そして、「この操作がもっと簡単にならないか」などの指摘も出てくるでしょう。

このような視点でテストをすることで、本番稼働したときに満足度の高いシステムが出来上がります。

運用テストの目的3:本格稼働前のトラブルの発見

そして本番稼働前のトラブルの発見です。前述したとおり、運用テストは本番稼働前の最終チェックとなります。

ここで隠れたミスや障害を見つけられずに本番稼働になってしまった場合、いつどのような不具合が生じてしまうか分からない状態になります。そのため、色々な視点でテストを行い、万全を期す必要があるでしょう。

運用テストエンジニアになるために必要なスキル3つ

運用テストエンジニアは、システムエンジニアのスキルやテスト技法の他に、デジタル機器の専門知識が必要です。また、基本的なOAスキル、集中力や忍耐力も必要となってきます。

なぜ必要になるのか、その理由について詳しく見ていきましょう。

必要なスキル1:コンピュータやデジタル機器の専門知識

運用テストをする際にまず必要なのは、システムを作るコンピュータやデジタル機器自体の知識、ネットワークやサーバーに関する基本的な知識です。スムーズに運用テストを行うために、その特徴や仕組みを理解しておくといいでしょう。

基本的な知識があることによって、問題の発見やその解決策を見つけることができます。そして、テストの評価をするときにレポートを書くことがあるので、最低限の知識は頭に入れておきましょう。

必要なスキル2:OAスキル

テスト・評価を実施して結果をレポートで作成する際に、OAスキルは必要になります。

レポート作成には改修案などのプレゼンテーションも含まれることも多々あるため、Excel、Word、PowerPointを使用して見やすいものを作成することが重要です。

どのように必要か、説明していきます。

Excel

数字の計算はもちろん、たくさんのチェック項目を確実に入力・調整し、管理・把握するために、Excelの豊富な知識や経験が必要です。特に不具合の発生した場所、検出率の推移、また不具合が出なくなったことの証明資料をまとめることに使用します。特に不具合の検出率は重要です。

見やすいレポートを作成するためにも、Excelを使いこなせるようにしておきましょう。

Word

見やすいレポート、資料作成にはWordも必要です。

文章の入力にはWordが最適です。スムーズに入力できるようにしておき、正確な資料やレポートの作成に役立てましょう。

PowerPoint

説得力のある資料・レポート作成に、データやグラフは効果的です。

特にPowerPointは使い慣れていると、データやグラフを見やすく作成できるでしょう。迅速に対応するためにも、身につけておいて損はしないスキルです。

システム開発の規模によっては、プレゼンでテスト結果を発表することもあるので、スムーズに資料を作れるようにしておくと安心でしょう。

必要なスキル3:集中力や忍耐力

膨大なテスト項目を細かくチェックしていく作業は、モチベーションが下がってしまうと質が下がってしまいます。そこで、地道な作業を繰り返しできる集中力や忍耐力が必要です。

システムは不具合を修正する度に、他の課題が出てくることが多くなります。小さなミスも見逃さない集中力、長い作業に耐えることができる忍耐力は大切なスキルです。

運用テストの作業工程4つ

運用テストを行う作業工程は、大きく4つに分けられます。

計画書の作成、計画書に基づいた仕様書の作成、テストのための環境構築、そして仕様書に沿った運用テストを実施することです。

これらの工程について、詳しく説明していきます。

運用テストの作業工程1:顧客と合意するためのテスト計画書を作成

運用テストを行うスケジュール、テストの体制や環境、対象の範囲、実施方法、そしてテスト全体を通しての目的を示した計画書を作成し、発注者の顧客と合意します。

運用テストは本番環境とほとんど同じ環境で稼働させるので、何かあれば対応できるように、プロジェクトメンバーはテスト計画書の内容を共有しておきましょう。

運用テストの作業工程2:テスト計画書に基づいたテスト仕様書の作成

次に合意した運用テスト計画書を基に、仕様書を作成します。この運用テストの仕様書は、原則顧客がユーザーの視点で、条件や確認するべき項目、必要なシナリオを具体的に定義しておきます。

この仕様書作成時に、テスト実施に必要なデータの内容などについても定義します。

運用テストの作業工程3:本番環境と同じ構成の環境構築

本番環境とは、顧客であるユーザーが実際に使う環境のことで、システム開発で使っている環境を開発環境といいます。

本番稼働前の最終チェックとなる運用テストの環境は、本番環境と同じ環境を構築して用意する必要があります。構築済みの本番環境を使う場合と、災対環境を利用する場合があります。これはケースによって使い分けているエンジニアがほとんどです。

運用テスト専用の環境を用意する場合

本番環境とほぼ同じ条件で、最終チェックの環境を作ります。この条件でシステムの動作を確認し、本番環境に移行した時にエラーが出ないよう、充分にテストしていきます。

Webサーバーやデータベースは、本番環境と同じものを使うことが望ましいです。OSレベルでの仮想化環境を利用するのが一般的になっており、より本番環境に近い状態で運用テストが行えるようになっています。

構築済みの本番環境を利用する場合

本番環境と全く同じ環境を準備して、本番稼働が可能かどうかをチェックします。データでズレが出たり、処理速度が遅いなどの不具合が出たりすると、本番稼働までに更に時間を要します。

ただ、本番環境と同じデータを使うのが理想的ですが、プライバシーなどの問題もあり、顧客と相談しながら進めていくことが多いでしょう。

また外部連携している場合は、本番稼働と同じ設定は避けた方が良いでしょう。サーバーなどの設定を同じにすると、テストデータがサーバーに流れてしまい、そのデータを処理する手間が増えてしまいます。

災対環境を利用する場合

災対環境とは、災害対策として用意する環境のことで、主に代替環境を準備しておくことが多いです。

災対環境で仮想化システムを利用する場合、OSやハードに依存せずに代替環境を準備できるため、コストの削減ができるというメリットがあります。仮想化システムを利用すると、システム復旧の自動化・簡略化が可能になります。また、本番環境に影響を与えないで、運用テストが可能になります。

こちらは準備した環境をバックアップとして活用できるサービスも展開されています。

運用テストの作業工程4:仕様書の基づいた運用テストの実施

次に運用テスト仕様書を基に、運用テストを実施します。この運用テストは、顧客側の担当者が行います。

不具合やインターフェースの相性が悪いなどがあれば、障害管理表を作成し、その部分の改修を開発者に依頼します。この時点でマニュアルなどが作成済みであれば、マニュアルの改修も行います。

注意点は、仕様書にない作業は行わないことです。設定を不用意に変えてしまうと、システムが正常に稼働しなくなってしまいます。仕様書に書かれていないことを行いたい場合、上司や責任者に相談した上で、行いましょう。

運用テストエンジニアを目指す人の心構え

運用テストエンジニアは同じような作業を何回も繰り返し行う、地道な作業の仕事です。そのような作業でもグッとこらえ、集中力を切らさずに小さな不具合も見落とさない精神力が求められます。

また、最終チェックに関わるにあたり、特に気を付けることがあります。具体的にどのような場面に気を付けるべきか、確認していきましょう。

発見した課題はすぐ伝える

まずは、発見した課題はすぐ伝えることです。

小さな不具合が見つかったのが開発終盤だった時、そして納期が差し迫った状況になっていることも多々あるでしょう。その時に発見した不具合を、報告する勇気も必要になります。

また、不具合だけでなく、仕様変更があったときにどのようなテストを追加したらよいかなどの提案もできると、開発チームでの存在感が大きくなるでしょう。

テストは遅らせないようにする

運用テストはシステム開発の最後に実施される工程で、このテストが遅れてしまうと納期の遅れにつながります。開発の現場では、予想外のトラブルの発見が前提になっているので、そのトラブルの対応なども考えて、納期は厳守ということが多いでしょう。

もし納期が遅れてしまうと、取引先との信頼関係にも影響を与えてしまいます。テストは遅らせないよう、改修する期間を考え余裕のあるスケジュールで、開発者側と情報を共有しましょう。

運用テストエンジニアのキャリアプラン

ここまでは運用テストエンジニアの必要なスキル、具体的な仕事内容について解説してきました。今後もテスト設計、分析を行う運用テストエンジニアの需要は高くなるでしょう。

運用テストに関わる仕事は、設計から納品まで、開発全体の流れを見ることができるので、システム全般のノウハウが身につきます。実務経験がそのままスキルアップにもつながり、キャリアアップできるのです。

では、運用テストエンジニアにはどのようなキャリアプランがあるのか、見ていきましょう。

運用テストエンジニアへとキャリアアップする場合

運用テストエンジニアになるためには、システムエンジニアの知識の他に、テスト技法などの専門的な知識も必要となります。

運用テストエンジニアは仕様書を読み、システムエンジニアなどの開発者と連携しながらテストを行います。そのため、システムの機能や目的を理解している必要があるのです。

また、テスト技法に精通していれば、テストを効率よく正確に行うことができます。主に開発者が行うテストの「ホワイトボックステスト」、仕様書に書かれている機能が動作するか確認する「ブラックボックステスト」があります。

運用テストエンジニアからキャリアアップする場合

運用テストエンジニアから、テスト担当チームのマネージャーを任されることもあるでしょう。テストの進捗管理、他の部署との連携を行うので、上級エンジニアとしての足掛かりになる可能性があります。

他にも、運用テストエンジニアの経験は他のエンジニアを目指すときにも役に立ちます。テストを見越したシステム設計ができることは、大きな強みになるでしょう。

運用テストエンジニアを目指そう

ここまで、運用テストエンジニアの必要なスキルや仕事内容について、具体的に解説してきました。テストの設計や分析、品質管理を行う運用テストエンジニアは今後も需要が高くなっていくでしょう。

運用テストエンジニアは、システムを快適に安全に使えるようにするために、なくてはならない存在です。テスト技法やテスト自動化ツールを扱う専門的なスキル、そして日々増えていく新しいシステム知識を身に着けて、運用テストエンジニアを目指してみましょう。