SIerから転職したいと思う主な理由8つ|転職前に押さえておくことは?

SIerの仕事がきついとされる企業2つ

システムエンジニアからSIerに転職しながら、再度、転職を希望する人も珍しくありません。その転職理由の多くは「仕事がきつい」ことです。

ただし、全てのSIerが感じているのではなく、一定の企業形態に偏っています。SIerからの転職を成功させるには、現在属している企業の特徴を掴むことが大切です。そこで、どういった企業に属するSIerが転職を検討しがちなのかを解説します。

中小規模の独立系SIer

中小企業の独立系SIerの多くは、客先常駐といったワークスタイルを取っています。客先常駐とは、クライアントの職場に常駐することですが、この特徴的なワークスタイルが、転職を決意させる一因だといえるでしょう。

常にクライアントとともにすることで、精神的な負担も大きくなります。技術的に学ぶ環境も大手と比較すると十分とは言えません。そのため、心身ともに疲れ果てて転職を決意する方が多くなっているのが現状です。

小規模のソフトハウスのSE

小規模のソフトハウスのSEも客先常駐といったワークスタイルが、転職を決意させる要因です。ただし、中小規模の独立系SIerよりも事態は深刻だといえるでしょう。

小規模のソフトハウスのSEは自社経営のため、必然的に小さな案件を請け負うことが少なくありません。また、立場が弱くタイトなスケジュールにも応えざるを得ないことも多くあります。さらに、SEの育成体制が整っていないことも転職理由の一つです。

SIerから転職したいと思う主な理由8つ

SIerに転職したい方の理由は、共通した8点に絞ることができます。もともとSIerを志望した方は意識が高く、スキルも充実しているのが通例です。

それだけに転職は人生の大きな決断であり、その理由も根深いものがあります。ここでは、SIerから転職したいと思う理由を確認することで、自身の考える転職理由が適正か否か考えてみましょう。

転職したいと思う主な理由1:求められるスキルが変わりやすい

規模が小さな会社に属するSIerには、求めるスキルセットが変わりやすくなります。有利とは言えない案件でも請け負うことから、プロジェクト自体も小規模になりがちで、必要なスキルも様々です。

SIerが担当する仕事の範囲も必然的に大きくなり、プロジェクトが変わるたびに求められるスキルも変わります。その変化に耐えられなくなることを、転職理由に掲げるSIerは少なくありません。

転職したいと思う主な理由2:下流工程の業務の多さ

下流工程の業務が多くなると、SIerの負担は大きくなります。SIerの携わる下流工程とは、システム開発にかかるテストや保守といった業務です。とても面倒で単調な作業も多く、決して面白い業務ではありません。

もちろん、システム開発において下流工程は大切な業務です。しかし、下流工程の業務が増えると心身ともに疲れてしまうのも無理はないといえるでしょう。

転職したいと思う主な理由3:給料が比較的安い

SIerに限らず会社の規模が小さくなれば、給料は安くなる傾向があります。SIerは拘束時間が長く残業が多い業種です。さらに給料が安いとなれば、業務に対するモチベーションが維持できないのも無理はありません。

もともと、SIerを志望した方の多くは、給与面で優遇されることを理由としています。そのため、中小規模から規模の大きな会社への転職を希望するSIerも少なくありません。

転職したいと思う主な理由4:タイトな作業スケジュール

中小規模の会社では、プロジェクトの三次請負や四次請負も珍しくありません。プロジェクトの規模が大きくなるほど、スケジュールの遅れによるしわ寄せは下位の請負先にかかってきます。

そのため、三次、四次請負のSIerは常にタイトなスケジュールに追われている難しい状況です。また、立場も弱いことから必然的に勤務時間が長くなる傾向にあります。

転職したいと思う主な理由5:新しい技術に触れられない

中小規模の会社では、十分な開発環境が整えることが困難なことも少なくありません。一般の企業においても大手になるほど、設備投資にかけることができるコストは大きくなります。そのため、新しい技術を導入することも容易です。

日々進化するIT業界において、新しい技術に触れられないことは大きなハンデとなります。そのため、意識が高いSIerはスキルアップが望めない開発環境に大きなストレスを感じているのが実態です。

転職したいと思う主な理由6:希望のキャリアパス通りにならない

会社規模が小さくなると、大きなプロジェクトに携わることが少なくなる傾向にあり、希望通りのキャリアパスが実現しづらくなってきます。SIerの多くは、将来の明確なキャリアパスを持っています。

しかし、大手でなければキャリアパスを実現できる案件に携わることができないのが現実です。その結果、システム開発の経験を積むこともなく、テスターや問い合わせ対応しかできないSIerになってしまうことも珍しくありません。

転職したいと思う主な理由7:自分でコードが書ける環境に身を置きたい

SIerは優秀なSEでもあり、仕事の醍醐味は自分でコードを書くことにあります。しかし、中小規模の会社に属するSIerは下流工程に追われ、コードを書く機会に恵まれないことが大半です。

仕事がきつくても、自分のやりたい仕事に従事できればモチベーションを維持できます。そのため、自分でコードを書くことができる職場に転職先を求めるSIerも少なくありません。

転職したいと思う主な理由8:事業戦略に携わりたい

事業戦略に携わりたいといった理由で、転職を決意する人も少なくありません。SIerの醍醐味はクライアントの事業戦略に携わることだといえます。

しかし、会社の規模が小さいと三次請負や四次請負となることが多く、下流工程の業務が大半です。そのため、事業戦略をはじめとする、上流工程に携わることができる会社への転職を希望するSIerが増えています。

SIerからの転職前に押さえておくこと7つ

現在の職場に対する不満だけで、転職を決めるのはとてもリスキーです。転職は「仕事を辞める」ことが目的ではありません。あくまでも、新しい職場で「成功すること」が目的です。

したがって、転職に失敗しないためには、職場環境や将来のキャリアパスについて、確認しておくことが不可欠だといえるでしょう。ここでは、SIerからの転職前に押さえておきたいポイントを解説します。

転職前に押さえておくこと1:SIerを続けて今後成長していけるか考える

SIerから転職する前に押さえておきたいのは、自身の今後の成長が見込まれるか否かです。まず、転職をすることで達成したい事項に優先順位を付します。その上で、SIerを続けていては達成できないのかを考えましょう。

言い換えれば、SIerを続けて今後自身が成長できないのかを見極めることが大切です。成長していけるのであれば職場の転職、成長できないのであれば職種の転職を検討しましょう。

転職前に押さえておくこと2:転職の目的を明確にする

今の職場の不満は、転職の目的とはなりません。言い換えれば、転職先でも何らかの不満を抱えることとなり、転職を繰り返す可能性が高いと言えます。

大切なのは、転職の前向きな目的を明確にすることです。少なくとも「転職先で何を実現したいのか」「将来どういったキャリアを描くのか」は明らかにしていきましょう。その上で、転職が必須なのかを再確認することが大切です。

「辞めたいから転職する」の考え方は危険?

今の会社を「辞めたいから転職する」といった考え方は改めましょう。大切なのは「辞めたい理由」ではなく「やりたい仕事」を見つけることです。

「辞めたいから転職する」といった考え方だと、自分に合った職場が曖昧なまま、転職先を決めることになります。とりわけ、未経験の異業種に転職すると、職場に対する新たな不満を抱え、転職を繰り返す結果となりかねません。

転職前に押さえておくこと3:転職先の業務内容を把握しておく

転職先の業務内容をしっかりと確認しておかないと、転職後にミスマッチを思い知らされることがあります。転職を成功させるポイントは、就職前に考えていた職場の姿と現実のミスマッチをなくすことです。

また、的確な志望動機を書くためにも、企業分析は丁寧に行うことが必須だといえるでしょう。とりわけ、SIerは即戦力として迎えられることが多いので、取り扱うプロジェクト規模や内容を確認することは必要不可欠です。

開発言語が変わらないか注意する

SIerから転職する場合、転職先の開発言語は確実に確認しておきましょう。とりわけ、中小規模の会社から大手企業に転職する場合、様々な開発言語が必要となり、大きな壁となることは珍しくありません。

例えば、同じJavaやSQLでも大きくバージョンが異なることもあります。転職先の開発言語を確認することは当然として、日頃から自己啓発を通じて資格を取得するなど、最新の開発言語に慣れ親しんでおくことが重要です。

転職前に押さえておくこと4:自分の現在地を俯瞰的に見る

SIerからの転職を成功させる上で、自らの現在地を俯瞰的に振り返ることは不可欠な要素です。 日々の業務に追われていると、プロジェクトにおける自分の役割や貢献度合いを見失いがちになります。しかし、これでは自分をアピールすることはできません。

まずは自分の立場を俯瞰的に見ることで、どういった役割でどう貢献できるのかを明確にしましょう。その上で、転職先を絞り込むことが転職を成功させるポイントです。

転職前に押さえておくこと5:自分のスキルチェックをする

転職活動の前に、自分のやりたいこととスキルの差を埋めておきましょう。将来への希望を持って転職活動を行うことはとても大切です。しかし、求められるスキルが著しく不足していると、転職先で大きな負担となります。

同じSIerでも開発言語の違いに加え、開発スピードやマネジメント力など、様々なスキルが求められることも珍しくありません。スキルが不足しているなら一旦諦めて、スキルを磨いて再挑戦する勇気も必要です。

転職前に押さえておくこと6:給与や年収は下がってもいいか判断する

転職先の給与や年収といった処遇は確実に確認しておきましょう。とりわけ、SIerから他業種に転職する場合は、給与や年収が低くなりがちです。生活レベルを下げざるを得ない場合も少なくありません。

また、給与や年収は下がらなくとも「有給休暇が少ない」「残業が多い」など労働条件が下がることも十分に考えられます。現在よりも低下する処遇を受け入れられるか否かは、転職先を決める上で大きなポイントです。

現状と同等以上の給与や年収の条件だと難しい?

SIerからの転職では、一概に同等以上の給与や年収が望めないわけではありません。例えば、中小規模の会社から大手企業への転職が叶えば、処遇はアップします。ただし、狭き門であることは間違いありません。

大切なのは、十分なスキルがあるか否かになります。とりわけ、エンジニアなどの技術職は大手企業であっても人材不足は深刻です。自分のスキルを正確に把握し、上手くアピールできれば処遇アップも夢ではありません。

転職前に押さえておくこと7:外国人エンジニアとの関わりを考慮する

IT業界では外国人エンジニアを採用する企業が増加しています。外国人エンジニアを多く受け入れる企業は、優秀な人材を幅広く募集しているのが実態です。そのため、SIerからの転職者も受け入れやすい企業風土だといえるでしょう。

つまり、SIerから転職する上で外国人エンジニアとの関わりは非常に大切になります。英語が話せることはもちろん、外国人とのコミュニケーション力も十分に考慮すべきです。

SIerからの転職先でよく選ばれる業種5つ

SIerからの転職先には選ばれやすい業種があります。転職したいと考えていても、漠然と考えていたのでは、自分に合った転職先を見つけることができません。いくつかの選択肢から自分に合った職種を選ぶのも一つの方法です。

言い換えれば、自分のキャリアを見つめ直し、どういった転職先が考えられるのかを把握することは、とても意味深いといえるでしょう。そこで、SIerからの転職では選ばれやすい業種を紹介します。

転職先でよく選ばれる業種1:Web系企業

新しい技術に触れたいといった理由で、SIerからWeb系の企業に転職する人が増えています。Web系の企業では思う存分プログラミングの仕事に取り組むことが可能です。

下流工程の仕事が中心であることに悩みを抱えていたSIerにとっては、願ってもない職場だといえます。ただし技術だけでなく、webサービスの事業を成功させるといったミッションも完遂させなければならないことを理解しておきましょう。

転職先でよく選ばれる業種2:自社開発のプロダクト系企業

アプリやサービスといった自社製品を社内で開発する、プロダクト系企業はSIerからの転職を希望する方に人気の職種です。人気の秘密は受託開発から解放される点だと言えます。

受託開発だとスケジュールがタイトで無理な注文も少なくありません。自社開発であれば開発環境も整っており、思い存分に開発に没頭できます。ただし、採用数が少ないのでスキルや経験が優先されやすいことを理解しておきましょう。

転職先でよく選ばれる業種3:中小から大手のSIer

働き方を大きく変えたいなら、大手のSIerがおすすめです。大手企業のSIerの大半は、クライアントから直接仕事を請け負うため、上流工程を担うことになります。

また、福利厚生面や勤務時間管理もしっかりしているため、労働環境も充実しているといえるでしょう。ただし、高いスキルが求められること、募集人員が少ないことから競争率が高くなることは心得ておくべきです。

転職先でよく選ばれる業種4:ITコンサルティングファーム

IT戦略の策定や業務改善支援などを行うITコンサルティングファームは、上流工程に拘るSIerに人気です。大企業だけでなく中小、ベンチャー企業にも進出し、コンサルティング業務を担っています。

下流工程の業務に限界を感じている方には、非常に魅力的な職種です。ただし、SIerとしての経験やスキルに加えてコンサルティング力が問われることを心得ておきましょう。

転職先でよく選ばれる業種5:社内SE

近年、SIerから人気を集めているのが社内SEです。社内SEのメリットは、何と言ってもSEを大切に扱ってくれるところになります。あくまでも自社社員ですから無理なスケジュールを押し付けられることはありませんし、開発環境も申し分ありません。

さらに、福利厚生をはじめとする職場環境も充実しています。ただし、極端に募集人員が少なく、求められるスキルが高くなることを理解しておきましょう。

SIerからの転職はよく考えよう

SIerからの転職を成功させるには、転職理由を明確にすることから始めましょう。現在の職場に対する不満を理由に転職をしても、良い結果を得ることはできません。

前向きな理由を探し出し、自身の実力や置かれている立場を明確にすることが必須です。また、SIerからの転職先では、Web系の企業や社内SEなどが選ばれています。大切なのは、転職先の職種や求められるスキルが自分に合っているかを冷静に判断することです。