プロジェクトマネジメントを行うのに必要なスキル4つ|成功させるコツは?

プロジェクトマネジメントとは?

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの管理のことです。

プロジェクトを指定された期間内で目標達成し、その成功基準を満たすために、プロジェクトチームをリードするためのプロセスのことをいいます。

プロジェクトには、2つの特徴があります。期間が決まっていて起点と終点を明確に定義できる活動という「有効性」と、プロジェクトチームにとっては今までのルーティンワークにはない未経験の要素が含まれているという「独自性」の2つの要素です。

プロジェクトを成功に導くためには、しっかりした計画設計が欠かせません。

プロジェクトマネジメントの基準

長期間にわたり様々なシチュエーションでの作業を伴うプロジェクトでは、円滑に進めるためには、明確に定めた管理基準が必要です。

1987年アメリカのPMI(米国プロジェクトマネジメント協会)は、プロジェクトマネジメントに関する手法や管理基準について体系立ててまとめたガイドブックである”A Guide to the Project Management Body of Knowledge”(略称:PMBOK)を発表しました。

それまでのプロジェクト管理は、人によって範囲や内容がバラバラであり、また「プロジェクト管理とは何か」という問いに明確な解答をしていないものでした。

PMBOKでは、その問いの答えを明示するとともに、プロジェクト管理に「プロセスをマネジメントする」という考え方を提唱しました。

その後6回の改訂があり、2021年1月現在、第7版が発行される予定とされていますが、リリースの時期は未定となっています。

プロジェクトマネジメントで必要な作業4つ

PMBOKでは、プロジェクトマネジメントに必要な10のマネジメントを挙げています。

そのなかで、特に強調される4つの実施作業である、リスクマネジメント、コミュニケーションマネジメント、ステークホルダーマネジメント、スコープマネジメントについて紹介します。

必要な作業1:リスクマネジメント

PMBOKガイドでは、リスク管理は「プロジェクトに将来起こりうるリスクに対するマネジメントの計画、リスクの分析、対策の計画と実施及びリスクの監視を遂行するプロセスのこと」としています。

その具体的な手順(工程)を、1.リスクマネジメントの計画、2.リスクの特定、3.リスクの定性的分析、4.リスクの定量的分析、5.リスク対応策の計画、6.リスク対応策の実行、7.リスクの監視 の7つのステップとしています。

必要な作業2:コミュニケーションマネジメント

PMBOKでは、「プロジェクトとステークホルダーのそれぞれが必要とする情報ニーズを把握し、効果的な情報交換のために意図された活動を通して、正確な情報伝達を担うプロセス」とされています。

簡単にいえば、情報は伝えればそれで済むというわけではなく、相手が必要とする情報を、相手が理解できるように正確に伝えるというコミュニケーションが重要であるということです。

「正確な情報」が「適切な時期」に「適切な手段」で「正しい相手」に伝わるよう管理しなければなりません。

PMBOKでは、コミュニケーションマネジメントの3つのプロセスとして、1.コミュニケーション管理の計画、2.コミュニケーションの管理、3.コミュニケーションのモニタリングを挙げています。

必要な作業3:ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーとは企業の株主を指す用語でしたが、現在ではもっと幅広く、その企業やプロジェクトに関係する人々、場合によっては地域住民も含んだものと解されています。

プロジェクト管理では「プロジェクトをとりまく関係者」がステークホルダーであるといえます。

幅広いステークホルダーと良好な関係を構築し、プロジェクトの円滑な推進を実現することが肝要です。プロジェクトマネージャーには、この良好な関係の構築と持続を計画的に管理することが求められています。

そのためには4つのプロセス、すなわち、1.ステークホルダーを特定する、2.ステークホルダーの(プロジェクトへの)関与を計画する、3.ステークホルダーを管理する、4.ステークホルダーをモニタリングする、が必要であるとしています。

必要な作業4:スコープマネジメント

「スコープ」とは、ステークホルダーが望む事項であるプロジェクトの目的を達成するために必要な作業(作業内容)やその成果物の範囲(スコープ,scope)を指しています。

PMBOKガイドでは「スコープ」を、製品やサービス・成果の特性や特有な機能の範囲である「プロダクトスコープ」と、そのような特性や機能を持つ製品やサービス・成果を創り出すために実施する作業の範囲である「プロジェクトスコープ」の2つに定義されています。

また、6つの必要なプロセスとして、1.スコープ管理の計画:プロセスを計画し、スコープ管理計画を作成する、2.要件の収集:利害関係者のニーズを定義して文書化する、3.スコープの定義:詳細なプロジェクトスコープステートメントを作成する、4. WBS(作業分解構成図)の作成:プロジェクトをより小さな作業単位へ分割する、5.スコープの検証:成果物の受納の形式化する、6.管理範囲:プロジェクト範囲への変更を監視および管理する継続的な作業を挙げてます。

プロジェクトマネジメントを行うのに必要なスキル4つ

プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを管理していくうえで求められるスキルには様々なものがあります。

本稿では、特に重要と思われる4つのスキルについて紹介します。

必要なスキル1:リーダーシップ能力

プロジェクトの推進に当たっては、プロジェクトマネージャーの資質が問われます。つまりリーダーシップ能力が問われます。

プロジェクトメンバーを管理・統率して、スタンスがぶれないようにすることは重要です。しかしメンバーからの信頼や協力がなければ、プロジェクトの達成も危ういものとなります。

リーダーシップ能力はスキル(技能)ではなくて資質ですが、それを形成している決断力や問題解決能力、分析力は、不可欠なスキルであるといえます。

必要なスキル2:ビジネススキル

ビジネススキルというと、多くの方が「相手との交渉力」を思い浮かべることでしょう。

プロジェクト管理における交渉力とは、相手を説得するという交渉ではなく、様々なステークホルダーを連携させて、良好な関係を構築することにあります。この関係をうまく構築していくことが大切です。

プロジェクトを遂行する上で発生するリスクへの対応力、新しい企画の提案能力や関連法規などのビジネスマネジメントに関するスキルも必要です。

必要なスキル3:営業や開発事情の知識

営業や開発事情の知識は、テクニカルスキルともいわれます。顧客と会話をする機会も多いプロジェクトマネージャーには、業務や技術に関する知識なども欠かせないスキルです。

プロジェクトマネージャーはある程度の業界知識や経験を身につけておく必要があります。しかし、経験がなくても、マネージャーとしては十分に仕事を行うことができます。

専門的なスキルや知識は当事者のメンバーに任せ、プロジェクトをマネジメントすることに注力していくことが必要です。

マネージャーが現場で作業も自分で行おうとすると、往々にしてプロジェクトは失敗するものです。マネージャーとして果たすべきタスクを遂行して、他はメンバーに任せるという役割分担を行うことが重要です。

必要なスキル4:コミュニケーションスキル

プロジェクトメンバーやステークホルダークライアントなどの多くの人と円滑なコミュニケーションを図るスキルは不可欠です。

ただPMBOKで定義されているコミュニケーションマネジメントは、円滑なコミュニケーションを図るためにプロジェクト運営上で必要な組織としての仕組みとルールづくりなどをどのように定義するかという観点で述べられています。

そしてコミュニケーションスキルは、プロジェクトマネジメントに特有のものというのではなく、一般的なビジネススキル、ヒューマンスキルであると考えられています。

プロジェクトマネジメントの管理手法7つ

プロジェクトマネジメントの管理手法を知るには、「プロジェクトマネジメントの基準」の項目で紹介したPMBOKガイドが効果的です。

PMBOKガイドには10の知識エリアが含まれていて、基礎知識として管理手法を学ぶにも最適な参考書でしょう。ただ、PMBOKガイド第6版対応日本語版は、245ページからなるもので、完読するのは苦労を要します。

この項目では、代表的な管理手法(ツール)を具体的に紹介します。

プロジェクトマネジメントの管理手法1:ガントチャートで管理する

ガントチャート(Gantt chart)とは、プロジェクト管理で工程管理に使われる、棒グラフのような表のことです。

すべての作業を洗い出して、作業スケジュールを時系列に沿って棒グラフで示すことで、プロジェクトの作業計画を可視化することができます。イベントや大規模会議の工程管理によく使われる手法です。

ガントチャートを作成する目的は、可視化することで作業の全体図や進捗状況をメンバー全員で共用することにあります。ガントチャートを作成するだけで終わってしまっては意味がありません。常に最新の状態を維持し、作業の依存関係を明確にしておく必要があります。

ガントチャートはエクセルで作成することができます。ただ、手間が掛かりますので、作成ツールを利用するのもよいでしょう。

プロジェクトマネジメントの管理手法2:カレンダーで管理する

プロジェクトカレンダーとは、作業のすべてのパーツをプロジェクトメンバー全員がアクセスできる場所に見やすくまとめておくツールです。

Outlookで予定表を他のユーザーと共有するシステムを想像していただけると、理解しやすいことでしょう。

プロジェクトのスケジュール全体を把握することができ、また作業期限を一度に確認することもできます。それによりメンバーは事前に計画を立て、最優先の作業に合わせて調整します。

プロジェクトマネジメントの管理手法3:タイムラインで管理する

タイムラインとは、プロジェクトチームがプロジェクトを完遂するまでの時間を視覚的に表示したものです。このタイムラインは、プロジェクトの全体像の進捗状況や情報を共有する場合に、威力を発揮するツールです。

タイムラインは、エクセルのスプレッドシートやPowerPointスライド、Wordドキュメントを使って比較的簡単に作成することができます。従って簡単に送信したり、共有することが可能となります。

プロジェクトマネジメントの管理手法4:アローダイヤグラムで管理する

複数の独立した作業や工程が連続して行われる場合、作業日程計画を図形と数字を使って表したチャートを「アローダイヤグラム」といいます。

業務の流れや所要時間を、図形と矢印で結ぶことで全体のフローを図示するものですが、「業務フロー図」と相通じるものがあります。また、「PERT図」(PERTは英語の Program Evaluation and Review Techniqueの頭文字)という呼び方が一般的です。

プロジェクトマネジメントの管理手法5:マインドマップで管理する

「マインドマップ」とは、人の思考プロセスを図式化したもので、頭の中に浮かんでくる連想を整理し系統立てたマップです。頭の中を図式化することで「見える化」することになります。

「マインドマップ」は、他のプロジェクトマネジメント手法(ツール)よりもフレキシブル性をもって管理することができます。また「マインドマップ」でプロジェクトメンバーの創造性が高まり、相互理解が深まるというメリットがあります。

プロジェクトマネジメントの管理手法6:WBSで管理する

WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)とは、プロジェクトの作業を細分化し構造化する手法です。

WBSでは細かな作業を明確にし、各作業の所要時間や担当者を決定して行きます。誰が、何を、いつまでに達成しなければならないのかという日程がわかるだけではなく、作業の漏れを確認して作業エリアの共通認識を持つことができます。

WBSの作成には、エクセルなどのツールが使えます。

プロジェクトマネジメントの管理手法7:進捗管理ツールを使って管理する

「進捗管理」は、プロジェクトの進捗状況を管理する手法です。具体的には作業計画と実際の進捗状況に乖離があるかを管理します。

「進捗管理」を行うには、作業工程を明確にしてその作業に必要とされる人材を洗い出します。同時にどの作業を優先的に取り組むのかを決定します。それにより仕事全体の効率化や生産性向上が図れるのです。

メンバーで定期的に進捗会議を行えば、進捗状況の確認の他に潜在的課題の把握にもつながります。

プロジェクトマネジメントを行うメリット3つ

プロジェクトを成功させるために注意を払わなければならない事項は、多岐にわたります。例えばプロジェクトの目的とゴールの明確化、納期管理、コスト管理などが挙げられます。

プロジェクトの最終目標であるQCD(品質・コスト・納期)に対する管理は、誰もが最初に注意するエリアですが、それ以外に関しては見落としてしまうこともあります。

ではプロジェクトマネジメントを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

プロジェクトマネジメントを行うメリット1:目的や目標を可視化できる

プロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの目的や目標を可視化します。この可視化により、プロジェクトの目標とゴールを明確につかむことができます。

特にスコープ(行うべき内容)の可視化は、極めて重要なポイントになります。プロジェクトの進行過程において、その方向性にブレがないかを検証する際の基準となります。また課題管理、すなわち問題点の早期発見と対策の立案、及び実行にもつながってきます。

プロジェクトマネジメントを行うメリット2:メンバーでの共有が可能

メリット1で解説したとおり、目的を明確にすることでプロジェクトのスコープ(行うべき内容)も明確になります。プロジェクトマネジメントでは、これらの可視化されたスコープをメンバー全員で共有することができます。

プロジェクトを効率よく達成するためには、設定された指標をどうやって達成するのかについて、メンバーに明確に分かるようにして共有することが必要となります。

プロジェクトマネジメントを行うメリット3:タスク処理や遂行の効率化

タスク管理を行うことで、作業の優先順位(優先度)を可視化して、プロジェクトの進捗をマネジメントすることができます。

優先順位が事前に決まっている状態で仕事に投入することにより、効率化が図れます。

また可視化によりタスクの量を把握すれば、メンバーが遂行可能なタスクがどれくらいであるのかも判断できるため、タスクが複数存在する場合であっても柔軟に対応して処理することが可能となります。

プロジェクトマネジメントを成功させるコツ5つ

プロジェクトを成功させるためには、マネジメントの管理項目のすべてを明確にすることが鍵です。しかし、今までに説明したとおり、管理すべき項目は多岐にわたります。

プロジェクトマネジメントを成功させるには、5つのコツがあります。

成功させるコツ1:プロジェクトを明確にする

プロジェクトを明確にすることは、プロジェクトマネジメントを成功させるポイントです。

この明確化は、プロジェクトの目的や目標(ゴール)を明確にするだけでは十分ではありません。スコープの明確化やタスクの明確化、ステークホルダーとの関係の明確化を含みます。

また、何のためにプロジェクトマネジメントを行うのかを問い直してみることで、プロジェクトに対する理解が深まるといえます。

成功させるコツ2:スケジュールを考える

プロジェクトのスケジュールを考えることもポイントです。このスケジューリングでは、プロジェクト全体の日程というだけではなく、詳細のスケジュールについても考える必要があるということが要になります。

例えば各タスクのスケジューリングを行い、タイムラインによる管理手法を使って段階ごとの期限を設定し、それに基づいて進捗状況をチェックすれば、円滑なプロジェクトの進行につながります。

成功させるコツ3:変化に対応できるようにする

経営学では、企業が存続するためには「変化に対応すること」が絶対条件であるとしています。プロジェクトでは様々な変化が起こります。この変化に対応できる態勢を整えておくことが、プロジェクトの成功につながります。

例えば、計画していた作業とは異なる作業が必要となった場合、対応をせずに放置すると、プロジェクトの完遂が危うくなることがあります。「アジャイル」は、変化や変更の発生に対応しやすい管理手法です。

成功させるコツ4:成果物から逆算する

プロジェクトマネジメントにおいては、常に最終的な成果物を想定して考えながら管理を行います。

例えば、「課題管理」のマネジメントです。「課題管理」では既に発生してしまったプロジェクトの目的を阻害する事柄で、その原因が分かっているものを管理するものですが、その場合に最終目標から逆算して考えて問題解決に当ることが重要です。

「スケジュール管理」や「タスク管理」にあっても、逆算思考はマネジメントのコツです。

成功させるコツ5:ドキュメントによる可視化と共有

プロジェクトマネジメントを行うメリットとして「可視化」と「共有化」を挙げました。プロジェクトマネジメントで使われるドキュメントとしては、計画書、スケジュール、仕様書、報告書があります。

しかし自然言語によるドキュメントに代表されるテキスト情報は、そのままの状態では有益な情報を抽出することは難しいものがあります。

ガントチャートやWBSなどのツールを使うと、ある程度の可視化や共有化は可能です。しかしプロジェクトの現状と本来あるべき姿との乖離や、メンバーの認識の不一致を把握することはできません。

この目的を達成するためにはAIを使ったドキュメント処理(ドキュメント検証)を行う必要がありますが、解析結果を正しく理解するには知識と経験が必要とされます。

簡便な方法としては、Googleドキュメントのようにクラウド上に文書を保存し、チーム内で共有したり、可視化したり、編集することができるツールを利用することです。

プロジェクトマネジメントについて理解しよう

プロジェクトは、日常繰り返されるルーティンワークとは異なる面があります。起点と終点があり、その過程では日常業務とは異質の作業を行ったり、特別な手法やツールを使う場面も多く出現します。

プロジェクトマネジメントを行うには、知識と経験が要求されます。しかし有能な人がマネージャーとなっても、メンバーとのコミュニケーションがうまくいかない人であったり、情報の共有化ができないと、プロジェクトは円滑には進行しません。

プロジェクトの「有効性」と「独自性」を理解して対応することが成功の鍵となります。