IT業界で年収を上げる方法5選|IT企業で就職する前に知っておく事3選も紹介

IT企業の平均年収について

IoTやAI、ビッグデータなどの進化により、IT業界だけでなく多くの業界でIT業務の存在意義が大きくなり、IT関連産業との関わりが増しています。

しかし、従来より日本ではIT人材の不足が大きな課題として指摘されており、この課題は今後も増大すると見込まれています。さらに、欧米諸国に比べて給与水準が低いと言われており、今後予想される少子高齢化に伴って、IT関連産業の深刻な人材不足が懸念されています。

この記事では、IT業界の年収について解説していきます。

年齢別

平成28年6月に経済産業省から発表された「IT人材に関する各国比較調査」における「日米のIT人材の年代別の年収分布」によると、IT業界の年代別の平均年収は、20代が413万円、30代が523万円、40代が646万円、50代が754万円となっています。

これを見ると、年齢を経るごとに順調に給与水準が上がっていることが分かります。

一方で、「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、実際にIT技術者に尋ねた「給与水準における年功の影響度」は、約57%が年功の影響を「小さい」と回答しています。

しかし、個々の回答では、約46%が「年功序列が基本だが、能力や成果による違いがある程度ある」と答えており、給与水準を上げるためには、年齢と能力の両者が大きな要素であると言えます。

業種別

同調査結果における「IT関連産業における給与水準の実態」によると、IT業界の職種別の給与水準は、比較的幅広く散らばっています。

プロジェクトマネージャーやプロデューサーなどの管理系職種は平均年収が高く、例えばコンサルタントは929万円、プロジェクトマネージャーは892万円です。

一方、低い職種としては、顧客サポートやヘルプデスクが390万円 コンテンツクリエーターやデザイナーが411万円となっています。

なお、ITエンジニアについてはSEやプログラマーとしてキャリアを始め、キャリアアップを重ねて、管理系やアーキテクト系にステップアップしていく傾向があります。実際、調査データを見ると、それにつれて収入が上がっていくことが示唆されています。

IT企業の平均年収と比較3選

前述したとおり、IT人材は多くの職種で不足しており、欧米諸国に比べて低い給与水準が今後の課題となっています。

ここからは、そんなIT企業の平均年収を他業種の平均年収と比較してみましょう。

なお、大手求人情報・転職企業である「doda」が2020年に発表した「平均年収ランキング」によると、「IT/通信」の平均年収は444万円です。職種ごとに若干の差異はありますが、全体的に平均年収の昨年比は、「ほぼ変化なし」から「低下」傾向にあります。

IT企業の平均年収と比較1:総合商社の場合

前述した「平均年収ランキング」によると、「総合商社」の平均年収は446万円でした。この数値は、昨年の448万円から2万円減っています。そして「IT/通信」と比べると、4万円高い結果となっています。

また、年代別の平均年収を比較すると年収分布はほとんど変わらないものの、50代以上の「総合商社」の平均年収が「IT/通信」よりも150万円以上も高いことが大きな違いです。つまり、「総合商社」のほうが年功序列の傾向が強いと言えるでしょう。

IT企業の平均年収と比較2:金融の場合

同じく「平均年収ランキング」によると、「金融」の平均年収は448万円で、昨年から12万円増えました。特に、「都市銀行」や「投信/投資顧問」、「信託銀行」、「証券会社」の平均年収がアップしました。

「IT/通信」と比較すると「金融」の平均年収は差異が少ないだけでなく、年代別の平均年収や年収分布、男女別の平均年収も「金融」と「IT/通信」は似かよっています。

IT企業の平均年収と比較3:メーカーの場合

同じく「平均年収ランキング」によると、「メーカー」の平均年収は453万円で、昨年から1万円減ったものの、もっとも高い平均年収の業種でした。

「IT/通信」と比較すると「メーカー」は「800万円以上」の平均年収の割合が少ないにもかかわらず平均年収でトップを獲得しているため、平均的な収入を手にしている人が多いと言えるでしょう。

IT業界で年収を上げる方法5選

IT業界では、入社したときのままのスキルで同じ業務内容をこなしていては、年収は上がりません。IT業界で年収を上げるためには、「スキルを上げる」、「会社を変える(雇用形態を変える)」、「キャリアアップする」などの手段が必要です。

ここからは、IT業界で年収を上げる方法を具体的に紹介します。

IT業界で年収を上げる方法1:エンジニアとしての経験が必要

ITエンジニアの年収はスキルや経験で決まります。そのため、未経験でエンジニアへと転職した場合、給与水準は最低ラインから始まります。

転職までにプログラミングやITインフラについて学んだとしても、実務の経験がなければ即戦力として働くことは難しく、年収も低いでしょう。

入社後スキルアップし、エンジニアとして多くの実績を積み上げることで、それに応じた昇給が見込めます。ただし、それが一朝一夕で達成できるものではないことは覚悟しておきましょう。

IT業界で年収を上げる方法2:勉強をする

IT業界で働く人が年収を上げるためには、勉強が欠かせません。スキルを向上させるため、ステップアップするため、新しいプロジェクトに関わり実績を積むためには、最新情報を収集し、その中で有用な技術を学びとろうとする貪欲さが必要です。

具体的には、書籍で学ぶだけでなく雑誌やメールマガジンなど、さまざまな媒体から業界のトレンドを察知したりセミナーや勉強会に参加して、有識者から知識を得るのも良いでしょう。

ITスキルを向上させる

日進月歩の技術革新が進んでいるIT業界において、エンジニアとして一線で活躍していくためにはスキルアップが不可欠です。そして年収アップのためにも、最新の技術や業界のトレンドについての情報を得るだけでなく、そのスキルの習得が常に求められます。

現時点では、AWSやAzureなどのクラウド経験やセキュリティに関する知識を持つエンジニアは、慢性的に不足しています。

ただし、会社の業務だけではIT技術のスキルアップは難しいのが現実です。自主的にスキルアップするために業務時間外にスクールに通ったり、新しい資格を取得する、積極的に新しい分野の案件に携わるなど、幅広いスキルを身につけると良いでしょう。

プログラミング言語によって年収が違う

プログラマーやシステムエンジニアなどが習得するプログラミング言語は、その種類によって年収が異なります。その時代に合ったニーズの高いプログラミング言語を学ぶことで、年収アップが期待できます。

例えば、数年前まではプログラミング言語といえばPHPの人気が高く、高い需要がありました。しかし、次第にRubyの需要が高まり、現在もっとも求められているのがGoやPythonを使いこなせるプログラマーです。

また、複数の言語を学ぶのもスキルアップとして良いでしょう。

IT業界で年収を上げる方法3:コミュニケーション能力を高める

コミュニケーションスキルを高めることは、エンジニアのスキルアップには重要です。

一般的にシステム開発やソフト開発はチームで行います。また、クライアントから要望を聞きとったりトラブル対応の際には、必ずコミュニケーションをとらざるを得ないシーンがあります。

チームメンバーやクライアントと円滑にコミュニケーションをとることは業務を進めるうえで重要であり、自分のポジションを高めるために必要不可欠です。それと同時に、 マネジメントスキルを身につけることも年収を上げるためには重要です。

IT業界で年収を上げる方法4:転職をする

もっとも大きく年収を上げられる可能性があるのが、働く環境を変えることでしょう。その一つが転職です。

前述したとおり、今の会社でスキルアップや実績を積むことでも給与は上がりますが、時間がかかるうえに大きな変動は期待できません。しかし、評価する会社を変えれば、100万円単位の大きな年収アップの可能性があります。

ITエンジニアとして40代、50代以降生き残るためには、会社全体でエンジニアを育てる方針がなければ難しいのが現実です。スキルアップが難しい、年収が見合っていない、などが現状ならば、早めに見切りをつけて環境を変えることも考えましょう。

元請け企業に転職をするメリット

これまで紹介してきたとおり、ITエンジニアの平均年収は低くはないものの、実は元請け企業社員と下請け企業社員では平均年収に大きな差があります。

大きなプロジェクト案件の場合、依頼された企業(元請け企業)は足りない人材を下請け企業に発注します。場合によっては、さらにその先に第二次、第三次下請け企業が発生します。

当然同じ業務でも、下請け企業社員の報酬は元請け企業社員のそれより低くなります。つまり、現在下請け企業に勤めている人は、専ら元請けの仕事を担当する企業に転職すると年収アップの可能性が高いでしょう。

大手企業に転職をするメリット

大手企業の平均年収は、一般的に中小企業やベンチャー企業に比べて高い傾向です。企業の規模だけで決めることはできませんが、中小企業よりベンチャー企業、ベンチャー企業よりも大企業のほうが給与水準が高いと言われています。

そのため、大手企業に転職すれば年収は上がる可能性が高いでしょう。また、大手企業は福利厚生が充実していることもメリットの一つです。

ただし、中小企業のほうが技術力を磨きやすい特徴があります。転職の際は年収の額面だけにとらわれずに、自分が描くキャリアイメージに合った会社を選びましょう。

外資系企業に転職をするメリット

外資企業の年収は高い傾向があります。その理由は、いくつかあります。

まず、成果主義が定着している海外の企業では、結果を出すと確実に報酬が上がります。また、海外である日本でビジネスを展開する外資企業はできる限り優秀な人材を確保する必要があるため、高めの年収を提示します。

さらに、外資企業は退職金制度や福利厚生などの付加価値が少ないため、その分年収を上げる傾向にあります。

以上のことから、年収を上げるためには外資系企業への転職はメリットがあります。成果を確実に出せる人には適した転職先と言えるでしょう。

IT業界で年収を上げる方法5:フリーランスになる

IT業界で年収を上げる目的で環境を変える手段の一つとして、フリーランスになるという選択肢があります。

たとえ、高収入のために大企業に就職しても、ある程度の年収は保証されるものの上限はありますが、フリーランスは実力次第で大きく収入アップが見込めます。また会社員である限り、自分が満足できる評価が得られるとは限りません。

年収を増やしたい、自分のスキルに自信がある、将来を自分の力で開拓したいという人は、フリーランスの道を選択するのが良いでしょう。

フリーランスになるメリット

フリーランスになってもっとも大きいメリットは、自分のスキルや実績がしっかりと収入アップにつながることでしょう。

人材不足のIT業界における案件は数多く、ITエンジニア専用の案件紹介サイトも活用できるため、仕事を厳しく選ばなければ収入が途絶えることはないでしょう。

その中から高収入のプロジェクトを自分自身で選択でき、年収が1000万円をこえる可能性も高くなります。また、社内の人間関係や政治力学などの煩わしさから解放されるなどのメリットもあります。

フリーランスになるデメリット

ITエンジニアがフリーランスになるデメリットは、他の業種と同様、確実な保障がないことでしょう。収入も仕事量も自分自身で選択し管理する必要があり、病気などで長期療養した際などのリスクにも備えておく必要があります。

さらに、厚生年金から国民年金に、会社の健康保険から国民健康保険に変わることで、老後への不安や保険料の高さを前もって理解しておく必要があります。フリーランスの道を選択する場合は、それらのデメリットに対するリスク管理を忘れてはいけません。

IT企業で就職する前に知っておく事3選

IT関連の職種は、まずクライアントからの昼夜を問わないクレーム対応のための長時間労働のイメージを持たれることが多いでしょう。

しかし、近年ワークライフバランスを重視する求職者が増加しており、魅力のある職場環境づくりに力を入れている企業や政府がそのような現状を徐々に改善させつつあります。

そんなIT企業に就職を希望する人たちが知っておくとよいことをまとめました。

IT業界で就職する前に知っておく事1:労働時間が長い

IT関連の職種は、確かに残業時間が長くなりがちです。突然の要件変更や突発的なトラブルの解消など、さまざまな問題に振り回され、心身ともに疲弊することもあります。

しかし、前述した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、企業規模ごとの1ヶ月の残業時間は、26.6時間(100名以下)から30.9時間(5001名以上)という結果になっています。

つまり、平均的には1日あたり1~2時間の残業していることになり、終電に乗れないほどの残業を連日こなしているとは言えません。

これを踏まえると、IT企業は労働時間が長くなりがちであるが、必ずしもすべての企業、すべての職種が当てはまるわけではない、と言えます。

ワークライフバランスを重視したい人は、転職する前に実際に働いている人からの口コミなどでしっかりと確認しましょう。

IT業界で就職する前に知っておく事2:企業によって年収に差がある

IT関連の職種は企業規模や職種によって年収に差がでることも、事前に理解しておくと良いでしょう。

例えば、前述した「平均年収ランキング」によると、IT業界の中でもITコンサルティングやシステムインテグレータは平均年収が非常に高い傾向にあります。

ただし、前述した企業規模が大きいほど残業時間が増えているデータとも相関しているため、年収だけで転職先を決めるのは避けましょう。

スマホゲーム関連企業の場合

スマホゲーム業界は近年急速に拡大した市場の一つで、特にスマホゲームプログラマーのニーズは高まっています。

ゲームプログラマーはスキルが重要視されるため年収分布も幅広いですが、概ね平均年収は440~500万円です。

一方で、大手企業のゲームプログラマーの平均年収は非常に高く、任天堂ゲームプログラマーは750万円~880万円、GREEゲームプログラマーは720万円~780万円、cygamesゲームプログラマーは710万円~730万円となっています。

中小企業の場合

どの業種にも言えることですが、一般的に年収を上げたい場合、中小企業よりも大企業に勤務したほうが圧倒的に有利でしょう。

大企業はブランド力があり、力強い資金力による安定感があります。一方で、中小企業は若手にもチャンスがあり、仕事の幅を広げられる可能性があります。

また、前述したとおり、企業規模が大きくなるにつれて残業時間も増える傾向にあり、単純に年収だけを比較することは危険です。

さらに、年俸制や成果主義の給与制度を採用している中小企業ならば、自分の業績次第で高額な報酬を得られるチャンスもあります。逆に、財務基盤が弱く、給与体系が整っていない可能性もあります。

中小企業への転職を考える際は財務状況を調査し、給与形態を把握しておきましょう。

IT業界で就職する前に知っておく事3:年功序列である

前述の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、IT人材の給与決定における年功の度合いは、約57%の企業が年功の影響を「小さい」と回答し、最多となりました。

一方で、個人への調査では、「年功序列が基本だが、能力や成果による違いがある程度ある」との回答がもっとも多く、企業側と社員との考えに差があることが分かります。

しかし、実際に年齢を経るごとに順調に平均年収が上がっている現状を考慮すると、日本企業の給与形態や昇級制度において年功序列を完全に排除することは未だ困難であるのが現実です。

優秀なエンジニアにとってデメリット

年功序列の給与体系は、特に優秀なエンジニアにとっては、自分の評価とそれに対する報酬に対して不満を抱く可能性が上がります。また、年功序列や終身雇用によって雇用が安定してしまうことで、優秀な社員の仕事に対するモチベーションが低下するデメリットが考えられます。

ただし、年功序列には、昇進や昇給額が横並びになることでお互いに不満を持ちづらくなり、嫉妬などによる無用な争いを回避できるメリットもあります。

ITスキルを向上させて年収が高くなるよう努力をしよう

IT業界で年収を上げるには、現在勤務する会社での評価を上げて年収を上げる、年収の高い業界や職種に転職する、フリーランスに転身する、という方法があります。

しかし、ITスキルを向上させなければ、いずれの方法も選択することはできません。

現在の年収に満足していない人は、まずITスキル向上のために努力しましょう。