クラウドサービスと仮想マシンの違いについて

クラウドと仮想マシンの違いは?

クラウドサービスと仮想マシンはその違いが曖昧で混同されがちです。しかしクラウドは「サービス・環境」、仮想マシンは「技術」という明確な違いがあります。なぜ、クラウドサービスと仮想マシンは混同されてしまうのでしょうか。

クラウドサービスとは?

正確にはクラウド・コンピューティングと言います。インターネットを経由して提供される各種サービスを指しています。クラウドは、IaaS、PaaS、SaaS、DaaSの4つのサービスに分類されます。それぞれの違いは下記の通りです。

IaaS:イァースもしくはアイアースと読み、インフラストラクチャ as a Serviceの略です。ITインフラ/ハードウェア(仮想サーバなどの機材、ネットワーク、ストレージ、メモリなど)リソースを、インターネット上のクラウドサービスとして提供する形態です。
PaaS:パースと読み、プラットフォーム as a Serviceの略です。
システム開発に必要なアプリケーションソフトが稼動するためのハードウェア・OSなどのプラットフォームを、インターネット上のクラウドサービスとして提供する形態
SaaS:サースと読み、ソフトウェア as a Serviceの略です。
従来パッケージ製品として提供されていたソフトウェアを、インターネット経由でクラウドサービスとして提供・利用する形態
DaaS:ダースと読み、デスクトップ as a Serviceの略です。デスクトップ仮想化システムをクラウドサービスとして提供する形態

仮想化・仮想マシンとは?

仮想化(Virtualization):物理的な環境にとらわれることなく、CPU・メモリ・ハードディスクなどのリソースを仮想的に分割・統合する技術。仮想化にはサーバ、ストレージ、ネットワーク、ドライブなどがあります。
仮想マシン(Virtual Machine):物理的にマシンを用意するのではなく仮想化技術によってコンピュータ上に仮想的にコンピュータを動作させます。仮想化との違いは、仮想化は「技術」で、仮想化技術によって「仮想的に作り出されたハードウェア」が仮想マシンです。代表的な例はサーバの仮想化です。1つのサーバを複数のサーバがあるかのように動作させる、WindowsPC上でMac/Linuxなどの他のコンピュータを動作させるなどがあります。

ホストOSとゲストOSの違い

仮想マシンを学習する上で「ホストOS」と「ゲストOS」というワードが使用されています。「ホストOS」とは、仮想環境を作成する土台となるOS、物理サーバにインストールされているOSを指します。「ゲストOS」とは、仮想マシン上にインストールされたOSを指しています。

仮想マシンを使用するメリットとは?

1、マシン・管理コストの削減

従来、提供サービスごとに複数サーバを準備したり負荷分散のために多くのハードウェアの設置を行っていました。しかし、その分購入費用、電気代、点検保守など運用コストが発生していました。仮想化技術を利用することによって1つのマシン上で複数のシステムを稼働させることでマシン台数の削減を可能にし、運用コストを最小限に抑えることができます。

2、セキュリティに強くなる

データを物理的に数台のストレージで管理を行っている場合、1つのハードウェアに障害が発生すると影響は大きくシステムの停止につながる可能性もあります。しかし、仮想サーバは物理サーバと直結しない特性を持つため、物理的に数台かつ仮想的(倫理的)に統合された環境で運用を行うことで、1つのハードウェアに障害が発生した場合でも、他のハードウェアがカバーすることができるので柔軟性のあるシステム稼働が可能になります。また、バックアップ、リストアもしやすい特徴をもつため物理サーバと比較すると復旧も安易です。

3、複数のオペレーティングシステムが利用可能

WindowsPC上でLinux、Linux上でWindowsなど様々なオペレーティングシステムを使用することができます。そのため、WindowsPCでLinuxなど他OSのサービスの動作確認や、古いOSにしか対応していないアプリケーションの稼働などにも利用することができます。

4、リソースの無駄をなくす

アプリケーションが稼働するためのサーバは高性能化が進んでおり、サーバリソースを十分に活用しきれていません。仮想化を行うことで余っているサーバリソースを活用することができます。サーバ仮想化では1つの物理的なサーバを仮想的に分割し、あたかも複数サーバが存在しているかのように動作させることでサーバリソースをフルで活用することができ無駄を減らすことができます。

仮想マシンを使用することのデメリットは?

1、実行速度(処理能力)の問題

コンピュータ資源に別のオペレーティングシステムを稼働させるための余分が少ない場合動きが遅くなる可能性や、ハードウェア(USBなど)の認識のために別に操作が発生するなどがあります。

2、小規模で仮想化を行うと割高になる可能性がある

基本的に仮想化を行うことによってコストが削減できるメリットがある反面、小規模環境では仮想化のための初期投資が上回る可能性もあるため注意が必要です。

3、仮想化環境管理のための知識・技術が必要

仮想化技術を利用するためには通常の管理知識・技術だけでなく仮想化についての専門知識・技術など必要な知識にも違いがあります。専門知識・技術を持った人材の確保もしくは教育が必要になります。

4、障害発生時の影響

仮想化環境では1つのハードウェア上で複数のアプリケーションが稼働します。そのためそのハードウェアに障害が発生した場合には稼働する全てのシステムに影響が出る可能性もあるためハードウェアの障害対策・ウイルス対策の強化が必要です。

仮想化の手法の違いについて

仮想化には大きく「ホスト型」「ハイパーバイザー型」の2つの手法が存在します。

「ホスト型」

物理サーバにインストールされたOS上で仮想マシンを動作させる方法。
メリットとして、既存サーバーを使用するためアプリケーション感覚で手軽に利用開始することができます。

「ハイパーバイザー型」

物理サーバに直接インストールされた「ハイパーバイザ」と呼ばれる仮想化ソフトウェア上で仮想マシンを動作させる方法。
メリットは、OSが不要なため物理サーバのハードウェアリソースを制御しやすくホスト型に比べ性能面で勝ります。

クラウド「Azure」で仮想マシン「Azure VM」を構築する

1、MicrosoftアカウントとAzureアカウントを作成
2、Azureリソースグループの作成
「Azure portal」へログインして「リソースグループ」を作成します。リソースグループとは、Azureソリューション関連のリソースを保持するためのコンテナーです。
3、Azure仮想ネットワークの作成(Azure Virtual Network)
「Azure portal」より「仮想ネットワーク」を作成します。
「vNet」と「Subnet」、カスタムプライベートIPアドレス空間を設定します。
4、仮想マシンの作成
「Azure portal」から「Virtual Machines」を選択し作成します。
仮想マシン名、ディスクタイプ(デフォルト)、ユーザー名パスワード、リソースグループ、場所、仮想マシンのサイズなど指定し作成を行います。
「場所」とは、Azureデータセンター(リージョン)の場所のことです。世界中に存在しており日本国内では「東日本」と「西日本」が選択可能です。国外も選択可能ですが、場所(国)によって受ける制約や料金など変わってきます。国外の場合は距離的に遠くもなるので国内に比べてアクセス時の遅延などが発生する可能性があります。
「サイズ」とは、仮想マシンの仕様です。様々なサイズが用意されており、低コストなBsシリーズから最新の機械学習向けのGPU VMまで予算・ワークロードに合わせて選ぶことができます。

クラウド「Azure」で仮想マシン「Azure VM」の料金体制の例

基本的には従量課金制となっています。Azureでは、コンピュート要素(CPU、メモリ、ハードウェア)、ディスク要素、ネットワーク要素の3つの要素に対して課金されます。コンピュート要素は、仮想マシン作成時に選択した「サイズ」に対しての課金です。ディスク要素は、容量・トランザクションに対する課金です。容量の使用料とストレージへのトランザクション量に対して課金が行われます。ネットワーク要素では、通信量に応じた課金が行われます。「Azure Automation」を利用し自動でVMの稼働時間を制限したり、「Azure portal」より課金状況を確認することが可能です。

 

まとめ

クラウドとはインターネット上で提供されるIaaS・PaaS・SaaSなどの「サービス・環境」であり、仮想マシンとは「技術」であるという大きな違いがあります。
しかし、クラウドと仮想マシンは混同されがちです。その理由として、どちらも抽象的的なものから有用な環境を作成することが目的であること、似たような単語が使用され説明されている点が挙げられます。
クラウドの目的は、インターネット経由で誰でも様々なサービスを利用提供すること。仮想マシンの目的は、リソースを分割し無駄を減らすことです。利用目的に違いますが、クラウドは常に仮想化技術によって支えられており深い関わりがあります。
クラウドでは品質保持のためのサービスの基盤として仮想化したシステムを用いています。
例えばクラウドでは、クラウドサービス提供者が何万何億ものユーザーデータを保管するストレージサーバを仮想化によって統合することで膨大なデータ量に対応することを可能にしています。

クラウドサービスのために仮想化システムを構築すると考えることで両者の混同を避けることができるでしょう。

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