Azureでの「記憶域スペースダイレクト」

1.はじめに

「記憶域スペースダイレクト」は、Azureの「Windows Server 2016」で導入された新機能になります。しかし、この概要や特長、Azureにおいてどのような役割を担っているかを理解していくには、まず「Windows Server 2012」に導入された「記憶域スペース(Storage Spaces)」「スケールアウトファイルサーバー(Scale Out File Server:SOFS)」と、「Windows Server 2008 R2」の「フェールオーバークラスタリング機能」と呼ばれる複数のコンピューターをこれ一台のコンピューターのように統合して運用していく方法として導入されたクラスターの共有ボリューム(Cluster Shared Volume:CSV)について順を追って理解していく必要があります。
当記事では、この3つの概要に触れながら、「記憶域スペースダイレクト」についてご紹介していきます。

2.概要

1.記憶域スペース

「記憶域スペース」とは、標準的なディスクをまとめ、束ねて効率よく使用していく「ソフトウェア定義のストレージ」を言います。これは「Windows Server 2012」より初めて実装されたものになります。機能としては「物理ディスク」をプール化した「記憶域プール」と呼ばれる複数の物理ディスク(SATA,HDD,SSDなど)から形成されるリソースプールから、必要となる領域分だけを切り出して「論理ディスク」としてOSやアプリケーションに記憶域提供を行います。
1つに束ねた「記憶域プール」は、物理ディスクに該当するSAS(Serial Attached SCSI)やSATA(Serial ATA)、USB、HDD、SSDなど接続バス、容量がどれだけ異なろうと「物理ディスク」に該当するものであれば、混在することが許可され、束ねることができます。
そんな物理ディスクを束ねるために「プール化」したものを「記憶域プール」といいます。
「仮想ディスク」となる「論理ディスク」はその記憶域プール中の領域を、使用する分だけ切り出して作成します。取り扱いは、ローカルの物理ディスクと大差なく使用できます。また、作成時に「シンプル(ストライピング)」「双方向ミラー」「3方向ミラー」「シングルパリティ」「デュアルパリティ」の5つのレイアウト中から1つを選択し、「論理ディスク」としての信頼性とパフォーマンスの構成を行います。
また記憶域プールで「SSD」を利用した場合、「ライトバックキャッシュ」と呼ばれる機能が有効化して、パフォーマンスの向上が図れます。

2.フェールオーバークラスター

「Windows Server」における「フェールオーバークラスター」とは、独立した複数機のサーバーが、ディスクなどの装置を共有化して、時と場合に応じてサーバーを切り替えて利用者にサービス提供をするシステムです。このとき、サービスを提供する各サーバーを「ノード」、ディスクなどの各ノードが利用する機能を「リソース」と称します。
フェールオーバーの実現には、各ノードに同一のサービスがインストールされている事が必須となります。これは、動作中のノードがサービス停止したことを確認すると、別のノードが自動起動して、その停止したノードの代わりを成す「アクティブ・スタンバイ」構成となっています。
またフェールオーバークラスターにおける「クラスターディスク」として「記憶域スペース」は利用することが可能です。ただし、使用する場合、標準的な物理ディスクの使用ができなくなります。その時使用するのが、クラスターとして参加しているすべてのノードからアクセスすることができる、SAS接続の「共有ストレージ装置」です。基本として、SAS以外のバスで接続された「共有ストレージ装置」に、サポートの施しはなく、ディスク数やその容量の要件に関しても「3台以上かつ4GB以上」となります。記憶域スペースを「フェールオーバークラスター」を通して使用するには、まずクラスターと化した「記憶域スペース」を用意する必要があります。このクラスター化された記憶域スペースの作成には、「フェールオーバークラスターマネージャー」を使用します。作成自体はGUI操作(視覚的操作)で作り上げることができます。作成が完了したら、そこから仮想ディスクの作成に移り、完了したらクラスターの共有ボリューム(CSV)として構成していきます。これは、クラスターとして参加する「すべてのノード」から「C:\ClusterStorage\Volume#(※#は番号)」という「共通パス」を通した同時アクセスを可能とします。この時に「スケールアウトファイルサーバー」「Hyper-Vホストクラスター」のデータ格納域として利用することができます。

3.スケールアウトファイルサーバー

「スケールアウトファイルサーバー」とは、「クラスター化」されたファイルサーバーの一種になります。主にアプリケーション用のSMB(Server Message Block)3.x共有の提供をしています。
構成は「アクティブ・アクティブ」と呼ばれるWindowsのフェールオーバークラスターを取っており、サーバーへのアクセスは、ノード間で負荷分散が自動的に行われています。また障害発生につきノードが停止した場合、共有関係にある別のノードにフェールオーバーされアクセスできます。

3.まとめ

記憶域スペースダイレクトとは

上項を踏まえてAzureにおける「記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct)」ついてまとめると、クラスター化した各ノードに使用されているローカルディスクで構成した「記憶域スペース」になります。
ことAzureの「クラスター環境」においては、SAS接続の共有ストレージ装置が必須であり、標準的な物理ディスクを使用できませんした。しかし、Windows Server 2016で追加された「記憶域スペースダイレクト」という機能では共有ストレージ装置が不必要となります。それは、各ノードのローカルにSASやSATAで、直結した物理ディスクをクラスターレベルで束ねることを可能として、1つの記憶域スペースとして作成ができます。これにより、クラスターとなるすべてのノードは、他のノードと直結した物理ディスクにネット経由でSMBプロトコルへのアクセスを可能として、データの読み書きができます。
また「記憶域スペースダイレクト」は、「AZURE STACK HCI」「Windows Server 2016/2019 Datacenter」「Windows Server Insider Preview ビルド」中に組みこまれています。

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