ITILとは何か

ITILとは

「ITIL」という言葉をご存じでしょうか。
ITIL(アイティーアイエル,アイティル)
とは、Information Technology Infrastructure Libraryの略で、ITサービスマネジメントの成功事例をまとめた教科書のようなものです。

そもそものITサービスマネジメントとは、ITサービスの運用にあたり、ITサービス利用者の目線に立ち、ITサービスの品質向上を図るマネジメントのことです。
簡単に述べると、顧客満足度を高めるための、運用業務の効率化や最適化などの活動のことです。

それらを目的とし、あらゆる試行錯誤が行われてきたわけなのですが、その成功事例やお役立ち情報、コスト削減のノウハウなどをまとめたものが「ITIL」です。

ITIL誕生の経緯

ITILは1989年イギリス政府の中央コンピュータ電気通信局から出版されました。当時、長期間経済が低迷していたイギリスですが、マーガレット・サッチャー首相が状況の打開のため行政と経済の改革を行い、イギリス政府の財政を立て直しました。

そうした時代背景の中、中央コンピュータ電気通信局(以下CCTA)は、ある仮説の実証プロジェクトをスタートしました。

実証する課題は、「反復可能なプロセスによるITの管理手法を確立すれば、ITサービスを提供するコストは下がり、サービスの品質は向上する」といったものでした。

ようするに、IT管理に関するノウハウは他の組織でも有効であり、整理して共有すれば他組織でも有効であり、共有することによりサービス利用者とサービス供給者、双方にメリットが発生する、といった主張です。

実証は成功し、ITをどのようにマネジメントしていくかについての成功事例をITに携わる他の人たちに共有するため「ITIL」は出版されました。

ITILのバージョン

そんなITILですが、何度か改訂されながら、現在に至ります。

前述のとおり初版は1989年~1994年にかけてリリースされ、1999年~2004年にかけてバージョン2(V2)がリリースされ、2007年にはバージョン3(V3)がリリースされました。

さらに2011年にはV3の改良版である2011Editionがリリースされました。

2020年現在、最新となるバージョンは2019年にリリースされたバージョン4(V4)です。

さまざまなバージョンがあるわけですが、現場において最も主流なのはV2です。

ITIL V2の特徴

ITILが世界的に認知された始めたのはV2がリリースされてからです。
初代ITILは40冊以上にもなる書籍群だったようで、内容の重複や不整合が指摘されていました。
それらを整理、結合し、7冊の書籍に分割されたものがITIL V2です。

V2の特徴ですが、「プロセスアプローチ」と「ベストプラクティス」があげられます。
プロセスアプローチとは、仕事のプロセスを明確にし、各プロセスの相互関係を把握し、一連のプロセスをシステムとして運営することです。
ベストプラクティスとは、実際に企業に適用され、効果のあった事例が紹介されているということです。

7つの書籍

  1. サービスサポート

    日常的にユーザが必要とするITサービスを利用できるようにすることを目的とした機能とプロセスの総称。

  2. サービスデリバリ

    高い投資対効果で、安全確実にサービスサポートを実現できるように、準備、計画するプロセスの総称。

  3. サービスマネジメント導入計画立案
  4. ビジネスの観点
  5. アプリケーション管理
  6. ICTインフラストラクチャー管理
  7. セキュリティ管理

中でも知名度の高い「サービスサポート」「サービスデリバリ」ですが、それぞれ青本、赤本と呼ばれており、ITIL V2の中心となっています。
先ほどの書籍一覧にも説明を記載していますが、それぞれをわかりやすく表現すると

「サービスサポート」は運用における障害や、ユーザーからの問い合わせを管理し、問題解決にあたり、再度ユーザーへフィードバックする一連の流れを効率的に行う手順のことです。

「サービスデリバリ」は、そのサービスが、顧客の満足するサービスレベルを保つためには、どのように運用されている必要があるか、
その運用期間はどのぐらいで、どの程度のコストで行われるか、を明確にしたものです。

ITIL V2はこれらの書籍から構成されています。

ITIL V3の特徴

V2に対しV3は凝縮され5冊の書籍に収まっています。

サービスライフサイクル

ITIL V3にはサービスライフサイクルという重要な考え方があります。サービスとは冒頭で記載したようにITサービスのことを指します。ライフサイクルとは、人間が生まれてから死ぬまで、それらを8段階に分けたものです。(幼児期 → 幼少期 ・・・・ → 老年期のように)

ITサービスが生まれてから廃止されるまでの流れを、このライフサイクルになぞらえたものがサービスライフサイクルです。

ではその内容を見ていきましょう。

ITIL V3 5つの重要なプロセス

先ほど人間のライフサイクルは8段階に分けられると書きましたが、ITILでは5つの段階に分けられています。

  1. サービスストラテジ(SS:戦略)
  2. サービスデザイン(SD:設計)
  3. サービストランジション(ST:移行)
  4. サービスオペレーション(SO:運用)
  5. コンティニュアルサービスインプルーブメント(CSI:継続的サービス改善)

順に解説していきます。

1.サービスストラテジ

業務を便利にしたい

例えば、従業員の勤怠管理を手書きで行っている企業があったとします。10数人ほどの規模でしたら手書きでの管理も可能です。
しかし会社が大きくなり、従業員数が増えてくるにつれ、手書きでの管理は現実的ではなくなります。

そこで、ITサービスを提供する会社に「従業員の勤怠管理をコンピユーターで行いたい(IT化したい)」と相談します。
要望を受け取ったIT会社は、その案件をIT化するかを検討します。

2.サービスデザイン

IT化することを決定

IT化が決定されると次は設計書や計画書の作成にフェーズが移ります。このもろもろの設計、企画段階がサービスデザインです。

3.サービストランジション

無事に開発完了

開発が完了すると、検証環境で開発を行っていたサービスを本番環境に移行します。
(移り変わること=Transition)
移行の際、トラブルなどがないよう移行という工程全体を管理することがサービストランジションです。

4.サービスオペレーション

移行完了、運用開始

無事、移行が完了するとサービスの運用に入ります。
安定してサービスを継続させるため、ユーザーの満足度を損なわないよう、問題があれば解決していきます。
このフェーズがサービスオペレーションです。

5.コンティニュアルサービスインプルーブメント(CSI)

継続的なサービス改善

コンティニュアルサービスインプルーブメント(CSI)は継続的なサービス改善という意味です。オペレーションと似ていますが、少し違います。
サービスオペレーションがサービス開始後のフェーズであるのに対し、CSIは他4つのフェーズの進行中に改善しなければいけない点が発生すれば、その都度、対応していくことを指します
他4つのフェーズに常に対応しているので、最後に行うというわけではありません。

以上がサービスライフサイクルの説明となります。

V2とV3は違うものなのか

結論から言うと、全くの別物というわけではないです。
ITIL V3でもITIL V2の「サービスサポート」、「サービスデリバリ」の考え方は引き継がれていますので、ITIL V2でマネジメントの仕組みを構築していたとしてもV3を活用することは可能です。

ITILの資格

ITILの資格には「ファンデーション」「インターミディエイト」「エキスパート」「マスター」の4段階の資格があります。
最初級のファンデーションは、どういった試験かというと「ITサービスマネジメント及びITILに関する基礎知識を保有していること」を認定する試験です。
難易度はそれほど高くなく、働きながらでも1か月ほどで取得できる資格です。
ご興味のある方は受験されてみてはいかがでしょうか?

終わりに

以上がITILに関する解説でした。
ITILを理解することで、ITサービスの品質向上や業務効率化につながることは間違いないので、一度書籍を手に取ってみることをオススメします。

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