設計フェイズ別のデータベース設計手順を解説!おすすめのソフト5選
データベース設計とは?
データベース設計は独学では難しい内容です。
エンジニアを目指している人の中にはデータベース技術を学んでいる人も多いでしょう。しかしデータベースの設計は企業によってローカルルールの違いがあり、設計手順が異なるため、独学するのが難しいと言われています。
この記事ではデータベース設計についてご紹介していきます。
データベース設計に求められる要素3つ
データベース設計に求められる要素をご紹介します。
データベース設計をする場合、特に求められる要素は「拡張性の向上」「ユーザーへの要求を満たすこと」「信頼性の向上」だと言えるでしょう。
ここではデータベース設計に求められる要素3つをご紹介しますので、データベース設計をする上での参考にしてみてはいかがでしょうか。
データベース設計に求められる要素1:拡張性の向上
データベース設計に求められる要素は拡張性の高さです。
データベース設計における拡張性とは、現状の業務のデータだけでなく将来使用する可能性のあるデータを蓄積して、アプリケーションの追加や拡張が容易にできるようにするといった点がポイントになります。
また、正規化の手順によってデータベースを作成することで、データが一元管理できるようになっているデータベースも拡張性が高いと言えるでしょう。
データベース設計に求められる要素2:ユーザーへの要求を満たすこと
データベース設計に求められる要素はユーザー要求の性能を満たすことです。
ユーザー要求とは、同時実行性が確保できる仕組みになっていることや、効率の良いデータアクセスが可能になることを目標にすることです。
具体的には、トランザクションが最低限の長さになるように設計したり、更新と読み取りのタイミングが重なった場合はロックを掛けずに読み取る仕組みにすることで、同時実行性が確保できます。
データベース設計に求められる要素3:信頼性の向上
データベース設計に求められる要素は信頼性の向上です。
信頼性の高いデータベースとは、整合性が維持でき、障害から迅速に回復できるデータベースです。
たとえば1データ1ヶ所を原則とすることでデータを一元管理したり、排他行ロックをかけることで同時実行制御を行うといった仕組みにすることで、データの整合性が保てるでしょう。
【設計フェイズ別】データベース設計の手順
設計フェイズ別のデータベース設計の手順をご紹介します。
データベースの設計フェイズは大きく分けて「概念設計」「論理設計」「物理設計」の3段階があります。
ここでは設計フェイズ別データベース設計の手順をご紹介していきますので、データベース設計の参考にしてみてはいかがでしょうか。
概念設計するうえでの手順3つ
「概念設計」とはデータベースを用いる業務をするために必要なデータを抽出するフェーズです。
概念設計では業務で利用する情報の整理を行い、データベースによって管理するものを抽出して概念データモデルを作成します。
ここでは概念設計をするうえでのデータベース設計の手順をご紹介していきます。
概念設計するうえでの手順1:必要な要件の洗い出し
概念設計をする場合、まずは作成するデータベースに必要な要件の洗い出しを行います。
データベースで使用する対象の業務を分析し、どんなデータを管理したいのかを確認していきます。この際に必要な要件を洗い出しますが、要件定義が不十分だと後から大問題に繋がってしまうため、十分注意する必要があります。
特に顧客データベースを作成する場合は十分な打ち合わせを行い、先入観を持たずに設計を行うことが重要です。
概念設計するうえでの手順2:データカテゴリを抽出する
概念設計をする場合、データカテゴリを抽出しましょう。
データカテゴリとは概念設計では「エンティティ(実体)」と呼ばれますが、目的を持ったデータのまとまりを意味します。
たとえば、社員データを管理するデータベースを作る場合は、「所属部署」「役職」「氏名」などがエンティティとして抽出することができるでしょう。
概念設計するうえでの手順3:概念データモデルとER図の作成
概念設計をする場合、概念データモデルとER図を作成しましょう。
必要なエンティティの抽出が完了したら、概念データモデルを作成します。この時点ではRDBかNoSQLかなど、どのタイプのデータベースを利用するかは特定しないようにします。
また、概念データモデルを作成する場合はER図を用いるケースが多いです。ER図の書き方として有名なものには、「IE記法」や「IDEF1X記法」などがあります。
論理設計するうえでの手順3つ
「論理設計」とは概念データモデルを整理し、データベースの種類に合わせて変換をするフェーズです。
論理設計では作成した概念データモデルのデータ構造に変更をできるだけ加えないようにしながら、性能を向上させます。
ここでは論理設計をするうえでのデータベース設計の手順をご紹介していきます。
論理設計するうえでの手順1:データベースの種類を決定する
論理設計をする場合、データベースの種類を決定しましょう。
データベースの種類には「RDB(リレーショナルデータベース)」やそれ以外の「NoSQL」があります。
RDBはデータを表として管理し、表同士の関係を定義することで、複雑な関連性も扱える関係データベース管理システムです。一方、NoSQLは定義などを行う必要がなく、非定型な構造を持つデータでも柔軟に管理することができます。
論理設計するうえでの手順2:データベースに沿った形に変換したテーブル定義を作成
論理設計をする場合、データベースに沿った形に変換したテーブル定義を作成しましょう。
データベースの種類を決定したら、沿った形にテーブルの構造の定義を行います。RDBの場合、テーブル定義にはフィールドとインデックスがあり、テーブルフィールドはデータ型とフィールドの特徴を定義するドメインにリンクされます。
テーブル定義ではエンティティの属性を全て洗い出し、論理ER図に表すといった作業を行います。
論理設計するうえでの手順3:作成したテーブルを正規化する
論理設計をする場合、作成したテーブルを正規化しましょう。
1つのテーブルの中に同じような値が複数登場するようなテーブルを「非正規形」と呼びます。そういった冗長な部分を削除するためには、テーブルの正規化を行う必要があります。
正規化を行うには、繰り返しになっている部分を特定して縦になるように並び替えたり、従属関係にあるデータを分離し、さらに多値従属性を排除することで、無駄のないテーブル構造になります。
物理設計するうえでの手順7つ
「物理設計」とは物理的なデータ配置だけでなく、パフォーマンスを考慮してデータベースを整理するフェーズです。
物理設計では性能要件や可用性を考慮した上でデータベースを整理し、より現実的な物理データモデルを作成します。また、必要なハードウェアやミドルウェアなども選定します。
ここでは物理設計をするうえでのデータベース設計の手順をご紹介していきます。
物理設計するうえでの手順1:文字列のデータ型を決める
物理設計をする場合、まずは文字列のデータ型を決めましょう。
物理設計ではデータの入れ物となる部分の物理的な設計をはじめに行います。ここで決める文字列のデータに保存するデータとしては、「会社名」や「部署」「役職」「氏名」などが考えられます。
文字列のデータ型には「CHAR(固定長文字データ)」「VARCHAR(可変長文字列)」や「TEXT(長さ指定なしの可変長文字列)」などがあります。
物理設計するうえでの手順2:数字のデータ型を決める
物理設計をする場合、数字のデータ型を決めましょう。
数字のデータに保存するデータとしては、「等級」や「基本給」「日当」「交通費」「出張宿泊費」などが考えられます。
また、数字のデータ型には「INTEGER(整数型)」や「DOUBLE(浮動小数点数型)」などがあります。数字で保存するデータに小数点が含まれるか否かによって決定しましょう。
物理設計するうえでの手順3:半角英字のデータ型を決める
物理設計をする場合、半角英数字のデータ型を決めましょう。
半角英数字のデータに保存するデータとしては、「社員番号」や「メールアドレス」「部署コード」「役職コード」などが考えられます。
また、半角英数字は1バイトの文字列型となっているため、データ型には「CHAR(固定長文字データ)」「VARCHAR(可変長文字列)」や「TEXT(長さ指定なしの可変長文字列)」などがあります。
物理設計するうえでの手順4:容量・性能要件の確認
物理設計をする場合、性能要件を確認しましょう。
ユーザー要件として性能要件を確認していきます。たとえば1日や年間でどのくらいのデータが追加されるのかといった容量や、一度にどのくらいのアクセスがあるのかといった内容を確認します。
また、それらの情報から、業務を円滑に進めるためにはネットワークやハードウェアにどのくらいの性能が必要なのかを確認します。
物理設計するうえでの手順5:データベースにインデックスを登録する
物理設計をする場合、インデックスを作成しましょう。
データベースはインデックスを登録することで、処理スピードを上げてパフォーマンスを向上させることができます。物理設計まで行われて修正されたモデルを「物理データモデル」と言います。
また、正規化などによってパフォーマンスが不足した場合は、わざと正規化を崩すこともあります。
物理設計するうえでの手順6:データ領域を計算する
物理設計をする場合、データ格納領域を設計しましょう。
前述の性能要件で確認した量のデータを格納できるだけのデータ領域を計算します。また、将来的な予測も踏まえて、データサイズは余裕を持って見積もることが重要です。
物理設計するうえでの手順7:ファイルの配置を決定する
物理設計をする場合、ファイルの配置を決定しましょう。
データを格納するためのデータ領域を計算したら、ハードウェアやソフトウェア上でのファイルの物理的配置を決めましょう。
データベース設計におすすめのソフト5選
データベース設計におすすめのソフトをご紹介します。
データベース設計ができるソフトウェアにもさまざまな種類があります。そのため、どのソフトを選べばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは最後にデータベース設計におすすめのソフト5選をご紹介しますので、ソフト選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
おすすめのソフト1:Lucidchart
Lucidchartは専門的な知識がない人でも活用できるデータベースソフトです。
Excelにも連携しているデータベースソフトで、データベース設計に必要な図形も用意されており、ノンプログラミングでデータベースが作成できます。
料金は無料で利用できる「フリー」から開始時800円の「Individual」、ユーザー1,000円単位で3人から利用できる「Team」、要見積もりの「法人向け」まであります。
おすすめのソフト2:MySQL Workbench
MySQL WorkbenchはMySQLの公式サイトでMySQL Serverと一緒に配布されているデータベースソフトです。
データベースの設計から開発、管理まで一本化したツールで、ビジュアル操作ができるためコマンド操作が苦手な人にもおすすめです。また、アプリケーションのパフォーマンスを改善する機能も新しく搭載されました。
MySQL Workbenchは無料で提供されているため、費用もかかりません。
おすすめのソフト3:ERMaster
ERMasterはEclipseプラグインとして動作するER図用GUIエディタです。
ER図の作成や印刷、DDL出力といった操作を視覚的直観的なUI操作で行うことができます。また、データベースからのインポートやグループ管理、履歴管理も可能です。
さらにOracleやDB2、PostgreSQL、MySQLなどをサポートしており、無料ツールとなっているため費用をかけずに利用できるのもポイントです。
おすすめのソフト4:ERDPlus
ERDPlusはER図を簡単に作成できるデータベースモデリングツールです。
シンプルなインターフェースで操作できるツールで、英語表記となっていますが直感的な操作が可能です。また、作図からSQL文を作成することもできます。
さらにWebベースとなっているためインストールが不要で、無料ツールとなっているため、名前とメールアドレスを入力するだけですぐに利用することができます。
おすすめのソフト5:SI Object Browser ER
SI Object Browser ERは国内4,000社以上の出荷実績を持つER図作成ツールです。
簡単なGUI操作でエンティティやリレーションシップを作成することができ、Oracle Databaseなどの国内で利用される主要データベースと連携することができます。
料金はクライアントライセンスで118,500円から、仮想ユーザーライセンスで5ライセンス6カ月150,000円からとなっています。
データベース設計方法を理解しよう
データベース設計は独学で習得するのが難しい分野です。
データベース設計には「概念設計」「論理設計」「物理設計」という3つのフェーズがあり、拡張性があり、効率の良い構造のデータベースを設計することが求められます。
ぜひこの記事でご紹介したデータベース設計に求められる要素や、設計フェイズ別のデータベース設計の手順などを参考に、データベースの設計について理解を深めてみてはいかがでしょうか。