保守開発に必要なスキル4選|保守開発に関するメリットとデメリットなども紹介

保守開発とは

システム開発には、一からシステムを開発する「新規開発」と、既存のシステムを使いやすくなるよう「調整」したり、不具合解消のために修正したりする「保守開発」があります。

システムを運用していく中で、使いにくさや不具合が発生したときに状況を解消するために、保守開発という形で追加開発を行います。ここでは、保守開発の内容について紹介します。

システム運用について

システム運用は、システムを安定稼働させることが主な業務になります。システムの起動・停止や、バックアップの実施、システムの稼働状態の監視などがシステム運用の作業になります。

一般的には、システム運用担当者がシステムの稼働状況を監視し、トラブル発生時には現象の切り分け作業を行います。原因がソフトウェアにある場合は、システム保守部門に調査を依頼します。

システム保守について

システムに不具合があって改修したり、最適化するためのアップデートを行ったりした場合は、システム保守の作業としてシステムの再適用や再導入を行います。

システム保守では、既存システムをハードウェア・ソフトウェア両面から熟知していなければなりません。熟知していないと、手を加えるべきポイントを絞り切れず、間違ったところに手を加えてしまったり、影響を読み切れずに手を入れてしまったりするリスクがあります。

保守開発に必要なスキル4選

保守開発も、一般的なシステム開発の経験やノウハウがあれば担当できるのでしょうか。速やかに開発作業に入っていけるのでしょうか。

ここでは、保守開発に取り組むときに必要になる4つのスキルを紹介します。保守開発を担当してみたい、興味がわいた、という人は、紹介するスキルを身につけるよう意識しておきましょう。

保守開発に必要なスキル1:システムに関する理解力

保守開発をするためには、既存システムを深く理解できなければなりません。既存システムの仕様書やマニュアル、実際の動作から、システムの構成・構造を理解できる力が必要になります。

保守開発では、システムを深く理解したうえで設計・製造しないと、既存システムを改善するどころか、不具合を作りこんでしまう結果になりかねません。不具合が発生したときに、原因箇所の特定ができる程度まで理解できていることが必要です。

保守開発に必要なスキル2:インフラに対する知識

保守開発ではインフラの再構築までは考えないものの、インフラに関する知識も不可欠となります。保守開発では既存のシステムに手を加えることになるので、既存のシステムのインフラ構成や特性を理解できていないと、不具合を作りこんでしまう可能性が高くなります。

直接関わる部分でなくても、既存システムを構成する一角としてインフラに対する知識は、保守開発に欠かせない知識となります。

保守開発に必要なスキル3:イレギュラーに対する対応力

保守開発では既存のシステムに開発を加えるため、予期しなかった動作が発生することも多くなります。

保守開発前に調査した仕様と既存システムのプログラムに差異があった場合や、調査不足などで発生しますが、保守開発担当者にはこうした予期せぬ事象が発生したときの対応力が求められます。

イレギュラーな事象の発生パターンを押さえておくことができれば、発生時の対応も早くなります。

保守開発に必要なスキル4:コミュニケーション能力

保守開発には、計画的に実施されるものもあれば、トラブルや不具合に対応するために急遽実施されるものもあります。

保守開発を担当する際は、エンドユーザーを含めたクライアントから状況をヒアリングし、クライアントが期待する姿と現状とのギャップを的確につかめるコミュニケーション力が必要になります。

保守開発チームだけでなく、既存システムを構築した際のチームとのコミュニケーションも重要になります。

保守開発に関するメリットとデメリット

新規開発と保守開発があるシステム開発の中で、保守開発に関わることのメリットやデメリットはあるのでしょうか。ここでは保守開発に関わることで得られるメリットとデメリットを紹介します。

保守開発に携わることで得られる良い面も悪い面も理解したうえで、保守開発という業務について考えてみましょう。

保守開発に関するメリット

保守開発は、「すでに稼働しているシステムがある」ということが前提になる開発です。既存システムに追加する形での開発だからこそ技術者に求められるスキルもあれば、技術者が習得できるスキルもあります。

ここでは、保守開発を目指すこと、保守開発に携わることのメリットを紹介します。

スキルアップしやすい

保守開発に携わることで、技術者はスキルアップしやすい傾向にあります。保守開発を担当することで、設計やプログラミングの技術を短期間で向上させることも可能です。

保守開発の技術者は、仕様書から概要を理解したうえで、既存システムのプログラムソースを読んで解析も行います。仕様書とソースから実態を把握し、既存システムへ悪影響を与えない配慮をした開発を行うことになるので、理解力・分析力・解析力などが養われます。

システム構築力が自然に身につく

保守開発では、既存システムの構成を読み解くことから始めるため、「稼働しているシステム」の構成を熟読することになります。

稼働しているシステムの構成を仕様面とソースコード、インフラ構成などの多面から見る機会があるので、システム構築に必要な基礎知識が意識せずに身についていきます。

トラブルへの対応力が身につく

保守開発には、システム改善のために計画的に行う場合と、トラブル回避のため急遽行う場合があります。

稼働中のプログラムに手を入れることは、システムエラーを招くリスクも高いことから、プログラム改修は計画的に行われることの方が多いものの、トラブル回避の保守開発も少なくはありません。

トラブル回避のための保守開発に携わることで、トラブルの原因や改修ポイントを的確に素早く見定める力が身につきます。

未経験でも転職できる可能性が高い

保守開発では、短期間でスキルを磨くことができます。既存システムの一部を修正する形式の保守開発も多いため、プログラミングに不慣れな人でも対応できる部分もあります。

設計や設計を兼ねたプログラミングの場合は、既存システムを理解する力のある技術者でないと対応できませんが、少量の改修担当であれば、初心者でも可能なので、未経験者が応募しても転職できる可能性の高い分野といえます。

保守開発に関するデメリット

保守開発に携わることは、IT技術者を目指すうえで「デメリット」と感じられることもあります。ここでは、保守開発に関わることのデメリットを紹介します。

デメリット部分も、捉え方や取り組み方によってはメリットに変化する可能性もあるので、デメリットといえるポイントを理解し、デメリットとならないための振る舞い方を考えてみるのも良いでしょう。

仕事量が増えやすい

保守開発では、クライアントがすでにシステムを導入し、使っていることから、具体的な要望が出やすい傾向にあります。

クライアントのニーズが具体化していることは、システム設計に活かしやすいものの、ニーズが膨らみやすいというデメリットにもなります。

保守開発は、当初の計画よりもニーズが膨らみやすく、仕事量が増えてしまうことも少なくありません。仕事量を当初計画どおりにおさえるための管理能力が問われます。

プログラミング業務が少ない

保守開発では、新規開発と異なり一からプログラミングをするという作業は少なくなります。新規プログラムを追加することもありますが、多くは既存プログラムに手を入れることになります。そのため、絶対的なプログラミング量は新規開発に比べ少なくなります。

プログラムのソースコードをたくさん書くことで、プログラミングに慣れていきたいと考えている人にとっては、保守開発で担当するプログラミング量では不十分といえます。

年収が低い

システム保守を専門に担当する技術者の年収は、システム開発の技術者に比べ低い傾向にあります。システム保守の専門職は、運用や保守に必要なスクリプトなどを作成しますが、稼働中のプログラムに手を入れることはありません。

稼働中のシステムを改修する保守開発は、システム開発技術者が請け負います。保守系エンジニアを目指すのか、保守開発に携わりたいのかによって、参考とする年収は異なります。

保守開発からキャリアアップする方法

保守開発に関わったら、ずっと保守開発のままなのだろうか、ほかのシステム開発に携わることはできないのだろうかと不安を感じる人もいるでしょう。

保守開発で得た技術や知識を活かして、次のフィールドへキャリアアップやステップアップを図ることができます。さらにキャリアップするために必用な知識やキャリアアップの例を紹介します。

プログラミング技術を習得する

保守開発だけを担当していたのでは、プログラミングの経験数が足りません。保守開発の中でも、新規追加を担当せずポイント改修だけを担当していた場合は、最初からプログラムを作ってみるという経験が足りないことになります。

不足しているプログラミング経験は、多言語のプログラミング習得や課題学習により補えます。プログラミング技術を強化し、新規開発にも携われるようにしておくことで、担当業務の範囲が広がります。

インフラの知識を活かす

新規開発では、設計だけやプログラミングだけを担当するなど、作業が分業になりますが、保守開発ではシステム構成からプログラミングまですべての流れを意識したうえで行われます。

長く保守開発に携わっていることでインフラやネットワークの知識も身につくようになります。インフラやネットワークの知識をさらに強化習得し、ソフトウェア開発以外のネットワークエンジニアに転身することも考えられます。

保守開発で経験を積んでみましょう

保守開発では、稼働中のシステムを中心にIT関連の多くの技術に触れる機会があります。保守開発をIT技術に触れる起点として、各技術に対する知識や技術力を向上させていくことも期待できます。

次の仕事へのステップアップも考えながら、保守開発で経験を積んで技術力を身につけ、向上させていきましょう。