運用と保守のために必要な資格4選|キャリアパス3選なども紹介

運用と保守の違いについて

企業の業務システムなどを構築するシステム開発の工程は「要件定義」「設計」「プログラミング」「テスト」「リリース」「運用・保守」に大きく分けられます。

運用と保守は、どちらも新システムに移行した後に行われる作業です。これら2つは運用がシステムの正常動作を確認する作業で、保守は異常動作に対応する作業という点が違うと言えるでしょう。

運用と保守の違いの詳細

システム開発は構築して納品すれば終わりというものではなく、実際の業務で使用してみて何か問題が生じていないか確認することも大切な作業工程に含まれます。

システム開発は「上流工程」と「下流工程」に大別されますが、運用と保守は両方とも下流工程に属しています。システムリリース後のフォローが、運用と保守の主な業務と言えるでしょう。

ここからは、運用と保守の詳しい仕事内容の違いについてご紹介します。

毎日管理する「運用業務」

運用では、トラブルが発生していない平常時の業務を主に担っています。

滞りなくシステムを機能させるため日々のシステム動作状況をチェックしたり、OSやアプリケーションのバージョンを管理したりするのも大切な運用の業務内容です。

運用業務は平常時のシステム管理ですが、普段のシステムが正常に動作するように監視するのは、結果的にシステムの品質を保つために必要な仕事と言えるでしょう。

日々のルーティン業務

システムの運用業務には、毎日行う必要があるルーティン業務というものが存在します。システム運用レポートの作成やデータのバックアップ、OSやアプリケーションのバージョン管理がルーティン業務に相当するでしょう。

システム運用レポートで報告すべき項目は企業によって違いますが、一般的にディスクの使用率やユーザーからの問い合わせ状況、トラブル発生件数などが含まれます。

ルーティン業務以外の業務

運用にはルーティン業務以外の業務があります。インシデント発生時の原因究明やその対策、構成管理がルーティン業務以外の業務です。

構成管理とはハードウェア・ソフトウェア・ネットワーク・サーバーといったシステムを構成する各要素がそれぞれ問題なく動作して、1つのシステムとして正常に機能するかを把握して管理することを指します。

システムの正常動作を維持することが、運用業務のカギと言えるでしょう。

イレギュラー対応が多い「保守業務」

保守では、障害やトラブル発生時の対応業務を主に担っています。運用が平常時の対応をメインに行うのに対し、保守は異常事態に対応するスペシャリストと言えるでしょう。

保守の仕事はトラブル対処に加えて、大きな障害を引き起こさないようバグ発見時の修正や、システムのアップデートも業務に含まれます。

保守と運用両方に共通する業務も多く、相互協力が欠かせないでしょう。

システムの改善業務

保守の業務にはシステム改善も含まれます。システム改善とは、OSやミドルウェア、アプリケーションのバージョンアップデートといった業務です。

コンピューターを常に最新のバージョンにしておくことは、セキュリティの面からも重要でしょう。システム障害を引き起こす要因を事前に取り除くことも、保守の大切な業務です。

緊急時の対応業務

緊急時の対応は保守の大切な業務です。特にシステム障害を引き起こすような大規模な障害発生時は、早急に問題を解決する必要があるでしょう。

トラブルが発生した時は、まずその原因を突き止めて適切な対処行動をとれるようなITの知識やスキルが必要です。まさかの時に備えて、日頃から自身のITスキル向上を目指しましょう。

運用と保守のために必要な資格4選

IT産業では資格システムが整備されており、スキルアップのために自分が携わる業務で必要な資格取得を目指す人も多いでしょう。運用と保守業務を担当するにあたり、取得していると良い資格も存在しています。

運用と保守におすすめの資格は、「マイクロソフト認定資格プログラム」「Linux技術者認定試験」「JP1認定技術者」「シスコ技術者認定」です。以下で各資格について詳しく見ていきましょう。

運用と保守のために必要な資格1:マイクロソフト認定資格プログラム(MCP)

マイクロソフト認定資格プログラム(MCP)とは、マイクロソフトが提供している製品に対するスキルや知識をレベル別に認定する資格試験となります。

資格の取得が就職を保証するものではありませんが、志望する分野に関わるMCPの取得で企業に好印象を与えられるでしょう。

MCPは世界中で通用する資格なので、現在のレベルチェックや技術者としてのレベルアップのために取得を目指す価値があります。

運用と保守のために必要な資格2:Linux技術者認定試験(LPIC1-3)

Linux技術者認定試験(LPIC)とはLinuxを扱う技術者のレベルを証明する資格で、1から3のグレードに分かれています。

LPIC1はLinuxの基本的知識や操作、LPIC2はLinuxのシステム管理や構築のための応用力を問うものです。LPIC3は専門分野ごとに試験内容が分かれます。

OSにLinuxを採用している企業もあり、LPIC資格保有者はLinuxを扱える技術者として重宝されるでしょう。

運用と保守のために必要な資格3:JP1認定技術者

JP1技術者資格認定制度とは、日立のJP1製品に対して日立アカデミーがそのスキルを認定する資格試験です。

JP1とは、日立が開発したITシステムの運用管理ソフトウェアを指します。システムの監視や業務の自動化、インフラやIT資産の管理などを総合的に担うものです。

JP1技術者資格認定制度はカテゴリーごとに分かれており、自分が取るべき資格を明確にして受験する必要があるでしょう。

運用と保守のために必要な資格4:シスコ技術者認定(CCNA,CCNP)

シスコ技術者認定とはシスコ製品に対するスキルを認定する資格制度で、シスコシステムズ合同会社によって提供されています。

資格は5つのグレードに分かれ、エントリー・アソシエイト・プロフェッショナル・エキスパート・アーキテクトの順でレベルアップが可能です。

CCNAはネットワーク技術のアソシエイト、CCNPはCCNAの上位資格でプロフェッショナルに相当し、ネットワーク技術を高めたい人向けの資格でしょう。

運用と保守に必須なスキルについて

運用と保守業務には、コミュニケーション力やドキュメント作成力が必要となります。

システムのユーザーから要望を聞きだすコミュニケーション力は、システムの改善に欠かせないでしょう。

ドキュメントとは、マニュアルや設計書を指します。ドキュメントの作成にはIT関連の知識に加えて、ITに対する知識が十分ではない相手にも伝わるような文章を作成するスキルが必須となるでしょう。

運用と保守業務からのキャリアパス3選

運用と保守業務から、別のITエンジニアにジョブチェンジが可能です。

運用と保守業務にはネットワークやサーバー、ハードウェアやソフトウェアといったIT関連の知識やスキルが欠かせません。これらはその他のITエンジニアとして働く上でも必要な知識・スキルと言えます。

運用と保守業務から別のITエンジニアへのキャリアパスの可能性について、以下で考えていきましょう。

運用と保守業務からのキャリアパス1:監視業務に経験は必須

運用と保守はシステムの監視業務をしています。監視業務に携わるにはネットワーク、サーバー、OSといったIT関連の知識に加えて、アプリケーションなどの挙動を記録したログを読む力が必要でしょう。

監視業務に用いるITの知識やスキルは、保守や運用以外のITエンジニアにも必要なものとして高評価が期待できます。

監視業務の経験を活かして、キャリアアップを目指すと良いでしょう。

運用と保守業務からのキャリアパス2:運用業務が必須

ITエンジニアには多くの種類がありますが、その中でシステムエンジニアはシステム開発の最初から最後まで、すべての工程に関わる必要があります。

運用業務で培ったシステム管理の経験は、システムエンジニアに転職したい場合にも役立つでしょう。

システム開発工程の一部を担う職務から、全体を見通せるエンジニアへのキャリアパスも視野に入れて将来を考えることもおすすめです。

運用と保守業務からのキャリアパス3:保守業務が必須

保守の業務は、バグの修正やシステム障害の復旧作業などトラブル対処が主なものです。プログラマーやシステムエンジニアといったITエンジニア職につく人は、開発工程でシステムトラブルが生じた際の対処が求められるので、保守の業務経験は役立つと言えます。

保守業務で培った問題対処能力を活かして、ITエンジニアへのキャリアパスを広げていきましょう。

運用と保守を兼任する際の注意点

運用と保守はどちらもシステムリリース後の作業で、共通している業務内容もあることから兼任することが可能です。

しかし運用は平常時のシステム管理で、保守はトラブル発生時の対処がメインの仕事となります。この業務の方向性の違いを心にとめて、運用と保守を兼任する際は一番に何の作業をすべきか、優先順位を明確にする必要があるでしょう。

運用と保守の違いを知り業務に携わりましょう

運用と保守の仕事の違いを把握して、それぞれの業務にあたりましょう。

運用と保守の勤務経験は、システムエンジニアやプログラマーなど他のITエンジニアに転職する時も役に立ちます。運用・保守の仕事からIT業界のキャリアをスタートさせるのも、キャリア形成の手段として有効です。

業務に必要な資格を取得してスキルアップしつつ、自分が将来的に目指したいITエンジニアに近づけるようにしていきましょう。