IT業界におけるベンダーとは?企業の特徴6つと代表的な企業を紹介

ベンダーとは

ベンダーとは、販売会社や製品を提供する会社のことです。ベンダーは英語で「vendor」と書き、「売る」という意味を持つ「vend」からできた名詞です。元々は、売主や売り手という意味で使います。

「ベンダー」という言葉は、早い時代からIT業界で広く使われてきたため、今でもIT業界で定着している言葉と言えます。「ITベンダー」はシステムやソフトウェアなどのIT製品を販売する企業のことです。また開発も行う販売会社を「開発ベンダー」と呼びます。

ITベンダーに関連するワード3選

販売会社や売主という意味で使われる「ベンダー」という言葉ですが、ITベンダーに関連するワードというものがあります。ITベンダーについて理解するためには、まずITベンダーに関連するワードを知ることは重要です。

この機会に「ベンダー」に関連するワードも覚えておきましょう。ここでは、ITベンダーに関連するサプライヤー、メーカー、ユーザの3つのワードについて解説します。

ITベンダーに関連するワード1:サプライヤー

ITベンダーに関連するワードの1つ目は「サプライヤー」です。「サプライヤー」とは、供給を行う企業のことです。英語の「supply」という動詞は供給する・配給するという意味で、そこからできた名詞が「supplier」です。

一般的に製造元から「ベンダー」に引き渡すのが「サプライヤー」の役割で、製造元から見ると仕入れ業者になります。製品メーカーにとっては原材料メーカーや部品メーカーがサプライヤーとなります。

ITベンダーに関連するワード2:メーカー

ITベンダーに関連するワードの2つ目は「メーカー」です。「メーカー」とは、製品の製造元のことです。

家電メーカーという言い方も広く使われ、日本においてはビジネスの現場だけでなく、一般の人にもなじみがある言葉と言えます。製品の流れ的には、まずメーカーで製造された製品がサプライヤーに渡り、サプライヤーからベンダーに供給されるという流れです。

ITベンダーに関連するワード3:ユーザ

ITベンダーに関連するワードの3つ目は「ユーザ」です。「ユーザ」とは、「ベンダー」から売られた商品やサービスを購入する買い手のことです。「ユーザ」は「ベンダー」とは対義語にあたる言葉と言えます。

製品の流れでは最後に行き着く先が「ユーザ」ということになり、最後に行き着くため「エンドユーザ」と呼ばれることもあります。すべての製品は「メーカー」から始まり「ユーザ」まで流れていくことになります。

IT業界におけるベンダー企業の特徴6つ

IT業界における「ベンダー」の意味は、一般的にIT製品をユーザに販売する企業のことを指します。しかしIT業界に関してはメーカーとベンダーの両方の役割を持つ会社が多いことが特徴です。

ここでは、IT業界におけるベンダー企業の特徴である、ハードウェアベンダー、ソフトウェアベンダー、システムベンダー、シングルベンダー、マルチベンダー、システムインテグレーターの6つについて解説します。

IT業界におけるベンダー企業の特徴1:ハードウェアベンダー

IT業界におけるベンダー企業の特徴の1つ目は「ハードウェアベンダー」です。ハードウェアベンダーとは、文字通りハードウェアの販売を行う企業のことを指します。

ハードウェアとは、家電製品やPCなどの実際に手で触れることができるIT製品のことです。このハードウェアは一般消費者が購入するものだけでなく、サーバーなどの法人が購入する製品も含まれます。

IT業界におけるベンダー企業の特徴2:ソフトウェアベンダー

IT業界におけるベンダー企業の特徴の2つ目は「ソフトウェアベンダー」です。ソフトウェアベンダーとは、ソフトウェアの販売を行う企業のことを指します。

ソフトウェアベンダーは動画編集ソフトや楽曲制作ソフトなどの特定の作業を行うためのソフトウェアを販売しています。前述したハードウェアベンダーとこのソフトウェアベンダーは扱う製品の違いによる分類と言えます。

IT業界におけるベンダー企業の特徴3:システムベンダー

IT業界におけるベンダー企業の特徴の3つ目は「システムベンダー」です。システムベンダーとは、顧客が求めるシステムを販売する企業のことを指します。

パッケージ化したシステムを顧客が求めるオプションなどを付けて提供します。顧客の環境に合わせたシステムを一から開発するというよりも、既存のシステムを組み合わせて販売するという特徴があります。

IT業界におけるベンダー企業の特徴4:シングルベンダー

IT業界におけるベンダー企業の特徴の4つ目は「シングルベンダー」です。ベンダーは扱う製品の製造元が単一か複数かでシングルベンダーとマルチベンダーの2つに分類することができます。

シングルベンダーは文字通り、特定の企業が製造した製品のみを取り扱っています。特定の企業が製造した製品であるので、互換性があり、不具合が生じにくいという特徴があります。

IT業界におけるベンダー企業の特徴5:マルチベンダー

IT業界におけるベンダー企業の特徴の5つ目は「マルチベンダー」です。特定の企業が製造した製品だけを取り扱うベンダーがシングルベンダーに対して、複数の企業の製品を取り扱うのがマルチベンダーです。

複数の企業の製品を取り扱っているのでビジネス的に有利だと思われがちですが、複数のメーカーが製造した製品を組み合わせることによって接続などで不備が出る可能性が生じるという特徴があります。

IT業界におけるベンダー企業の特徴6:システムインテグレーター

IT業界におけるベンダー企業の特徴の6つ目は「システムインテグレーター」です。システムインテグレーターとは、システムの企画、設計、開発、運用、保守までの業務を行う企業のことを指します。

IT業界では「SIer」とも呼ばれ、顧客の環境に合ったシステムを販売し、実際の運用までを支援します。他の特徴のITベンダーが製造された製品をユーザに販売するのに対して、システムインテグレーターは各顧客に対してサービスをカスタマイズするという違いがあります。

日本の代表的ITベンダー企業9社

日本国内のITベンダーは小規模なものも含めると約1万社以上あると言われています。その中で売り上げのシェアに関しては上位5社が約半数を占めており、過去10年間変化がありません。

それではどんなITベンダーが日本にはあるのでしょうか。ここでは、日本の代表的なITベンダーである富士通、トレンドマイクロ、マカフィー、日本IBM、NEC、大塚商会、野村総合研究所、NTTデータ、日立製作所の9つをご紹介します。

日本の代表的ITベンダー企業1:富士通

日本の代表的なITベンダー企業の1つ目は富士通です。富士通は1935年に設立された歴史ある企業で、日本のITベンダーの売上シェア1位を誇ります。

理化学研究所と共同で開発したスーパーコンピューター「富岳」は世界のスパコン性能ランキングにおいて4部門で上位にランクインしたことがあります。PCやスマートフォン、タブレット端末などのハード製品や半導体などの電子部品を製造しています。

日本の代表的ITベンダー企業2:トレンドマクロ

日本の代表的なITベンダー企業の2つ目はトレンドマイクロです。トレンドマイクロは1988年にカリフォルニアで設立され、主にコンピューターウイルス対策ソフトを販売しています。

国内におけるサーバ向けのウイルス対策製品の市場シェアの80%以上を占めています。個人向けのウイルス対策ソフトだけでなく、さまざまな企業や大学などにネットワークセキュリティーのソリューションを提供しています。

日本の代表的ITベンダー企業3:マカフィー

日本の代表的なITベンダー企業の3つ目はマカフィーです。マカフィーはアメリカ合衆国のカリフォルニア州に本社があるサイバーセキュリティーソフトを提供するソフトウェアベンダーです。1987年に設立されました。

PCやサーバー、ネットワーク向けのセキュリティ対策製品の開発や販売を行っています。携帯電話やタブレット端末向けの製品も開発しており、これらの市場において広く普及しています。

日本の代表的ITベンダー企業4:日本IBM

日本の代表的なITベンダー企業の4つ目は日本IBMです。日本IBMは1937年に設立され、アメリカのIBMの100%孫会社にあたります。

戦後から1980年代まではコンピューターのソフトウェアやハードウェアを取り扱っていました。現在ではサービス分野の事業に力を入れており、システムインテグレーション分野の売り上げは全体の約6割を占めるようになりました。

日本の代表的ITベンダー企業5:NEC

日本の代表的なITベンダー企業の5つ目はNECです。NECは1899年に設立され、有線・無線通信機器やコンピューター、ITサービスを主な事業としてビジネスを行なっています。

通信設備に関しては国内で首位という存在であり、光通信や通信衛星などさまざまな設備を販売しています。現在はハードウェア単体の販売から人工知能や生態認証を軸としたビジネスモデルにシフトしています。

日本の代表的ITベンダー企業6:大塚商会

日本の代表的なITベンダー企業の6つ目は大塚商会です。大塚商会は1961年に設立され、FAXやオフィスコンピューターなどのOA機器商社として成長しました。

現在はコンピューターのシステムインテグレーション事業やコンピューター機器の保守などのサポート事業、そして事務機器用品やオフィス雑貨を中心としたカタログ販売事業の3事業を中心にビジネスを進めています。

日本の代表的ITベンダー企業7:野村総合研究所

日本の代表的なITベンダー企業の7つ目は野村総合研究所です。野村総合研究所は1965年に設立され、システム運用やITソリューション、コンサルティングなどをトータルに提供しています。

流通業や金融業に関するシステム構築に強みがあり、日本郵政公社の郵政総合通信ネットワークの構築など、公共分野にも事業を拡大しています。また、ヘルスケア企業に対してソリューションとコンサルティングの両方からサポートしています。

日本の代表的ITベンダー企業8:NTTデータ

日本の代表的なITベンダー企業の8つ目はNTTデータです。NTTデータは1988年に設立され、システム構築事業やデータ通信を行っています。元国営企業である日本電信電話株式会社の子会社でNTTグループ会社の1つです。

主に金融や官公庁向けにシステム開発を行なっており、全国銀行データ通信システムや気象庁地域気象観測データ通信システムの構築も行なっています。

日本の代表的ITベンダー企業9:日立製作所

日本の代表的なITベンダー企業の9つ目は日立製作所です。日立製作所は1910年に設立され、情報通信システムや電子装備システムなどを提供しています。

情報機器はPCサーバやUnixサーバ、IoTと連携可能なクラウドコンピューティングに関する事業を強化しています。また、ディスクアレイ装置や擬似ベクトル型スーパーコンピューター、産業用パソコンなども手掛けています。

ITベンダーに依頼する際のポイント4つ

自社でシステムを開発できない企業はシステム開発をITベンダーに開発を依頼することになりますが、ITベンダーに依頼する際はいくつかの押さえておきたいポイントがあります。

ここでは、ITベンダーに依頼する際にポイントとなる価格に見合ったスキルを持っているか、一定の品質が見込める実績を持っているか、当方の実現したいシステムに適した技術があるか、作業人員確保は十分かの4点について解説します。

ITベンダーに依頼する際のポイント1:価格に見合ったスキルを持っているか

ITベンダーに依頼する際のポイントの1つ目は「価格に見合ったスキルを持っているか」です。ITベンダーにシステム開発を依頼する場合に、価格はピンキリです。

コストを抑え過ぎるとシステムによる課題解決ができないという失敗が起こります。価格が安いか高いかということにとらわれることなく、依頼するITベンダーが持っているスキルに対して価格が妥当かどうかを判断することが大切です。

ITベンダーに依頼する際のポイント2:一定の品質が見込める実績があるか

ITベンダーに依頼する際のポイントの2つ目は「一定の品質が見込める実績を持っているか」です。実績を積んでいるITベンダーは効率的な開発と品質を確保できる仕組みを構築している場合があります。

依頼しようとしているITベンダーが自社に構築したいシステムと類似したシステムを過去に開発しているなら、一定の品質が見込めると判断して良いでしょう。

ITベンダーに依頼する際のポイント3:当方の実現したいシステムに適した技術があるか

ITベンダーに依頼する際のポイントの3つ目は「当方の実現したいシステムに適した技術があるか」です。IT技術の進歩はめざましく、最新技術を持ったITベンダーほど探し出すのは難しくなります。

大手のITベンダーだからといって最新の理想的な技術を持っているかどうかは分かりません。実現したいシステムを構築するために適した技術を持ち、その技術を得意とするITベンダーを選ぶことが大切です。

ITベンダーに依頼する際のポイント4:作業人員確保は十分か

ITベンダーに依頼する際のポイントの4つ目は「作業人員確保は十分か」です。ITベンダーは人員を動員してシステムを構築する企業であるため、同時に抱えている案件が多いほど人の手が足りないという状況になりがちです。

依頼するITベンダーに業務経歴書や人員計画書の提出を求めるなどして作業人員をどれだけ確保してくれるかを確認することが重要です。

「ベンダー」に関するIT用語5選

ベンダーに関するIT用語を覚えれば、ベンダーについても理解が深まります。それでは、ベンダーに関連するIT用語とはどんなものがあるのでしょうか。

ここでは、「ベンダー」に関するIT用語であるベンダー資格(民間認定資格)、ベンダーコード(MACアドレス)、ベンダープレフィックス、ベンダーコントロール、ベンダーロックインについて解説します。

ベンダーに関するIT用語1:ベンダー資格(民間認定資格)

ベンダーに関するIT用語の1つ目は「ベンダー資格(民間認定資格)」です。ベンダー資格とは、ベンダーが自社で開発したコンピューターやソフトウェアなどのIT関連製品をユーザが適切に操作できるかを認証するために行う民間の資格制度のことです。

シスコシステムズやマイクロソフト社の認定資格がよく知られています。資格には有効期限を設けているものもあるので、取得後も失効しないように忘れずに更新するようにしましょう。

ベンダーに関するIT用語2:ベンダーコード(MACアドレス)

ベンダーに関するIT用語の2つ目は「ベンダーコード(MACアドレス)」です。ベンダーコードとは、MACアドレスの最初の6桁までの部分のことで、このベンダーコードはベンダーごとに一つ割り当てられています。

MACアドレスとは、ネットワークアダプタに付与された固有の識別番号で16進数の12桁で表されています。7桁目と8桁目で機種ID、9桁目から12桁目まででシリアルIDを表しています。

ベンダーに関するIT用語3:ベンダープレフィックス

ベンダーに関するIT用語の3つ目は「ベンダープレフィックス」です。ベンダープレフィックスとは、プログラミング言語であるCSSのプロパティにつける接頭辞のことです。

ブラウザベンダーが草案段階の仕様を先行で実装する際に、それが拡張機能であることを明示するための識別子の役割を果たします。草案から勧告候補になった場合はベンダープレフィックスは、はずすことが推奨されています。

ベンダーに関するIT用語4:ベンダーコントロール

ベンダーに関するIT用語の4つ目は「ベンダーコントロール」です。ベンダーコントロールとは、エンジニアの知識を活かしてシステムを発注する仕事です。

ベンダーコントロールという仕事は、システム開発に必要なエンジニアをまとめ、プロジェクトを進めることです。ベンダーコントロールに必要なスキルは、豊富なIT知識やリーダーシップ、的確な判断力など多岐に渡ります。

ベンダーに関するIT用語5:ベンダーロックイン

ベンダーに関するIT用語の5つ目は「ベンダーロックイン」です。ベンダーロックインとは、特定のベンダーが開発した製品やサービス、システムでユーザを囲い込み、他のベンダーが入り込むことができない状況にすることです。

ベンダーロックインに陥ると価格が高騰してもそのベンダーが提供する製品を買わざるを得ないため、選択肢が狭められてしまいます。ベンダーロックインの身近な例としてはマイクロソフトのWindowsが挙げられます。

IT業界で使われるITベンダーについて再認識しよう!

ITベンダーにはしっかりとした言葉の定義がないため、IT技術を使った製品やサービスを提供できれば誰でもITベンダーと名乗ることができます。一口にITベンダーと言ってもさまざまな種類があり、日本国内でも多くのITベンダーがビジネスを行なっています。

ユーザとしては多くのITベンダーが提供する製品やサービスを比較して最適なものを選ぶことが大切です。