GCP・AWS・Azureの比較7つ|特徴や今後の展望もわかりやすく紹介
代表的なクラウドサービスである「GCP・AWS・Azure」とは
クラウドサービスは、Google社が提供するGoogle Cloud Platform、Amazon社が提供するAmazon Web Services、Microsoft社が提供するMicrosoft Azureといった大手のものが主流です。
しかし、この3大クラウドを含む各クラウドベンダーは多数の機能を提供するだけでなくコモディティ化してきているため、どのクラウドサービスを選ぶべきか悩むことも少なくないのではないでしょうか。
そこで、この記事では3大クラウドの特徴を比較していきます。
GCP・AWS・Azureのシェア率
ここでは3大クラウドのそれぞれの市場シェア率について、直近2年間の推移を見ていきます。
Acrovisionによると2018年、2019年においてAWSの2018年市場シェア率は32.7%、2019年市場シェア率は32.3%でした。
Azureは、2018年の市場シェア率が14.2%、2019年の市場シェア率が16.9%でした。
GCPは、2018年の市場シェア率が4.2%、2019年の市場シェア率が5.8%でした。
GCP・AWS・Azureそれぞれの特徴
前述のように、クラウドサービスの市場は3大クラウドが過半数を占めています。
それゆえ、クラウドサービスの導入を検討するときは、この3つから選ぶのが普通です。しかし、3大クラウドは、どれも似たサービスを提供しているように感じるかもしれません。
けれども、よく比較してみればサービスに違いがあることがわかります。そこで、3大クラウドのサービスの違いを以下に見ていきます。
GCPの特徴2つ
GCPはGmail、YouTube、Googleマップなど、Google社が提供するサービスを稼働させるプラットフォームとしても利用されるため、豊富なサービス運用の実績があります。
以下に、GCPの特徴を2つ紹介します。
GCPの特徴1:幅広いAIと機械学習関連のサービスがある
GCPは主に5つのAIと機械学習関連のサービスを提供しています。まず「Learn with Google AI」はAIと機械学習の講座サービスです。次の「Google Colaboratory」は機械学習の教育や研究を目的にした実行環境(Jupyter notebook)をブラウザ上で使える無料サービスです。
3つ目の「TensorFlow」は機械学習用のライブラリで、4つ目の「Cloud ML Engine」は機械学習を実行するためのサービスです。
5つ目の「Cloud AutoML」は機械学習モデルを構築するためのサービスで、それにより独自の画像認識モデルを作成することができます。
GCPの特徴2:データ分析が行いやすい
検索エンジンの会社として有名なGoogle社は、ビッグデータの解析に大きな強みがあり、膨大なビッグデータを高速で処理する技術を持っています。
GCPはGoogle社が所有するこの技術をクラウドサービスとして利用できるため、GCPにはデータ分析を容易に行えるインフラが備わっていると言えます。
AWSの特徴2つ
Amazon.com社が2006年7月にEC2サーバーを公開して始まったAWSは、クラウドサービスの中でも長い歴史を持ち、業界でも高いシェアを誇ります。
以下に、AWSの特徴を2つ紹介します。
AWSの特徴1:クラウドサービス市場の中で利用者が多い
Amazon社はAWSが選ばれる理由を10個挙げています。まず「初期費用ゼロ/低価格」と「継続的な値下げ」は価格的な理由です。
「サイジングからの解放」と「マネージドサービスによる運用負荷の軽減」は運用面から見た理由ですが、「ビジネス機会を逃さない俊敏性」と「いつでも即時にグローバル展開」はビジネス展開に関わる理由です。
「最先端の技術をいつでも利用可能」と「開発速度の向上と属人性の排除」は技術開発面から見た理由ですが、その他「高いセキュリティを確保」と「24時間365日、日本語によるサポート」という理由があります。
AWSの特徴2:多くの標準技術を推進している
AWSは、インターフェースとAPIで多くの標準技術を提供しているため、それをベースにしたアプリケーション開発を推進しています。そして、そのことは、Gartner Research社の評価によっても裏付けられています。
同社は、2020マジッククアドラント(特定市場における競合各社の相対的な位置付けを示すリサーチ)のクラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービス(CIPS)の部門において、AWSをリーダーとして位置づけました。
そして、このCIPSは、インフラストラクチャリソース(コンピューティング、ネットワーキング、ストレージなど)を統合されたプラットフォームサービスで補完する高度に「標準化」され、自動化された提供タイプと定義されています。
Azureの特徴2つ
AzureはMicrosoft社が2010年にサービスを開始してから順調に売上を伸ばし、上述のようにクラウドサービス市場におけるシェアがAWSに次ぐ第2位となっています。
以下に、Azureの特徴を2つ紹介します。
Azureの特徴1:Windowsに対する親和性が高い
Azureを提供するMicrosoft社はWindowsを手掛けていますが、それは個人用PCだけでなく、企業用サーバーなど多くのITインフラで採用されています。
AzureはそのWindowsを基盤としたサービスなので、WindowsベースのITインフラを構築した企業は、それを違和感なく利用できます。
それゆえ、AzureはWindowsを利用している企業にとっては非常に使いやすく、親和性の高いサービスと言えます。
Azureの特徴2:オンプレミス環境とも容易に連携を行える
Azure Stackを使用すると、Azureのサービスと機能を選んだ環境 (データセンター、エッジの場所、リモート オフィスなど) に対して拡張することができます。
その結果、管理者などは開発に携わるパブリッククラウド環境とオンプレミス環境を1つの画面で管理できるようになります。
したがって、既にあるオンプレミス環境のActive Directoryとも簡単に連携を行えるので、ハイブリッドクラウド構成を具現化する基盤としては最適と言えます。
GCP・AWS・Azureを多角的な視点から見たときの比較7つ
ここまでは、3大クラウドの市場シェア率や特徴について見てきました。
ここからは、3大クラウドをそれらが実際に提供している個別機能を軸にして、多角的な観点から比較していきます。
GCP・AWS・Azureの比較1:ストレージから見る比較
またファイルストレージについて、AWSとGCPはNFSを、AzureはSMBをプロトコルとして利用しています。
オブジェクトストレージについて、AWSとGCPはデータへのアクセス頻度に応じた価格ですが、Azureの価格は格納するオブジェクトの種類や用途ごとに細分化されています。
またデータの転送サービスについて、Azure Data Box HeavyとGCPのTransfer Applianceは最大1PBですが、AWSのSnowmobileはセミトレーラートラックを利用して最大100PBまで送れます。
GCP・AWS・Azureの比較2:コンピュートリソースから見る比較
ベアメタルサーバーについて、AzureはSAP HANA用途でのみ利用可能です。一方、GCPのサービスでは、コロケーションスペースに物理サーバーを配置する形になっています。
コンテナについては、各社ともGoogle社がコンテナの運用管理ツールとして開発したBorgをOSS化したKubernetesを提供しているため、コンテナの運用負荷を軽減することができます。
またAWS Fargate、Azure Container Instance、およびGCPのCloud Runはサーバーレスで運用するコンテナ基盤なので、迅速な開発が可能です。
GCP・AWS・Azureの比較3:ネットワークから見る比較
各社とも仮想ネットワークのプライベート環境を提供していますが、GCPは1つのVPCで複数のリージョンをカバーしています。また各社ともL4/L7におけるロードバランサーを備えますが、AWSのELBはハイブリッド構成によりオンプレミスリソースの負荷を分散しています。
そして権威DNSのサービスを各社とも提供しており、パブリック側とプライベート側それぞれのネットワークに対して名前解決が行えます。
また各社とも仮想サーバーやコンテナ基盤を追加費用なしで利用でき、オリジンサーバーに設定したCDNでアクセスの負荷を軽減しています。
Amazon VPNとAzure VPN Gatewayは、サイト間およびサーバーとクライアント間のVPNを提供していますが、AzureではActive Directoryを利用した認証が可能です。
GCPはサイト間だけなので、グローバルIPアドレスのないサーバーへのアクセスはCloud VPN経由で行うか、踏み台サーバーを利用します。
GCP・AWS・Azureの比較4:データベースサービスから見る比較
リレーショナルデータベースについては、各社とも複数拠点へのレプリケーションを標準装備しています。Amazon Auroaはクラウド環境の最適化のために耐障害性と自己修復機能を持ち、自動でインスタンスごとに最大64TBまで増大可能です。
一方、AzureのSQL Server Stretch Databaseは、オンプレミス環境のSQL ServerをAzureに拡張できるサービスです。
またCloud Spannerは、トランザクションとの整合性を保ちつつ水平方向のスケールを可能にしたサーバーレスのリレーショナルデータベース管理システムです。
データウェアハウスについて、AWSはS3にデータを格納し、そのデータにAmazon Redshift Spectrumを使って直接SQLクエリを実行します。一方、AzureのSynapse AnalyticsはSQLに加えてSparkによる分析も可能です。
GCPのBigQueryは、サーバーレス方式でデータウェアハウスを提供しているため、他社に比べて運用が簡単です。また、組み込みの機械学習機能も利用できます。
GCP・AWS・Azureの比較5:セキュリティから見る比較
AWSはACM(AWS Certificate Manager)と連携するサービスには無料でSSL証明書を出しまが、プライベートCAの場合は有料です。
またAzureはApp Service、GCPはCloud Load Blancingによりマネージドの証明書サービスを行いますが、ACMが持つ有効期限の監視や自動更新の機能はありません。
暗号鍵の管理については、各社ともマネージドのHSMとの連携が可能です。そのため、運用に手間取ることなくセキュリティの向上をはかれます。
ネットワークセキュリティサービスについては、各社ともVPC機能に付随したファイアウォールに加えてDDoS防御や、WAFの機能を利用できます。そのWAFでは、各社ともマネージドのルールセットの利用だけでなく、ルール自体のカスタマイズも可能です。
GCP・AWS・Azureの比較6:アプリケーション・ツールから見る比較
コード管理については、各社とも無制限でレポジトリを作成でき、5人のユーザーまで無料で利用可能です。またCI/CDについては、各社ともプロセスごとにサードパーティーのツールを組み込めますが、GCPは既存のDockerfileをインポートして利用できます。
IDEについて、AzureのVisual StudioにはAzureへの拡張機能を含むため、それを使ってアプリケーションを構築したユーザーは、その環境をそのまま利用できます。
一方、GCPのCloud9はクラウドベースのIDEでリッチエディタやデバッグ、AWS CLIがプリインストールされているために環境構築は不要です。
GCP・AWS・Azureの比較7:料金体系から見る比較
料金体系は各社とも使用した分だけ払う従量課金制ですが、AWSは最初の1GBが無料で、Azureは最初の5GBが無料です。
しかし、転送料金について10TB使用時と40TB使用時で比較すると、両者の転送料金はほぼ同じです。GCPは、10TB使用時が約2割増し、40TB使用時が約3割増しとなります。
インスタンス料金については、バーストタイプからvCPU数やメモリ量の近いインスタンスを選び時間単価(1ドル=109円換算)で比較すると、AWSのt3.smallとAzureのB1MSは共に2.9648円/時です。GCPのg1-microは3.5098円/時です。
ただし、GCPは継続利用割引が自動で適用されます。また、Azureには1年間の予約割引、AWSにはリザーブドインスタンスと呼ばれる予約割引があります。それゆえ、比較する期間や割引率によっては、この順位が変わる可能性があります。
GCP・AWS・Azureそれぞれの今後の展望3つ
3大クラウドの間では、成長分析、新しいアプリケーションとシステムを構築するときのデータセットの使用など、開発チームや運用チームのニーズを満たすための競争の激化が継続しています。
ここでは、3大クラウドの今後の展望について、それぞれ見ていきます。
GCP・AWS・Azureの展望1:GCP
AWSとAzureの後塵を拝するGCPですが、2019年にかけての成長率は非常に高く、87.8%も成長しています。
GCPは、引き続き企業顧客の新規開拓とチャネルパートナーのネットワークを構築することを進めています。
今後さらに市場シェアを伸ばすには、得意とするビッグデータの解析や機械学習の技術に磨きをかけるだけでなく、日本のリージョンや日本語情報が少ないというデメリットの改善が求められるでしょう。
GCP・AWS・Azureの展望2:AWS
AWSはこれまでクラウドで提供されていましたが、2018年にオンプレミスの環境でもクラウドと同等のサービスを実現するAWS Outpostsというサービスを発表しました。
そして、2019年12月に、日本でもOutpostsの利用が始まりました。それゆえ、AWSとしては、これにより一層の市場シェアの拡大を期待したいところでしょう。
GCP・AWS・Azureの展望3:Azure
Azureは2021事業年度の戦略として、「クラウドネイティブなアプリケーション開発と既存アプリケーションのモダナイズ」「既存アプリケーションのAzure移行」「クラウド導入プロセスの標準化とCCoE文化の醸成」の3つを掲げています。
最初の戦略は広くパートナーと付き合うこと、特にデータ分析など専門分野に関するパートナーの拡充を目指しています。
また2つ目の戦略は、OEMハードウェアパートナーやSIパートナーと共に、データセンターのサーバーを「Azure Stack HCI」(ハイパーコンバージドインフラストラクチャーに向けたサービス)に移行させることが目的です。
3つ目の戦略は、Microsoft社のクラウド導入フレームワーク「Cloud Adoption Framework」の提供や、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する専門チーム(CCoE)の拡充を狙っています。
さらに3つ目の戦略では、Azureの習熟度を高める「ESI(Azure Enterprise Skill Initiative)」のリニューアル、AIビジネススクール「Education with AI Business School」による無償オンラインコースの提供をしています。
そしてインターネット上の仮想施設「Virtual Azure Base」の展開も計画しています。
GCP・AWS・Azureのそれぞれの違いを理解しよう
ここまで3大クラウドと呼ばれるAWS、Azure、GCPについて、市場シェア、特徴、個別機能の観点から比較と展望を見てきました。どのクラウドベンダーも同等の機能があるように見えますが、利用できる環境や連携するサービスなどによって違いが出てきます。
そして、その違いを知らなければ、求めるパフォーマンスを発揮させることが難しくなります。それゆえ、GCP、AWS、Azureのそれぞれの違いをしっかりと理解しましょう。