ブラックIT企業の見分け方|社風・制度に関する4つの見分け方とは

なぜIT業界はブラック企業が多いと言われるのか

IT業界にブラック企業が多いと言われる理由は、長時間労働・深夜残業・エンジニア35歳定年説・3K(キツい・厳しい・帰れない)などのネガティブなイメージがあるためです。そして、このようなイメージ通りのIT企業は実際に存在しています。

しかし、IT企業の全てがブラックということではありません。逆に、ワークライフバランスを重視しているIT企業もあります。

つまり、IT業界はブラック企業が多いというよりも、「ブラック企業とホワイト企業の差が激しい業界」というのが妥当な表現と考えられます。

ブラック企業が多いとされているIT職種3つ

IT業界には、たくさんの職種が存在します。その中で、特にブラック企業が多いと言われている職種は、営業関係・プログラマー・Webディレクターの3つです。

上記3つの職種でブラック企業が多い理由は、その仕事内容にあります。

以下に、それぞれの仕事内容とブラック化しやすい理由についてご紹介しますので、IT業界への就職・転職を考えている方は目を通しておきましょう。

ブラックとされているIT職種1:営業関係

ブラックとされるIT職種1つ目は、営業関係です。IT業界の営業では、出先で営業業務を行った後に多量の事務作業が待っています。このために残業時間が延びやすく、必要以上の労働時間を強いられることがあります。

さらに、成績が数字などで可視化されやすいため、成果主義の傾向が強いと言われています。

営業業務の中で成績が伸びない社員が明白になりやすく、上司からパワハラに近いプレッシャーを与えられることも珍しくありません。

ブラックとされているIT職種2:プログラマー

ブラックとされるIT職種2つ目は、プログラマーです。人員不足でありながらクライアントの要望に振り回される立場のため、長時間労働が当たり前になりやすいと言われています。納期もクライアント主権なので、時間的にかなり追い込まれる仕事です。

時間的・体力的に無理のある要望をするクライアントに当たると、長時間労働や未払い賃金が発生し、ストレスや不満によって職場環境が荒れます。

結果として、パワハラや社内いじめが起きた事例もあり、心身ともに過酷な労働現場となり得ます。

ブラックとされているIT職種3:Webディレクター

ブラックとされるIT業種3つ目は、Webディレクターです。Webディレクターはクライアントの要望を引き出して仕様を決め、社内の各職種に合った仕事を割り振る役割を担います。多くの人に直接関わるので、基本的に気力を使う仕事です。

仕事の幅が広いので消耗の多い職種ですが、その中で要望が頻繁に変わるクライアントに当たった時には大変です。社内からの反発も受けて板挟みとなり、困窮状態になることもあります。

残業時間も長いので、ブラック企業では特に過酷な役回りと言えます。

【企業別】ブラック企業になる要因

多くの企業は、始業当初からブラックではありません。社会やビジネスの変化に伴う影響を受けて、徐々にブラック企業になってしまったところが大半を占めています。

ブラック企業になる要因は複数あり、企業・業界・職種などによって強く影響する内容は異なります。

今回はブラック化しやすいと言われている3つの企業、「IT企業」「中小企業」「ベンチャー企業」に分けて要因をご紹介しますので、参考にしてください。

IT企業全体から見る要因5つ

まず、IT企業全体で見られるブラック化の要因をご紹介します。

IT企業全体で見られる要因には「人員不足」「クライアント主権」「成果主義」といったものがあり、いずれも過酷な労働や心身的疲弊に繋がるものです。

以下で、それぞれの要因について確認しておきましょう。

ブラック企業になる要因1:人員不足

IT企業がブラックになる要因1つ目は、人員不足です。

デフレの影響で元請企業がコストカットを重んじるようになってから、元請と下請の両方で人件費削減のために社員を減らす企業が増加しました。

特に下請の人員不足は、各社員の負担を増やすものとなりました。さらに新自由主義的グローバリズムの影響で短期主義の傾向も強くなり、ゆとりのない納期に追われる過重労働と上司の高圧的な言動が目立つようになったと言われています。

ブラック企業になる要因2:クライアントに振り回されている

IT企業がブラックになる要因2つ目は、クライアントに振り回されることです。

プログラマーやITエンジニアといった業種は、クライアントから依頼を受けて開発などを行うため、仕事を任せることに関する思慮や考慮に欠けるクライアントに当たると大変振り回されます。

もちろん、その影響はWebディレクターやWebプロデューサーなど複数の業務に携わる指示役の社員にも及びます。

案件に関わる社員や上司のストレス・不満が極まると社内環境が悪化し、社員同士の中でも負担を与えるような事態が起きかねません。

ブラック企業になる要因3:一度決めた納期は動かせない

IT企業がブラックになる要因3つ目は、一度決めた納期は動かせないことです。クライアントに振り回される内容の1つに、納期があります。

納期はクライアントが主体となって決めるため、無理のある設定をされると携わる社員には大きな負担がかかります。

新自由主義的グローバリズムによる短期主義の影響で、クライアント側も難しい納期で依頼せざるを得ないケースもあります。

しかし、それによる心身的負担を大いに受けるのは依頼を受けた企業界の社員であり、過重労働による疲弊を起こすことに繋がります。

ブラック企業になる要因4:要望が二転三転する

IT企業がブラックになる要因4つ目は、要望が二転三転することです。

クライアントの事情によって、提示される要望がコロコロ変わるケースもあります。この要因も納期の件と同様、クライアントに振り回されることの1つです。

開発には多くの人が関わるため、要望が二転三転する可能性は常にあります。

しかし、要望が変わるとこれまでの作業が無駄になったり、納期そのままで初めから作り直すといった事態が起こり得ます。こうなると、作業を実際に行う全ての社員が疲弊します。

ブラック企業になる要因5:成果主義である

IT企業がブラックになる要因5つ目は、成果主義です。

IT業界は営業関係だけでなく、社外のクライアントや社内の企画者の要望を受けて開発を行う作業者も成果主義な傾向にあります。開発の結果は実績であり、出来の優劣が目に見えて現れるからです。

要望通りの優れた結果になるよう、細かな意見通りに作業を進める必要が出てきます。そういったプレッシャーと仕事時間の超過が、社員に大きな負担を与えます。

また、営業も含め、良い成果を生まない社員にはさらなるプレッシャーをかける企業もあります。

中小企業から見る要因3つ

続いて、中小企業がブラック化する主な要因をご紹介します。

大手の下請をすることが多い中小企業はデフレや短期主義の影響を強く受けており、厳しい日程や、低い発注費用のシワ寄せや多重下請け構造によるデメリットが大いに反映されます。

結果として、利益優先な中小企業も増えました。利益優先になった企業は社員の労働負担が二の次以降になり、ブラックと言わざるを得ない状況になります。

以下で、中小企業がブラック化する要因を確認しておきましょう。

ブラック企業になる要因1:厳しい日程や低い発注費用によるシワ寄せ

中小企業がブラックになる要因1つ目は、厳しい日程や低い発注費用のシワ寄せがくることです。

元請企業は自社のコストカットを図りながら安く早くといったニーズに応える風潮が強いため、下請けには低い費用と厳しい日程で案件を持ち込む傾向にあります。

過重労働をしなければ間に合わない納期設定により、作業を行う社員は時間的にも体力的にも追い込まれてしまいます。

さらに、与えられる費用も好景気時より低下したことで人員削減が実施された企業も多く、人員と時間の兼ね合いが取れていないのが現状です。

ブラック企業になる要因2:多重下請け構造の影響

中小企業がブラックになる要因2つ目は、多重下請け構造の影響です。

「下請けの下に下請けがいる」といった多重下請け構造で進められる案件では、どこかで問題や変更が起きると業務がスムーズに運ばなくなります。そして、その影響は下の段階にある企業ほど及びます。

もちろん、何の問題もなく全ての流れがスムーズに進むこともあります。

しかし、必ずしも正常に進むわけではないため、出戻りやスケジュール遅延による労力増加のリスクは常に隣り合わせです。この問題が頻繁に起きると、過重労働を強いられることになります。

ブラック企業になる要因3:利益優先である

中小企業がブラックになる要因3つ目は、利益優先です。

下請けの企業は元請けが重視するコストカットの影響を強く受けており、設定される納期も短期主義な傾向が強くなっているため、ワークライフバランスよりも利益を優先する企業は少なくありません。

また、利益優先の要因でブラック化するのは中小企業だけではありません。大手企業もデフレの影響でコストカットなど企業本位の施策が取られているので、人員不足の中で短期の案件を行うといった過重労働環境がある企業も珍しくありません。

ベンチャー企業から見る要因4つ

ベンチャー企業とは、これまでにないサービス提供や商品の開発を行なう方法で新ビジネスを手掛ける企業です。始まりは極めて小規模なケースも多く、中小企業よりもかなり少ない資金・人員・スペースで始動することも珍しくありません。

従来のサービスや商品に挑むのは知名度や実績などの面で不利な点が多いため、競争の観点では先に始めたり、新しく作ったりするというのは有利と言えます

しかし、ベンチャーだからこその特徴がブラック化を招いてしまった事例も少なくありません。

ブラック企業になる要因1:次々に新規事業を展開する

ベンチャー企業がブラックになる要因1つ目は、次々に新規事業を展開することです。

新ビジネスのパイオニア(開拓者)になる企業として、良さそうと思った事業や受けた案件に応じた内容を次々に展開するベンチャー企業もあります。

しかし、始まりの規模が小さい場合、そういったやり方はコスト面でのリスクがあります。資産と業務の兼ね合いを考慮しなければ、過重労働や倒産に繋がります。

特にベンチャー企業は、全くの初心者が始めることも多いので、ビジネス的な失敗例は数多く存在します。

ブラック企業になる要因2:少人数なので業務量が多く業務範囲も大きい

ベンチャー企業がブラックになる要因2つ目は、少人数で個々の業務量が多い上に業務範囲も大きいことです。

もともと小規模で始動することが多いベンチャー企業は人員も少ないため、1人1人の業務が広く多くなりがちな傾向がよくみられます。

成長途中でギリギリな状態を続けている企業も多いため、業務量の割に給与が増えなかったり、過重労働による疲弊で効率が落ちたりするといった事態も併発しやすい状況になりがちです。

運用のバランスを図り、人的な効率を下げない工夫も重要と言えます。

ブラック企業になる要因3:働き方を強要する

ベンチャー企業がブラックになる要因3つ目は、働き方の強要です。ブラック企業で強要されることが多い「働く上での意識」は、「気合・やる気・社会人なら当然」などの言葉を使った精神論です。

特に、過重労働などの問題を正当化しようとする精神論には注意してください。

明らかに労働時間を超過していたり、納期的な無理のある案件ばかりが続いていたりなど、問題がある時に「やる気があればできる」など精神論をかざす企業は人間的な思慮に欠けています。

ブラック企業になる要因4:人的リソースが追いついていない

ベンチャー企業がブラック企業になる4つ目は、人的リソースが追い付いていないことです。リソースとは資源のことで、人は物・金・情報といった他の経営資源を動かす最重要リソースと言われています。

つまり、人的リソースが追い付いていないというのは、業務量に対して人員や適した人材が不足している状況です。

近年は企業成長が早いため、新ビジネスに携わるベンチャー企業は忙しくなっています。その中でやりがいより大変さが上回ると、ブラック化しがちです。

ブラックIT企業の見分け方

社内がブラック化している企業には、統計的な特徴があります。特に確認が必要と言われている点は、勤務体系・求人・残業代・社風や制度などです。

もちろん、その特徴に当てはまるからと言って必ずブラック企業ということではありませんが、参考までに各特徴をご紹介しましょう。

勤務体系に関する見分け方2つ

勤務体系に関する見分け方のポイントは、裁量労働制とフレックスタイム制にあります。

ブラック企業ではこれらの制度を悪用していることがあるため、以下にご紹介する事例を参考に注意してください。

裁量労働制を悪用しているケース

勤務体系に関する見分け方1つ目は、裁量労働制です。大企業で適用されることが多い裁量労働制は、悪用されると残業代と労働時間が見合わない状況になります。

たとえば、1日のみなし労働時間を9時間とした場合、法定労働時間の8時間を超える分(1時間分)の割増残業代を支払えば、9時間以上の残業代は払わなくても良いことになります。

ただし、休日や深夜の割増賃金は発生します。

フレックスタイム制を悪用しているケース

勤務体系に関する見分け方2つ目は、フレックスタイム制です。

フレックスタイム制は始業や就業の時間を自分で自由に決められる働き方制度のため、それを悪用して「出社と帰社の時間が自由な代わりに残業代も出ません」とする企業・会社も存在します。

しかし、フレックスタイム制があっても、清算期間における総所定労働時間よりも実務時間が長い場合は残業代が出ます。

つまり、フレックスタイム制を理由に残業代がないとする企業は、その制度についてよく知らない人に嘘をつくという形で悪用していると言えます。

求人に関する見分け方3つ

求人に関する見分け方ポイントは、求人の頻度・募集の地域・未経験の採用時期などです。

求人という観点だけで見分けるのは難しいと言われていますが、何らかの接触を行う前に確認できるものなので、1つの参考程度に捉えてください。

ブラックIT企業の見分け方1:いつも求人を出している

求人に関するブラックIT企業の見分け方1つ目は、求人を出す頻度です。

頻繁に求人を出している企業は常に人員が不足している可能性が高く、また急成長中の場合は社員の定着率が極めて低い傾向にあります。

そのような状況の中で大量募集を頻繁にかけている会社や、補充要員となるエンジニアを常時採用しているIT企業は注意が必要です。

そもそも短期的に過重労働させる目的で、社員をこき使う可能性が高いためです。

ブラックIT企業の見分け方2:遠方・他県から募集の求人がある

求人に関するブラックIT企業の見分け方2つ目は、遠方や他県からの募集求人があることです。

ブラック企業の中には、遠い地域の人を使い捨てとして雇おうとするところもあります。この場合、過重労働させる目的で雇うため、そもそも長く働く社員は期待していません。

ブラックIT企業の見分け方3:中途採用で未経験者を通年採用している

求人に関するブラックIT企業の見分け方3つ目は、未経験者を途中採用で通年募集していることです。企業が未経験者を採用する理由は様々ですが、ブラックIT企業の場合には、単純作業を延々とさせるためにそういった求人を出すこともあります。

つまり、未経験者に対してスキルの成長に繋がる教育をせず、雑務的な作業だけをずっとやらせるということです。これでは給与が上がる見込みはありません。

また、IT業界に就職する未経験者は成長を考えている方が多いため、不満と疲労が溜まりがちです。

残業代に関する見分け方3つ

残業代に関する見分け方のポイントは、1ヶ月の残業時間・年棒制・みなし残業代にあります。

働く上で、給与に関係する内容はとても大事なことです。ブラックIT企業の場合、正当に給与が貰えない可能性があるため、確認しておきましょう。

ブラックIT企業の見分け方1:1ヶ月の残業時間を確認する

残業代に関するブラックIT企業の見分け方1つ目は、1ヶ月の残業時間です。

法定労働時間超えの残業や休日出勤には、企業と労働者の合意で労使協定(サブロク協定)を結ぶ必要があります。以下の規定に沿わない場合はブラックの可能性があります。

協定を結べばいくらでも残業を強いても良いわけではなく、時間には上限が設けられています。1ヶ月45時間、1年間360時間が限度です(3ヵ月以上の1年単位の変形労働時間制対象者は1ヶ月42時間・1年間320時間が限度)。

ただし、忙しい時期で仕事が終わらない時のために特別条項があります。特別条項付きの協定を行えば、1ヶ月45時間以上の残業が年6回認められます(1年間の上限740時間・1ヶ月100時間未満・複数月平均80時間以内)。

ブラックIT企業の見分け方2:年俸制ではないか

残業代に関するブラックIT企業の見分け方2つ目は、年俸制か否かです。

ブラック企業の中には「年俸制だから残業代はない」と社員に説明するところもありますが、基本給に該当する時間以外の業務は、残業として残業代が発生します。

年棒制や残業代などについての知識が薄い労働者に上記のような嘘をつき、残業代なしで働かせるという手口です。

もちろん、年棒制だからブラックということではありません。ただ、上記のような説明がある企業はブラックと考えてよいでしょう。

ブラックIT企業の見分け方3:みなし残業代を悪用していないか

残業代に関するブラックIT企業の見分け方3つ目は、みなし残業代です。みなし残業代(固定残業代)とは、企業が予め予測した一定時間の残業代を給与に固定する形で設定した賃金体系のことです。

つまり、ひと月の残業代は固定なので、どれだけ残業しても同じ残業代しかもらえません。

全てのIT企業ではありませんが、一部ではみなし残業代を用いているケースもあり、実務時間を時給換算すると、アルバイト程度の収入になっている場合もあります。

職務手当が残業代の代わりになっていないか

残業代に関する見極めポイントでは、職務手当との兼ね合いにも注意が必要です。

職務手当とは。特定職務で必要な技能・技術・資格・責任などの程度に応じて支給される手当で、残業代などとして支給する規則を設けている企業は多くあります。

しかし、職務手当に残業代を含むためには要件を満たさなければなりません。その要件は、支給側と労働者の合意があること、所得労働時間の対価(基本給)と時間外労働対価が明確に区別されていることの2つです。

要件を満たさず、職務手当に残業代を含めている場合はブラック企業の可能性が高いと言えます。

他にも労働時間など様々な面で法に反する内容がある時には、ブラックの可能性が高いので、気になることがある時には、法的な面も調べた方が良いでしょう。

社風・制度に関する見分け方4つ

社風や制度に関する見分け方のポイントは、中堅クラスの社員数・福利厚生や人事評価の整備度・休日制度・常駐開発の有無などにあります。

これらの項目は、実際に働く上で社員にとって重要な内容になるため、それぞれの見分け方を確認しておきましょう。

ブラックIT企業の見分け方1:中堅クラスの社員がどの程度いるか

社風・制度に関するブラックIT企業の見分け方1つ目は、中堅クラスの社員数です。

環境が劣悪な企業は離職率が高いため、勤続4年以上の中堅クラスと呼ばれる社員の数が少ない傾向にあります。そのため、中堅クラスの社員数は見分けの参考になります。

中堅クラスが多い企業なら、自身も3~4年以上勤続できる可能性があると考えられます。

逆に、若者しかいない場合や、若年層と中堅クラス以上の間に年齢の差が大きい場合には注意が必要です。公表される社員平均年齢や、面接担当者の感じから確認しましょう。

ブラックIT企業の見分け方2:福利厚生・人事評価が整っているか

社風・制度に関するブラックIT企業の見分け方2つ目は、福利厚生や人事評価が整っているか否かです。福利厚生は雇用保険の加入・有給休暇・特別休暇などのことで、ブラック企業では適切な設定・待遇になっていないケースが多くあります。

人事評価は、社員の評価に沿って育成して生産性向上を図り、企業の業績アップに繋げるシステムです。定めた目標に対し、1年間で残せたプロセスと結果から給与が決まります。このシステムがない企業は、社員の成長を妨げるブラック企業の可能性があります。

ブラックIT企業の見分け方3:「週休2日制」と「完全週休2日制」

社風や制度に関するブラックIT企業の見分け方3つ目は、週休制度です。

IT業界も含め、大半の企業では週休2日制(1ヶ月に週2日の休みがある週が1回以上ある制度)または完全週休2日制(毎週必ず2日の休みがある制度)を採用しています。

どちらかの週休制度を採用していない企業や、採用を謳っているが実際には適用されていない企業はブラックを疑った方が良いでしょう。

社員の心身的健康や時間的・体力的な問題も考慮せず、代替えの効く人員として過重労働を強いる可能性が高いでしょう。

ブラックIT企業の見分け方4:常駐開発を実施している企業は注意

社風や制度に関するブラックIT企業の見分け方4つ目は、常駐開発の実施有無です。常駐開発とは雇用採用された会社と別の会社に常駐して業務に携わることで、ブラックIT企業では低待遇の下流工程のみ任されて成長できないケースがあります。

ただし、ホワイト企業にも常駐開発はあります。そのため、常駐開発を実施しているから必ずブラックということではありません。

この点を主体として見分けるのはとても難しいので、補足ポイントとして他の見分け方のポイントも踏まえた方が良いでしょう。

IT業界のブラック企業事例3つ

IT業界にブラック企業が多いというイメージがある理由には、実際に起きた事例が大いに関係しています。事例の中には全国的に報道されたものもあるため、その影響で「ITはブラック」という噂と疑念が広まりました。

これからのビジネスを担う分野と言われているため、世界的に需要の高い業界として就職を志す若者や転職希望者も多くいます。

しかし、ブラック企業に入っては将来性が危ぶまれます。実際にあった事例を確認し、見分けることの大事さを心得ておきましょう。

ブラック企業事例1:100時間を超えた長時間労働「システムエンジニア」

ブラック企業の事例1つ目は、100時間超えの長時間労働によってこの世を去ったシステムエンジニアの話です。当時25歳の男性システムエンジニアは、100時間超えの時間外労働による過労で精神的な異常をきたし、急性アルコール中毒でこの世を去りました。

この男性の両親は、会社が過労を認めて適切な対処を取らなかったとして1億円の損害賠償請求を行ないました。東京地裁は過労と死去の因果関係を認め、長時間労働を把握しながら指導と支援を怠ったとした会社側に損害賠償の支払いを命じました。

ブラック企業事例2:退職後の「裁量労働制」に関する判例

ブラック企業の事例2つ目は、裁量労働制に関する判例です。裁量労働制(みなし労働1日8時間)下で働くシステムエンジニアは、平成20年9月頃から自身やチームメンバーの業務ミスによる不具合が多発し、翌年2月にうつ病と診断されて3月に退職しました。

この内容に対して、会社側はエンジニアが適切に業務しなかったことで損害を被ったとして賠償請求を行いました。これに納得できないエンジニアは、未払時間外手当・遅延損害金・付加金支払いと安全配慮義務違反の損害賠償を求めて反訴した話です。

京都地裁は損害は労働者個人の責任ではなく、エンジニアの労働実態も問題なく管理職でもないとして、会社側に未払残業代と付加金の支払いを命じました。さらに、安全配慮義務違反も認め、休業損害・慰謝料・弁護士費用の支払いも命じました。

ブラック企業事例3:長時間労働やパワハラ

ブラック企業の事例3つ目は、長時間労働やパワハラに関する判例です。男性社員が劣悪な職場環境で躁うつ病を発症して退職した件に対して、詐病で一方的に退職したとして会社が男性に損害賠償を求めた話です。

横浜地裁は会社側が訴訟した損害賠償請求は違法として、会社に損害賠償の支払いを命じました。会社側の敗因は、退職した元労働者に対して法的根拠を欠く不当な損害賠償請求を行ったからです。

近年、このような事例は増加傾向にあります。

悪質なブラックIT企業の見分け方を理解しよう

IT業界に関わる職種は将来性が期待されるものが多く、これから先の需要も上昇傾向にあります。つまり、職を失うリスクが低く、キャリアや給与のアップも見込めるということです。

しかし、人員不足の中で短期納期を求められる風潮から、ストレスの多い現場になりがちです。

その影響でブラック化してしまうIT企業も増えており、負担の多くは実際に作業を行う社員に降りかかる結果となっています。業界的に将来性があっても、企業がブラックでは得られるものはデメリットばかりです。

見分け方を理解し、ブラック企業を回避しましょう。