SIerが担う仕事内容8選|SIerが将来性を問われる理由5選

そもそもSIerとは

SIerとはシステムを構築する企業のことです。

SIerは「システムインテグレーター(System Integrator)」を略した言葉で、和製英語です。「システムを統合する人」といった意味になります。

SIerは、企業における情報システム部門やシステム開発などのすべての業務を代わりに担う存在となっており、単にシステム開発するだけでなく、システムの保守や運用まで行います。

SIerの歴史とは

SIerは日本独自のビジネスモデルとなっています。

IT化が急激に進んだ90年代、日本ではバブル経済が崩壊したことで不況の状態にありました。そのため、大手企業も厳しい経営状態の中でITに投資することが難しく、政府主導でSIerという業態が誕生しました。

さまざまな大手企業のシステムインテグレーションをSIerが請け負うことにより、日本はIT化を進めることができるようになりました。

SIerとSEの違い

SIerは企業を指す言葉ですが、SEは人を指す言葉という違いがあります。

SEは「システムエンジニア」を略した言葉で、システム開発における上流工程を担う専門職です。SEの仕事はクライアントが望んでいるシステムを設計し、導入することです。

そのため、SIerには多くのSEが勤めていると言えますが、SIer自体は会社であるため、両者には違いがあります。

SIerの仕事内容8選

SIerの8つの仕事内容をご紹介します。

企業のシステム開発に関連した業務すべてを請け負うSIerですが、具体的にどのような業務があるのでしょうか。どのような内容があるか参考にしてみてください。

SIerの仕事内容1:業務向上へのコンサルティング

SIerはクライアント企業の業務向上のためのコンサルティングを行います。

SIerで働くSEの業務はコンサルティング的な要素が強く、クライアントが抱えている問題を解決するためにサポートします。

また、コンサル系SIerと呼ばれるコンサルティング主体の業務形態のSIerもあり、技術を提供するというよりも経営戦略に特化しているという特徴があります。

SIerの仕事内容2:システムの導入企画や立案

SIerはクライアント企業へシステムの導入計画や企画立案などを行います。

SIerはクライアントである企業がどのような理由でシステムを必要としているのかヒアリングし、どのようなシステムにするのか具体的な企画と導入計画を立てます。

また、クライアント側ですでにある程度具体的な企画を立ち上げているケースもあれば、SIerが一から立ち上げるケースもあります。

SIerの仕事内容3:システム開発と設計

SIerはシステムの設計やシステム開発などを行います。

システム設計では、クライアントからヒアリングした内容をもとに要件定義を行い、要件定義で定められた内容に沿ってどのようなシステムにするのか大まかに基本設計します。基本設計ができれば、より詳しい内容について詳細設計を行います。

また、詳細設計によって仕様書が作成できたら、仕様書をもとに実際にシステム開発に着手していきます。

SIerの仕事内容4:ハード・ソフトウェアの選定

SIerはハードウェアやソフトウェアの選定も行います。

SIerはクライアントのシステム構築の全てを担うため、システム化で必要になるパソコンやプリンターなどのハードウェアやソフトウェアの選定もSIerの仕事になります。

また、SIerは、選定したハードウェアの発注や設置などもするため、ここでの中間マージンはSIerにとっても大きな利益になります。

SIerの仕事内容5:インフラの構築

SIerはクライアント企業のインフラの構築も行います。

選定したハードウェアやソフトウェアの準備ができたらインフラの構築作業を行います。クライアント企業に必要台数のハードウェアを所定の位置に設置して配線を行ったり、パソコンに必要なソフトをインストールしたりするのもSIerの仕事です。

また、インフラ構築にはネットワークやサーバーの知識も必須となります。

SIerの仕事内容6:社内管理システムの構築

SIerはクライアント企業の社内管理システムの構築も行います。

クライアント企業が自社で使用する社内管理システムも構築することになるため、SIerはクライアントの業務や勤務形態に関する知識も必要になります。

社内で使用するシステムとしては代表的なものには、勤怠管理システムや人事管理システムなどがあります。

SIerの仕事内容7:開発したシステムの運用管理

SIerはシステムが完成した後のシステムの運用管理も行います。

システムが完成してクライアントに渡したらそれで終わりというわけではありません。クライアントが上手くシステムを運用できるように、SIerではさまざまなサポートを行います。

また、システムが正常に稼働しているかどうか監視して、実際の利用状況に応じたチューニングなどを行うのもSIerの仕事です。

SIerの仕事内容8:開発したシステムのメンテナンス

SIerは完成後のシステムメンテナンスを行います。

システムの運用が本格的に始まってからも、システムの定期的なメンテナンスなどの保守作業は発生します。また、システムを運用している最中に問題が発生した場合には、SIerは原因究明や解決などの迅速な対応を行います。

SIerが担う社内システム領域7選

SIerはさまざまな領域の社内システムを扱います。

SIerはクライアント企業の社内システムの開発も行いますが、どのような領域を担うことになるのでしょうか。

ここではSIerが担う社内システム領域7選をご紹介しますので、どのようなものがあるのか参考にしてみてはいかがでしょうか。

SIerが担う社内システム領域1:HR領域

SIerは採用や組織開発などのHR領域の社内システムを担います。

「HR」とは「Human Resource」を略した言葉で、日本語で「人的資源」と訳します。従業員を単なる労働力とするのではなく、企業にとって重要な「ヒト」という資産として捉える考え方です。

企業におけるHR領域とは、人的資源の獲得である「採用」や人的資源の育成である「人材育成」などが該当します。

SIerが担う社内システム領域2:CRM領域

SIerは顧客との良好な関係構築を目的としたCRM領域の社内システムを担います。

「CRM」とは「Customer Relationship Management」を略した言葉で、日本語では「顧客関係管理」と訳します。

膨大な量の顧客データを管理、活用することで適切にアプローチして、それぞれの顧客と良好な関係を構築し、コンバージョンへつなげるという手法です。

SIerが担う社内システム領域3:SFA領域

SIerは営業活動の支援を目的としたSFA領域の社内システムを担います。

「SFA」とは「Sales Force Automation」と略した言葉で、日本語では「営業支援システム」と訳します。

SFAは顧客情報や案件情報、商談情報といった営業活動のデータを一元管理し、蓄積していくことにより、自社の営業社員の効率的な営業活動をサポートするものです。

SIerが担う社内システム領域4:在庫管理や生産管理システム

SIerは在庫管理や生産管理システムを担います。

在庫管理システムとは製造業や小売業などの業界にとって重要な在庫管理を効率的に行うシステムです。在庫管理が徹底されていなければ販売機会があっても在庫が足りない状況になり、機会損失に繋がる可能性があります。

また、生産管理システムは在庫管理と連携し、製品の生産状況を管理するシステムとなっています。

SIerが担う社内システム領域5:営業管理システム

SIerは営業管理システムを担います。

営業情報を管理するシステムのことで、前述のSFAとほぼ同一です。自社での営業プロセスや商談状況などを管理し、視覚化することによって管理しやすくできます。

また、営業管理システムを導入することでこれまで営業社員個人が保有していたノウハウを共有しやすくなるため、営業部門全体での生産性を向上させることができます。

SIerが担う社内システム領域6:営業管理と連携した会計システム

SIerは営業管理と連携した会計システムを担います。

会計システムとは企業の会計に関係した処理を行います。キャッシュフローを明確に管理することにより、経理作業を効率化できます。

また、会計システムは営業管理システムと連携することで、取引相手の情報や入金額などの営業管理システムのデータをそのまま会計へ連動させられるため、より効率的で間違いのない処理が可能になります。

SIerが担う社内システム領域7:統合型ERP

SIerは統合型ERPを担います。

「ERP」とは「Enterprise Resource Planning」を略した言葉で、日本語では「統合基幹業務システム」と訳します。

統合型ERPは企業データすべてを一元管理することで、会計や人事などの異なる業務で連携の手間を省き、効率化します。また、営業データなどはリアルタイムに更新、確認できるため、上層部は迅速な判断が可能になります。

SIerが担う顧客サービスシステム3選

SIerは社内システムだけでなくクライアントのサービスシステムも担います。

クライアント企業のさまざまなサービスをシステム化するのもSIerの業務です。それでは、具体的にどのようなシステム開発を行っているのでしょうか。

ここではSIerが担う顧客サービスシステム3選をご紹介しますので、どのような顧客サービスシステムがあるのか参考にしてみてください。

SIerが担う顧客サービスシステム1:Webホームページ作成

SIerはクライアント企業のWebホームページを作成します。

企業のホームページは企業の概要や事業内容、事例紹介だけでなく、企業自体の雰囲気なども感じることができる大切な企業の顔です。企業のことを調べる際、はじめに企業の公式ホームページを見るという方も少なくはないでしょう。

SIerは、企業にとって重要なWebホームページの作成も担っています。

SIerが担う顧客サービスシステム2:ECサイトと連動する流通システム

SIerは、クライアント企業のECサイトと連動する流通システムを開発しています。

ECサイト事業を行う企業の場合、コスト管理や売り上げ管理のためにも適切に在庫管理し、ECサイトと連動して流通するシステムを構築することが重要です。

ECサイトの管理情報は非常に複雑なため、上手く事業展開できないケースも多いですが、SIerであればECサイトと連動した流通システムを構築することも可能です。

SIerが担う顧客サービスシステム3:銀行のオンラインバンキングシステム

SIerは、銀行のオンラインバンキングシステムを開発します。

オンラインバンキングシステムとは金融機関への振り込み作業や預金残高照会など、ATMの各種サービスがインターネット上で簡単に実施できるサービスです。

金融機関のオンラインバンキングシステムは金銭を扱うため、システムとしての安全性や正確さが求められます。

SIerが将来性を問われる理由5選

SIeは将来性を危ぶまれている業界でもあります。

バブル崩壊後、日本のIT化を支えたSIerですが、近年ではSIerについてのネガティブな意見も多くあり、将来性がないと言われるケースも多くなってきています。

ここではSIerが将来性を問われる理由5選をご紹介しますので、どのような理由があるのか参考にしてみてはいかがでしょうか。

SIerが将来性を問われる理由1:技術開発の遅れ

SIerは技術開発が一歩遅れていることにより将来性が問われています。

SIerでは大手企業からの発注が繰り返されてきたことから、革新性のある技術よりも画一的で汎用的な技術の提供が基本となってきました。

そのため、SIerでの技術革新の遅れが、欧米のIT企業と比較した場合の日本企業のUIやUX技術の遅れの遠因であるとも言われています。

SIerが将来性を問われる理由2:人材不足

SIerは労働人口の減少や人離れにより将来性が問われています。

SIerに限らずIT業界は人材不足が深刻で、将来的にも日本の労働人口は徐々に減少することが予測されています。

また、SIerは長時間労働になることが多く、さらに単調な仕事を行わなくてはいけないケースも多いことから、若い人材が離れていきやすい職種です。

SIerが将来性を問われる理由3:多重下請け構造の存在

SIerは多重下請け構造になっていることから将来性が問われています。

SIer業界は、クライアントから直接仕事を受注する大手のSIerがあり、その下に大手SIerの下請け、さらに孫請けがどんどん続いていく多重下請け構造になっています。この構造では途中で中抜きされることから下層ほど利益が低くなり、長時間労働を強いられます。

そのような問題が多い構造になっているのがSIer業界の課題だと言えます。

SIerが将来性を問われる理由4:クラウド型システムの普及

SIerは近年のクラウド型システムの普及により将来性が問われています。

以前は企業が使用するシステムは一から作り上げるものでした。しかしAWSやAzureなどのクラウドサービスが登場したことで、近年ではクラウドサービスを利用することが主流となってきています。

そのため、将来的にはSIerの仕事は減っていくとも言われています。

SIerが将来性を問われる理由5:労働集約型

SIerは労働集約型のビジネスモデルであることから将来性が問われています。

SIerは多くのSEが時間をかけてシステム開発や運用を進めていくことで売り上げを伸ばすことから、知識集中型ではなく労働集約型のビジネスモデルだと言われています。

労働集約型の場合は長時間労働が基本となりますが、前述のとおり下請けになると賃金も安いことから、人材がどんどん離れていくという問題があります。

SIerが将来的に無くならない理由4選

SIerは今後も無くならないと言われています。

ここまでSIerが将来性を問われる理由について解説してきましたが、一方で、SIerは今後も無くなることはないという意見も多くあります。

ここでは、最後にSIerが将来的に無くならない理由4選をご紹介しますので、どのような理由から無くならないと言われているのか参考にしてみてください。

SIerが将来的に無くならない理由1:開発案件の需要が増加

SIerが受注できる開発案件は増加することから将来的に無くならないと言われています。

IT関連のシステム開発は今後も増加していくと言えます。もちろん、クラウドサービスの導入も増えることは予想されますが、現在の国内の業界構造を考慮してもSIerへの発注がなくなることはありえないでしょう。

SIerが将来的に無くならない理由2:コンサルティングを含めた需要が増加

SIerにはコンサルティングの需要が増加するため将来的に無くならないと言われています。

クラウドサービスを導入することで、今後はコスト削減を目指す企業も多くなることが予想されますが、システムの効率的な利用を考える企業も多くなるでしょう。

そのため、SIerにはクラウドサービスのコンサルティングを含めた事業の需要が高まっていくと予想できます。

SIerが将来的に無くならない理由3:クラウドに対応するの需要が増加

SIerにはクラウドに対応した需要が増えることから将来的に無くならないと言われています。

クラウドサービスを利用する企業も多いですが、クラウドサービスだけではシステムが成り立たない企業もあります。そういった企業の案件では、今後はクラウドサービスを利用したシステム開発が増えていくでしょう。

SIerが将来的に無くならない理由4:業界・業種のビジネス領域が広い

SIerはビジネス領域の幅が広いことから将来的に無くならないと言われています。

SIerは流通や銀行、官公庁などさまざまな業種に対応でき、ほぼすべての領域のシステムを担うことが可能なため、IT業界での需要が非常に高いと言えます。そのため、将来的に無くなるということは考えにくいでしょう。

SIerの将来性について知ろう

SIerは課題も多く残されているビジネスモデルですが、今後もSIerの需要は高いと言えます。

ぜひこの記事でご紹介したSIerの仕事内容やSIerが担う社内システム領域、顧客サービスシステムやSIerが将来的に無くならない理由などを参考に、SIerの将来性について理解を深めてみてはいかがでしょうか。