機械学習エンジニアの主な仕事内容5選|必要なスキルとエンジニアの特徴

機械学習とは

機械学習とは、コンピューターが目的の作業を行えるようデータを繰り返し処理させて知能の向上を図る作業および研究分野のことです。

一般的には大量データをコンピューターに与えて、分類や予測など作業に関するパターンを学習させます。この学習によりコンピューターは特定作業のアルゴリズムやモデルを構築し、人間の指示で自動的に作業を行えるようになります。

機械学習アルゴリズムの分類

機械学習のアルゴリズム(コンピューターが処理の仕方を学ぶための手順や方式)は、3つの種類に分類されます。それは、教師あり学習・教師なし学習・強化学習です。

同じ機械学習でも、アルゴリズムの違いで学習に使うデータの種類やエンジニアが行う作業内容などに違いがあります。コンピューターを使う目的によって適したアルゴリズムは異なるため、状況にあった機械学習ができるよう各アルゴリズムについて確認しておきましょう。

教師あり学習

教師あり学習とは、まず出力となる正解タグ付きのデータを与えてパターンなどを学習させるアルゴリズムです。コンピューターを、新しく入力されたタグなしデータの予測や識別で使いたい時に用いられることが多い傾向にあります。

簡単に説明すると、特定のデータをどのように処理すればよいのか教える方法が教師あり学習です。教師=タグ付きデータのことで、それが何のデータなのかが分かっているものをいいます。

たとえば、「鳥」のタグ付データ(これは鳥だということが分かっているもの)を大量に与えることで、鳥のデータがどのようなものかを学習します。そして学習完了後、タグなしデータに接触した時にそれが鳥のデータなのかを識別・分類できるようになります。

また、数値に関するデータの識別を行わせたい時も、教師あり学習でコンピューターの知能を向上させる処方がとられることが多いです。

たとえば、株価・降水量・売上などの予測処理を行わせるために、予測に役立つこれまでのデータをコンピューターに与えて変動などのパターンを学習させます。

教師なし学習

教師なし学習は、教師あり学習とは与えるデータが真逆になります。つまり、正解タグなしのデータを与えて、コンピューター自らデータの構造・パターン・特徴などを分析します。

分析結果はデータの分類や簡略化を行うことで、目的に合った作業を行えるようになります。たとえば、特定ルールに沿うクラスタリング(似た特徴を持つものをグループ化して区別すること)が実現できるようになります。

クラスタリングする処理は、年齢・性別・居住地・消費傾向など特性をグループ分けしたい時に用いられることが多いです。また、そのデータを活用してコンピューターで将来的に起きることを予測したい時にも、教師なし学習を使うことがよくあります。

強化学習

強化学習は、タグなしの出力データに価値を付け、コンピュータが行なう行動戦略を強化する仕組みを使って知能向上を図る学習方法です。

行動結果ごとに報酬を定めることで、コンピュータは最大の報酬を得るために試行錯誤を繰り返します。つまり、最も大きな報酬に辿り着くために繰り返し学習することで、判断の精度が向上するということです。

強化学習の手法が用いられることが多いのは、コンピューターゲームにおけるCPUプレイヤーの勝ち方・ゲームでハイスコアを出すための方法・株式売買で最も利益のあるタイミングなどを判断処理する時です。

ボードゲームなどのCPUプレイヤーがこれまでの戦歴やリアルプレイヤーの動きなどから勝ち方を考えるなど、コンピューター自ら稼働中に得た多くのデータから求める結果を探します。

人工知能(AI)との関係性

機械学習は、人工知能(AI)開発における中心的技術の1つです。人工知能(AI)とは、コンピューターでありながら人間と同等の思考を持ち、その思考によって人間同様に回路が発展していく技術をいいます。

コンピューターだけでは思考も発展も起きないため、自分の思考を持って独自に発展していけるようにデータを与えます。その作業が、機械学習です。

思考のパターンや、物事を判断したり推測したりする上で必要なデータを大量に与えます。人間があらゆる情報や知識を取り入れて考えられる範囲を増やしていく動きと同じように発展し、作られたばかりの初期から徐々にできることが増えていきます。

ディープラーニングとの関係性

ディープラーニング(深層学習)は、機械学習の一部と位置付けられています。機械学習と呼ばれる技術の内部にはニューラルネットワークというものが存在し、さらにその中にディープラーニングが存在します。

ニューラルネットワークとは、生体の脳にある神経回路の一部を参考に作られた人工的な情報処理の回路です。ここに複数の数理モデルやパーセプトロンを組み合わせたものを、総じてニューラルネットワークと言います。

ニューラルネットワークの内部には入力層・出力層・隠れ層があり、これらを使って情報に関する表現を行います。しかし、ただ3つの層があるだけでは単純な処理しか行えません。

そこで取り入れられるのが、ディープラーニングです。ディープラーニングはニューラルネットワーク内部の層数を増やして複雑化することで、行える情報処理の範囲を増やす役割があります。

機械学習エンジニアとは

機械学習エンジニアとは、AI(人工知能)の開発に携わるエンジニアの中で機械学習に特化した業務を行う職種です。

AIに行わせる処理に合った命令やデータをコンピューターに与えて、目的に沿う程度で能力を向上させます。その業務に関わる複数の工程を統括し、時に必要なものを開発するのが機械学習エンジニアと呼ばれる存在です。

AIエンジニアとの違い

AIエンジニアは、その名の通りAIに携わる技術者のことです。

仕事における分野はプログラミングとアナリティクスに分別され、プログラミングではAI開発、アナリティクスではAIを活用したデータ解析などを行います。つまり、AIの開発や活用を専門的に行う存在をAIエンジニアと言います。

一方の機械学習エンジニアは、コンピューターがAIや1つの機能として動作できるよう適切なデータを与えて、システム上のアルゴリズムを構築させる存在です。機械学習に特化しており、開発作業全般に携わるわけではありません。

機械学習エンジニアとAIエンジニアが混同されやすい理由は、AI開発の中で機械学習が用いられるためです。最近はAI開発の全般を担うAIエンジニアが機械学習も含めて作業を行うことも多いため、機械学習エンジニアの需要を懸念する声も出ています。

機械学習エンジニアの主な仕事内容5選

機械学習エンジニアの主な仕事内容は、サービスの開発と設計・分析と解析・モデル開発・基盤構築と運用および保守・最新技術の調査と研究に分かれます。

サービス開発やそれにあたって必要な設計やシステムなどを考えたり、分析やモデルに関する工程などを行ったり、運用や研究で得られる内容に関する業務を進めていきます。

機械学習の仕事内容1:サービスの開発・設計

機械学習エンジニアの主な仕事内容1つ目は、サービスの開発・設計です。人工知能を利用したサービスの開発など、機械学習を必要とする仕事に携わります。また、開発の後に行う機能改善なども担います。

Webサービスを運営する時には、顧客データや訪問ログなど情報を使って不正ユーザー検知やレコメンデーションなどに取り組みます。開発者向けのサービスを開発・設計することもありますが、この場合にはエンジニアとしての高度な技能が必要になります。

機械学習の仕事内容2:データ分析・解析

機械学習エンジニアの主な仕事内容2つ目は、データの分析・解析です。企業などで扱うデータの量は膨大なので、その蓄積・整理・管理・可視化など作業はコンピューターで行います。

また、蓄積されたデータから特定の変数を提示したり、その変数が変化する程度などを確認する作業もコンピューターで行えます。機械学習エンジニアは、作業を行うコンピューターに指示を出したり、管理や改善などを図ります。

機械学習の仕事内容3:モデルの開発

機械学習エンジニアの主な仕事内容3つ目は、モデルの開発です。必要な機械学習のアルゴリズムを選定し、用途に合わせてモデルを作成します。より高精度なモデル作成のためには、ハイパーパラメータの調整など試行錯誤を要します。

選定したアルゴリズムが目的に合った手法か、未知の情報にも対応できるかなど検証も行います。場合により、アルゴリズム選定までに行う分析結果の抽出などを担うこともあります。

また、チームでプロジェクトを進める際は、プロジェクトマネージャーを任される可能性もある職種です。この場合は、上流工程の意思決定に際して、発表されている最も新しい手法を検証・実装するスキルが必要不可欠になります。

機械学習の仕事内容4:基盤構築・運用・保守

機械学習エンジニアの主な仕事内容4つ目は、基盤構築・運用・保守です。機械学習の実行に必要な環境を整えたり、定期的な運用や保守を行います。まず、開発に際して、開発者や利用者と実行環境を共有できるようにします。

そして、基盤構築を行った者として、その運用と保守も担います。機械学習を必要とするモデルやデータは用途で異なるため、定期的な運用で目的に合わせていく必要があるのです。開発終了後も保守などの仕事が待っています。

機械学習の仕事内容5:最新技術の調査・研究

機械学習エンジニアの主な仕事内容5つ目は、最新技術の調査・研究です。新しいサービスなどを開発するにあたっては、さまざまな手法を取り入れていく必要があります。

機械学習が関わる人工知能などの技術は進化が速いため、発表された論文などを読むなどして、最新情報を調査・研究することも機械学習エンジニアにとって重要な仕事になります。

機械学習エンジニアの特徴3選

機械学習エンジニアの仕事を志す上で、気になるのは需要・将来性・年収です。

専門性の高い仕事は長期的に続けることで自身の技能が向上するため、できるだけ長く続けたいと考える方が多い傾向にあります。長期的な就労に関する需要と将来性、そして就職当初から重要な年収にみられる特徴を確認しておきましょう。

機械学習エンジニアの特徴1:需要が高い

機械学習エンジニアの特徴1つ目は、需要が高いことです。近年は人工知能を利用しサービスの開発などが急進していますが、エンジニアは不足状態にあると言われています。

特に不足しているのは、人工知能やIoTなどの最先端技術を扱うエンジニアです。この分野では深刻な人材不足に陥っており、これからもその懸念が消えない期間がしばらく続くと考えられています。そのため、現時点では機械学習エンジニアの需要は高い傾向にあります。

機械学習エンジニアの特徴2:将来性が高い

機械学習エンジニアの特徴2つ目は、将来性が高いことです。これからも人材不足の懸念がしばらく続く見通しがあるため、機械学習エンジニアは将来性も高いと言えます。人材不足が解決するまでは需要は変わらず、高い状態が維持されるということです。

国自体も経済成長のことを考えて、エンジニアの人材確保に向けて働きを行っています。コンピューターの分野は長期的に躍進し、国の経済に必要不可欠なものになると考えられているためです。このことからも、機械学習エンジニアは長く求められる職種と言えます。

機械学習エンジニアの特徴3:年収が高い

機械学習エンジニアの特徴3つ目は、年収が高いことです。平均年収は約600万円以上と言われており、一般的な他のエンジニアよりも高収入を得られる可能性があります。

能力や経験、保有資格によっては、年収1,000万円以上の求人も存在しています。つまり、実力次第で収入を伸ばすことができる職種です。

機械学習エンジニアに必要なスキル7選

機械学習エンジニアに必要なスキルには、プログラミングの知識・クラウドなどインフラ回りの知識・コンピューターサイエンスの知識・統計解析と数学的な知識・ライブラリとフレームワークの知識・データベースの知識・セキュリティの知識があります。

機械学習エンジニアは即戦力を求められることが多いため、就職以前から持っているスキルは業務上重要な要素になります。未経験でも就職可能な求人も多く存在しますが、実際にはAI開発で必要な基礎知識を持っている前提で募集していることが多いです。

機械学習に必要なスキル1:プログラミングの知識

機械学習に必要なスキル1つ目は、プログラミングの知識です。学習の際は、プログラミング言語と呼ばれるコンピューター上の言語を使って、コンピューターに指示を送ります。そのため、プログラミング言語については不可欠な知識になります。

機械学習の分野で一般的によく用いられるプログラミング言語は、Pythonです。Pythonは汎用的な言語で、機械学習やデータ解析などによく利用されます。また、人工知能関連の開発ではC言語・C++・Javaを使うことも多いです。

機械学習に必要なスキル2:クラウドなどのインフラ周りの知識

機械学習に必要なスキル2つ目は、クラウドなどのインフラ周りの知識です。

機械学習で行う処理は膨大な回数に及ぶため、通常はいくつかのコンピューターリソースを活用します。この処理効率はハードウェアに依存することから、利用と効率的な作業のためにインフラなど動作の基礎に関する知識は重要になります。

機械学習に必要なスキル3:コンピューターサイエンスの知識

機械学習に必要なスキル3つ目は、コンピューターサイエンスの知識です。統計や数学に関する知識の他、機械学習を活用するためにはコンピューターサイエンスの知識も必要になります。

コンピューターサイエンスは、情報と計算の理論的基礎を中心的に扱う研究分野です。その倫理的基礎をコンピューターに実装したり、応用することも行います。データを扱う機械学習にも活かされるため、機械学習エンジニアには必要なスキルの1つとなります。

機械学習に必要なスキル4:統計解析・数学的な知識

機械学習に必要なスキル4つ目は、統計解析・数学的な知識です。微積分・形態素解析・構文解析など、機械学習には高度な数学的・理論的知識が用いられます。

機械学習で使うアルゴリズムの目的によって、必要となる数学的・理論的知識は異なります。そのため、機械学習エンジニアは数学や理論に関する知識に精通している必要があると考えられています。

機械学習に必要なスキル5:ライブラリ・フレームワークの知識

機械学習に必要なスキル5つ目は、ライブラリ・フレームワークの知識です。画像や自然言語など処理の目的に応じて、適したライブラリやフレームワークは異なります。

そのため、各特徴を把握した上で正しく選び、活用する知識が必要になります。どの目的にどのライブラリやフレームワークが合うのかを理解しておくと、適したものを選びやすくなる他、設計や開発の作業が効率的になります。

機械学習に必要なスキル6:データベース知識

機械学習に必要なスキル6つ目は、データベースの知識です。人工知能などの学習では膨大なデータを使うため、データベースの知識はモデル設計に活かされます。押さえておきたいデータ操作方法の知識には、SQL・RDB・RDBMSなどがあります

データベースの効率は、機械学習における効率につながります。一般的なシステムではサーバー自体の処理性能が高度なので、データベースの性能は問わないケースもありますが、機械学習ではハードウェアの性能を可能な限り引き出すために必要な知識となります。

機械学習に必要なスキル7:セキュリティの知識

機械学習に必要なスキル7つ目は、セキュリティの知識です。

Webサービスなどにも携わることがある職種なので、開発にあたりセキュリティ面の考慮も必要になります。そのため、プログラミング言語やデータの扱い方などの知識だけでなく、セキュリティに関する知識も押さえておくことが求められます。

機械学習エンジニア向いている人物像4選

機械学習エンジニアの仕事には、細かな作業で時間を要するものであり、時に何回も同じ作業を繰り返さなければならない時もあります。また、数学やプログラミングの知識など専門性が高い分類でもあるため、仕事をする上での向き不向きは当然存在します。

今回ご紹介する向いている人物像は4タイプ、データ分析が好きな人・数学的または論理的に考えられる人・プログラミングが好きな人・新しい知識や技術の習得が好きな人です。各タイプがどうして機械学習エンジニアの仕事に向いているのか、確認しておきましょう。

機械学習エンジニア向いている人物像1:データ分析が好きな人

機械学習エンジニアに向いている人物像1つ目は、データ分析が好きな人です。コンピューターにさまざまなデータを与えて知能を向上させるのが主な仕事なので、適したデータを探す目的などで分析を行うことが多いです。

そのため、あらゆるデータに興味を持って、比較やまとめる作業を行うことが好きな人は機械学習エンジニアに向いていると言えます。エンジニアは理系のイメージですが、文系でも統計学などの学習経験がある方なら、比較的なじみやすいと言われています。

機械学習エンジニア向いている人物像2:数学的・論理的に考えられる人

機械学習エンジニアに向いている人物像2つ目は、数学的・論理的に考えられる人です。コンピューターに関わるエンジニアの中でも、機械学習エンジニアは特に数学的知識が必要と言われています。

また、モデルの作成・選択・調整などにあたっては論理的アプローチが必要です。そのため、数学的・論理的に考える傾向が強い人は、機械学習エンジニアに向いていると考えられています。

機械学習エンジニア向いている人物像3:プログラミングが好きな人

機械学習エンジニアに向いている人物像3つ目は、プログラミングが好きな人です。機械学習ではコンピューターに指示を送るために、また構築を行う際にもプログラミング言語を使います。

一般的に人々が用いる言語とは全く異なる仕様になるため、苦手な方からすると複雑で習得が難しく感じられます。プログラミング自体が好きと思える人は学習意欲もあり、興味を持って向上的に取り組むことができるため、機械学習エンジニアに向いています。

機械学習エンジニア向いている人物像4:新しい知識・技術の習得が好きな人

機械学習エンジニアに向いている人物像4つ目は、新しい知識や技術の習得が好きな人です。機械学習のアルゴリズムや人工知能などに関する技術は、これからも進化し続けると考えられています。

現在使用されているものが、数年後には別のものに置き換えられている可能性もあります。そのため、新しい知識や技術の情報収集を苦と思わず、習得も意欲的に行える人は機械学習エンジニアに向いています。

将来性の高い機械学習エンジニアを目指そう

現時点でコンピューターに携わるエンジニアの多くは需要が高いとされますが、その中でも特に機械学習エンジニアは将来的にも求められる職種と言われています。年収も比較的高いので、要領さえ得れば期待度の高い職種でもあります。

向き不向きや業務を行うにあたって必要なスキルなどはありますが、機械学習エンジニアとして働けるだけの知識や技術を身につけておけば、長期的な就労や効率的な就職を行える可能性が高くなります。勉強を重ね、機械学習エンジニアを目指してみましょう。