オブジェクト指向に必要な基本知識9つ|メリットやデメリットとは?

オブジェクト指向とは?

オブジェクト指向とは、従来処理を行う手続きとして順番通りに記述されていたプログラムを、機能や小さな処理単位として切り出してプログラム化する考え方です。

オブジェクト指向のプログラミングは、従来のプログラミングに慣れた人にとっては理解するまで時間がかかりますが、従来の方法よりも効率よく開発ができ、メンテナンス性にも優れています。

オブジェクト指向のメリット5つ

従来型のプログラミング方法に代わり、オブジェクト指向によるプログラミングが脚光を浴びるようになったのは、オブジェクト指向によるプログラミングによりもたらされるメリットが大きいからです。

ここでは、オブジェクト指向によりもたらされるメリットを5つ紹介します。

オブジェクト指向のメリット1:分かりやすい

従来型のプログラムでは処理される順番通りにすべての処理が記述されていましたが、オブジェクト指向のプログラムは機能ごとに独立して記述されます。

オブジェクト指向のプログラムでは記述が短く、独立しているため、処理全体を把握しなくても、記述されている機能だけを読み解くことができます。読み解くことが苦手な人でもわかりやすいプログラムになります。

オブジェクト指向のメリット2:改善につなげやすい

オブジェクト指向ではプログラムが小さな単位でまとまっているので、改修ポイントもみつけやすく、改修後の不具合も発生しづらくなります。

1つのプログラムが機能や関数として複数の処理から使われているので、1つのプログラムを改修することでプログラム全体に改善をもたらすこともできます。

従来型のプログラムに比べ、オブジェクト指向プログラムの方が改修ポイントの発見や影響調査、テストなどで、時間の効率化や改修費用の削減が期待できます。

オブジェクト指向のメリット3:業務を効率化する

オブジェクト指向は1つの処理を行うための機能が複数に分かれているので、複数人で1つの処理の開発や改修を担当できます。

従来のプログラムは、複数人で担当する場合でも、全員が一気に携わることはできず、誰かの作業が終わってから次の人が担当しなければなりません。オブジェクト指向では、個々の機能ごとに担当者を変えれば、並行して処理を進めることができ、効率化を図れます。

オブジェクト指向のメリット4:再利用ができる

オブジェクト指向によるプログラムでは、小さな処理単位でプログラムが作られているので、ほかの処理やプロジェクトでも再利用しやすくなります。

特定のプロジェクトに依存することのない機能は、ほかのプロジェクトにおいても修正なしで再利用できたり、少し手を加えるだけで適用可能な機能になったりするので、プロジェクトに留まらず、開発作業全体としての効率化も期待できます。

オブジェクト指向のメリット5:共同作業がしやすい

オブジェクト指向のプログラムは機能ごとにソースが分かれているので、複数の人が並行して作業を進めていけます。従来型のプログラムだと、1つの処理は1つのソースにまとまっているので、複数人で並行して進めることはできません。

オブジェクト指向の採用により、1つの処理を複数の人で並行開発することも、分散して開発することも可能になります。

オブジェクト指向のデメリット

オブジェクト指向は従来型のプログラミングに比べ後発であるため、大きなデメリットはありませんが、従来型に慣れた人からすると「概念が難しい」「煩雑」だといわれます。

従来型のプログラムの場合は処理の順番通りに記述されているので、プログラムを最初から読んでいけば、ストーリーを追うように処理を理解できます。

オブジェクト指向の場合は、プログラムが機能でぶつ切り状態になっているので、個々の機能は理解しやすいもののストーリーを追いかけるのは複雑になります。

オブジェクト指向に必要な基本知識9つ

オブジェクト指向のプログラムでは、オブジェクト指向特有の用語が使われるので、用語理解ができていないとオブジェクト指向そのものの理解も難しくなります。

ここでは、オブジェクト指向を学んだり、検討したりするときに必要になる基本用語について紹介します。

オブジェクト指向に必要な基本知識1:オブジェクト

オブジェクト指向でいう「オブジェクト」とは、英語の直訳通り「モノ」を指す用語です。目で見える「木」や「石」だけでなく、目には見えない概念である「感情」や「天気」もプログラムではオブジェクトとして扱えます。

ここまでの説明で完璧に理解できたという人は少ないはずです。まずは、「モノ」であるということと、オブジェクト指向でプログラミングする際の単位として扱えるモノであるということを覚えておきましょう。

オブジェクト指向に必要な基本知識2:クラス

オブジェクト指向のプログラミングで「クラス」として定義されるのは、オブジェクトに内在する処理要素ともいうべきものです。

どのようなオブジェクトなのか考えたときに、オブジェクト特徴や機能をオブジェクトの「クラス」で定義します。オブジェクトの「クラス」はオブジェクトの定義書のようなものだと理解しておくとよいでしょう。

例えば、自転車というモノをオブジェクトクラスとして定義しておくことができます。

オブジェクト指向に必要な基本知識3:プロパティ

オブジェクト指向の「プロパティ」では、オブジェクトの状態を表します。例えばモノを表すオブジェクトを具体的に「自転車」と定義した場合、どのような状態の自転車かを表現できるのがプロパティです。

ボディカラーというプロパティには「グレー」、サイズというプロパティには「26インチ」など、プロパティに具体的なデータを入れていくほど、自転車というオブジェクトも具体化されていきます。

オブジェクト指向に必要な基本知識4:メソッド(振る舞い)

オブジェクト指向のメソッドとは、オブジェクトが行う処理・動作のことを指します。オブジェクトが「自転車」の場合で考えてみましょう。

自転車の動作としては、「ペダルを踏む」「動く」「ブレーキをかける」「加速する」などがあります。これらの動作をそれぞれ「メソッド」として定義することになります。

オブジェクト指向に必要な基本知識5:インスタンス

オブジェクト指向で使われる「インスタンス」という用語はオブジェクトそのものを指しています。オブジェクトはクラスで定義されますが、クラスからインスタンスを作成することでオブジェクトが具体化されます。

自転車というクラスをインスタンス化することで、具体的な自転車を1台定義できます。処理に自転車が複数台必要なら、必要な台数分のインスタンスを生成します。個々のインスタンスのプロパティを変えることで、白い自転車や赤い自転車など特徴が異なるオブジェクトになります。

オブジェクト指向に必要な基本知識6:カプセル化

カプセル化とはオブジェクト指向の考え方の基礎概念ともいえる用語で、モノを抽象化することを指しています。利用者に複雑な処理をそのまま見せることなくカプセルにまとめ、処理の流れを把握・理解しやすいようにしています。

例えるなら、電化製品を使うときに、内部がどのような部品で構成され、どう制御されているかは見えなくても、利用者は外部ボタンの使い方を知っていれば電化製品を操作できるのと似ています。

オブジェクト指向に必要な基本知識7:継承

オブジェクト指向で使われる「継承」とは、既存のクラス定義と共通性のあるクラスを定義する際に、既存のクラス定義から共通している処理のみ新クラスに引き継げる仕組みです。

既存クラスをコピーして流用することもできますが、コーディングの工数やメンテナンス性を考慮した場合、継承を使った方が効率の良いプログラム開発ができます。

オブジェクト指向に必要な基本知識8:ポリモーフィズム

オブジェクト指向の「ポリモーフィズム」は異なるクラスの動作を1つの方法で指示できるという性質を指します。

ポリモーフィズムを使えば、1つの指示で複数のクラスに処理させることができるので、指示数を削減でき、処理の簡略化が可能になります。

オブジェクト指向に必要な基本知識9:メイン処理

オブジェクト指向のプログラミングでは、処理の流れを記述するメイン(主)処理をクラスとして定義する場合と、メソッドとして定義する場合があります。

メイン処理をクラス定義する場合は、処理に必要なオブジェクトを順次呼び出すようクラスに記述していきます。メソッドとして定義する場合は、メインメソッドの中でオブジェクトを順次呼び出すように記述し、プログラムの実行時にメインメソッドを最初に呼び出します。

オブジェクト指向を利用した考え方3つ

オブジェクト指向というと、オブジェクト指向プログラミングが知られていますが、同様の考え方に基づく技術はほかにもあります。

ここでは、オブジェクト指向の考え方を取り入れた技術や方法論などを紹介します。

オブジェクト指向を利用した考え方1:オブジェクト指向データベース

オブジェクト指向の考え方を取り入れたデータベースでは、データの処理方法をオブジェクトとして定義します。

複雑なデータ構造を扱う場合、ビジネスシステムで主流として採用されているリレーショナルデータベース(RDB)よりも高速に処理できるという利点があります。

そのため、音声や動画など多種類に及ぶ大量データを扱うマルチメディア系のシステムではオブジェクト指向データベースが採用されることも増えています。

オブジェクト指向を利用した考え方2:オブジェクト指向エクササイズ

オブジェクト指向エクササイズとは、オブジェクト指向を身につけるためのルールに則って行われる練習問題のことです。

オブジェクト指向エクササイズは、オブジェクト指向の考え方を定着させるための練習ですが、既存のプログラムをオブジェクト指向のプログラムに作り変えるときの指針にすることもできます。

既存のプログラムをオブジェクト指向エクササイズに沿って見直し、改修すればオブジェクト指向プログラムになります。

オブジェクト指向を利用した考え方3:オブジェクト指向モデリング

オブジェクト指向モデリングとは、モデリングにオブジェクト指向の考え方を取り入れたものです。多くは、システム設計時に行われるモデリングに適用されます。

オブジェクト指向モデリングでは、問題領域をオブジェクトとして捉えます。オブジェクト指向のモデリングを行うことで、複雑性にも専念して取り組めます。

オブジェクト指向を考える際の注意点

オブジェクト指向は、新しい概念なので、適用する際のデメリットは少ないものの、本当にオブジェクト指向を理解できている人は少ないので注意が必要です。

オブジェクト指向のプログラミング言語を使って開発をしたからといって、必ずしもオブジェクト指向のプログラムができるわけではありません。オブジェクト指向の概念を理解していないと従来通り手続き型のプログラムができあがることもあります。

オブジェクト指向を理解できるまでには時間がかかるということを心しておいた方がよいでしょう。

オブジェクト指向への理解を深めよう

オブジェクト指向は、完全に習得するのが難しい概念ですが、これからも注目されていく考え方です。習得できている人が少ない分、時間をかけてでもきちんと習得すれば、ビジネス上の武器にもなります。

オブジェクト指向への理解を深め、ビジネスシーンでも活用していけるように取り組んでいきましょう。