フリーランスデザイナーの報酬事情や求人案件獲得方法を紹介!

はじめに

日本国内におけるフリーランス人口は1,000万人を超えたといわれており、組織に所属しない働き方を選ぶ方が年々増えています。これは、業務委託を活用したい企業と、働き方を選びたい労働者の思惑が一致したからだと考えられますが、特にITエンジニアのように、専門スキルを持つ方の専業フリーランスが増えているのも特徴です。そういった意味では、専門のスキルとセンスを持つデザイナーの方も、フリーランスへの転身を考えているのではないでしょうか?

それでは、フリーランスとして活動していけるほど、市場にはデザイナーの求人案件があるのでしょうか?会社員デザイナーよりも高い報酬が期待できるのでしょうか?フリーランスであればもっとも不安に感じる案件獲得の方法を含め、フリーランスデザイナーの求人事情を紹介していきます。

デザイナーとは?

デザインする人=デザイナーですが、デザインの定義は非常に曖昧です。仕事を、あるいは空間をデザインするという使い方もあるように、ある種の設計=デザインだと考えられますが、一般的には人の視覚に訴えかける設計をする=デザインする人がデザイナーという認識でしょう。

ただし、デザイナーとアーティストは明確に異なります。自己表現が仕事になるアーティストと異なり、デザイナーはクライアントのニーズに応じた視覚的設計=デザインをするのが仕事だからです。こうしたデザイナーはさまざまな業界に存在し、それぞれで必要とされるスキルやセンス、利用するツールも異なります。以下に、フリーランスとして活躍することの多いデザイナーをいくつか挙げてみます。

・Webデザイナー
・グラフィックデザイナー
・UI / UXデザイナー
・DTPデザイナー
・CGデザイナー
・プロダクトデザイナー
・エディトリアルデザイナー
・イラストレーター

フリーランス求人が多いのはWebデザイナー

もちろん、視覚に訴えかける設計=デザインだけがデザイナーの仕事ではありません。たとえば、WebデザイナーはWebサイトの視覚的要素をデザインするのが主な仕事ですが、HTML、CSSを使ったコーディングも担当するケースがほとんどです。ユーザーの使い勝手を重視したサイトデザインという点で考えれば、UI、UXデザイナーと共通した要素もあり、ディレクターを中心としたチームで動くことが多いのも特徴でしょう。

チームで動くことがあるという点では、印刷物デザインを担当するグラフィックデザイナーも同じだといえるかもしれません。単独でデザインすることもありますが、イラストレーターやコピーライターと協力する場合もあるからです。あるクリエイター専門エージェントの調査によれば、フリーランス求人がもっとも多いのがWebデザイナー、次いでグラフィックデザイナーとなっており、この2つでフリーランス求人案件の多くを占めているようです。

フリーランスデザイナーはどんな人?

デザイナーに関連する資格としては「DTPエキスパート」「色彩検定」などがありますが、実際にデザイナーがフリーランスとして活動するのに必要とされる資格はありません。それでは、どんな経歴・スキルを持つ人がフリーランスデザイナーとして活動しているのでしょうか?

インハウスデザイナーから独立

もっとも多いのが、インハウスデザイナーとして企業・組織に所属して実績を積み、充分なスキルが得られた時点でフリーランスとして独立する方です。インハウスデザイナーであれば、デザイン業務に集中できる環境にあるため、さまざまなプロジェクトで経験が積め、研修制度などが整備されていればデザインの基礎からスキルを学べます。取引先との人脈を築ければ独立後の案件獲得にも有利に働くため、これからフリーランスデザイナーを目指す方にもおすすめの方法です。

スクール・独学で学んでフリーランスへ

デザインスクールで学ぶ、あるいは独学でデザインを学んでフリーランスとして活動する、というデザイナーの方も少なからず存在します。もちろん、デザインは実力主義の世界ですから、センスさえあれば求人案件を獲得できますが、実績が重視される傾向にあるのも事実です。つまり、人脈・実績の乏しいデザイナーが専業のフリーランスとして活動していけるかどうかは未知数です。ポートフォリオを充実させて積極的に営業する工夫が必要です。

フリーランスデザイナーの働き方

フリーランスの大きな魅力は、自身の裁量で仕事を選べる、ライフスタイルにあわせた自由な働き方ができることです。特に、デザインというクリエイティブ系の業務を担当するデザイナーであれば、より自由な働き方が可能なのではないか?と考える方も多いでしょう。では、実際にフリーランスデザイナーはどのような働き方が多いのでしょうか?簡単に紹介していきます。

在宅型

成果物をデータで納品するのが当たり前になった現代では、PC・ツールさえあればどこでも仕事できる環境が整ったため、リモート・ノマドワークを含む在宅型フリーランスデザイナーが増えています。もちろん、クライアントやメンバー間のコミュニケーションは必要ですが、実際のデザインは一人で行うイラストレーター、キャラクターデザイナーなどは、在宅型で働きやすい職種だといえるでしょう。クラウドソーシングなどでも在宅案件の求人は多数ありますが、報酬は比較的低めになってしまう傾向もあります。

客先常駐型

フリーランスのITエンジニアのように、客先常駐型で働くフリーランスデザイナーも少なくありません。たとえば、プロジェクト単位で業務委託契約を結び、チームで仕事することの多いWebデザイナーなどは、客先常駐型が少なくないといえるでしょう。在宅型よりも実績やスキルが求められる傾向にある一方、即戦力としてプロジェクトに参加できれば比較的高額な報酬が期待できるのも特徴です。ただし、働き方としては会社員デザイナーと大差ないため、自由な働き方を重視したい方には向かないかもしれません。

フリーランスデザイナーの報酬事情

フリーランスデザイナーの報酬事情は職種によっても、実績・スキル・働き方によっても大きく異なります。ただしフリーランスに限らず、一般的にデザイナーの報酬水準はそれほど高くないことは覚えておいた方がいいかもしれません。たとえばフリーランスWebデザイナーの平均年収は300〜400万円前後だといわれており、347万円だといわれる会社員Webデザイナーの平均年収とそれほど変わらないのがわかります。

これは会社員の平均年収が335万円だといわれるグラフィックデザイナーでも同様です。もちろん、フリーランスのWeb・グラフィックデザイナーで年収700万円を超える方も存在するため、会社員よりも高年収を狙えるのは確かですが、簡単ではないのも事実です。年収を上げるためには、スキルを実績に反映しづらい面があるため、受託案件を増やす、もしくは案件あたりの報酬単価を増やすことを意識しましょう。

フリーランスデザイナーの案件獲得経路は?

フリーランスが安定的に活動するためには、途切れることなく求人案件を獲得するのが重要です。では、多くのフリーランスデザイナーは、どのように求人案件を獲得しているのでしょうか?案件の獲得経路に関するアンケート調査(複数回答)によると、もっとも多かったのが、80%以上を占める「紹介を含む人脈」次いで約60%に及んだ「過去・現在の取引先」でした。Web・SNSを活用した営業活動が求人案件獲得につがった例も30%あり、単発の案件が多いデザイナーの努力が伺われる結果になっているのが印象的です。

デザイナーのフリーランス求人例

それでは、案件獲得経路が12.5%にとどまるフリーランスエージェントは、デザイナーにとって有効な案件獲得手法といえるのでしょうか?フリーランスデザイナーの方が求人案件獲得のイメージを描きやすいよう、公開されているフリーランス案件情報をいくつか紹介してみましょう。あるフリーランスエージェントで公開されていたデザイナー求人は、検索時点で160件ありました。

動画サービスサイトのWebデザイナー求人
・必須要件:Illustratorの実務経験2年以上、子供向けテイストのデザイン経験
・歓迎要件:Adobe XDの知識・経験
・待遇:Webデザイナー、月/〜43万円

ゲームのUI / UXデザイナー求人
・必須要件:Photoshopの実務経験、ゲームのUIデザイン経験
・歓迎要件:Illustrator、Unityの知識・経験
・待遇:UI / UXデザイナー、月/〜53万円

すべてのクリエイターを対象にしても案件数は800件に満たないため、エージェントのデザイナー求人数は少ないと考えてもよさそうです。

デザイナーがフリーランス案件を獲得するには?

現役のフリーランスデザイナーがどのように求人案件を獲得しているのか、フリーランスエージェントでのデザイナー求人はどのような状況なのかを紹介してきました。これらをあわせて考えると、デザイナーがフリーランスとして安定的に活動するためには、どのように求人案件を獲得すべきかが浮かび上がってきます。

人脈・取引先を活かした営業活動

多くの現役フリーランスデザイナーが行っているように、人脈や現在・過去の取引先のツテを活かした営業活動は重要です。あなたの仕事ぶりやスキル・実績を知る人々と信頼関係を築ければ、適切な案件があるたびに仕事を振ってもらえる可能性が高まるからです。独立前に所属していた企業・組織と良好な関係性を保てていれば、それも仕事につながるでしょう。会社員の経験がない方であれば、コミュニティやサロンなどに積極的に参加し、横のつながりを築いていく方法もあります。

ポートフォリオを充実させる

フリーランスとして安定的に活動していくには、新規の案件も獲得しなければなりません。そのためには、実績やスキルをわかりやすくアピールできるよう、ポートフォリオを充実させておく必要があります。営業用のWebサイトを開設する、SNSを活用するなど、積極的な営業活動が欠かせません。

Web・UI、UXデザイナーはエージェントの活用が有効

単発の案件が多いイラストレーターなどはともかく、プロジェクト単位で仕事をすることの多いWeb、UI、UXデザイナーであれば、フリーランスエージェントの活用がおすすめです。求人例を見てもわかるように、比較的高額の報酬が期待できるのも魅力だといえるでしょう。

案件の幅を広げるスキルを習得する

フリーランスの鉄則でもありますが、収益化できる窓口を複数持っておくのが重要です。たとえば、Webデザイナーであれば関連性のあるUI、UXデザインのスキルを習得する、イラストレーターであればアニメーション、動画編集のスキルを習得するなどです。できることが増えれば、当然獲得できる求人案件の幅も広がります。

案件の単価も意識する

特に単発案件の多くなるイラストレーターが当てはまりますが、報酬単価を上げる方向で活動しなければ、年収アップにはつながりません。個人がこなせる案件数には、限界があるからです。仕事がないよりましという考え方もありますが、高単価案件に絞り込むのは長期的に見れば自身のブランディングにもつながります。営業力とともに、交渉力も意識しながら活動する必要があるでしょう。

まとめ

デザイナーとひとことにいっても、さまざまな業界に特化した多様なデザイナーが存在し、求められるスキルや働き方も異なります。フリーランスという働き方に向いていないデザイン職があるのも事実です。フリーランスデザイナーとして安定的に活動していくには、自身のスキルを棚卸ししたうえで、どのように案件を獲得するか、どのように収益の幅を広げるかを常に意識しておくのが重要だといえるでしょう。ポイントさえ押さえておけば、会社員デザイナー時代よりも大幅な報酬アップも期待できるはずです。