縁の下の力持ちFree RTOS

【はじめに】

本記事に目を通して頂きありがとうございます。突然ですが、RTOSとはなんだと思いますか?正解はリアルタイムオペレーティングシステムの略です。オペレーティングシステムはアプリやデバイスを動作させるための基本となるソフトウェアのことで、OSと略すことが多く、こちらの呼び方の方がなじみ深い人も多いかも知れません。

さて、話は少し変わりますが、例えばデジカメで被写体を写すときピントを自動で合わせてくれる機能や、自動車の歩行者検知機能など、身の回りの物の中に入っているシステムのことを組み込みシステムといい、リアルタイム性が重視されています。極端な話、自販機でボタンを押したのに1分経ってもジュースが落ちてこない、なんてクレームの嵐になりそうですね。そんなリアルタイム性の実現に役立つ機能を提供するOSをRTOSというのです。

【Free RTOSとは】

前置きが長くなってしまいしたがFree RTOSとは現在、Amazonが提供するRTOSのことです。低電力エッジデバイスのプログラミング、本番環境への適用、保護、接続、管理を簡単にするマイクロコントローラ(ハードウェアを制御するためのIC)向けのオープンソースでリアルタイムなOSです。一般的にマイクロコントローラのOSにはローカルネットワークやクラウドに接続する機能が組み込まれていない為、IoTアプリケーションにとって問題がありました。

しかし、Free RTOSならこの問題を解決できます。低電力デバイスを実行するカーネル(OSの中核部分)と、クラウドやエッジデバイスへの安全な接続を実現するソフトウェアライブラリの両方を兼ね備えているため、IoTアプリケーション用にエッジデバイスからデータを収集し操作を実行出来るのです。

余談ではありますが、Free RTOSは元々Real Time Engineersという会社から出しているサービスだったのですが、Amazonに会社ごと買収され、現在はAmazonからの提供になっています。Free RTOSは2社をまたいで17年間に渡って世界の主要なチップ企業と連携して開発され、175秒ごとにダウンロードされていると言われております。

【なぜ、選ばれるのか】

上記でもあるようにFree RTOSは現在世界中で多くの企業に使用されています。ここではなぜ長い間、多くの企業に愛用されているかをご紹介いたします。

オープンソース

Real Time Engineers社が取り扱っていた頃は無償でソースコードまで入手可能で製品も利用可能でしたが、GPL V2というライセンスだったためカスタマイズして製品化したら、それを公開する義務が発生しておりました。Amazonに買収されてからはMITライセンスという制限が少ししかないライセンスで無償公開することにより、「著作権及びMITライセンスの全文」さえ表示すれば改変・再配布・有償提供など可能になりました。

信頼できるカーネル

実証済みの堅牢性(エラーや障害やセキュリティリスクに柔軟に対応出来る事)、システムが稼働時に占有・消費する資源の少なさ、幅広いデバイスサポートを備えたマイクロコントローラー及び、小型のマイクロプロセッサー向けの標準として、世界中の様々な企業から信頼されています。

価値を素早く形にできる

詳細な構成済みデモとIoT参照の統合により、プロジェクトのセットアップ方法を決定する必要はありません。直ぐにダウンロード、コンパイルし、市場投入までの時間を短縮できます。

省電力で安全な接続・プログラミング・デプロイ・管理

TLSv1.2(通信を暗号化する規約。2008年リリース)に対応しているため、デバイスを安全にAWSに接続できます。一般的に必要なIoT機能をデバイスに簡単にプログラミングできるほか、Wi-Fiやイーサネット等の一般的な接続方法を使ったローカルネットワークをデバイスに設定する、またはBluetooth Low Energyを使用してモバイルデバイスに接続することもできます。Free RTOSには、無線通信を経由して更新を行うこと(Over The Air:以下OTA)、デプロイやOTA更新中にデバイスコードが侵害されないようにするコード署名機能も含まれています。

広範囲のエコシステムサポート

パートナーエコシステムは、コミュニティへの貢献、専門的なサポート、統合された開発及び、生産性ツールなどの幅広いオプションを提供しています。Free RTOSは柔軟性に優れているため、各種のチップセット(集団回路の集まり、ICの集合体)をベースとするIoTソリューションを簡単に構築でき、40以上のアーキテクチャにも対応しています。AWSパートナーデバイスカタログでFree RTOSとAWS IoTで動作する認定デバイスを見つけることが出来ます。

【どんな場面で使われるか】

ここでは大きく分けて3つ、Free RTOSの使われ方についてご紹介いたします。

産業用アプリケーション

産業業界では、マイクロコントローラベースのデバイスを利用して業務上不可欠な負荷の大きさに対するデータの生成をしています。産業用センサ、アクチュエータ、ポンプ、オートメーションの構成要素では、低コストで、電力消費が少なく、リアルタイムな操作が可能であることからマイクロコントローラを利用しています。ここで例え話、石油掘削装置の単一のポンプをマイクロコントローラで制御していると、障害が発生した場合は生産が完全に停止するかもしれません。Free RTOSを使用すると、クラウドで直接接続することでシステムのパフォーマンスやストレスに関するデータを収集でき、AWS IoT Greengrassを組み込めば重要なローカルでの操作をリアルタイムで実行して、そのような混乱の原因となる停止を防ぐことが出来ます。

消費者向けの製品

特定用途向けのコンピューター、ウェアラブルテクノロジー、スマートライトのメーカーなど、消費者向けの企業では幅広い製品やモデルにわたるマイクロコントローラベースのデバイスの開発・提供・保守の標準化にFree RTOSが役立ちます。Free RTOSによって性能やキャパシティが異なる幅広い範囲のマイクロコントローラハードウェアをサポートする単一のOSを実現できます。企業は複数の製品のラインに関係する複雑なソフトウェア開発を管理する必要がなくなり、製品のイノベーションに重点を置くことが出来ます。また、OTAによって、既存の消費者向け製品の機能を安全に更新することも可能になります。

BtoBソリューション

企業同士の商用デバイスでは通常、低電力の必要性と低コストのためにマイクロコントローラが使われています。例えば、セキュリティ機器メーカーでは、業務用のドアロックやセンサーシステムといったマイクロコントローラベースのデバイスに接続機能を追加する傾向が高まってきています。Free RTOSを使用すると、こうした企業は設計や開発工程を簡素化し、新しいコネクテッド製品をより速くリリース出来るようになります。また、これ等のメーカーは、OTA更新機能でパッチを業務用ドアロックに安全に適用することも出来ます。

【さいごに】

RTOSと言われても一般的には何のことか分からない人は少なくないのでは無いでしょうか。RTOSは私たちの意識しない所で世の中を回しており、いざ不具合などで停止してしまったら困ることも多いのでは無いでしょうか。このように「当たり前のこと」「考えもしなかったこと」に注力する人々、企業のことを「縁の下の力持ち」というのだと本記事を作成していて改めて思いました。以上、最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。

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