人とコンピューターのインタラクションを実現する「音声変換・合成サービス」Amazon Pollyとは?

音声変換サービスとは?

音声変換サービスというのは、人間の声に近い自然な音声で、テキストを音声に変換することができるサービスのことです。いわゆる「読み上げツール」などはこの音声変換サービスに該当するものですが、最近の音声変換サービスは初期のように明らかな機械音声の雰囲気が抜けないものではなく、限りなく人間の声に近い音声に変換することができるようになってきています。

最近の音声変換サービスで特徴的なのは、複数の言語でテキストを読み上げることができるという点です。ただし、これはテキストの翻訳機能を持っているというわけではありません。あくまでも、「用意された複数の言語のテキストを、用意された言語のルールに従って指定された言語の音声に変換できる」ということです。つまり、日本語のテキストは日本語音声に変換し、英語のテキストは英語音声に変換されるということです。

この音声変換をクラウドサービスとして提供しているのがAmazon Pollyです。

Amazon Pollyとは?

Amazon Pollyというのは、Amazon Web Services=AWSが提供している「テキスト・トゥー・スピーチ(Text to Speech)=TTS」サービスのことです。TTSサービスというのは、文字で書かれた情報を、人間が聞いても不自然のない音声に変換する技術のことで、例えば視覚に障害を持つ人々がニュース記事の内容を知ることができたり、文字を読む余裕はないものの、音声でなら視聴が可能という状況にある人が、必要な情報にアクセスできるようにするために非常に有効なサービスだと言われています。

Amazon Pollyは人間が聞いても不自然に感じることのない、非常に自然な音声を生成できると言われています。これまでの音声変換サービスとは異なり、ただ単に文字を音声に変換するだけではなく、人間が実際に話す時の発音やアクセント、そしてリズムなども含めて模倣した生成を行っているからです。

「人間が実際に話す時の発音やアクセントを再現できる」という機能を実装できたことにより、Amazon Pollyは複数の言語と様々な「方言」の模倣生成をサポートしており、それぞれの言語が持つさまざまな特徴や要件に対応し、状況に合わせた音声を生成することができます。これはAmazon Pollyが持つ最大の魅力の一つと言ってもいいでしょう。

「複数言語に対応」する=「翻訳機能」?

Amazon Pollyは複数の言語や方言の生成もサポートしているということをご紹介しました。これはつまり、テキストを複数の任意の言語に翻訳して音声を生成できるということを意味しているのでしょうか?

現段階において、その答えは残念ながら「NO」です。Amazon Pollyは複数言語に対応したテキストから音声への変換サービスを提供してはいるものの、テキストの翻訳機能自体は提供していません。つまり、日本語のテキストに対してAmazon Pollyができるのは、日本語の音声を生成することであり、英語のテキストに対して英語の音声を生成することです。

テキストから音声への翻訳+生成を行うことはできませんが、Amazonのサービスを使用して翻訳し、その翻訳結果を音声出力することは可能です。AmazonはAmazon Translateという翻訳サービスも提供しているので、このサービスを使って翻訳したテキストをAmazon Pollyで音声出力することが可能です。

Amazon Translateとは?

Amazon TranslateはAmazon Web Services(=AWS)が提供する機械学習を利用した自動翻訳サービスです。Amazon Translateを使うことで、テキストをある一つの言語から別の言語へと翻訳することができます。

Amazon Translateはニューラルネットワークを基盤とした機械学習モデルを使用しており、人間が自然に話す言語を模倣し、高品質で流暢な翻訳結果を提供できます。つまり文脈を理解して適切な意味や文法、そして語順に基づいて翻訳を行うことが可能です。複数の言語と言語ペアをサポートしているため、世界中のさまざまな言語を翻訳することが可能です。

複数言語に対応した翻訳が可能なので、ユーザーは自分達が開発するアプリケーションやWebサイト、テキストなどを比較的簡単に目的の言語へ翻訳してそれぞれの言語を話す顧客や利用者へ情報を伝えられるようになります。逆に、他の言語で制作されているWebサイトやアプリケーションを日本語に翻訳することも可能なので、海外製品の輸入などにも活用することができます。

リアルタイム翻訳にも対応

Amazon Translateはリアルタイム翻訳とバッチ翻訳の両方をサポートしています。「リアルタイム翻訳」とは、文字通り「ユーザーが直接入力したテキストやライブチャットの会話などを即座に翻訳する」機能のことです。一方「バッチ翻訳」とは、「大量のテキストデータを一度に翻訳する」機能のことで、大規模な文書やWebサイトを別の言語に翻訳する際に役に立つ機能です。

Amazon Translateはクラウドベースのサービスなので、高度なスケーラビリティに基づいたパフォーマンスを発揮することができます。どういうことかと言うと、ユーザーが大量のテキストデータを一度に処理する必要がある場合や、急激に翻訳要件が増加した場合でも、迅速かつ効率的に対応できるということを意味しています。

Amazon TranslateはAWSの他のサービスと統合することが可能で、特にAmazon PollyやAmazon Comprehendとの組み合わせがよく利用されます。これらのサービスを組み合わせることで、例えばテキストを別の言語に翻訳した後に音声化する、あるいはテキストの情報を分析してから翻訳するといった高度な処理が可能になります。

Amazon Translateの基本的な特徴、そして機能としては「テキストの翻訳」という単純なものかもしれませんが、その応用範囲は非常に広く、多くの人々にとって有用なツールとなっています。また、これからの技術の進歩とともに、Amazon Translateの機能もさらに進化していくだろうと予想されています。

SSMLとは?

Amazon PollyはSpeech Synthesis Markup Language(SSML)という言語をサポートしています。この言語をサポートしていることにより、生成した音声の発音を微調整したり、音声のスピードやピッチを変更するなど、さまざまな音響効果を追加することが可能になっています。SSMLをサポートしていることによって、単なる情報伝達だけでなく、より人間らしいコミュニケーションを可能にできるので、これはAmazon Pollyにとって非常に重要な機能だと言えるでしょう。

そもそもSSMLは音声合成サービスが提供する音声出力を調整・制御するための特別なマークアップ言語です。「マークアップ言語」とは、HTMLに代表されるように、テキストやデータに追加情報や構造を提供するためのコードを埋め込む言語のことを指します。SSMLの場合は特に音声合成、つまりテキストから人間が聞き取れる音声を作り出すプロセスに対して適用されるマークアップ言語だということになります。

SSMLの主な用途

SSMLを使用する主な用途は、冒頭で説明したように音声出力の品質を向上させ、より自然で人間らしい音声を生成することです。具体的には、SSMLを用いることで読み上げの速度や音の高さ、強調度合いを調整したり、特定の単語やフレーズの発音を変更したりすることが可能になります。また、より自然な音声出力を実現するために、息遣いやポーズ、上昇調や下降調などの音声のニュアンスを制御することも可能です。

具体例を挙げると、ある文章をスローテンポで、かつ特定の単語を強調して読み上げたいときにSSMLを使用してその指示を明示的に音声合成システムに伝えることができます。また、特定の方言やアクセントで発音する必要がある場合も、SSMLを使ってその指示をシステムに与えることが可能です。これらの機能により、音声合成はただ単純にテキストを読み上げるだけでなく、より人間らしく具体的な状況やニーズに応じた音声出力を提供することができるようになります。

Amazon Pollyは、このSSMLを完全にサポートし対応している音声合成サービスの一つです。Amazon PollyはSSMLの全ての特性を活用して、特定の音声出力要件に応じた合成音声を生成することができます。ニュースリーディングのアプリケーションであれば、SSMLを用いてニュースの見出しを強調したり、引用部分の読み上げトーンを変えることができます。また、教育向けの内容であれば、重要なキーワードやフレーズを強調したり、一部の内容をゆっくりと読み上げることも可能です。

SSMLの利用は、Amazon Pollyが提供する音声合成サービスの自然さと柔軟性を最大限に引き出すための重要な手段です。このマークアップ言語を用いることで、開発者は音声合成のプロセスをより細かく制御し、ユーザーにとって最も適した音声出力を提供することが可能になります。これは、Amazon Pollyが多くの様々な状況やニーズに対応できる一因と言えるでしょう。

クラウドとAmazon Polly

少しご紹介したように、Amazon Pollyはクラウドベースのサービスです。つまり、ユーザーはインターネット経由でアクセスし、自分のニーズに合わせてスケールアップまたはスケールダウンすることが可能です。また、クラウドサービスであるため、大量のテキストを同時に音声化するような大規模な要求にも迅速に対応できます。さらに、コストは利用した分だけという従量課金制を採用しているので、利用者にとっては非常に手軽で経済的なサービスとして知られています。

「クラウドサービス」について確認しておきましょう。

クラウドサービスは、インターネットを通じてデータの保存やソフトウェアの利用など様々なサービスを提供する仕組みのことを指します。その名前が示すように、「クラウド」、つまりインターネット上に存在することから、いつでもどこからでもそのサービスを利用できることが特徴です。

以前であれば企業がITインフラを構築するには大規模な投資が必要でしたが、クラウドサービスの登場により必要なリソースを必要な時だけレンタルするという形で利用できるようになりました。これにより、初期投資のコストを大幅に抑えつつ、必要に応じてリソースを増減させることが可能になり、企業のビジネススピードを上げる一助になっています。

クラウドサービス誕生の背景

クラウドサービスが誕生した背景には、インターネット技術の進化があります。インターネットが普及することで、遠隔地からのデータアクセスやリアルタイムのコミュニケーションが可能となり、これによりクラウドサービスが実現可能となりました。また、コンピュータの処理能力やストレージの大容量化、そしてネットワークの高速化も重要な要素で、こうした様々な技術の進化がクラウドサービスの発展を後押しすることになりました。

その結果、クラウドサービスは様々な形で私たちの生活やビジネスに利用されています。例えば、個人レベルでは、写真や動画をクラウド上に保存したり、音楽や映画をストリーミングで視聴するためにクラウドサービスが用いられます。ビジネスでは、顧客管理システム(CRM)や財務会計システムなど、様々な業務アプリケーションをクラウド上で動かすことが一般的となりつつあります。また、人工知能や大規模データ分析など、大量の計算リソースを必要とする作業も、クラウド上で行われることが増えています。これら全てがクラウドサービスの一部と言えるでしょう。

Amazon Pollyはなぜクラウドベースのサービスなのか?

Amazon Pollyがクラウドベースの音声合成サービスとして誕生した理由は、その柔軟性やスケーラビリティ、アクセシビリティにあります。クラウドベースのサービスであることにより、Amazon Pollyは多くのデバイスやアプリケーションから簡単にアクセスでき、使用できるようになるからです。また、クラウドベースのサービスであることから、ユーザーは必要に応じてサービスをスケーリングすることができ、大量のテキストを瞬時に音声に変換するための能力を必要に応じて増減させることが可能です。

AmazonがAmazon Pollyという音声合成サービスを提供している理由は、情報のアクセシビリティとエンゲージメントを向上させるというビジョンに基づいています。音声合成技術は、視覚的に情報を読み取ることが困難な人々、あるいは手が塞がっていてテキストを読むことができない人々にとって非常に重要なツールとして社会に貢献することができます。また、音声出力はモバイルデバイスやスマートホームデバイスなど、様々なデジタルプラットフォームでの情報伝達に役立ちます。

また、Amazon Pollyというサービスが提供されることで、Amazon自体のサービス、特にAmazon EchoやAmazon Alexaなどの音声アシスタントサービスにおける音声出力の質を向上させることにも繋がります。Amazon Pollyを使用することで、これらのサービスはより自然で理解しやすい音声出力を提供でき、ユーザーとのエンゲージメントを向上させることができるのです。

Amazon Pollyは、音声合成技術が情報のアクセシビリティを向上させ、デジタルコミュニケーションの新たな道を開くことができるという観点で、非常に高い存在価値を持ったサービスです。そして、その価値は今後も増していくことでしょう。クラウドベースのサービスとしてのAmazon Pollyの力強さと柔軟性は、音声合成が社会生活の様々な面において重要な役割を果たすことになるはずです。

Amazon PollyのAWS内での位置付け

Amazon PollyはAmazon Web Services(AWS)の中で、人間とコンピュータの間におけるインタラクション(=相互作用)を向上させるための重要な役割を果たしています。AWSはクラウドをベースにした多くのWebサービスを提供していて、その多種多様なサービスを通じてクラウドコンピューティングのエコシステムを構築しています。Amazon Pollyはそのエコシステムの中で、特に人間の言語と音声を理解し、合成する能力の提供を担っているサービスです。

この能力は、Webサイトやアプリケーションがユーザーとより自然な形で対話できるようにするという観点から非常に重要です。また、Amazon Pollyの提供する音声出力は視覚的に情報を理解することが困難なユーザーや、あるいは手が塞がっていて画面を見ることができないユーザーにとって、情報アクセスの重要な手段となります。こうした考え方は数年前から徐々にテクノロジー系企業を中心に大きな流れを生み出しており、AppleやGoogleなども自社開発のスマートフォン用音声アシスタントをリリースし、市場に投入しています。最近ではこのような音声アシスタント機能は利用者にとって当たり前のものとして受け入れられるようになっていて、現在では一般的なものとして活用されています。

AWS内でのコラボレーション

Amazon Pollyは、AWSの他のサービスと組み合わせて使用することにより、単体での活用に比べて強力なソリューションを作り出すことが可能です。例えば、Amazon Lex(Amazonの自然言語理解サービス)や既にご紹介したAmazon Translate(Amazonの翻訳サービス)と組み合わせることで、異なる言語を理解し、それを音声で出力する多言語対話システムを構築することが可能になります。

また、AppleやGoogleと同様に、Amazonは自身の音声アシスタントサービスであるAmazon Alexaを持っています。Amazon Alexaを通じて、Amazon自身もAmazon Pollyの能力を活用しています。Amazon PollyはAmazon Alexaに自然で人間らしい音声出力を提供し、これによりユーザーはAlexaとの対話をより楽しく、効果的に行うことができるのです。

このように、Amazon PollyのAWS内での位置付けとしては、ユーザーとデジタル環境の間の対話をより自然で効果的にするための重要なツールだと言えるでしょう。Amazonはこのサービスを通じて、デジタルテクノロジーが我々の生活にもたらす影響を最大限に活用し、それをより人間らしい、自然な形で提供することを目指しています。

Amazon Pollyの料金体系について

Amazon Pollyの料金体系は、主に使用したサービスの量=合成した音声の長さに基づいています。Amazon Pollyの料金は、合成された音声の単位時間(通常は文字数や単語数に基づく)ごとに請求されます。多くのAWSサービスが「Pay as you go=従量課金制」(使用した分だけを支払う)という料金体系を採用していますが、Amazon Pollyも同じように使用した分だけを支払う「従量課金制」を採用しています。

実際にどれくらいの時間でいくらを支払うことになるのかは個別の事例によっても異なってくるため、いわゆる「モデルケース」を例示することは難しいのですが、Amazon Pollyの詳細な利用料金については、AWSの公式Webサイトで最新の情報を確認することが可能です。また、特定の状況下では無料枠も提供されています。たとえば、AWSが提供している無料利用枠を利用すると、Amazon Pollyを毎月一定の時間まで無料で利用することもできるようになっています。そのため、これから音声合成サービスを利用しようと考えている場合は、自社のサービスや製品とAmazon Pollyが適合するかどうかを安心してテストすることができます。

また、Amazon Pollyの料金は地域によっても異なる可能性があります。AWSは世界中に複数のリージョンとアベイラビリティゾーンを持っており、それぞれの地域でのインフラコストや税制、その他の要因によってサービスの価格が異なる場合があるからです。

そのため、Amazon Pollyの利用料金を正確に把握するためには、AWSの公式Webサイトで最新の料金情報を確認し、自分が利用する予定の地域の料金を特定することが重要です。また、料金を最適化するためのベストプラクティスやツールもAWSから提供されているので、それらを活用することも推奨されています。

まとめ

ここまで、音声変換サービス、音声合成サービスとはどのようなものか?現在代表的なものとしてAmazon Pollyがあることや、Amazon Pollyがクラウドベースのサービスであり、現在でも既に様々な場面で活用されているということをご紹介してきました。音声技術は急速に進化しており、Amazon Pollyはその最前線に立っています。人間とコンピュータのインタラクションがますます自然になっていく中で、音声合成技術は重要な役割を担い始めています。Amazon Pollyは、そのような役割を担う存在として、将来性も含め非常に高く評価されています。高品質で自然な音声を提供することができ、様々なアプリケーションにおけるユーザーエンゲージメントを向上させる可能性があると考えられているからです。また、Amazon Pollyは様々な言語と方言をサポートしており、これによりグローバルな規模での使用が可能となっていることも評価のポイントです。Amazon PollyはAmazonの強力なAWSエコシステムの一部であり、他のAWSサービスと統合して利用することが可能です。これにより、高度にカスタマイズされたソリューションを開発することが可能となり、その可能性は無限大です。音声アシスタント技術の進化とともに、Amazon Pollyの重要性は増すでしょう。Amazon自身がAmazon Alexaを通じてAmazon Pollyを活用していることからも、その重要性は明らかです。Amazon Pollyの将来性は非常に高く評価されています。音声技術の進化とともに、その利用可能性はさらに広がっていくと考えられています。こうした最新の音声技術をフォローし、自社のビジネスチャンスを逃さないようにすることも、今後に向けて重要だと言えるでしょう。

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