新技術と既存技術の連携と活用。AWSとWindowsOSとの連携にはどのような事例&メリットがあるのか?

クラウドとは何か?

まず、「そもそもクラウドとは何か?」ということを確認しておきましょう。

「クラウド」というのは、一般的にはインターネットを通じてアクセス可能な仮想空間のことを意味しています。一般消費者にとっては「クラウドストレージ」や「ブラウザ経由でアクセス可能なメールサービス」などがわかりやすいでしょう。

このような使い方は「クラウドコンピューティング」というコンセプトに関連しており、これはインターネットを通じて提供されるコンピューティングリソースのことを指します。「コンピューティングリソース」というのは、データの保存場所となる「ストレージ」、コンピューターが与えられたタクスを実行する能力を発揮するための「プロセッシングパワー」、そしてソフトウェアアプリケーションなどを含んでいます。

一般的に使われるパソコンやスマートフォンなどのデバイスは、内部に物理的なストレージやプロセッサーをが内蔵されています。クラウドコンピューティングはこれらの内蔵リソースをインターネット経由で利用できるようにし、実際に現物が手元にない場合でも様々なデバイスを通じてリモートでアクセス可能にします。つまり、クラウドを使うことにより、自分が持っているデバイス本体の能力を超えた、追加のストレージや演算能力を利用することができるのです。

クラウドを利用する利点

実はクラウドを利用する利点は1つだけではなく複数上げられています。ここでは代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

1つ目は、「必要に応じてリソースを増減することができる」という点です。これは「スケーラビリティ=拡張性」とも呼ばれるもので、ある特定のタスクに大量のコンピューティングパワーが必要な場合や、大量のデータを一時的に保存する必要がある場合など、クラウドはそのニーズに応じたリソースを提供可能であることを意味します。

2つ目の利点としてあげられるのは、ユーザーは必要なリソースだけを購入し使用できるという点です。これにより、大量のハードウェアを購入したり、購入したハードウェアのメンテナンスをする必要がなくなるため、コストを抑えてコスト効率を最適化できます。

3つ目の利点はいわゆる「マルチアクセス」が可能な高いアクセス性を備えていることです。クラウドの各サービスはインターネットに接続していれば、場所やデバイスを問わずにどこからでもデータにアクセスしたりコンピューティングリソースを利用することができます。これはリモートワークやビジネスのグローバル化に大いに貢献しています。

4つ目の利点は、高いセキュリティ性です。市場には様々なクラウドサービスがありますが、それぞれのサービスは各クラウドサービスプロバイダーから提供されています。そのクラウドサービスプロバイダーは、データのセキュリティと顧客のプライバシーを保護するための強力なツールやプロトコルも提供しているのが通常です。

クラウドサービスの代表的なサービスモデルについて

ひと口に「クラウド」とは言うものの、同じクラウドサービスでもそのサービスモデルは大きく3つに分かれています。

1つ目は「IaaS=Infrastructure as a Serrvice」。最も基本的な物に分類されるクラウドサービスで、ネットワークやコンピューター(仮想マシンやハードウェアを含む)、データストレージスペースなどのITインフラをインターネット経由で提供するサービスです。

2つ目は「PaaS=Platform as a Service」。IaaSの場合はインフラをインターネット経由で提供しますが、PaaSはIaaSで提供されるようなインフラ機能に加えて、オペレーティングシステムやデータベース、さらに開発ツールなどのプラットフォームを提供します。これにより、開発者はアプリケーションを開発、テスト、運用するのに必要な環境を持つことができます。

3つ目は「SaaS=Software as a Service」。これは最も包括的なサービスで、ユーザーがインターネット経由でアクセスできる完全に機能するアプリケーションを提供します。これはメール、カレンダー、オフィスツール(Microsoft Office 365やGoogle Workspaceなど)、CRM(顧客関係管理)システムなど、多くのビジネスアプリケーションに適用されています。

3つの用途で提供されるクラウドサービス

ご説明したようにクラウドサービスのサービスモデルには3種類がありますが、もう少し大きな括り方をする場合にも、サービスの用途は3つに大別されています。

クラウドサービスプロバイダーがリソースを所有・運営し、インターネットを通じて一般ユーザーに公開されている「パブリッククラウド」。

一般ユーザーに使ってもらうことを想定せず、社内などの組織内で使用するために提供され、専用のネットワーク経由で提供される「プライベートクラウド」。

そして、「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」双方を組み合わせて設計されている「ハイブリッドクラウド」の3つです。

パブリッククラウドやプライベートクラウドは比較的想像しやすいと思います。ハイブリッドクラウドは、例えばECサイトなどが具体例として挙げられるでしょう。顧客が操作・入力したり目にするインターフェース部分はパブリッククラウドとして提供し、裏側で管理すべき顧客データや売上データのやり取りや保存・保守運用などをプライベートクラウドで行うのがハイブリッドクラウドです。

「クラウド」は形がないサービスであるがゆえに、受け取る側の視点によってもシンプルなのか、複雑な構成も可能なのかが分かれる柔軟な使い方ができるサービスになっています。また、使い方も一通りだけではなく複数の使い方が可能であるため、運用方法の設計次第で様々な可能性を持たせることができます。

クラウドと既存のOSやシステムは共存可能なのか?

テクノロジーの発達と発展が起きる際には、新たなテクノロジーと既存のテクノロジーに関する様々な意見や議論が巻き起こります。

クラウドについて初めて触れる場合、もしかしたら既存のOSやシステムなどとは全く関係のないもののように感じることもあるかもしれません。しかし、実際にはクラウドのテクノロジーと既存のOSやシステムが結びつくことで、様々なビジネスチャンスが生まれるケースも多くあります。

現在の市場においてクラウドサービスは様々なプロバイダーが提供していますが、世界的に見てシェアが最も高いクラウドサービスはAmazonが提供しているAmazon Web Sevices=AWSです。多くの企業がAWSを使用しており、提供されているサービスも多岐に渡ります。

ITの世界における既存テクノロジー、既存システムとして思い浮かぶのはMicrosoftが提供するOS「Windows」でしょう。WindowsOSは多くの企業が導入するPCのほとんどにインストールされており、Office系アプリケーションと同じく高いシェアを誇っています。

では、もともとWindowsOSベースのシステムやITインフラを構築していた企業がクラウドに移行する場合、既存のシステムやインフラを捨てることになってしまうのかというと、決してそんなことはありません。実はAWSでもWindowsOSを活用したソリューションは提供されており、両者には大きな関連性があるのです。

ここからは、AWSでWindowsOS系サービスを活用することで、どのようなメリットが生まれ、どのようにビジネスが変わるのかについて具体的な活用事例をご紹介します。

AWSとは何か?

まず、AWSとは何かについて再確認しておきましょう。

AWS=Amazon Web Services とは、インターネットショッピング最大手のAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。幅広いサービスを提供しており、ストレージ、データベース、分析ツール、AI(人工知能)ツールなどを含む多数の製品を提供しています。AWSは、小規模ビジネスから大企業、政府機関まで、多種多様なユーザーがITインフラを構築し、管理するための基盤を提供しています。

WindowsOSとは何か?

一般的な知識としてほとんどの方がご存知のことではありますが、WindowsOSは、Microsoftが開発した基本ソフト=オペレーティングシステム(OS)です。OSというのはコンピューターが機能するための基礎的なソフトウェアであり、ハードウェアの管理やアプリケーションソフトウェアの実行、ユーザーとのインターフェースを提供するなど、多くの重要な役割を果たしています。WindowsOSは、個人か法人かを問わず世界中のPCや、ビジネス用のコンピューターで使用されています。

AWSとWindowsOSの関連性はどのようなものか?

実は、AWSはWindowsOSを利用したクラウドベースのソリューションを提供しています。AWS上でWindowsOSを実行するための仮想マシン(=EC2インスタンス)を提供し、ユーザーはEC2インスタンスをを通じてWindowsOSベースのアプリケーションをクラウド上で実行することが可能になっています。

この他にもAWSが提供するWindowsOSの利点は多数あり、物理的なハードウェアを管理する手間を省くことができます。またAWSが持つスケーラビリティにより、需要に応じてリソースを増減させることが簡単になっているため、これによりコスト効率を大幅に向上させることが可能です。

このように、AWSはWindowsOSとの相互互換性を持つプラットフォームを提供しています。WindowsOSはマイクロソフトが開発したオペレーティングシステムであり、世界中の多くのパソコンやサーバーがWindowsOSベースで動作している現状があります。そのため、多くのエンジニアやIT担当者はWindowsOSベースの操作に慣れしたんでいるため、AWSとWindowsOS、これら二つの技術を一緒に使用することで大規模なデータ管理やアプリケーションの運用を効率的に行うことが可能になるのです。

AWSはWindowsOS自体もサポートしているため、Windows ServerやSQL Server、.NETなどのWindows系サービスをクラウド上で稼働させることが可能です。このため、ユーザーは物理的なインフラストラクチャーを設置する必要がありません。また、AWSのクラウド上でWindowsアプリケーションを運用することも可能です。これはコスト削減やスケーラビリティの向上、管理の効率化といったメリットをもたらすることに繋がっています。

AWSにおけるWindowsOS系サービスの互換性

AWSでは、WindowsOSに基づいたサービスも提供しています。たとえば、AWSの「Windows on AWS」は、Microsoftのソフトウェアとツール(例えばSQL Serverや.NETなど)をクラウド上で活用できます。これにより、開発者は既存のWindowsベースのアプリケーションをAWSに簡単に移植することが可能です。

AWSとWindowsOSの活用事例

AWSは、Windows OSとその関連サービスとの互換性を保つための多くのサービスを提供しています。これは、これまで運用していたWindowsベースのアプリケーションやワークフローを保持しながらAWS(=クラウド)に移行したい企業にとっては非常に重要な点です。いくつかの活用事例(主に海外)をご紹介していきましょう。

世界的な飲料メーカーであるD社は,AWS上でMicrosoft SharePointを使ったWebサイトを立ち上げることにより約35万ドルもの運用コストを節約しました。グローバル展開を行っている同社は世界各地に支社や営業拠点を持っており、同時に各国でのプロモーションを行うためにオンプレミスのインフラ環境を各国で個別に用意しているケースもありました。しかし、AWSとWindowsOSベースのサービスを連携させることによりインフラコストが一元化され、結果的に設備管理費などを含む大幅なコスト削減が可能になったのです。

同じくグローバル展開している大手旅行サイトのE社やエネルギー企業H社の場合は、AWSのグローバルなインフラストラクチャを活用して、顧客体験の向上と、継続的なデプロイメントと迅速な市場投入を実現しています。どちらの場合もAWS上でWindowsOSをベースとしたサービスであるMicrosoft SQL Serverを使用しています。これにより、顧客のためのビジネスシステムとデータを分離することができました。Web上での売買が発生する場合、顧客データの管理と自社の在庫状況や手配状況などはリンクしながらも分離している部分も必要な、複雑なシステムが必要です。データベースを管理するにあたり、世界的にも一般的に使われているSQL Serverを導入済みの両社の場合、全く新しい新規のシステムに移行するのではなく、AWS上で既存システムと近い運用を実現することにより、業務効率とコストの削減を両立させることができるようになったのです。

AWSとWindowsOS系サービスを連携させるメリットとは?

 

クラウドサービスであるAWSと、これまではオンプレミス環境で使われることが常識と考えられていたWindowsOS系のサービスが相互に連携可能であることをご紹介してきました。

では、AWSとWindowsOS系サービスを連携させて利用する具体的なメリットはどのようなことなのでしょうか?AWSを使用してWindows OS系のサービスを利用することによるメリットは多数ありますが、以下に代表的な5つをご紹介します。具体例を解説していきましょう。

コスト効率

AWSでは、必要なリソースを必要なだけ使用し、必要な時間だけ支払うという「従量課金制」を採用しています。これにより、事前に大きな投資をすることなく、Windows OS系のサービスをクラウド上で利用することが可能です。また、AWSでは「リザーブドインスタンス」や「スポットインスタンス」といった様々な料金オプションが用意されており、これらの中から最適な方法を選択することで、コストをさらに最適化することができます。

スケーラビリティ

AWSでは使用量が増えた場合やパフォーマンスが必要な場合に、リソースを簡単に追加することが可能です。これにより、ビジネスの成長や需要の変動に対応する柔軟性=スケーラビリティを持つことができます。Windows OS系のサービスをクラウド上で利用することにより、物理的なインフラの制限を受けることなくビジネスをスケールアップすることが可能になります。

セキュリティとコンプライアンス

AWSは、強固なセキュリティ機能を提供しています。これには、データの暗号化やネットワークファイアウォール、さらにアクセス管理などが含まれます。また、AWSは多くのコンプライアンス認証を取得しており、企業はこれらの認証を活用して自身のコンプライアンス要件を満たせるというメリットがあります。

高可用性

AWSは世界中にリージョンと呼ばれるデータセンターを持っており、これにより高い可用性と冗長性を実現しています。これにより、一部のリージョンに問題が発生した場合でも、サービスを継続して提供することが可能です。例えば、AWSのリージョンの一つである米国東部のヴァージニアリージョンに障害が発生した場合でも、他のリージョン(例えば米国西部のオレゴンリージョン)やアジアパシフィック(東京リージョン))で同じサービスを提供することができます。これによりAWSは高い可用性と冗長性を実現し、ユーザーに安定したサービスを提供可能です。

インテグレーションと管理の簡便さ

AWSでは、Windows OS系のサービスを簡単に統合・管理することが可能です。例えば、AWS Management Console、AWS Command Line Interface(CLI)、またはAWS SDKsを使用して、リソースのプロビジョニングやモニタリング、そして管理を行うことができます。これにより、ITチームはインフラの管理にかかる時間を減らし、アプリケーションの開発やビジネス価値の提供に集中することができます。

AWSとWindowsOS系サービスを連携させることにより、上記のような複数のメリットを享受できるため、企業としてはオンプレミスにこだわること無く積極的にクラウドの導入や移行、同時展開を行うことで、ビジネスの効率化と成長を達成することが可能になります。

まとめ

ここまで、AWSとWindowsOSにはどのような関連性があるのか?双方を連携させた活用事例やそのメリットについてご紹介してきました。直近10年の間にクラウドサービスは世界的に普及しており、個人・法人を問わずに様々なクラウドサービスが利用されるようになっています。これまでは自社内に設置するための設備投資として考えられていたITインフラが、クラウドを活用することで自社設備にこだわる必要はなくなりましたが、これまで運用されていたオンプレミス環境を活かす形での連携が可能になっているなど、クラウドの特徴を活かした柔軟な運用が可能になっています。これから自社でもクラウドの活用や導入を検討する場合、現状のオンプレミス環境がどのようになっていて、AWSなどのクラウドサービスとどのように連携できるかをよく確認してみましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です