条件付きイベント処理で日々の業務を効率化。「AWS Lambda」とは?

AWSについておさらい

クラウドコンピューティングやLambdaについて語る前に、そもそも「AWSとは何か?」ということについておさらいしておきましょう。

AWSの正式名称は「Amazon Web Services」で、インターネット通販最大手として知られるAmazonが開発しているクラウドコンピューティングサービスです。クラウドコンピューティングとは、インターネットを通じてデータセンターのコンピューティングリソースやストレージリソースを利用者がいつでもどこからでも利用できるようにする仕組みです。AWSはその代表的なサービスの一つで、幅広い機能を提供しています。

AWSの目的は、企業や個人が自身のビジネスやプロジェクトを容易かつ効率的に進められるようにすることです。その目的を実現するために、AWSは膨大な数のサービスを提供していることで知られています。例えば、仮想マシンを立ち上げて運用するEC2や大量のデータを保存できるS3。データベースサービスのRDSなどがあり、これらを組み合わせてシステムを構築し、運用することが可能です。

企業がAWSを導入する理由

企業がAWSを導入する目的はさまざまですが、主な目的としては「インフラコストの削減」「運用の効率化」「拡張性の向上」という3つが挙げられます。従来のオンプレミスのITインフラ構成では機器の設置やメンテナンスに費用と時間がかかります。しかしAWSではそのような手間がほとんど不要です。これは、必要な機器の設備投資やメンテナンスなどはAWSが用意しており、保守やメンテナンスも大元はAWSが行うことが理由です。設備投資自体をAWSが行うため、ユーザー側は必要に応じてリソースを追加したり、減らしたりすることが容易になります。そのため、ビジネスの変動に対応しやすいというメリットがあります。

AWSが市場で世界シェア1位になっている理由はいくつかありますが、主な理由はサービスの多様性と信頼性、そしてコストパフォーマンスの良さだと分析されています。AWSは200以上のサービスを提供しており、それぞれが高いパフォーマンスを持ちつつ相互に連携することが可能です。この豊富な機能性が、各種ビジネスニーズに対応可能なフレキシブルなソリューションを提供します。また、AWSはその広範なインフラと先進的なセキュリティ対策により、高い信頼性を確保しています。さらに、支払いは利用した分だけという明確で公平な料金設定も評価されているポイントです。この支払形態によって、企業は必要なリソースだけを選択し適切な料金を支払うことが可能になります。

また、AWSの魅力として、グローバルな事業展開の規模と地域の多様性を無視することはできないでしょう。AWSは世界中にデータセンターを設置しており、これにより企業は自社の事業を世界中どこでも運用することが可能となります。このような広範な展開力は、グローバルに事業を展開する企業にとって非常に魅力的です。さらに、AWSが提供する豊富な教育リソースとサポートも注目されています。豊富なドキュメンテーション、オンライントレーニング、認定プログラムなどを通じて、AWSユーザーは自分のスキルを向上させることができます。そして、専門家による24時間365日のサポートにより、いつでも質問や問題に対する解答を得ることができます。

利用者へのサポート

ここまでご説明してきたAWSの特徴やメリットは、広義の意味では利用者をサポートするために設計されているビジネス形態です。AWSのメリットはその強力な機能性、信頼性、スケーラビリティ、そしてその適応性によって、あらゆるビジネスニーズに対応することができることです。また、その広範な地域展開と優れたサポートが、企業がグローバルに事業を拡大するのを支援します。これら全てが組み合わさることで、AWSは現在世界最大のクラウドプロバイダーとして認知されています。

ユーザー目線に立っているという観点で言えば、AWSが発揮している「イノベーションのスピード」も評価されています。AWSは年間を通じて新しいサービスや機能の追加を行い、テクノロジーの進化と共に顧客の要求に応えています。その結果、AI、機械学習、IoT、ブロックチェーンなどの最新のテクノロジーへのアクセスを手軽に提供しています。これにより、企業は最新の技術を利用して自社のビジネスを拡大し競争力を保つことができるため、AWSの新技術に対する取り組み自体が利用者をサポートすることに繋がっているのです。

ソリューションとコンプライアンス

AWSは自社のエコシステムを形成していて、サードパーティの開発者やベンダーが自身のソリューションをマーケットプレイスで販売することも可能にしています。これは、ユーザーが自身のビジネスニーズに最適なソリューションを見つけやすくすると同時に、ベンダーにとっても新たなビジネス機会を創出することに繋がっています。また、「ガバナンスとコンプライアンス」も重要な要素です。AWSは多くの業界標準や法規制に準拠しているので、ユーザーはデータプライバシーやセキュリティなどの観点から信頼性のある環境でビジネスを進めることが可能です。

これら全ての要素が組み合わさることで、AWSは企業にとって信頼性があり、多機能であり、スケーラブルなソリューションを提供しています。その結果、小規模企業から大企業、さらには政府機関まで、様々な規模と業種の組織がAWSを利用してビジネスを展開しています。これが、AWSが市場で評価され、世界シェア1位に輝いている理由と言えるでしょう。

サーバーレスコンピューティングとは何か?

そもそも「サーバーレスコンピューティング」とはどのようなものなのかを確認しておきましょう。

サーバーレスコンピューティングとは、開発者がアプリケーションを開発・運用する際に、物理的なサーバーや仮想マシンの管理から解放され、コードの記述やデータの操作に集中できる仕組みのことです。サーバー「レス」という名称であるため、「サーバーがない」と誤解されがちですが、サーバーが存在しないわけではなく、それを管理する必要がユーザーから取り除かれ、その部分はクラウドプロバイダーが担当する、という意味です。

サーバーレスアーキテクチャの主要な要素は、バックエンドシステムを個別の機能(「関数」と呼ばれる単位)に分割し、それぞれが特定のタスクを実行することです。これらの関数はイベントに応じて実行されることになり、例えばユーザーからのリクエストやデータベースからの更新などがイベントになります。サーバーレスコンピューティングはその特性上、インフラの管理にかかる時間と労力が大幅に削減されという利点があります。物理的なサーバーの設置やメンテナンス、ソフトウェアの更新やパッチ適用など、従来は手間と時間を必要としていたこれらの作業が不要となり、結果として開発者はアプリケーションのコードの開発に専念できます。

スケーラビリティも大きな利点の1つです。サーバーレスコンピューティングは、アプリケーションのトラフィックが増えた場合でも、自動的にスケーリングして対応します。このため、手動でリソースを追加する必要がなく、ユーザーが急増した場合でも自動的に対応可能です。コスト効率が向上することも特徴の1つで、従来のサーバーベースのアプリケーションでは、予想されるトラフィックに対応するために、あらかじめ十分なリソースを確保する必要がありました。しかし、サーバーレスコンピューティングの場合は関数は実際に実行される時だけリソースを消費し、それに対応する費用が発生します。つまり、「使った分だけ払う」というモデルが採用されています。これにより、無駄なコストを大幅に削減することが可能となります。

AWS Lambdaとは何か?

AWSがもつサーバーレスコンピューティングサービスとしてLambdaがあるということは冒頭でご紹介しました。では、Lambdaとはどのようなものなのか、概要を説明していきましょう。

AWS Lambdaは、コードの実行環境をサーバレスで提供するサービスです。ユーザーは、自分のコードをアップロードし、必要なリソース(CPUパワー、メモリ、ストレージ等)を設定するだけで、AWSがバックエンドのサーバ管理やスケーリングを自動的に行います。

AWS Lambdaの利用目的

AWS Lambdaの一つの主要な利用ケースはイベント駆動型処理です。これは、特定のイベント(例えば、新しいファイルがS3バケットにアップロードされた時や、DynamoDBテーブルが更新された時など)が発生したときに、Lambda関数を自動的に起動する機能を指します。Lambdaはマイクロサービスの構築にも適しています。各マイクロサービスを個別のLambda関数として実装することで、サービス間の依存関係を最小限に抑えるとともに、各サービスのスケーリングや更新を独立に行うことが可能になります。

別のケースとしては、リアルタイムのファイル処理やETL(Extract, Transform, Load)ジョブ、ログファイルの分析など、大量のデータ処理によく使われます。例えば、新しいファイルがS3バケットにアップロードされた時に自動的にLambda関数を起動し、データの前処理や変換が可能です。また、バックエンドのWebアプリケーションやAPIの開発にも広く使用されており、AWSのAPI Gatewayと組み合わせることで、スケーラブルなRESTful APIを簡単に作成することができます。API GatewayがHTTPリクエストを受け取り、それをLambda関数に渡すというプロセスを通じて、フルマネージドなサーバレスバックエンドを構築することが可能です。

AWS Lambdaを使用する際のポイント

どんなサービスやツールも、最終的に使うのは人間なので、使用する上でのポイントを押さえておくことで有効なツールを更に活用できるようになります。Lambdaを使うとき、そのパフォーマンスを最大限に引き出すためのいくつかのポイントがありますのでご紹介しておきましょう。

1つ目のポイントは、「適切なメモリ設定」が必要だということです。Lambda関数は、メモリの設定に応じてCPU能力とネットワーク帯域幅がスケーリングされます。そのため、必要に応じてメモリを適切な値に調整することでパフォーマンスを最適化することができます。

また、コードを最適化しておくことも重要なポイントの1つです。これを行うことでLambda関数の起動時間を最小限に抑えられるからです。具体的な例としては、関数の外側でライブラリをインポートしたり、再利用可能なリソースをグローバル変数として初期化したりすると、関数の起動時間を短縮できます。

AWSをはじめとするクラウドサービスの多くは料金体系が従量課金制になっており、必要な分を使い、使った分に応じた請求額を支払うという形式です。AWS Lambdaでもそれは同様ですが、Lambdaの料金は、関数の呼び出し数と実行時間に基づいているため、適切に管理を行わないとコストが当初の想定以上に高くなる可能性がありますので、コスト管理も大きなポイントになることを覚えておきましょう。

Lambda関数には最大実行時間(タイムアウト)があり、デフォルトは3秒です。しかし、このタイムアウトを長く設定してしまうと、関数が予期しないほど長く実行されてコストが高くなる可能性があります。そのため、各関数のタイムアウトを適切に設定することが重要です。このような場合に備えてAWSの料金アラートを設定することで、Lambdaのコストが一定の閾値を超えたときに通知を受け取ることができます。これにより、予期せぬコストの増加を防ぐことができます。

AWS Lambdaは、そのサーバレスな特性と高いスケーラビリティにより、様々な用途で利用される強力なツールです。しかし、そのパフォーマンスとコスト効率を最大限に引き出すには、ポイントを抑えた適切な設定と管理が必要であることは常に頭に留めておくと良いでしょう。

AWS Lambdaと他のAWSサービスとの統合

LambdaはAWSが提供するサービスであることはご理解頂けたと思います。LambdaがAWSのサービスであるということは、つまり「AWSの他のサービスと連携可能」であることを意味します。Lambdaは他のAWSサービスと簡単に統合でき、AWS内の各サービスからのイベントに基づいてLambda関数をトリガーできます。これにより、多様なタスクを自動化し、効率的なワークフローを構築することが可能です。

Amazon S3との統合

Amazon S3のバケットに新しいオブジェクトがアップロードされると、そのイベントをトリガーにLambda関数を実行することができます。これを利用すると、例えば画像ファイルがアップロードされたら自動的にサムネイルを生成する、といった処理が可能になります。

具体例として、ある写真共有のウェブサイトを運営していると仮定します。ユーザーは自分の写真をサイトにアップロードし、他のユーザーがそれらの写真を見ることができます。しかしアップロードされる写真のサイズは大きく、全ての写真をフルサイズで表示するとページのロード時間が長くなり、ユーザー体験に悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、各写真の小さなプレビュー画像(=サムネイル)を表示することでロード時間を短縮するほうがベターです。

このようなケースでAmazon S3とLambdaを組み合わせると、この問題を自動的に解決することができます。まず、ユーザーが写真をアップロードすると、その写真はAmazon S3のバケットに保存されます。このアップロードイベントは、設定されたLambda関数をトリガーします。Lambda関数は、アップロードされたオリジナルの画像ファイルを取得し、それをサムネイル用のサイズに自動でリサイズします。そして、このサムネイル画像を別のS3バケットに保存し、写真がアップロードされると自動的にサムネイルが生成され、ユーザーがウェブサイトを訪れた際にはすぐに小さなプレビュー画像を表示するように設定できます。

Amazon DynamoDBとの統合

DynamoDBのストリームを利用すると、テーブルのデータ変更(挿入、更新、削除)をトリガーにLambda関数を起動できます。これにより、データの変更に応じたリアルタイムの処理を実装することができます。

例えば、Eコマースのウェブサイトを運営していると仮定します。ユーザーは商品を購入する際に、在庫の情報をリアルタイムで知りたいと考えます。一方で、管理者は商品の在庫が低下した際に、自動的にその通知を受け取りたいと考えます。この2つの要求はDynamoDBのストリームとLambdaを使って解決することができます。

商品の在庫情報はDynamoDBのテーブルに保存されます。商品が購入されるたびに、その在庫数は更新されるので、この在庫数の更新イベントは「設定したLambda関数」をトリガーします。Lambda関数は、在庫数が更新された商品の情報を取得するので、その情報を元に在庫数がある一定の閾値を下回った場合、管理者に自動的に通知を送ります。また、この関数はリアルタイムの在庫情報をウェブサイトに反映するための処理も行います。これにより、ユーザーは最新の在庫情報を確認することができます。

このように、DynamoDBのストリームとLambdaを組み合わせることで、データの変更に応じたリアルタイムの処理を自動化することが可能になります。これにより、ユーザー体験の向上と管理者の業務効率化を同時に実現することができます。そして、これはあくまで一例であり、同じようにDynamoDBのデータ変更をトリガーにLambda関数を起動させることで、様々なリアルタイムの処理を実装することができます。

まとめ

AWSがどんなものかということや、企業がAWSを導入する理由、そして現在はサーバーレスコンピューティングが普及し始めており、AWSもLambdaを通じてサーバーレスコンピューティングサービスを提供しているということをご紹介してきました。様々なクラウドサービスが普及する中で、世界シェアが最大規模であるAWSのサービスはどの企業からも信頼されており、AWSが提供するサーバーレスコンピューティングサービスであるLambdaに対しても大きな信頼が寄せられています。今後のIT動向を知る上で、クラウドやサーバーレスの知識は不可欠です。この記事をきっかけに情報を整理し、今後の業務に役立てて下さい。

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