ITインフラ&システムの未来?クラウド化とは何か?今後の見通しについて。

「クラウド化する」とはどういうことか?

「クラウド化する」という言葉がよく聞かれるようになっています。この言葉はITシステムやデータベースなどを自社の物理的なサーバーからクラウドサービスへ移行することを指します。一般的に言われていることですが、クラウド化するとハードウェアのコスト削減やスケーラビリティの向上、データ管理の簡易化などが実現できると言われています。

具体例として、企業が自社のサーバーで管理している顧客データベースをクラウドへ移行するケースを考えてみましょう。クラウド化すると、そのデータベースはインターネットを介してどこからでもアクセス可能になり、企業は物理的なサーバーのメンテナンスやアップデートを心配する必要がなくなります。また、データベースが大きく成長したとしても、クラウドサービスはその需要に応じてスケールアップすることができます。

また、「クラウド化する」とは、特定のソフトウェアやサービスをクラウドベースのものに変更することも指すことがあります。例えば、企業が自社で運用しているメールシステムを、クラウドベースのメールサービス(特定のPCを使わなくても、ブラウザなどでも閲覧、送信ができるインターネットベースのメールサービス)に移行することも「クラウド化」と言えます。これにより、メールシステムの管理とメンテナンスの負担が減少し、ユーザーはどこからでもメールにアクセスできるようになります。

その一方で、クラウド化には注意が必要な側面もあります。特に、データのプライバシーとセキュリティは重要な検討事項です。データをクラウドに移行すると、そのデータはクラウドサービスプロバイダーの管理下に入ります。したがって、プロバイダーが提供するセキュリティ措置が適切であることを確認し、必要に応じて追加のセキュリティ措置を講じることが重要です。

クラウドとは何か?

では、そもそも「クラウド」とは何でしょうか?クラウドとは、インターネットを通じて、データストレージやソフトウェア、計算能力といったITリソースを提供するサービスのことを指します。このクラウドを用いてITリソースを管理することを「クラウド化」と称します。また、クラウド化されたITインフラやITリソースを使ったオペレーションを行うことを総称して「クラウドコンピューティング」とも呼称されています。

「クラウド」や「クラウドコンピューティング」という言葉はインターネットを通じて提供される各種のコンピューティングサービスの一般的な名称です。これらのサービスは、データストレージ、データベース、ソフトウェア、分析ツール、ネットワーキング、人工知能(AI)、さらには仮想コンピュータなど、さまざまなものを含んでいます。そもそもクラウドコンピューティングの目的は、企業が物理的なインフラストラクチャを自社内で保有、運用することなく、インターネットを通じて必要なリソースを使用できるようにすることにあります。これにより、コスト削減、スケーラビリティの向上、柔軟性の強化などのメリットを生み出すことが目的です。

クラウドはどのように生まれたのか?

クラウドそのものやクラウドコンピューティングの起源および概念の始まりは、なんと1960年代の分散コンピューティングとメインフレームコンピュータにまで遡ることができます。60年代当時、大規模なメインフレームコンピュータは現代では考えられないほど高価な製品であり、そのリソースを最大限に活用するために、多くのユーザーが同じメインフレームを共有することが一般的でした。この時期には、ユーザーがIBMのメインフレームにジョブを提出し、オペレーターがそれを実行するという「データセンターモデル」が主流でした​。その一方で多人数のユーザー間でのコンピュータ・リソースの共有使用を指し、ユーザーとユーザーが共有する高価なコンピュータ・リソースの両方の効率の向上が提唱され始めました。これは現代のクラウドコンピューティングの初期の形態と見ることができます。

しかし、本格的なクラウドコンピューティングの概念が具現化したのはインターネットの普及が始まった1990年代後半から2000年代初頭にかけてのことでした。当時、Amazon、Google、Microsoftなどのメジャーな巨大IT企業は、自社の巨大なデータセンターの余剰容量を他の企業や個人にレンタルするビジネスモデルを採用しました。これが「データセンターモデル」で、60年代〜70年代当時から提唱されていたモデルです。この概念が2000年代に入って技術的な進歩により具現化し、ユーザーは自身のコンピュータやデータセンターで物理的にリソースを保有する必要なく、インターネットを通じて必要なリソースを提供する初期の「クラウド」サービスが誕生したのです。

また、1990年代には主にデータ回線を提供していた通信企業が、同等の品質を保ちつつコストを抑えた仮想プライベートネットワーク(VPN)サービスを提供し始めました。これらの企業は、サーバーの使用をバランス良く調整することで、ネットワーク帯域幅をより効率的に利用できるようになりました。そして、プロバイダが責任を負う範囲とユーザーが責任を負う範囲の境界を表すために、クラウドのシンボルを使用し始めたのです​。このような背景から、クラウドという言葉は今日のような仮想化されたサービスを指す言葉として使われるようになりました​。

2000年代以降の急速な発展

クラウド関連のサービスや、クラウド化された製品が大きく発展したのは2000年代になってからです。2000年代に入ると、Amazonは2002年にAmazon Web Servicesを設立し、開発者が独立してアプリケーションを構築することを可能にしました。そして2006年には、Simple Storage Service(S3)とElastic Compute Cloud(EC2)を導入し、これらのサービスはサーバーの仮想化を利用して、従量制でIaaS(Infrastructure as a Service)を提供する最初のサービスの一つとなりました​。

2000年代に入ると、Amazonは自社の子会社であるAmazon Web Servicesを設立し、開発者が自立してアプリケーションを構築することを可能にしました。2006年には、AmazonがSimple Storage Service (S3)とElastic Compute Cloud (EC2)のサービスを開始しています。これらのサービスは、初めて仮想サーバーを使用してIaaS(Infrastructure as a Service)を提供した最初のものの一つであり、料金体系が従量課金制でスタートしています。これ以降、クラウドサービスの料金体系は従量課金制であるということが多くなっていきます。また、2008年には、GoogleがGoogle App Engineのベータ版をリリースしました。これはユーザーがWebアプリケーションを作成するための完全に管理されたインフラとプラットフォームを提供するPaaS(Platform as a Service)でした​。

それ以降、クラウドサービスは大きく拡大し、Amazon、Google、MicrosoftなどメガIT企業がのほとんどがクラウド部門を立ち上げており、クラウドサービスが一般に広く利用可能となってIT業界の超大手企業として世界的に存在感を高めることになっていったのです。また、公開クラウドとプライベートクラウドを組み合わせて使用するというアイデアも生まれ、このような「ハイブリッドクラウド」は、組織が自らの実装をよりカスタマイズしクラウドサービスをより完全に統合することを可能にしています。

クラウド化発展に影響を与えた主要トレンドとは?

IT技術の進化においては、過去にも様々な技術的なトレンドがありました。クラウド化が発展する過程においてもいくつかのトレンドがあり、そのトレンドは現在にも繋がっています。ここではクラウドコンピューティングやクラウド化の発展に大きな影響を与えた主要なトレンドについて説明します。

まず1つ目が「コンテナ」です。コンテナはアプリケーション、オペレーティングシステム、および/またはデータをパッケージ化したもので、環境間で柔軟に動作します。これにより、依存関係とバイナリがアプリケーションと一緒にパッケージ化され、ホストのオペレーティングシステムから操作を抽象化します。コンテナはクラウドネイティブアプリケーションの基盤となり、クラウドサービスの拡大に欠かせない要素となっています。

2つ目は「サーバーレスコンピューティング」です。サーバーレスコンピューティングは、管理されたインフラストラクチャ上で実行されるコンピューティングです。これにより、ITチームやDevOpsチームはバックエンドの責任から解放され、エンジニアはアプリケーションやコードの機能性にだけ集中できます。

3つ目が「クラウドセキュリティ」です。クラウドサービスの人気が高まるにつれて、クラウドにホストされたデータとアプリケーションのリスクも高まりました。これが、クラウドベースのセキュリティとデータプライバシーの成長を促進する効果を生み出しました。

そして4つ目が「エッジコンピューティング」です。クラウドリソースの分散性は、レイテンシーとアクセシビリティの期待を大きく変えました。エッジコンピューティングは、データ分析と計算操作をユーザーとデバイスに近づけることで、この拡張に貢献しています。

このようなトレンドを通じて、クラウドコンンピューティングは個人のユーザーから大企業に至るまで、全ての規模の組織が利用できるようになりました。その結果、業界の価値は急速に高まり、市場規模は2010年の約120億ドルから2025年には6230億ドルを超えると予測されています。

これまでのオンプレミスとクラウドはどう違うのか

「クラウド」の対義語として使われるのが「オンプレミス」という言葉です。いわゆる、自社内にITインフラやリソースを設備した環境のことを指す言葉です。オンプレミスとクラウドというこれら二つのモデルには明確な違いがありますが、同時に一部共通項も存在します。それぞれの違いや共通する点を説明します。

オンプレミス

オンプレミスとは、企業が自社の物理的な場所にあるサーバーやデータセンターでデータとアプリケーションを管理、保存、運用するモデルを指します。過去においてはほとんどの企業がオンプレミスでのITインフラやリソースの設置を行っていました。

オンプレミス環境では自社の設備でデータとアプリケーションを管理するため、企業は当然のことながら自社設備を完全にコントロール下に置くことができます。インフラを自社のコントロール下に置けるため、データセキュリティやコンプライアンス、カスタマイゼーションのニーズに対応する能力は高い状態にあると言えるでしょう。

その一方で、ITインフラやリソースを自社で設備投資することになるため、サーバーやネットワーク設備、ソフトウェアライセンスなどの導入と維持には高額な初期投資と継続的な維持費用が必要になるという一面があります。継続的な維持費用というのは、つまりシステム全体のメンテナンスやソフトウェアのアップデートに関わる費用をイメージするのが良いでしょう。システムメンテナンスにもソフトウェアアップデートにも、ネットワークエンジニアやシステムエンジニア、アプリケーションエンジニアなどの人件費が必要になります。

クラウド

クラウドとは、既に多くの方がご存知のようにインターネットを通じてデータとアプリケーションをリモートサーバー上で管理、保存、運用するモデルを指します。これまでの常識であったオンプレミス環境とは異なり、次のような特徴があります。

クラウドは必要に応じてリソースを増減することが可能です。これにより、ビジネスが成長したり、需要が変動したりする際に迅速に対応することができます。また、使用したリソースのみに対して料金を支払う形になるため、初期投資や維持費用が大幅に削減できるというのがオンプレミスと異なるところです。また、メンテナンスやアップデートはクラウドサービスプロバイダーが行うため、これらのタスクに関連するコストや手間も削減できます。インターネットが利用できる場所であれば、どこからでもデータやアプリケーションにアクセスすることが可能なので、リモートワークやフレキシブルな作業スタイルに対応する能力を向上させます。

また、クラウドにおいてはデータとアプリケーションがサードパーティーのプロバイダーによって管理されるため、一部のコントロールが失われる可能性があります。しかし、多くのクラウドサービスプロバイダーは高度なセキュリティ機能を提供しています。

クラウドとオンプレミスの共通項

よく見られるクラウドとオンプレミスの比較解説を見ているだけだと、クラウドとオンプレミスは完全に相反するものと誤解してしまうことがあるかもしれません。しかし、実はオンプレミスとクラウドには共通項もあるのです。

まず、データ管理に関して言えば、クラウドでもオンプレミスでもその重要性は変わりません。オンプレミスは元々管理しているデータが自社のコントロール下にあるため、それをクラウド化すればデータ管理に関わる作業負荷が軽減されると考えられるかもしれません。しかし、自社の手から離れたシステムで管理することになる場合は、自社のコントロールが100%及ぶわけではない状態になることを意味します。そのため、管理対象となるデータの整合性を担保する重要度は、クラウド化した後のほうが高いとも言えるでしょう。

つまり、オンプレミスでもクラウドでも、データのセキュリティとプライバシーと同様に、コンプライアンスも重要な課題になるということになります。どちらのモデルでも、適切なセキュリティとコンプライアンスを確保するための策を取る必要があります。トラブルや障害対応に対して準備しなければいけないという点も、オンプレミスでもクラウド化された後の環境でも共通しています。人的災害などに加えて、自然災害やシステム障害などに備える必要がありますし、ビジネス継続性とディザスタリカバリの計画も求められます。

これらの違いや共通点を理解することで、各組織は自身のビジネス要件、予算、技術的能力に応じて最適なモデルを選択することができます。また、クラウド化したシステムとオンプレミスの良いところを組み合わせて使う「ハイブリッドクラウド」という選択肢もあり、ユーザーは様々な使い方から最適な方法を見つけられます。

なぜ現代ではクラウド化が進んでいるのか?

現代では情報の流通量が飛躍的に増え、それを処理するためのITリソースに対する需要は以前と比較して飛躍的に高まっています。また、デジタル変革の波に乗り、企業がビジネスの効率化や競争力強化を図るために、ITリソースのスケーラビリティ(拡張性)や柔軟性が求められるようになってきました。これらのニーズに応えられるのがクラウドであり、そのためにクラウド化が進行しています。

クラウド化の最新のトレンドと進展

クラウド化の最新トレンドとして、AIやIoT、ビッグデータ分析などの先端技術との融合が進んでいます。また、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドといった、複数のクラウドを組み合わせて利用する形態も広がっています。クラウド技術は既にビジネス環境に大きな影響を及ぼしており、さらにその進化と発展は続いています。2023年現在、クラウド化の最新トレンドと今後の進展については様々な予測がされており、いくつかの予測についてご紹介していきましょう。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの採用の増加

これらのアプローチは、企業が自社のニーズに合わせて異なるクラウドサービスを組み合わせて使用できるため、ますます人気が出ています。ハイブリッドクラウドは、オンプレミスのデータセンターとクラウドサービスを組み合わせるもので、マルチクラウドは複数のクラウドプロバイダーのサービスを組み合わせるものです。

エッジコンピューティングの進化

エッジコンピューティングは、データを生成または収集するデバイスの近くで処理を行うことで、レイテンシを削減し、バンド幅を節約します。クラウドとエッジの統合により、リアルタイムのデータ処理と高速な意思決定が可能になります。

AIと機械学習の利用拡大

クラウドプロバイダーはAIと機械学習のツールを提供しており、これにより企業は自社のビジネスインテリジェンスと意思決定を改善することが可能になります。特に、2022年からAI技術は拡大の一途を辿っており、画像からプログラミングに至るまで、生成系のAIアプリケーションも多数登場しており、個人法人を問わずに活用の場が広がっています。

クラウド化拡大の注意点

これらのトレンドは、クラウド化がビジネスの一部となっていく中で新たな技術や手法が取り入れられ、既存の方法が改良される可能性を示しています。ただし、企業がクラウド化を進めるにあたり、新たなクラウドサービスを採用する際には、いくつか注意しておくべき点も存在します。

まず、企業は自社のデータを安全に保つ必要があります。そのため、どのようにデータが管理、共有、保存されるかについて、明確なガバナンスポリシーを設ける必要があります。それと同時に、クラウドサービスを利用する際には、企業が遵守しなければならない規制や法律(GDPRやCCPAなど)を遵守していることを確認する必要があります

このように、企業は、クラウドサービスプロバイダと良好なパートナーシップを築くことで、最新の技術と最善のサービスを利用することが可能になります。このように様々な点に注意を払い検討していく中で、クラウド化のトレンドは技術の進歩と共に様々な形を取り、今後も拡大していくことが予想されます。クラウドテクノロジーは既に多くの企業にとって必須のものとなっており、その重要性は今後さらに高まると予想されます。その結果、企業はビジネスプロセスを最適化し、顧客のニーズに応える新たな方法を見つけることができるでしょう。

企業がクラウド化を進める理由とその利点

クラウド化を進める最大の理由は、ITリソースの効率的な管理と活用です。クラウド化により、企業はこれまでオンプレミス環境として設置していた物理的なインフラの運用や維持から解放され、ITリソースを必要な時に必要な分だけ利用できるようになります。これにより初期投資を抑えつつ、ビジネスの変化に柔軟に対応できるという利点があります。

クラウド化のデメリットとその対策

クラウド化には多くの利点がある一方で、デメリットも存在します。その代表的なものの一つがデータセキュリティの問題です。自社で管理するオンプレミスに比べ、クラウドではデータが自社ではなく外部のサーバーに保管されるため、そのセキュリティが懸念されます。これに対する対策として、クラウドサービスプロバイダが提供するセキュリティ機能を適切に活用すること、また独自のセキュリティ対策を講じることが求められます。

クラウド化によるデジタル変革の事例

クラウド化によるデジタル変革の一例として、大手の動画配信サービス「N社」の成長が挙げられます。N社は全てのITインフラをオンプレミスからクラウドに移行し、これにより大量の映像データを効率的に管理してユーザーにスムーズに配信することが可能となりました。この結果、N社は世界的な動画配信サービスに成長することができたのです。

N社の動画視聴画面のUIは非常に優れており、インフラやシステムをクラウド化したことにより、開発部門はソフトウェアやデザイン、マーケティングや営業活動により注力することが可能になったという背景があります。

クラウド化とデータセキュリティの関係

ここまでご紹介してきたように、クラウド化には少なからずデータセキュリティの課題が伴います。そのため、クラウドサービスプロバイダはセキュリティの強化にも力を入れており、先進的なセキュリティ技術を導入することで、オンプレミス以上のセキュリティを提供する動きを加速しています。企業は自社のセキュリティポリシーとクラウドサービスのセキュリティ機能を適切に組み合わせることで、クラウド化とデータセキュリティを両立することが可能となります。

まとめ

ここまで、クラウドとは何か?クラウド化するとはどのようなことなのかについてご紹介してきました。オンプレミス環境との違いや、メリットとデメリットもご説明してきましたが、今後はクラウド化が常識になり、オンプレミスは無くなっていく流れになるのでしょうか?確かにクラウド化の普及は確実に進んでいますが、それが全てのオンプレミスを置き換えるかどうかは一概には言えません。例えば、特定の規制によりデータを自社内に保持しなければならない企業や、特別なセキュリティ要件がある企業などは、オンプレミスを続けて使用する場合もあります。一方で、ハイブリッドクラウドという選択肢も存在し、セキュリティや規制の要件に応じて、オンプレミスとクラウドを組み合わせて利用する企業も増えています。クラウド化することのメリットや理由、必要性などについては社内でも十分に検討し、準備してから導入するのが良いでしょう。

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