ソフトバンクによるMicrosoft Azureのマネージドサービスについて詳しく紹介!

はじめに

クラウドサービスはスケーリングの柔軟性やサーバー、インフラに必要な機器・人件費・作業工数といった部分でのコスト削減において大きなメリットがあり、2023年現在では多くの企業が採用しています。またMicrosoft AzureはAmazonのAWSやGoogleのGoogle Cloud(かつてのGCP)と並んで代表的なクラウドサービスの一つとなっています。

この記事ではクラウドファーストとクラウドネイティブの動向について解説し、さらにMicrosoft Azureのサービス概要や、Microsoftの密接なパートナーとなっている企業の一つ「ソフトバンク」との関係性についても紹介します。

自社システムのクラウド移行を検討している、クラウド移行がすでに決まっているものの知識が不十分で外部への依頼を検討している、Microsoft Azureを導入済みであるものの運用がうまくいっていないという状況に置かれているエンジニアの方はぜひご覧ください。クラウドサービスについて詳しくない方でも理解できるように専門用語について解説している部分もあるため、すでにご存知の方はその部分を飛ばしながら読み進めてください。

クラウドファースト・クラウドネイティブの動向について

平成29年に新語・流行語大賞トップテンに入った「◯◯ファースト」というワードは「◯◯を優先する」ということを表しており、「アメリカファースト」「都民ファースト」というように多用されました。それと同じく「クラウドファースト」は、新たにシステムを構築する際やオンプレミス環境の移行先として優先的にクラウドを選択する考え方を表しています。

元は2010年に米国連邦政府が2015年までに政府関連のデータセンターの40%を削減するという目標を持って提唱したものですがその後各国に広がり、日本にも2018年に日本政府が打ち立てた「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」等をきっかけに少しずつ浸透しつつあります。また日本では「クラウド・バイ・デフォルト原則」と呼ばれることもあり、この場合はさらにクラウドを優先する意向が強いことを表します。

当初は特にスピード感が求められるスタートアップ企業、ベンチャー企業が素早くスモールスタートで開発が行えるクラウドサービスを利用するという場面が多い傾向にありましたが、Amazon、Microsoft、Gooleといった大企業が次々とクラウドサービスをリリースいたり、機能面やセキュリティ面の大幅な向上があったりということや全体的にビジネスのスピードが早くなったこと等が重なって一般企業で利用されることも珍しくなくなり、2018年には政府自らがクラウドファーストの考え方を推進し始め、それが現在まで継続している状況にあります。

この動きに関しては単純に各国に比べて遅れをとっている日本国内でのクラウドサービスの導入を推進しているだけではなく、慢性的に人材不足が続くIT業界等の負荷を解消する目的や災害等が発生した際にシステムを継続させるためのBCP(事業継続計画)対策、機器を増やさず仮想マシンを利用したりサーバーレスサービスを利用することによるエネルギーコストの削減、最新技術・高度技術の活用による一般企業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進といった目的も含まれています。

もう一方の「クラウドネイティブ」は、クラウドの持つメリットを最大限に活用してシステム開発・運用を行うという方針や考え方を表します。そのためオンプレミスのシステム移行という場面においては、あらかじめクラウドのメリットを生かせるように変更を加えたり、一部を新規に構築し直したりということも検討する場合はクラウドネイティブに則っていると言えるでしょう。

クラウドネイティブなシステムの構築においてはコンテナサービスが採用される傾向にあります。コンテナという仕組みを利用することで、よりスケーラビリティに優れたシステム運用が可能となります。実現するためにはコンテナ以外にも様々な技術が利用され、マイクロサービス、サービスメッシュ、イミュータブルインフラストラクチャー等が代表的なものとして挙げられます。

マイクロサービスはプログラミング言語におけるオブジェクト指向の考え方と似ています。大規模なシステムになればなる程ひとまとめにしてシステムを組み上げてしまうと構造が複雑になりやすく、一部のみテストを行ったり、改修を行ったりということが難しくなります。また機能追加や障害・高負荷が発生した場合は、特定の部分を修正すれば良いだけであったとしても全体へ影響を及ぼす可能性があります。マイクロサービスではそれらの問題を解消すべく、機能ごとのプログラムを小さなまとまりとして分割してそれぞれを連携しながら運用するという方式を採ります。

サービスメッシュはマイクロサービスの課題となる通信の複雑性を解消する技術で、負荷分散、通信トラフィック最適化、セキュアな通信等を管理・サポートする仕組みです。

イミュータブルインフラストラクチャーは、端的に表すとインフラ環境を不変にするということです。これまでの一般的なインフラにおいては、稼働中サービスへの影響を懸念してOSやミドルウェアのバージョンアップが必要であったとしても実施しづらく放置されたままとなっていることも少なくありませんでした。これは構築済みのインフラ環境に変更を加えようとしているためです。それに対してイミュータブルインフラストラクチャーは既存インフラには手を加えずに、バージョンアップ等が実施済みで同様の運用が可能な新たなインフラ環境を別に構築して新たな環境を乗り換えるという手法を採ります。

これらの技術を導入しつつ、特定の分野にかかわらず開発、設計、実装といった様々な面でオンプレミスの時とは異なる運用方法も拒否することなく取り入れながら変化していくということがクラウドネイティブには欠かせない要素と言えるでしょう。

Microsoft Azureはどんなサービス?

Microsoft Azureは、2006年に提供を開始したAWS(Amazon Web Services)や2008年に提供を開始したGCP(Google Cloud Platform)よりやや遅れて2010年にMicorsoftよりリリースされたクラウドサービスです。仮想マシン(VM)やストレージ、データベース、ネットワークといったインフラにおける基本となるサービスはもちろん、AI・機械学習、データ分析に特化したサービスやコンテナサービス、サーバーレスなコード関数実行サービス等も提供されており、Azure内だけであっても様々な分野での開発が可能となる200以上のIaaS(Infrastructure as a Service)またはPaaS(Platform as a Service)に該当する多くのサービスが提供されています。

Microsoftのサービスということもあり、同社のその他サービスとの相性も良く、Windowsサーバーで構築していたオンプレミス環境の移行先として適しているのはもちろん、ハイブリットクラウド・マルチクラウドとしてオンプレミスやその他のクラウドサービスと連携しての運用も可能となっています。例えばオンプレミスとクラウド上のストレージを同期したり、オンプレミスに蓄積しているデータをクラウドのサービスで分析したりということも可能です。クラウドファーストが浸透しているからといって全システムをすぐに移行することは難しい、あるいは一部はオンプレミスのままにしておきたいという事情を抱えている企業も少なからず存在するため、この点は大きなメリットの一つと言えます。

またMicrosoftの誇る強力なバックボーンネットワークを利用できるという点もメリットの一つです。クラウドサービスにおいてネットワークは重要な要素となりますが、Azureは140か国に60以上のリージョンと呼ばれるデータセンターを保有しています。このリージョン間の通信がMicrosoftの強力なネットワーク内で行われることとなります。そのため世界各国に及ぶシステム展開が必要となった場合にも、地理的な距離によるレイテンシーの問題等を解決しながら進めることが可能となります。

コスト削減ができる仕組みが充実しているという点もMicrosoft Azureならではの特徴と言えます。クラウドサービス自体がコスト削減を実現できるソリューションの一つとなっていますが、Microsoft Azureでは「Azure ハイブリッド特典」や「予約割引(Azure Reserved Virtual Machine Instances)」といった仕組みを設けています。Azure ハイブリッド特典は、オンプレミスからAzureに移行するに当たって一部サービスのライセンス再購入が不要となるサービスです。具体的な対象はソフトウェア アシュアランス(SA)付きのライセンス、またはサブスクリプションのあるWindows ServerやSQL Serverのライセンスとなっており、オンプレミスで利用していたライセンスをそのまま適用することが可能となります。

予約割引は前払いすることで最大72%程度の割引が受けられる料金システムです。ほとんどのクラウドサービスは従量課金制となっており、これは稼働状況によってはコスト削減を目標とするために重要な要素となります。しかしながら大量なリソース使用が予測される場合や長期運用する場合においては、却ってオンプレミスの時より多くのコストが発生する状態にもなりかねません。固定費とならないため予算が立てづらいという課題が発生することもあるでしょう。

予約割引は1年または3年分のサービス料金を前払いすることで、使用量を気にすることなく運用するということが可能となります。なお支払いは前払いだけではなく月払いとすることも可能で、月払いにしても料金が割増になることはありません。

対象となるサービスは仮想マシンの「Azure Virtual Machines」、Webシステムに特化したプラットフォームの「App Services」、データベースシステムの「SQL Database」「Azure Cosmos DB」「Azure Database」、オブジェクトストレージの「Azure Blob Storage」等となります。対象となる場合は、Azureの公式サイト内にある各サービスの紹介ページやAzureポータル内に「予約」と表示されているので、申し込み時はぜひ確認してみてください。なお予約割引の仕組みは独特で、レンタル型のサーバーのように一つのサーバー契約を年払いにするというのとは異なり、「予約」の権利を購入するという状態になります。そのため取得した権利をサービスへ適用する必要がありますが、この点に関しては、購入時に指定した属性に対して自動適用される仕組みとなっています。属性とは対象となるサービスや、予約のスコープ、リージョン、サイズのことです。もし指定した属性に一致するサービスが存在しない場合は、せっかく権利を購入したとしてもどのサービスにも適用できない状態となるため、Azureで予約割引を利用したにもかかわらず割高になったという状況に陥らないためにも注意が必要な点となります。

Microsoft Azureのパートナー認定(Microsoft Cloud Partner Program)とは?

2022年10月までは「Microsoft Partner Network(MPN)」という名称で提供されていた仕組みであり、Microsoft Azureのメンバーシップとなったうえで、それぞれのソリューションに用意された指標において定められたポイントを満たすとパートナーとして認められます。

MPNの時にはGoldコンピテンシー、Silverコンピテンシー、さらにその上位のAdvanced Specialization、Azure Expert MSPという区分の下、全部で18のコンピテンシーがありましたが、Microsoft Cloud Partner Program(MCPP)になってからは6つのソリューション分野に分類されるように改定されています。

具体的なソリューション分野としては、課題解決の実績を評価する「Business Application(以前のCloud Business Applications、Enterprise Resource Planning、Project and Portfolioに該当)」、データ分析やAIを支援する能力を評価する「Data and AI(以前のApp Integration、Data Analytics、Data Platformに該当)」、アプリケーションに対する総合的な能力を評価する「Digital & App Innovation(以前のApplication Development、App Integration、DevOpsに該当)」、移行能力を評価する「Infrastructure(以前のCloud Platform、Datacenterに該当)」、システムと人を繋ぐ能力を評価する「Modern Work(以前のCloud Productivity、Collaboration and Content、Communications、Messaging、Small and Midmarket Cloud Solutions、Windows and Devicesに該当)」、適切なセキュリティ製品の提供能力を評価する「Security(以前のEnterprise Mobility Management、Securityを含む)」の6つとなり、MPNの時のようなGold、Silverの区分は存在しません。

また指標はPerformance、Skilling、Customer Successの3つから構成されており、各指標の合格値は70ポイントとなっています。考え方、獲得できるポイント数は全てのソリューションで統一されているわけではなくそれぞれ別に定義されています。例えばBusiness ApplicationsdのPerformanceが「過去12カ月の新規顧客数:0.75pt/顧客(MAX:15pt)」となっているのに対して、Data & AIの場合は「過去12カ月の新規顧客数:10pt/顧客(MAX:30pt)」、Digital & App Innovationの場合は「過去12カ月の新規顧客数:10pt/顧客(MAX:30pt)」となっている状況です。以上のように指標を「過去12カ月」とすることで、一度取得したら永続的に認められるわけではなく、その後も認定されるためには次の過去12カ月も継続して同ポイント以上となる状態を保たなければならないという条件が組み込まれた内容となっています。

今回はパートナー認定されたサービスの利用者向けの内容をメインとしてるため制度に関するその他詳細は省きますが、このMicrosoftのパートナー認定制度は見直しや指標の厳格化等によって信頼できるパートナーとの関係を強固にし、認定の結果Microsoftから様々な特典を受けることができるようになったパートナー側は、ユーザーへより質の高いサービスを提供できるような仕組みになっているということをここで抑えていただければ問題ないでしょう。

ソフトバンクを介してMicrosoft Azureを利用するメリットは?

Microsoftのパートナーの中にはMCPPのソリューション分野のうち特定のもののみ認定されているという企業も少なくありません。そんな中ソフトバンクは、2023年5月にMCPPにおける6つ全てのソリューション分野において認定を取得しました。このことからソフトバンクはAzureを含めたMicrosoftの様々なクラウドサービスを対象とした専門的な知識・技術を保有している企業の一つということが見て取れます。

そんなソフトバンクが提供するのはMicrosoft Azureにおける導入や設計・構築・運用に渡るトータルサポートサービスです。企業の種類や業種としてSystem IntegratorあるいはSIer(エスアイヤー)という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、これら2つは表記が異なるだけで同義であり、クライアント企業からの依頼を受けて、クライアントの代わりにシステム導入から運用までを一手に引き受けてITシステムを通したソリューションを提供する業種となります。ソフトバンクもクラウドサービスにおけるSIerのようなサービスを提供している状況で、実際はソフトバンクの連結子会社である「SBテクノロジー(SBT)」の業務内容となっています。ソフトバンクやその他関連会社は携帯キャリアやプロバイダだけではなく、IT業界において幅広いサービスを展開していることがわかっていただけたことでしょう。

Microsoft Azureを含めたクラウドサービスは、マネージド(もしくはフルマネージド)なサービス形態とすることでエンジニアの負担軽減や人件費削減が実現できる仕組みとなっている点が大きなメリットではありますが、より安全で効率的なシステム運用を続けるためにはクラウドに対する専門的な知識が必要となります。たとえこれまでオンプレミス環境において十分な経験があるエンジニアだったとしても、クラウドには独自の仕様もあるため新たに学習が必要となります。さらに、クラウドにおけるセキュリティインシデントのほとんどは人的な設定ミスによるものという調査結果も出ているため、クラウドに対して正しい知識や適切な技術を持っているということは非常に重要な点となります。そのため負荷軽減、コスト削減のソリューションとしてクラウドが適しているとはわかっていても、技術・知識が伴っておらず現実問題として移行に踏み出せない企業も珍しくありません。そんな中Azureとの仲介役を担ってくれるのがソフトバンクで提供されているようなトータルサポートサービスとなります。

具体的には新規導入やクラウド移行における事前のヒアリングによるコンサルティング、設計、構築、移行、運用・保守といった実際の作業、24時間365日体制のセキュリティ・監視運用、稼働済みクラウド環境の運用最適化、基本サポートやテクニカルサポートの窓口、インシデントへの対応といったサービスが提供されています。導入の際の基本的な流れとしては、はじめにヒアリングを行いながら事前調査をし、続いて要件定義やシステム設計を行い、その後に環境構築やテストを行い本稼働を迎えます。稼働後は運用・保守を行うという流れになるので、開発モデルにおける「ウォーターフォール」をイメージしてもらえるとわかりやすいことでしょう。なお、オンプレミスからクラウドへの移行だけではなくマルチクラウドでのシステム構築にも対応可能となっています。

トータルサポートと言ってもユーザーによってサポートを受けたい部分は各々の状況で異なることもあるでしょう。ソフトバンクは最も適したサポートサービスを提供できるよう「導入・運用支援サービス」「アセスメントサービス」「インテグレーションサービス」「マネージドサービス」の4形態に分類しており、これらを全て組み合わせることでシステム運用におけるトータルサポートが受けられることとなります。

ソフトバンクのようなサービスがあるということは、Microsoft Azureにサポートサービスがないのかと疑ってしまうところですが、Microsoft AzureでもAzure、Microsoft 365、Dynamics 365といったサービスを包括したサポートプランが提供されています。サービス内容としては請求・サブスクリプションの管理、正常性の監視や通知、メール・電話による24時間年中無休のテクニカルサポート、運用サポート、トレーニングといったものがあり、Basic、Developer、Standard、Professional Directで構成された4つのプランによって利用できるサービスが異なります。

以上からわかるように、Microsoft Azureのサポートはあくまで自社にクラウド専任エンジニアがいることを前提としたどちらかというと部分的なサービスとなっています。そのためコンサルティングやMicrosoft Azure導入、テスト等を全て任せられるサービスとしては程遠いものです。また、最もサポート内容が少ないBasicプランこそ無料で利用できるものの、他のプランにおいてはMicrosoft Azureにかかるコストとは別にサポート費用として月額がかかることとなります。

以上により、トータルサポートを必要としている場合はMicrosoft Azure独自のものよりもソフトバンクのサービスが適していると言えるでしょう。関連資料の請求や見積もり、単純なお問い合わせに関してはSBテクノロジーの公式ページ内からできるようになっているので、気になる方はぜひアクセスしてみてください。

まとめ

クラウドサービスの導入やオンプレミス環境からの移行は、スケーリングの柔軟性やコスト削減の面で大きなメリットがあります。近年ではクラウドサービスの採用を優先的に検討する「クラウドファースト」、クラウドサービスのメリットを最大限に生かせるアプリケーションやシステムを構築する「クラウドネイティブ」という考え方が浸透しつつあるため、現時点では自社サービスをオンプレミスで運用しているというエンジニアであっても、これからクラウド上でのシステム運用が求められる場面に出くわすことも大いに考えられます。

もちろん自社のエンジニアが十分な知識・技術を身につけて構築・運用をしていくに越したことはありませんが、業務上どうしても学習コストや時間をかけられないという状況もあるでしょう。Microsoft Azureに関しては、ソフトバンクのように公式にパートナー認定されている企業のマネージドサービスを介することで、クラウドサービスに対する自社のナレッジが十分でなくとも、トータルサポートを受けてAzureへの移行やその後の運用・保守、また運用中のクラウドシステムの改善を実現することが可能となっています。

ぜひ今回の記事をきっかけにMicrosoft Azureの概要について把握するとともに、ソフトバンクのマネージドサービスを利用するとどのようなメリットがあるかを頭に入れていただき、実際にクラウドサービスの導入が必要となった際は、ソフトバンクを含めたパートナー認定企業への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

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