クラウドを法人で導入するメリットとは?Microsoftのクラウドサービス「Azure」の導入メリットについて。

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クラウドサービスとは?

「クラウド」という言葉も世の中にすっかり浸透したと言っていいでしょう。とはいえ、わかっているようでわかっていない部分がある方もいると思います。まずはクラウド、クラウドサービスとはどのようなものかということをおさらいし、クラウドサービスの1つであるMicrosoftのAzureとはどのようなサービスなのかということについて確認してみましょう。

クラウドとは

そもそも「クラウド」とは何のことなのでしょうか?現時点で一般的とされている理解としては、これまでは個人が自宅に設置したり、企業が自社内に設営していたITインフラ設備やソフトウェア・アプリケーション類を、インターネット上に設定されたサービスとして利用する状況やサービスのことだとされています。

例えば「ストレージ」を例に取ってみましょう。以前はデータを格納しておくためのHDDやSSDなどのストレージは物理的なものを手元に所有していて、それをUSBケーブルやネットワークケーブルで繋いだ状態にしてからストレージ内部にアクセスすることが当たり前でした。現在クラウドストレージと呼ばれているサービスの多くは、このような物理的な接続やアクセスを行うのではなく、インターネット上に設定された「仮想ストレージ」と呼ばれる「ネット上の収納スペース」に、インターネットを通じてアクセスしデータのやり取りをする形式が取られています。かつては物理的なハードウェアを物理的にケーブルで接続していた利用形態が、インターネットに接続するだけで利用できる形態になった状態のサービスがクラウドストレージサービスと呼ばれているものです。

クラウドサービスはストレージに限った話ではなく、広い意味で「インターネットに接続することで対象のサービスを利用できる」というものを言います。他の例えで言えば、GoogleAppsのようなサービス=ドキュメント作成や表計算、プレゼンテーション用アプリをネット上で利用できるものもクラウドサービスです。日常生活で使われているもので言えば、スマートフォンなどでも利用可能な音楽聴き放題のサブスクリプションサービスや、月額固定の動画見放題サービスなどもクラウドサービスの一種です。

クラウドの種類

クラウドサービスというのは1つの概念ですが、クラウドサービスの種類はいくつかに分類されているのが現状です。大きく分けて現在のクラウドサービスというのは3種類に分類されており、「ソフトウェアとしてのサービス」である「SaaS」。「プラットフォームとしてのサービス」である「PaaS」。「インフラとしてのサービス」である「IaaS」の3つが現在のクラウドサービスの種類です。

「SaaS」は、その名の通り元々はソフトウェアやアプリケーションとして提供されていて、PCにインストールして使う形態が一般的だったものをインターネット経由でそのまま使えるようにしたクラウドサービスのことを指します。現在では会計用の業務アプリケーションや、GmailなどのEメールサービス、チャットツールなどがSaaSに分類されるサービスとして提供されています。

「PaaS」は、いわゆる「開発環境」などをインターネット経由で利用できるように提供されるサービスの総称として使われている言葉です。「開発環境」というのは主にソフトウェアやアプリケーションの開発を行ったりテストを行う環境のことを言います。最近ではこうした開発環境の他にAIなどが組み込まれて、様々な情報やデータの分析・解析などを行うプラットフォームも登場しています。

「IaaS」は、「インフラ」と呼ばれるサーバー、ストレージ、ネットワーク系の機能そのものを、インターネット経由で利用できるようにしたサービスのことを指します。SaaSとPaaSと少し異なる点としては、利用者は物理的な機材を保持している必要はなく、サービスの利用はインターネット経由での利用で完結しますが、サービス提供者側は物理的なサーバーなど機材の投資や保持・メンテナンスなどを行うという点です。今までは利用者が用意・投資していた機材や設備を、サービス提供者が丸ごと準備し、利用者はあくまでも利用料金に応じた機能をインターネット経由で使用するという形態を取っています。今流行りの「仮想サーバー」などはこのIaaSに分類されます。

Microsoft Azureとは?概要とメリットの説明

この記事でご紹介するMicrosoftの提供するAzureというのは「パブリック・クラウド」と呼ばれる種類の総合クラウドサービスとも言えるもので、ここまでにご紹介した「SaaS」「PaaS」「IaaS」を包括的に展開するサービスの総称です。クラウドサービスとしてはAmazonが提供するAWS(Amazon Web Services)と並んで世界シェアを二分するほどの評価を受けており、Azureの方がクラウドサービスとしては後発ではあるものの、現在ではクラウドサービスといえばAWSかAzureと言われるほどの存在になっています。

それでは、Azureを使うメリットについて説明していきましょう。

Microsoftの各製品と親和性が高い

Azureは既にご紹介した通りMicrosoftが提供しているクラウドサービスです。そのため、Microsoftが提供しているMicrosoft Officeなど他の製品群との親和性が極めて高いことで知られており、Microsoft製品との親和性の高さそのものがAzureを使うメリットでもあり、後発にも関わらずAWSに迫る世界シェアを誇っている理由にもなっています。

企業が使用する業務用PCにおけるOSのシェアは、2022年6月の段階ではおよそ72%近くがMicrosoftのWindowsだとされています。それに伴って文書作成、表計算、プレゼンテーション、メールソフト、Web会議システムなどもMicrosoft製品が占めるシェアはほぼトップになっており、元々の企業内IT環境そのものがMicrosoftと高い親和性を持っているため「いつも使っているMicrosoftが提供しているなら」という心理が働き、Azureを検討・導入するハードルが他社のクラウドサービスと比較して低いことが特徴的です。

もちろん、Microsoft Office以外にもサーバー関連製品でMicrosoftを利用している企業は非常に多いため、IaaSとしてのクラウドサービスを検討するとしてもMicrosoftが提供するサーバー関連製品を使っていた企業であれば、そこからAzureへ移行することが比較的容易だということも大きなメリットになっています。

世界各所を繋いだデータセンターネットワーク「グローバルネットワーク」による高い耐久性と堅牢性

AzureがMicrosoftの各製品と親和性が高いことはメリットの1つですが、Azureを使うメリットはそれだけではありません。利用者から見たクラウドサービスはインターネットを通じて使用することがメインとなるサービス形態ですが、サービス提供者側は当然のことながら物理的なインフラを整備しておく必要があります。つまり、堅牢性と高い耐久性が確保されていることが、サービス品質の評価に直結するということです。

この「インフラ」の一例がデータセンターです。データセンターとは、一般的に物理サーバーの本体や、ネットワーク接続機器などが集約された専用の場所(建物)のことを言いますが、2021年5月の時点でMicrosoftはこのデータセンターを全世界60ヶ所以上備えています。そしてこれらの各データセンターは独立して稼働するだけではなく、各データセンターが連携してネットワーク化する「Microsoft Global Network」と呼ばれる一大ネットワークを形成しています。つまり全世界にデータセンターが散らばり、なおかつその各データセンターが相互に接続されることによって、リスク分散できるようになります。これにより、万が一トラブルが起きたとしても、ある1つのデータセンターでトラブルが起きた場合でも他のデータセンターがその機能を代替することができるので、Microsoftのグローバルネットワーク全体ではパフォーマンスを低下させることなく乗り切ることができるという耐久性を持っているのです。

サービス全体の耐久性が確保されているというのはユーザーにとっては大きなメリットです。クラウドサーバーを活用したサービスを提供しようとする場合、最も気をつけなければいけないのはサーバーがダウンしたり、データやアプリケーションが機能不全に陥ることだからです。それはクライアントから自社に対する信頼を失墜させることに直結し、最終的には業績の不安定化にも繋がってしまいます。インフラの堅牢性と高い耐久性が確保されていることは「マスト」だと言ってもいいでしょう。その意味でAzureの堅牢性は大きなメリットです。

ハイパフォーマンスなコンピューティング

ご紹介したようなデータセンター=インフラの堅牢性と高い耐久性はどのように実現されているのでしょうか。データセンターとは、ご説明したようにサーバーやネットワーク機器の集積設備であり、世界規模で展開されているMicrosoftの各クラウドサービスを利用する世界中のユーザーが行うサーバーアクセスを滞りなく処理する必要性があります。

Microsoftのデータセンターで採用されているサーバーやコンピューターは、スーパーコンピューターのランキングにも入るほどの超高性能なスペックを兼ね備えていると言われています。また、MicrosoftはAI研究の分野でトップクラスの実績を誇る「Open AI社」とも資本提携しており、これは将来的にAzureがAIの力を更に取り入れてパフォーマンスを最大化していく可能性が高いことを意味しています。データ解析や分析には年々AIの力が必要不可欠になっていると言われており、Azureの将来性とトップAIとのコラボレーションによるメリットを享受できる可能性があることは注目に値するでしょう。

高いセキュリティ性が確保された環境でサービスを使える

世界各所に分散設置されたデータセンターが各個に連携していることがAzureの堅牢性の特徴だということはお伝えしましたが、それ以外にもAzureが高いセキュリティ性を確保できている理由があります。

Azureのサービス全体として、セキュリティを堅牢にするために全世界でおよそ3,500名以上のセキュリティに関する専門家がセキュリティ関連業務に従事しています。これらの専門家達がAzureを構成するデータセンターとインフラ関連設備に関するセキュリティ業務を行っています。また、セキュリティの根幹にも関連するIDの発行管理やサービス全体へのアクセス権限付与などに関する設定。さらにネットワークセキュリティなどに関するサービスはほぼ全てがAzureのサービスとしてクローズドな状態で提供されているのです。このため不必要な外部アクセスは最低限に抑えられています。また、Open AIと提携していることにより、AIによって常にデータの解析・分析が行われており、その都度最適なセキュリティ対策が取られるような体制が整っているのです。

Microsoftの製品群をベースに業務フローが組み立てられている企業の場合は、特にここまで説明したようなセキュリティ性に着目してAzureの利用がより大きなメリットだと判断していることが多いようです。

Azureの活用事例

それではここで、Azureを実際に活用する事例について簡単にご紹介していきましょう。

リモートワークを実現する

わかりやすい活用事例の1つとして必ず挙げられるのが、リモートワーク環境の構築です。元々日本国内では労働環境改善の一環として時差通勤制度や在宅勤務制度の整備が必要とされていることは議論されてきました。それが2020年以降加速することになり、Web会議システムやリモートデスクトップツールなどを導入する企業が加速度的に増加することになっています。東京都心ではオフィス・テナントから撤退したり縮小する企業も増加してきているなど、日本の労働環境には少なからず変化の兆しが見られています。

従業員の勤務場所としても従来の会社オフィスではなく、従業員の自宅近くにサテライトオフィスを認めたり、そもそも在宅によるリモートワーク制度を試験的に始めた結果、最終的には恒常化した企業も相当数出てきています。ただしリモートワークにはリモートワークなりの課題があることも事実で、その代表的なものが「会社PC環境の再現」や「会社PCで使われているシステムの再構築」ですが、Azureを使うことでこれらの課題に答えを見つけることが可能です。

まず1つ目の解決策が「Azure Virtual Desktop」サービスです。Azure Virtual Desktopはその名の通り「仮想デスクトップ環境」を提供するサービスです。この仮想デスクトップ環境はAzureクラウド上に生成され、この環境を一台の仮想PCとして複数の仮想デスクトップ環境を生成することができます。このように一台の仮想PCと複数の仮想デスクトップ環境で業務環境が運用できれば、例えばリモートワーク用の業務PCを人数分用意したり、あるいはセキュリティ対策のアプリケーションをインストールしたりするコストと手間を大幅に削減することができます。そういった対策は仮想PCと仮想デスクトップ上で施せばいいので、物理的な作業を人数分行う必要がなくなるからです。

ただし、クラウド上に仮想デスクトップを構築し、滞りなく運用するにはある程度の知識が必要となるため難易度は少し高めだと言ってもいいでしょう。その欠点を補うために存在するサービスが「Windows365」です。通常の仮想デスクトップの場合はどのようなデスクトップを構築し、どのようなアプリケーションを使用可能にするかなどを最初に設定して環境構築をする必要がありますが、Windows365の場合はMicrosoft側で最初から実行可能なメニューが構築されているため、仮想デスクトップを通じてWindows365にアクセスするだけで利用者はいつもと同じ環境を異なるPCからでも利用できるというメリットを享受することができます。

オンプレミスのファイルサーバーとクラウドを同期する

企業でよく使用されていることが多い、いわゆる「共有フォルダ」をクラウド化し、元々あったオンプレミスの共有ファイルサーバーとクラウドを同期させることも可能です。一般向けに無料のクラウドストレージサービスなどでも同様のことが行われていますが、Azureの場合は法人向けのサービスということもあり、一般向けの無料サービスよりも堅牢で安全なシステムが構築されています。

オンプレミスで運用されている現状の共有ファイルサーバーをクラウドに移行させるために必要なサービスがAzure Filesです。Azure Filesは現在のIT業界で標準とされているプロトコルをサポートしていますので、ファイルの互換性を気にすることなくファイル共有を行うことが可能になっており、場合によってはオンプレミスのサーバー上に直接Azure Filesをマウントし、ダイレクトにファイルを移行させることも可能なサービスです。

さらに、Azure File Syncというサービスを利用すると、オンプレミスとクラウド上の仮想マシン環境を同期させることも可能になります。Azure Filesでオンプレミス環境上のファイルをクラウドに移行させつつ、Azure File Syncを並行して稼働させることで双方向な同期作業をリアルタイムで行うことが可能になります。この仕組がない場合は、お互いへファイル移行するために毎回ファイルサーバーを停止しなければいけないような状況も発生しますが、Azure File Syncで同期させることができれば、現在稼働中のサーバーを停止させることなく双方向の同期を実行することができるようになります。

オンプレミスとクラウドを安全に接続する

ご紹介したような、オンプレミスのファイルサーバーとクラウドを同期できることに加えて、同期に必要な両者の接続を安全に行うことができるというのもAzureのメリットだと言えるでしょう。サービスによっては同期はできるものの、両者間の接続に関する安全性はAzureほど重要視されていないケースもあるようです。しかし法人利用や一般消費者向けのサービスで、接続の安全性が高くない状態でトラブルや障害が起きた場合は経営上のリスクになってしまいます。クラウドサービスの利用者として考えた場合、接続の安全性が確保されているかどうかというのは非常に重要なポイントだと言えます。

この接続の安全性をクリアにするための手段がAzureには用意されており、その手段が「Azure VPN Gateway」と「Azure Express Route」の2つです。

Azure VPN Gatewayというのは自社で設備を保有しているオンプレミスの環境やデータセンターを始めとする各種ネットワークを、仮想プライベートネットワーク=VPNでAzureの仮想ネットワークに接続させるためのサービスです。VPNで接続されることになるため、インターネットを使ったアクセスを行ったとしても安全な接続を維持することが可能なサービスとなっています。

そしてAzure Express Routeというのは、オンプレミスの環境や自社設備のデータセンターを、専用回線を使ったクローズドネットワークによって直接接続させるサービスです。インターネットを介さない独自の専用回線を使ったダイレクト接続になるため、他の接続方法よりも安全で高品質な接続を実現することができるようになっています。

その他のAzure導入によるメリット

ここまでご紹介したもの以外にも、例えばMicrosoft365と他のアプリケーション、例えばMicrosoft Office365を同じアカウントで使用できるようにしたり、社内からのアクセスと社外からのアクセスに対する制限を変えてセキュリティ面でのリスクや懸念事項を削減することでセキュリティを強化したりすることもできます。

Microsoftのアプリケーションが業務に使われている企業の場合は特にそうですが、Office系アプリケーションとWeb会議アプリケーションで接続に使用するIDやパスワードなどが異なっていると業務の効率が少しずつ悪くなってしまいます。また、2020年以降は在宅勤務によるリモートワークを採用する企業も増えており、社外で業務ツールを使う機会も増加しています。

ただし、業務ツールは元々社内で使用することを大前提として導入されていますので、場合によってはIP制限がかかっていたりして社外からのアクセスが一切不可能になっている企業もあります。そのような状況に対して、社内・社外のアクセスに関する制限事項を条件付きに変更したり、柔軟性をもたせることで業務効率や業務環境の変化に対応させることができるというのもAzure導入によるメリットだと言えるでしょう。

まとめ

ここまで、Microsoftが提供するクラウドサービス「Azure」と、Azure導入のメリットについてご紹介してきました。クラウドサービスは現代においてはもはや当たり前のツールとして認知されてきており、個人ベースでの利用もさることながら、企業による法人利用もどんどん広まってきています。企業の利用に関してはセキュリティ面でのリスクなど導入に際して検討しなければいけない点はあるものの、業務用PCがWindowsPCであったり、Officeを始めとしてMicrosoft365を導入している企業にとっては業務効率を上げ、様々な働き方にも対応しやすいというメリットがあります。また、高い安全性と堅牢性も兼ね備えていますので、個人情報や機密情報を日常的に扱う企業にとっても導入のメリットは大きいでしょう。これを機会に、自社や自社を取り巻く環境において、Azureを導入するためのプロセスとしてはどのようなステップが必要なのか?またその移行にはどのようなハードルがあるのかということだけでも抑えておくと、いざ必要性が出てきた時にスムーズに移行できるでしょう。

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