テニスのデータ分析ツールとチャレンジシステムについて

はじめに

近年、プロスポーツの世界ではビックデータや画像認識、AI等のITの技術が積極的に活用されています。その目的として、アスリートやチーム全体の強化をするためのデータ分析、対戦相手への対策や戦術を立てる事、審判の補助、観戦スタイルの多様化などがあります。今回はその中でもテニスに用いられているデータ分析のツールや審判の補助(チャレンジシステム)に使われているツールについて調べてみました。

テニスのデータ分析に用いられているツール

SmartCourt

プレー分析システム
男子テニスのトッププロも出資しているシステムで、テニスコートの両サイドに設置された計6台のカメラがプレーを撮影、選手やボールの動きを追跡します。ボールの球速や回転数、ボールの落下地点、選手の動きを検出することでプレーを解析して、コート横に設置した情報端末を見ることにより、すぐに分析結果を確認することが出来るツールです。こちらは主に、選手のトレーニング用として利用されています。

Patterns of Play

女子プロテニスで用いられるコーチングシステム
ショットのデータなどをアプリケーションにリアルタイムに提供することで、試合中のラリーに現れるパターンを明らすることができ、コーチはそのデータを参考にして選手へ的確なアドバイスをすることができます。

SlamTracker

データ提供システム
テニスの試合展開に合わせてライブでデータ更新をしていくことで、プレーのデータを取得・分析してサイトやアプリでデータ提供するシステムです。過去の対戦結果や勝利のパターン等の情報から試合に勝利するための見どころを予測し表示してくれます。

IBM Watson Media

質疑応答や意思決定を支援できるシステム
IBM社の人工知能を用いたデータを学習していろいろな質問に応答したり、意思決定を支援したりすることができるようになるシステムです。機械学習をもとに画像、動画、言語、感情や人間の表情を分析することができ観客や選手のリアクションから試合での重要な局面を選別しハイライトを作成することができる。

審判の補助(チャレンジシステム)に使われているシステム

チャレンジシステムとは

線審や審判のIN、OUTの判定に対して判定が不服の場合に、CG映像での再判定を求めることのできるシステム
判定の再確認にはホークアイやReal Bounceと呼ばれるコンピューター映像処理のシステムを利用してIN、OUTの確認を行う。選手が申請できるチャレンジの回数は1セットあたり3回までで持ち越すことはできません。タイブレークになると1回ずつ追加される仕組みとなっていて、チャレンジが成功した場合は残り回数が減らず、失敗した場合のみ回数が減ります。

ホークアイ(The Hawk-Eye Officiating System)

ソニー傘下のホーク・アイ・イノベーションズが開発した映像処理システム
現在のチャレンジシステムで主流となっているシステムで、ホークアイシステムはコートの周囲に複数台のハイスピードカメラを設置することで、テニスボールの軌道や位置を検出し分析します。その情報からコンピューターグラフィックスを生成します。誤差はなんと最大で3.6ミリとのことです。選手が審判に対してチャレンジを要求するとボールの着地点がコンピュータグラフィックスで再現されてディスプレイに表示されます。また判定のみではなくボールの位置や軌道の統計を作成し表示する事も可能なため、戦略シミュレーションを行なったり、スポーツ・コーチ向けに試合の正確なデータを提供するアプリケーションなども提供しています。

Real Bounce

FOXTENN社が開発した独自のシステム
40台ものハイスピードカメラと高速レーザースキャナーを使用することで、テニスボールがコートにバウンドした瞬間を捉えることができます。選手がチャレンジを要求するとホークアイで用いられる様なコンピュータグラフィックスではなく、Real Bounceでは撮影した映像そのものが表示されます。実際の画像を表示するため誤差が無いことが特徴となっています。

まとめ

以上、テニスのデータ分析ツールや、チャレンジシステムに使用されているシステムについて、簡単に紹介しました。テニスのあらゆるデータが様々なツールによって活用されていることがわかったのではないでしょうか。

このように、スポーツに最新のIT技術を導入することで、人間にはできないアドバイスや試合の判定を下せるようになりました。しかし、まだまだ完璧とは言えません。人間の体のつくりは未だ解明されていない部分が多く、現在も研究が進められています。そうした部分が解明されなければ、完璧なアドバイスは難しいのです。

試合の誤審も少なくはなりましたが完全になくなったわけではなく、今の技術では審判を完全にAI化することはできず、人間の判断に依存しているところが多いです。しかし、今後IT技術が更に発展し、スポーツにも新しい技術が導入されていく事で、完全なAIのみによる審判もできる日がくるかもしれません。今では想像もつかない新たなスポーツの形が見えてくるのではないでしょうか。この記事があなたの役に立てれば幸いです。