事例から学ぶ身近なディープラーニング

はじめに

様々なビジネスにおいてAI(人口知能)が活用されている中、大きな注目を集めているのがディープラーニングです。

今回は、ディープラーニングの概要や特徴と活用事例をご紹介いたします。

ディープラーニングとは

ディープラーニングとは、コンピューターが大量のデータを元に複雑な現象のパターンや特徴を、コンピュータ自身で抽出でき、更にはその抽出方法までもコンピュータ自身で学習できる技術を指します。ディープラーニングは、よく機械学習と同義で扱われることもありますが、本来は機械学習技術のうちのひとつです。AI(人口知能)の分野である機械学習のうちのひとつがディープラーニングという技術になります。

AI(人口知能)とは

AI(人口知能)は、今やIT系のニュースや日常的にもよく耳にするようになりました。AIとは、Artificial Intelligenceの略で、人間が行う思考や選択、記憶といった行動をコンピュータが再現したものを指します。身近なAIの活用例として、Google翻訳やSiriが挙げられます。これほどまでに社会へ浸透してきたAIですが、未だにはっきりと定義が定まっていません。

機械学習とは

機械学習とは、AI(人口知能)のうちの1つの技術を指します。AIが自律的に学習を行う為の技術です。示されたデータやルールから、パターンを発見し、そのパターンを利用することで判断や予測ができるのが、機械学習の特徴です。

ディープラーニングの特徴

機械学習のうちの1つの分野・技術として、近年大きな注目を集めているのが、ディープラーニングです。ディープラーニングは、深層学習とも呼ばれ、AIの機械学習におけるデータの分析や学習を強化したものと言えます。例えば、「空」という言葉に対して、「青い」「広い」といった返答しかできなかったシステムが、ディープラーニングを活用することで「青くて広い」や「雲が増えたので雨が降る可能性がある」などといった返答をすることができるようになります。与えられたキーワードに対して、プログラミングされたデータの中から特定のワードを抽出するだけでなく、コンピュータ自身が学習を行い、より人間に近い判断や行動をとることが可能となります。

ディープラーニングの活用事例

ディープラーニングは、大量のデータから複雑なパターンやデータの特徴を人間の力を使わずに発見することができ、汎用性が高いことから、さまざまな業界で活用されてきています。

次に、実際に活用されている事例と実証段階に進んでいる身近なサービスの事例をご紹介いたします。

インフルエンザ予報

まず、株式会社日立製作所と損害保険ジャパン日本興亜株式会社によって実証が開始された『インフルエンザ予報』の事例をご紹介いたします。

『インフルエンザ予報』は4週間先までのインフルエンザの流行予測情報をwebサイト上に掲載し、誰もが閲覧できるサービスです。全国4000以上の医療機関から集められたインフルエンザを含む感染症のデータや過去の流行地域や時期といった様々な情報を、ディープラーニングを用いてAIに学習させ、インフルエンザの流行の予測を可能としました。この予測情報はコミュニケーションアプリ『LINE』で配信も実施されます。2019年12月から2020年3月まで、さいたま市にて実証が行われ、サービス実証開始の2019年12月時点でLINE登録者は6000人を超え、市民から高い関心が寄せられていることがわかりました。

来店客分析

次に、株式会社パルコによる来店客分析の事例をご紹介いたします。

東京都台東区上野での大型商業施設である『PARCO_ya』では、来店客の分析にディープラーニングを活用しています。各テナントの区画ごとにカメラを設置し、来店人数を計測と、年齢・性別を画像から認識します。蓄積されたデータはAIによって学習・解析され、解析された結果がグラフや表に見れる化されます。時間別の来店客数の推移などの分析結果が、ビル管理部門やテナントへアプリやwebでフィードバックされるシステムです。テナントはフィードバックされた分析結果を元に、ディスプレイや人員配置の最適化が可能になりました。このシステムによって、人が勘や経験を頼りにせず、ディープラーニングによる分析結果を用いて、最適解を判断できるようになっています。

タクシー乗車需要の予測

最後に、株式会社NTTドコモ(以下NTTドコモ)が提供する需要予測の事例をご紹介いたします。

現在から30分後までのタクシーの需要を10分ごとに予測し、タクシードライバーへオンラインで配信される『AIタクシー』というサービスが提供されています。このサービスは、日時や乗り降り場所といったタクシーの運行データや、周辺の商業施設のデータ、気象データに加えて、NTTドコモが保有する全国各地の性別や年齢といった人のデータをディープラーニングによって解析を行い、移動する需要の予測が可能となったシステムです。このシステムを利用することで、人の流れをリアルタイムで把握することができ、電車の遅延やイベント等で変動する需要にも速やかな対応できるようになります。また、経験の少ない新人ドライバーであっても、ベテラン並みのパフォーマンスができるようになるでしょう。実際に、この『AIタクシー』を導入した熊本タクシー株式会社では、乗客を見つけるノウハウがない新人ドライバーの売上が上がり、ベテランドライバーよりも多く売り上げる日もあったとの例があります。

おわりに

今回は、ディープラーニングの概要とその活用例をご紹介いたしました。AIのディープラーニングによって、人による分析よりも高い精度の分析が可能となり、分析のみならず未来予測まで可能となりました。また、分析できる対象も、文字・音・画像・動画など、さまざまな選択肢から分析ができるのも特徴の1つです。より最適なサービスの提供のために、ディープラーニングはより多くの企業に活用されていくでしょう。

ありがとうございました。