Excelでできるデータ解析

はじめに

今やIT業界のみにとどまらず、さまざまな業界でデータ分析の重要性が高まっています。
スマートフォンユーザーの多くが利用しているコミュニケーションアプリ『LINE』も、LINEを使用した際の行動をデータ化し、AIによってスコアリングするサービスの提供を開始しました。スコアの値によって、特典が提供され、更には個人向けのローンサービスの信用度の値としても活用されています。また、日本電気株式会社は、データ分析を専門とするデータサイエンスの分野において、優秀な人材に対して学歴別初任給ではなく、能力給を採用すると発表しました。

IT技術の進歩によって大量かつ高速に、より詳細なデータが企業の元へ集められ、これらのデータを解析できるスキルを持った人材も非常に価値が高くなっています。

簡単にできるデータ解析方法

データの解析が企業側のみならず、データを提供する側にとっても広く認識されるようになってきており、企業も専門的なスキルを持つ人材の確保に尽力しています。そこで今回は、新しいツールや開発を行うことなく、Excelでできるデータ解析の手法について、ご紹介いたします。

クロス集計分析

クロス集計分析とは

たとえば『売上』『年月日』『支店』『担当セールス』『製品』『数量』『得意先』のリストがあるとします。そこから、『どの製品』が『いくつ売れたか』といった、リスト中の2つの項目から集計することを単純集計といいます。単純集計に対して、クロス集計は、『どの支店』で『どの製品』が『いくつ売れたか』といった複数の項目を掛け合わせて集計する手法です。

単純集計では、製品ごとの売上数しかわかりませんが、クロス集計分析を用いることによってどの地域でどの製品のニーズがあるのかが明確になります。売上の低い支店から売上の高い支店へと特定の製品の在庫を移動させる、といった戦略が立てられるようになるのです。そして、Excelのピボットテーブルで簡単に集計を行うことができます。

ピボットテーブルとは

ピボットテーブルとは、Excelで作成された大量のデータリストを、関数や計算式を入力することなく、クロス集計を行うことのできる機能です。

クロス集計分析を行うためには、複数の項目をさまざまな切り口で集計する必要があります。
たとえば、『売上』『年月日』『支店』『担当セールス』『製品』『数量』『得意先』のリストから、
①『どの支店』で『どの製品』が『いくつ』売れたか
②『いつ』『どの製品』を『誰が』売っているか
③『どの得意先』が『どの製品』を『いくつ』買っているか
といったように、複数の項目をあらゆる角度から分析したい場合も、それぞれの集計に必要な項目ごとにリストを個別で作成することなく、元データ1つから集計が可能です。

また、複数の集計に用いた値(上記の例であれば、『製品』や『数量』)に修正が生じた場合も、元データ1つに修正を行うことで、集計結果に反映させることができるため、人為的なミスを防ぎ、解析業務の効率化を図ることができます。選択・ドラッグのみで集計ができるため、Excelでリストさえ作成できれば、関数や計算式の入力も不要なので、Excelもデータ分析も初心者の方にもおすすめです。

ピボットテーブルを使ってできる集計・分析

データを集め、さまざまな切り口から集計を行った後は、集計結果から解析を行います。その際に役立つExcelの機能、そして分析手法についてご紹介いたします。

ピボットグラフ

ピボットグラフとは、ピボットテーブルで作成した集計結果を、グラフに変換することができるExcelの機能です。縦棒や折れ線、円グラフといった基本的なグラフから、品質管理のデータ分析方法として用いられるQC七つ道具のヒストグラムや散布図の作成が行えます。ピボットテーブルで作成された集計結果は、数値で表示されているため、こちらをグラフとして可視化することで、結果の割合や推移などが一目で理解することが可能になり、結果の要因が見つけやすくなるでしょう。

スライス分析

作成した集計結果のより詳細な解析を行う為には、スライス分析が有効です。スライス分析とは、集計データに条件を追加してさらに詳細にデータを解析する手法を指します。たとえば、『売上』『年月日』『支店』『担当セールス』『製品』『数量』『得意先』のリストから、『どの支店』で『どの製品』が『いくつ』売れたかを集計したピボットテーブルを作成したとします。その集計結果に『誰が(=担当セールス)』というフィルタを追加し、解析を行う手法を指します。新しい条件が追加されたことで『どの支店』で『どの製品』を『いくつ』『誰が』が売ったかがわかります。集計結果の要因を、より詳細に解析していくためにスライス分析は有効です。Excelで作成したピボットテーブルは、スライス分析を行うためのスライサー機能を挿入することができます。テーブルの再作成をすることなく、マウスクリックのみで新しい条件を追加して再集計が可能な為、会議中などの迅速な対応が必要となる場面などにも非常に役立つ機能でしょう。

終わりに

今回は、Excelでできるデータの解析方法についてご紹介いたしました。データ解析のためにはデータを集計できるスキルが必須となります。また、新しいツールや開発の必要がないExcelを使用してデータ集計ができれば、事務職の方でも簡単にデータ解析が可能です。この機会にぜひピボットテーブルでのデータ解析にチャレンジしてみてください。ありがとうございました。