IT業界のマネジメント経験について考える

マネジメント経験とは

 企業の求める人物像に「マネジメント経験」が挙げられることや、案件やプロジェクトなどの募集要項においても「マネジメント経験有り」と書かれていることや、一定期間以上の経験年数を求められることがあるのではないでしょうか。では、そもそもマネジメント経験とはどういった経験や実績のことを指すのでしょうか。一般的には、自身が上司やリーダーの立場としてメンバ(部下)と共に、プロジェクト遂行や営業活動における目標を達成するために様々なアクションを講じたり、それぞれのメンバの進捗やモチベーション管理の経験を指します。一見するとリーダーシップと混同しがちですが、リーダーシップとは異なります。参考までに両者の違いを比較すると、「リーダーシップ」は、自主的なアクションにより個人やチームに対して働きかけることを指します。一方で「マネジメント」は、ある目標に対して、個人やチームの進捗が円滑に進むよう、具体的な施策を提案しサポートしていくというような違いがあります。つまり「リーダーシップ」は自主的に決めて行動することであり、「マネジメント」は、メンバに対して役割や目標を共有したり、期限を設定するなど周囲を巻き込んだ計画を基に管理を行うことと考えられます。両者に優劣はなく、メンバの管理を行う立場である以上、同時に必要とされるスキルです。以上のことから、マネジメント経験とはメンバと共に目標に対してどのような計画を立て、管理をしていくのかということになると考えられます。

IT業界における、マネジメントの曖昧な定義

 ここまでに、マネジメント経験とは何かはお分かりいただけたでしょうか。では具体的にマネジメントを行うにあたって、どんなスキルや経験を積む必要があるのでしょうか。マネジメントを行うポジションや対象とする人数は、業界やプロジェクトの規模により様々ですが、一概に業務に関する総合力や、メンバに対して指導が出来る知識や統率力などの経験が求められます。また、マネジメント経験が求められる年代も業界によって異なり、その中でも特にIT業界においては20代後半からマネジメント経験を求められることもあります。業界自体が若いということや技術のトレンドが移り変わるスピードが早いことなども起因し、業界における平均年齢は他の業界と比較しても比較的若い傾向にあります。したがって必然的にマネジメント対象のメンバとの年齢が近くなりやすく、またマネジメントにおいても有利に働くことがあるためです。しかし、ことIT業界におけるエンジニアのマネジメントとなると、やはり言葉自体が曖昧です。なぜならばIT業界においては依然として高い技術力を持った人がエンジニアの中では花形なイメージが一般的なのではないでしょうか。また、将来的な目標においても、現場プレイヤーとしてのビジョンを掲げるメンバが心なしか多い傾向もあります。たしかに、エンジニアという職種である以上、技術力を磨いていく上でマネジメント経験は必須ではなさそうです。だからこそ、特定の技術に対して調査していく事と比べると、文献や資料も少なく、いざエンジニアのマネジメントを行う際にやることが不透明な節も垣間見えます。そんな中、近年では日本においてもVP of Engineeringという役職が広まりつつあります。欧米のエンジニア組織では欠かせない存在とされていたポジションであり日本での認知度は未だ低いものの、IT業界におけるマネジメントの概念が多少分かりやすく定義される傾向にあります。簡単に説明するとVPとは「Vice President」の略で、日本語で意訳すると「部長」のような役職のことです。つまりVP of Engineeringとは、エンジニア組織のトップとして、マネジメントを担う立場のことです。では実際、現在の日本のエンジニア組織においてトップに立つ場面にはどういった分野があるのでしょうか。3つの側面から見ていきます。

IT業界でマネジメントを必要とする3つの側面

 IT業界におけるマネジメントを「人」「製品」「プロジェクト」の3つの面から考えてみます。まずは「人」のマネジメントが、業界問わずイメージしやすい分野ではないでしょうか。チームメンバの力を最大限引き出すことを目的としたサポートや面談や評価が、これに該当します。次に「製品」に対するマネジメントです。最近ではプロダクトマネージャーという言葉が普及してきましたが、簡単にいえば、チームの中で最もクライアントに近い位置で要望や要求を把握し、機能の有無を判断したり製品の質を向上させるための計画を立てる役割を担います。最後に「プロジェクト」に対してのマネジメントです。これは方向性が決まったプロジェクト全体の計画に対する進捗管理や、有事の際の課題解決を行うプロセスをコントロールする立場です。ここでは簡単に3つの面からIT業界におけるマネジメントを挙げてみましたが、こうして大きなくくりで考えてみるとエンジニアがマネジメントを行う際にやるべきことの概要が多少見えてきたでしょうか。マネジメントのアプローチの仕方は様々であるものの、目的はあくまでチームとしてアウトプットの質や完成度をいかにして高水準で実現できるかという事を考えることが、エンジニアにとってマネジメント経験を積むことに繋がるのではないでしょうか。

まとめ

 マネジメントというと業務量の多さによる多忙や、若手では遠く及ばない目標のような認識から敬遠されがちですが、会社組織やチームに対して、より大きく貢献できる可能性があります。また、一口にマネジメントと言えど、コミュニケーションが高いエンジニアは「人」のマネジメントを、プロダクト思考の強いエンジニアや、問題解決力が高いエンジニアは「製品」や「プロジェクト」に対するマネジメントなどと、IT業界においては間口も広く自身の強みを活かしやすい傾向にあるようです。今後、マネジメントを行う機会に恵まれることがあれば、自身の責務の範囲や目的意識を明確にした上でマネジメント経験を積んでいき、メンバやチームのパフォーマンスを向上させることができるビジネスパーソンとして成長していきたいものです。

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