職業訓練校でITの技術を身に着けて就職

「インターネット」という名前が知られるようになったのは1990年前後ですが、それからわずか10年後の西暦2000年頃を境に、インターネット(以下「ネット」)は爆発的に普及しました。単にメールや画像を送信するにとどまらず、ショッピング、チケット予約、音楽ダウンロード、検索機能、SNS等、今やネットは生活の隅々にまで浸透しました。ネットのない生活は考えられないほどです。
社会の需要が増えれば、それに合わせた仕事も増えてきます。ウェブサイトを構築するためのIT技術も、質・量ともに需要はますます増えていると言っていいでしょう。

一方、国が定める職業能力開発促進法においては、失業したときのための「教育訓練給付」を定めています。これは、失業したときに、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了すれば、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の一部が支給されるという制度です。ここにはもちろん、IT関係の講座もあります。

ここでは、職業訓練校において、失業中の方が受講できる受講できるIT技術と、それを利用して就職する場合について考察します。

職業訓練校とは

まず、職業訓練校とは何かというところから始めましょう。
これは職業能力開発促進法によって規定されている学校で、都道府県によって呼び名が異なります。最も多い呼び名は「高等技術専門校」、次に「産業技術専門校」です。例えば東京都では「職業能力開発センター」という名前がついています。
各都道府県に複数設置されていますので、自宅からの通学も容易でしょう。
その職業訓練校では、求職中を対象として様々な知識・技能を身につけ、就職に役立つように職業訓練を実施しています。

講座の期間は3ヶ月から1年ほどが中心で、自己負担は講座の種類や期間の長さによって違ってきます。コースのほとんどは、入校料や授業料、テキスト代等全てが無料になっています。ただし、テキスト代が自己負担になっている場合もあります。
また交通費も支給されますし、講座を受講することによって、受講期間終了まで失業手当の受給期間が延長されます。

就職に有利なIT資格

ここからは、就職に有利なIT資格について述べます。ネット社会において、これらの資格の重要性はますます高まってくると考えられるからです。ただし資格を取得するためには試験に合格しなければなりません。
IT資格は非常にたくさんありますが、就職に有利と思われる代表的な5つの資格を次に
説明します。

(1)情報処理技術者試験

全てのITエンジニア向けの資格と言えるもので、「基本情報処理技術者」では、システム開発を行うための基本的かつ幅広い知識が必要です。その上のIT資格試験に合格するためにも、まずはこの合格を目指したいものですね。
上級試験として「応用情報処理技術者」試験があります。基本よりさらに高度なスキルと知識を求められ、エンジニアの資格ランキングでも常に上位に位置しています。
試験は、独立行政法人情報処理推進機構が実施しており、試験合格に向けた職業訓練校の講座も多くの都道府県で実施されています。

(2)CCNAとCCNP

世界最大手のネットワーク機器メーカー「シスコシステムズ」社が認定するベンダー資格(民間資格)で、「CCNA」と、上位資格の「CCNP」の2つがあります。
現在、ネットワークを構築に必要なルータやスイッチ等の大半はシスコシステムズ社の製品によって占められています。そこでCCNA資格を取得すれば、ネットワーク構築と運用管理能力を身につけているという証明になります。
これら二つの資格はネットワーク資格の中でも有名ですが、難易度も高いです。したがって、取得すれば就職や転職にも大きな武器となるでしょう。
CCNAのほうが難易度は低く、勉強して1ヶ月程度で受かる人もいます。
民間資格ですから、合格を目標とした講座は「シスコ認定コース」として民間の学校や法人が行っていることがほとんどです。ただし都道府県によって、厚生労働省の指定する「キャリア形成促進助成金」に該当していれば助成金がもらえる場合があります。
詳しくは、ハローワークの担当者に尋ねてみてください。

(3)LPIC

LPICは、「Linux Professional Institute Certification」の略で、NPO法人Linux技術者認定機関「LPI」が実施する認定資格です。
特徴は、全世界共通で最大規模を誇るLinux技術者認定資格であることで、LinuxをOSとして導入している企業のエンジニアにとっては、必須と言ってもいい資格でしょう。またLPICはベンダー資格ではなく、中立な資格であることも特徴です。
レベル1~レベル3までの3段階の認定レベルがあり、それぞれの認定に対応する試験があります。

(4)オラクル社認定Javaプログラマー

Javaは、1995年に登場した当時から今に至るまで一番人気があるプログラミング言語です。
その開発社であるOracle(オラクル)社が認定する資格として、「Java SE 8 認定資格」があります。資格もJavaのバージョンアップに従って変化してきています。
そして資格レベルには3つあり、プログラム開発未経験者向けの「ブロンズ」、一通りの知識がある中級者向けの「シルバー」、幅広い知識を持ち独力で開発が可能な「ゴールド」です。
そしてこれらの中で、もっともお勧めなのが「シルバー」です。
まずブロンズは、受験料が高い割に位置づけが入門者レベルなので、再就職の武器として訴求力は薄いです。
もちろんゴールドが一番いいですが、シルバーであればブロンズを取得していなくとも受験可能であり、Javaが使える証明にもなります。難易度もゴールドほどではありません。つまり、あまり難しくはないが、持っていると強い武器になる資格なのです。

(5)ExcelVBAスタンダード

Microsoft Officeの「Excel」のマクロ・VBA(ビジュアルベーシック)スキルをを証明する資格です。「ベーシック」「スタンダード」と2つのレベルがあり、VBAをより高度に駆使できる「スタンダード」が人気となっています。

これらの中で難易度にランクをつけてみましょう。難しいほうから、A、B、Cとすると、
A:応用情報処理技術者、CCNP
B:基本情報処理技術者、CCNA 、LPIC、JAVAシルバー、VBAスタンダード
C:VBAベーシック
となります。

受講から受験まで

上に挙げたのは資格ですから、取得するためにはもちろん試験に合格しなければなりません。
すると次に、どこで勉強するかということが問題になってきます。独学で勉強できればいいですが、時間の確保、勉強できる環境があるかどうか、単独で完遂できるかという点が問題になってきますね。

情報処理技術者については、公的な職業訓練校で講習を行っている都道府県があります。全ての都道府県で行っているわけではないので、詳しくはハローワーク等に問い合わせてみてください。
一方、企業が認めるベンダー資格は、民間の各種学校、私立のITスクール等で行っています。

順序としては、まず難易度の低い応用情報処理技術者やCCNP合格を目指すのがいいでしょう。そのうえでより上位の資格にチャレンジするのが、取得方法としては正攻法と言えます。

実際の就職に関して

さて実際問題として、これらの資格を生かして就職する場合のことを考えてみましょう。
特にIT未経験者の場合、狙い目は、「CCNA/CCNP」や「JAVAシルバー」等、具体的な資格が応募条件として明記されている求人です。
取得した資格を生かして就職するには、これが最も近道です。

ただし企業の採用担当者からすると、たとえ資格を持っていても、採用するかどうかを決めるポイントは、どのような人物であるかも大切です。ITといえど、システムを構築していくには顧客のニーズをよく聞き、何を求めているかを把握するコミュニケーション能力が必要ですし、協調性も求められます。
面接時の態度、清潔感、一般常識等も、言うまでもなく必須項目です。
これらの条件をクリアして採用されれば、IT未経験者であっても資格取得から3ヶ月でネットワークエンジニアになることも不可能ではありません。

そうして経験を積んでいけば、エンジニアとして大切な実務経験を積むことができます。そそれはやがてあなたの武器になり、キャリアアップにつながっていくことでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です