AWS IoT Analytics概要

1.AWS IoT Analyticsとは

AWS IoT Analyticsとは、膨大な量のIoTデータの分析を実行、操作できるマネージド型サービスです。
マネージドサービス(フルマネージドサービス)とは、サーバーの運用管理や保守、障害時の対応といったシステム管理などの全てを自社のオンプレミス環境で構築・実施すると、多くのコストやリソースが発生し、大きな負担となる、一連の業務をアウトソーシングするサービスとなります。

このサービスは、IoTアプリケーションや機械学習のユースケースで判断を下すために、IoTデータを分析してインサイトを得る最も簡単な手段となります。

IoTデータは高度に構造化されていないため、構造化データの処理用に設計された従来の分析ツールやビジネスインテリジェンスツールでは分析が困難となります。IoTデータの送信元のデバイスでは、ノイズの多いプロセス (温度、モーション、サウンドなど) が記録されます。これらのデバイスのデータには、大きな誤差やメッセージの破損、誤認識が含まれる場合があるため、分析を行う前にクリーンアップする必要があるのです。
また、IoTデータは、サードパーティーからの他のデータを追加した場合に初めて意味のある内容になることが少なくありません。例えば、ブドウ園の経営者が作物に給水する時期を判断できるように、灌漑システムの湿度センサーのデータをブドウ園の降雨データで強化することで、水の使用を効率化する一方で、収穫を最大化することができます。

AWS IoT Analyticsによって、IoTデバイスからのデータの分析に必要な、各ステップを自動化できます。
AWS IoT Analyticsでは、時系列データストアに分析対象のIoTデータを保存する前にデータのフィルタ、変換、および強化を行います。デバイスから必要なデータのみを収集し、数学的変換を適用してデータを処理し、処理されたデータを保存する前にデバイスの種類や場所などのデバイス固有のメタデータでデータをエンリッチ化するサービスを設定できます。
その後、組み込みのSQLクエリエンジンを使用してアドホッククエリまたはスケジュールされたクエリを実行することでデータを分析するか、さらに複雑な分析と機械学習推論を実行することが可能です。AWS IoT Analyticsでは、IoTの一般的ユースケースに構築済みのモデルが使用されるため、機械学習の使用の開始が容易となります

コンテナにパッケージ化された独自のカスタム分析を使用して AWS IoT Analyticsで実行することもできます。
AWS IoT Analyticsでは、Jupyterノートブックや独自のツール (Matlab、Octaveなど) で作成したカスタム分析の実行を自動化して、定期的に実行することも可能です。

2.AWS IoT Analyticsの主な特徴

AWS IoT Analyticsの主な特徴は以下になります。

・収集

①AWS IoTコアとの統合

AWS IoT Analyticsは、AWS IoTコアと完全に統合されているため、接続されたデバイスからストリーミングされたメッセージを受信できます。

②バッチAPIを使用した任意のソースからのデータの追加

AWS IoT Analyticsは、HTTPを介して任意のソースからのデータを受信でき、インターネットに接続された任意のデバイスやサービスからAWS IoT Analyticsにデータを送信できます。

③保存および分析するデータのみを収集

AWS IoT Analyticsコンソールを使用して、さまざまな形式と頻度のMQTTトピックフィルタを使用してデバイスからメッセージを受信するようにAWS IoT Analyticsを設定できます。
AWS IoT Analyticsでは、定義した特定のパラメータ内にデータがあることを確認し、チャネルを作成し、適切なパイプラインにルーティングして、メッセージの処理、変換、強化を行います。

・プロセス

①最適化とフィルタ

AWS IoT Analyticsでは、AWS Lambda関数を定義して欠落データを検出したときにトリガーできるため、コードを実行して欠落を推定し、これを埋めることができます。
また、最大/最小フィルタとパーセンタイルの閾値を定義して、データ上の異常値を削除することもできます。

②変換

AWS IoT Analyticsでは、定義した数学的または条件付きロジックを使用してメッセージを変換できるため、摂氏のような一般的な計算を華氏に変換することができます。

③強化

AWS IoT Analyticsでは、天気予報などの外部データソースを使用してデータを強化し、そのデータをAWS IoT Analyticsデータストアにルーティングできます。

・保存

①時系列データストア

AWS IoT Analyticsでは、最適化した高速な取り出しと分析用の時系列データストアにデバイスデータを保存します。アクセス権限の管理、データ保持ポリシーの実装、外部アクセスポイントへのデータのエクスポートを行うこともできます。

②処理済みデータと未加工データの保存

AWS IoT Analyticsでは、処理されたデータを保存するだけでなく、取り込まれた未加工データも自動的に保存されるため、そのデータを処理することができます。

・分析

①アドホックSQLクエリの実行

AWS IoT Analyticsには、SQLクエリエンジンが用意されているため、アドホッククエリを実行して結果を迅速に取得できます。
たとえば、クイッククエリを実行して、フリート内のデバイス別のアクティブユーザー数を確認できます。

②時系列分析

AWS IoT Analyticsは時系列分析に対応しているため、時間の経過とともにデバイスのパフォーマンスを分析したり、使用方法や使用場所を把握するだけでなく、デバイスデータを継続的に監視してメンテナンスの問題を予測したり、センサーを監視して環境条件を予測して反応させることができます。

③高度な分析とMachine Learning向けにホストされたノートブック

AWS IoT Analyticsでは、統計的分析とMachine Learning向けにホストされたノートブックがJupyterノートブックでサポートされ、このサービスにはノートブックテンプレートが用意されています。

④予測

ロジスティック回帰と呼ばれる方法で、統計的な分類を行うことができます。
また、長短期記憶 (LSTM) を使用することもできます。LSTMは時間の経過とともに変化するプロセスの出力や状態を予測する強力なニューラルネットワーク技術です。

・構築/視覚化

①QuickSight統合

AWS IoT Analyticsでは、Amazon QuickSightへのコネクタを提供しているため、QuickSightダッシュボードでデータセットを視覚化することができます。

②コンソールの統合

AWS IoT Analyticsコンソール内に組み込まれている Jupyterノートブックで、結果やアドホック分析を視覚化することもできます。

最後に

AWS IoT Analyticsは、分析を操作し、自動的にスケールして最大で数ペタバイトのIoTデータをサポートする完全マネージド型サービスです。
AWS IoT Analyticsを使用すれば、数百万台のデバイスのデータを分析し、高速で応答性に優れたIoTアプリケーションを構築でき、ハードウェアやインフラストラクチャの管理は必要ありませんので、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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