効果的なデータベース管理と高可用性の実現。AWSのRDSとフェイルオーバーについて。

RDS (Amazon Relational Database Service) の概要

RDS は、AWS が提供するリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)のマネージドサービスです。RDS を利用することで、データベースのセットアップ、運用、スケーリングが簡単に行えます。

リレーショナルデータベースとは?

リレーショナルデータベースとは、データを整理し、関連性を持つ情報を効率的に管理するためのデータベースの一種です。データは表(テーブル)形式で保存・管理されることになっており、行(レコード)と列(フィールド)で構成されています。行は個々のデータ項目を表し、列はその属性を表します。例えば、顧客情報を管理する表では、行が個々の顧客を表し、列が名前や住所、電話番号などの属性を表すことになります。

リレーショナルデータベースサービス(RDS)は、クラウド環境でリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)を提供するサービスです。RDSは、データベースの設定、運用、管理を簡単に行えるようサポートし、ユーザーはデータベースの機能を利用するだけで、インフラストラクチャーや管理作業を心配する必要がありません。

リレーショナルデータベース管理システムとは?

リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)とは、データを整理して管理するためのソフトウェアです。RDBMSは、リレーショナルデータベースの概念に基づいており、データを表(テーブル)の形式で保存します。これにより、データの検索や操作が容易になります。

RDBMSの主な機能はデータを整理し、テーブル形式で保存する「データの構造化」。データの追加、変更、削除をする「データの操作」。SQLを使って検索の効率化ができる「データ検索」。矛盾なくデータを保存するためのルールを設定できるようにする「データの整合性保持」。そして、データの安全性を保ち、アクセス制御や権限管理を行えるようにする「セキュリティ性」の5つです。

RDS は、Amazon Aurora、MySQL、MariaDB、PostgreSQL、Oracle、Microsoft SQL Server などの主要なリレーショナルデータベースエンジンをサポートしています。さらに、RDS は自動バックアップ、自動パッチ適用、高可用性、セキュリティ、監視などの機能を提供しており、データベース管理に必要な多くの作業を自動化できます。RDS を利用することで、データベースのパフォーマンスを最適化し、コストを削減できます。

それでは、RDS が持つ特徴と利点について説明していきましょう。

簡単なデータベース管理

RDS では、データベースのバックアップやパッチ適用などの運用タスクが自動化されています。また、RDSは高可用性や耐久性を確保するために、マルチAZ配置や自動フェイルオーバー機能を提供しています。さらに、スケーラビリティにも対応しており、必要に応じてインスタンスの拡張や縮小が可能です。これらの機能により、RDSを利用することで、データベースの運用管理にかかる手間やコストを削減できます。

スケーラビリティ

RDS では、データベースのリソースを簡単にスケーリングできます。具体的には、CPUやメモリなどのリソースを増やしてインスタンスを拡張可能です。AWSのAuto Scalingを利用すれば、負荷に応じて自動的にインスタンスを増減する機能を持っています。また、読み込み負荷が高い場合にマスターDBから読み込み専用のレプリカを作成し、負荷を分散できます。こうした機能により、データベースのパフォーマンスを維持しながら、コストを抑えた運用が可能となります。

高可用性

RDS では、マルチAZデプロイメントを利用して、フェイルオーバー機能を実現できます。マルチAZデプロイメントは、RDSインスタンスを複数のアベイラビリティーゾーンに配置することで、1つのアベイラビリティーゾーンで障害が発生した場合でも、別のアベイラビリティーゾーンに自動的にフェイルオーバーできる機能で、この機能が高可用性の確保に繋がっています。また、マルチAZデプロイメントを利用することで、データベースのレプリケーションも自動的に行われるため、データの整合性も保たれます。ただし、マルチAZデプロイメントを利用する場合は、料金が増加することに注意が必要です。

スケーラビリティと高可用性について

「スケーラビリティ」と「高可用性」は、ITシステムに求められる重要な特性です。

「スケーラビリティ」とは、システムの性能や容量を柔軟に増減させることができる能力のことです。システムの利用者が増えたり、データ量が増加したりする場合に、スムーズに対応できることが求められます。

例えば、あるウェブサイトが人気になり、急激にアクセス数が増えたとします。この増加に対応できるシステムは「スケーラビリティが高い」システムです。一方で、アクセスが減った場合に、無駄なリソースを削減できるシステムもスケーラビリティが高いと言えます。スケーラビリティを実現する方法には、ハードウェアやソフトウェアの追加・変更、クラウドコンピューティングの利用などがあります。

「高可用性」とは、システムが継続して安定して稼働することを指します。システムのダウンタイム(停止時間)が最小限に抑えられ、利用者がサービスをほぼ常時利用できる状態を保つことが目的です。

例えば、銀行やショッピングサイトなど多くの人が利用するサービスは、サーバーやネットワークに問題が発生した際も、利用者に影響が出ないように継続して動作させる必要があります。このようなシステムの安定性や信頼性を高めることを「高可用性」と言います。高可用性を実現するためには、冗長化、クラスタリング、フェイルオーバー、監視・管理などの対策が必要です。

つまり、スケーラビリティはシステムが柔軟に拡張・縮小できる能力を指し、高可用性はシステムが継続して安定して稼働する能力を指します。これらは、ITシステムの性能や信頼性を向上させ、利用者に良いサービスを提供するために重要な要素です。

相互に関連する2つの要素

スケーラビリティと高可用性は、時に相互に関連があります。例えば、システムのスケーラビリティが高い場合、利用者が増えた際にもサービスが安定して提供されるため、高可用性にも寄与します。一方で、高可用性を確保するための冗長化やクラスタリングなどの対策は、スケーラビリティにも影響を与えることがあります。

こうした概念を理解し適切な対策を講じることで、システムは利用者のニーズに応えるとともに、安定性と信頼性を高めることができます。ITシステム設計や運用に携わる際には、スケーラビリティと高可用性をバランス良く考慮し、効率的で堅牢なシステムを構築することが求められます。

フェイルオーバーとは?

先述した「フェイルオーバー」機能とは、システムに障害が発生した際に、自動的に別のリソースへ切り替えることで、サービスの可用性を維持する仕組みです。フェイルオーバーは、主にクラスタリング技術によって実現されます。クラスタリングとは、複数のサーバーをまとめて1つのシステムとして扱い、障害発生時には別のサーバーに自動的に切り替えることで高可用性を確保する技術です。フェイルオーバーは、システムの可用性を向上させるために重要な役割を果たしています。

フェイルオーバーの仕組みと目的

フェイルオーバーは通常、システムを冗長化することで実現します。例えばデータベースの場合であれば、プライマリとセカンダリという2つのインスタンスを用意し、プライマリが障害に見舞われた際に、セカンダリが代わりに稼働することでサービスを継続します。フェイルオーバーの目的は、障害発生時にダウンタイムを最小限に抑えサービスの可用性を高めることです。

また、フェイルオーバーは自動的に行われる場合と手動で行われる場合があります。自動フェイルオーバーは、システムが障害を検知し自動的に切り替えることで行われ、手動フェイルオーバーは管理者が手動で切り替えることで行われます。フェイルオーバーを実現するためには、冗長化されたシステムの設計や、障害を検知する仕組み、切り替えの手順などが必要です。

フェイルオーバーがもたらすメリット

フェイルオーバーは次のようなメリットをもたらしてくれます。

システムの可用性向上

フェイルオーバーが実装されているシステムでは、障害が発生してもサービスが継続されるため、可用性が向上します。これは、メインのシステムが障害を起こした場合にはバックアップシステムが自動的に稼働し、サービスを提供することができるからです。このため、システムのダウンタイムを最小限に抑えユーザーにとっては中断なくサービスを利用することができるので、可用性が向上します。また、フェイルオーバーが実装されていることでシステムの信頼性も高まります。

データの保護

データベースのフェイルオーバーでは、データが複数のインスタンスに複製されるため、データの喪失リスクが低くなります。また、フェイルオーバーによりシステムの可用性が向上し、障害が発生した場合でもシステムが停止することなくユーザーにサービスを提供し続けることができます。さらにフェイルオーバーは自動化されることが多く、人的ミスによる障害を防止することもできます。ただし、複数のインスタンスにデータが複製されるため、データの整合性に関する問題に注意する必要があります。

平均故障間隔 (MTBF) の延長

フェイルオーバーが実装されているシステムでは、故障時に迅速な対応ができるため、システム全体の故障率が低下します。また、フェイルオーバーが実装されているシステムでは、システムの可用性が高くなります。つまり、ユーザーがシステムを利用する際に、システムが常に利用可能であることが保証されるのです。これにより、ユーザーの利便性が向上し、ビジネスの信頼性が高まります。さらに、フェイルオーバーが実装されているシステムでは障害が発生してもシステムが自動的に切り替わるため、人的ミスによる障害を防止することができます。

RDS におけるフェイルオーバー実装

RDS では、マルチAZデプロイメントという機能を利用して、フェイルオーバーを実現できます。マルチAZデプロイメントは、プライマリインスタンスとセカンダリインスタンスを異なるアベイラビリティーゾーン(AZ)に配置することで高可用性を提供します。マルチAZデプロイメントでは、プライマリインスタンスとセカンダリインスタンスの間で同期レプリケーションが行われます。プライマリインスタンスに障害が発生した場合、自動的にセカンダリインスタンスに切り替わるのですが、この切り替えはDNSのレコードを変更することで行われます。マルチAZデプロイメントを利用することで、アプリケーション側でフェイルオーバー処理を実装する必要がなく、高可用性を簡単に実現できます。ただし、マルチAZデプロイメントを利用する場合はインスタンスの数が増えるので、その分だけコストがかかることには注意が必要です。

マルチAZデプロイメントの概要

マルチAZデプロイメントでは、プライマリインスタンスのデータが自動的にセカンダリインスタンスに同期されます。これにより、プライマリインスタンスに障害が発生した際にRDS が自動的にフェイルオーバーを実行し、セカンダリインスタンスが新たなプライマリインスタンスとして稼働します。このフェイルオーバーによって、アプリケーションのダウンタイムが最小限に抑えられます。また、マルチAZデプロイメントでは、プライマリインスタンスとセカンダリインスタンスが異なるアベイラビリティーゾーンに配置されるため、単一のアベイラビリティーゾーンに障害が発生した場合でも、システム全体が停止することがありません。さらに、マルチAZデプロイメントでは自動バックアップが有効になっており、定期的にデータベースのバックアップが取得されます。これにより、データの損失を最小限に抑えることができます。

RDS フェイルオーバーのプロセス

RDS のフェイルオーバーのプロセスは次のようなものになっています。

まず、RDS がプライマリインスタンスの障害を検出します。次に、RDS がセカンダリインスタンスを新たなプライマリインスタンスに昇格させます。RDS はDNSレコードを更新し、アプリケーションが新たなプライマリインスタンスに接続可能にし、アプリケーションが新たなプライマリインスタンスに接続し、データベース操作を再開させることになります。

現実的にはフェイルオーバーが発生した際にアプリケーションが一時的にデータベース接続を失うことがありますが、RDS の DNS レコードが更新されることで再接続が可能です。また、RDSではマルチAZ構成を利用することで、プライマリDBとセカンダリDBを自動的に同期させることができます。これにより、プライマリDBに障害が発生した場合でも、セカンダリDBが自動的に昇格してプライマリDBとして動作するため、アプリケーションの停止時間を最小限に抑えることができます。

RDS フェイルオーバーの設定方法

ここまで解説してきた内容からわかるように、RDS のフェイルオーバー機能を利用するには、マルチAZデプロイメントを設定する必要があります。具体的な設定方法として、AWS Management Console と AWS CLI を利用した設定方法を説明します。

AWS Management Console での設定手順

AWS Management Consoleでフェイルオーバーを設定するためには、まずAWS Management Console にログインし、RDS サービスページにアクセスします。「Create database」ボタンをクリックし、データベース作成ウィザードを開きます。次に、使用するデータベースエンジンを選択し、必要な設定作業を行います。さらに「Settings」セクションで「Multi-AZ deployment」オプションを「Create a standby instance」に設定し、その他の設定を行い、データベースを作成すれば完了です。

AWS CLI および SDK を利用した設定方法

AWS CLI を使用して RDS データベースインスタンスを作成する場合、「–multi-az」 オプションを指定してマルチAZデプロイメントを有効にします。マルチAZデプロイメントを有効にすると、RDSデータベースインスタンスはプライマリインスタンスと同期したスタンバイインスタンスが自動的に作成されます。これにより、プライマリインスタンスに障害が発生した場合でも、スタンバイインスタンスが自動的に稼働し、アプリケーションの可用性を高めることができます。また、マルチAZデプロイメントを有効にすることで、データの耐久性も向上します。ただし、マルチAZデプロイメントを有効にすると料金が増加することに注意が必要なのは前述の通りです。

まとめ

ここまでこの記事では、RDS とフェイルオーバーについて解説してきました。RDS を利用することで、データベースのセットアップ、運用、スケーリングが簡単に行えます。フェイルオーバー機能を利用することで、システムの可用性を高められます。これらRDS とフェイルオーバーで信頼性の高いデータベース環境を構築する技術を活用して、信頼性の高いデータベース環境を構築可能です。RDS は複数のデータベースエンジンをサポートしており、MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Server など、様々なデータベースエンジンを利用することができます。さらに、RDS は自動バックアップやリストア機能、パフォーマンスモニタリング、セキュリティ機能など、豊富な機能を提供しています。ただし、RDS を利用する場合は、AWS の利用料金が発生することを覚えておきましょう。フェイルオーバー機能を利用する場合はマルチAZ 構成を選択する必要がありますが、これがコストが増加する要因の1つです。そのため、利用する際には、コストや必要な機能に応じて適切なプランを選択していくのが良いでしょう。

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