Azure vs AWS ~どちらのクラウドを選ぶべき?~

クラウド選びに悩む

AmazonやMicrosoftに加え、Google(Google Cloud Platform)やアリババ(alibaba)、IBMなど多くの企業が参入しているパブリッククラウドですが、自分の使い勝手に合わせたリージョンをいろいろと検討できる便利な時代になりました。

しかし、何を基準に選べばよいのかと悩むケースもあるかもしれません。パブリッククラウドの中でもシェアでいえば「Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS))」と「Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール(以下、Azure)」が2大巨塔と言えるほど勢力を増してきています。それぞれ選ぶ際にメリットとなりうる特徴を持っていますが、どちらにすべきなのかと考えている方も多いのではないでしょうか。
2019年の世界的な市場占有率(シェア率)の首位はAWSが全体の32.3%を占めており、その次に人気なのがAzureです。Azureの市場占有率は16.9%で、AWSと大差をつけられているものの成長率は1位のWebサービスと言えます。
Microsoft社は2020年には1位を狙うために急成長を測る明確な「目的」と「目標」を発表しており、市場占有率(シェア率)でAWSを越えようとしています。

今はシェア率という側面でAWSに遅れを取っていますが、このパブリッククラウド2大巨塔のAWSとAzureの今後がどうなるかは誰にもわかりません。
2021年のコロナ禍の状況の中で、リモートワークの導入・検討が必須になり始めていますが、クラウドへの投資が加速し始めている世の中でいかに最適なクラウドサービスを選択するかがキーとなります。この記事では、クラウドサービスのシェア率が高いAWSとAzureについて、特徴や強み弱みなどを紹介します。

AWSとAzureの概要

■AWSとは?

Amazon Web Service社が供給するクラウドプラットフォームで、名前からもわかるように母体はあの通販サイトのアマゾンです。
これまでアマゾンが培ってきた社内ITシステムの構築、運営の技術・知識を基にクラウドサービスを提供しており、クラウドプラットフォームのパイオニア的存在です。

■Azureとは?

Microsoft社が提供するクラウドプラットフォームです。Windowsを基に構築されたサービスであるので、Windowsをすで利用している企業にとって非常に導入・利用しやすいサービスです。
Office365との連携機能や、Azureを経由したPaaS(パース)の提供、さらに近年OSS(オープンソースソフトウェア)との連携にも力を注いでおり、Azure上でOSSを導入、利用する事ができます。

AzureとAWSの特徴

Amazon提供のAWS

最速で世界中の豊富な情報とグローバルに接しており、数多くの分野で利用することができます。多様な分野に対応するために豊富なサービスを数多く展開しているので、Azureに比べると統一しスッキリと円滑にすすめることが難しい部分もあるというのが難点ですが、Microsoftの手が届かないほど細かい部分も構築できるサービスです。
使いたいシステムだけに課金することができるため、あなたが利用する上で必要となる部分だけ利用することができます。そのため、柔軟かつ的確にコストが抑えられ、効率的、円滑に利用することができるということが特徴の1つです。

Microsoft社のAzure

利用者に良い技術やサービスを提供するために見えない部分で技術と生産性を高め、開発者のレベルを高く向上し続けています。それこそがAzureの急成長の裏付けとなる理由でもあり、Azure特有の特徴でもあります。
さらに、最新人工知能とデータを活用してインテリジェントの次世代アプリを生み出すことが可能です。このような特徴からAzureの秘めた可能性は高く、IT業界のAI分野を促進すると予測されます。

それぞれの得意分野

より多くの国で利用したいならAWS

AWSは190か国で利用ができ(Azureは140か国)、またAWSは利用可能国が多いです。サービスの海外進出も考慮している場合、そのサービスを提供したい国や地域で導入を検討しているクラウドサービスが使えるのかは考慮に入れる必要があります。
AWSは、特に公共機関のサービス(電子行政)や教育分野(ゲノム研究などの高度計算処理等)の活用が加速しています。

Microsoftの得意分野を利用するならAzure

Azureは金融、航空、電力などの業界の問題解決ができる強みとなる特徴を持っています。また。IT業界に強い影響力を持つためオンプレミス(情報システムを個人で保有し、自分たちの設備によって運用すること)サーバーとの親和性が高いです。
このように特化型のクラウドサービスと言えるため、先ほど挙げたような業界に向けたシステムの構築や、サービスを提供する場合にはAzureが適しています。こういった専門性や外に漏れないセキュリティ面を前提とした情報管理がAzureの持つ大きな特徴の1つと言えるでしょう。

AWSとAzureの共通点とは?

1.共通の機能

AWSとAzureは両方、コンピューティング・ストレージ・DB(データベース)およびネットワークサービスで主に構築されたサービスです。
また、「リソースグループ」と呼ばれるリソースを整理する機能もどちらにも備わっており、VM(Virtual Machineの略で、コンピュータやマイクロプロセッサと同じように振る舞うソフトウェアのこと。また、コンピュータ内に構築された仮想的なコンピュータのこと。)や、ストレージや仮想ネットワークデバイスなどのリソースを整理できます。

2. 時間単位の、従量制の課金制度

AWSもAzureも「時間単位の従量課金制度」を採用しています。サービスを使った分だけ支払いをすればいいので、無駄なコストが抑えられるというクラウドサービスならではのメリットがあります。

3.アプリケーションの展開も瞬時に可能

世界中に拠点があり、それぞれの国でサービスを提供しているような場合でも、数クリックでそれぞれのリージョン(エリア)に対してアプリケーションを広げることができます。そのため同じサービスを提供することが可能です。

便利であるがゆえのデメリットも

多様なサービス群

メニューが豊富で何にでも対応できるというメリットを駆使するには、サービス選定および設計に対する知識が必要です。どのサービスが自分が所属するグループが利用するために最適なのかを適切に判断し、設計することが必要となります。

変動するコスト

初期コストを0円にし変動費として利用できるのはメリットではある一方、毎月の費用が読めないという問題も同時に発生します。ある程度のデータの予測をして、費用をあらかじめ決めておいたレンジで抑えるなどという対策が必要になるでしょう。

それぞれの強みを比較

AWSを利用する強み

AWSは最速で世界中の情報と世界的な規模で接し、また豊富なサービスを数多く展開しているので様々な分野で対応が可能です。安定したサービス提供実績は十年以上続いており、多くのエラーやトラブルを解決してきた実績やノウハウ・経験があるため、心配事がなく利用できます。
また、天災にも対応可能なクラウド構成を設計することができるため、大きな天災にも万全な対策を施すことができます。更に、一つ一つ利用したいサービスのみを利用することができ、小額の資金で大きな構成を構築できます。
AWSは多くの分野に広くサービスを利用して展開、運用することができ、世界を視野に入れて活動する人に向いている傾向にあります。

Azureを利用する強み

Azureは、Microsoft製品の連携と一部に特化した業界に強いです。
Microsoft Officeに代表されるオフィスの定番ソフトをクラウド上で提供するOffice 365サービスに力を入れており、その観点ではビジネスにおけるアプリケーション面でパブリッククラウド環境によるメール対応などといった社内業務に対して可能性を秘めています。
特定の業界特化に強い特徴を持つため、高い専門性を要する分野で独占的に使うことにより、AWSとは異なった魅力的な一面がある特化型サービスといえます。

それぞれの弱み

AWSの弱み

保守運用の自由度の低さ

AWSは数カ月に一回メンテナンスを行っており、緊急を伴わない限り2週間前にメンテナンスの連絡がくるので事前に対応しておかなければいけません。また、ダウンタイムが発生するケースがあるので、その時の対処が必要になります。当日は容赦なくサービスが停止されるので注意が必要です。
実際に年に1回程度は大規模な障害が発生しています。原因は天災やヒューマンエラー、物理システムの障害などさまざまあります。これらの障害が発生する可能性があると理解した上で利用しなければならないと念頭に置くことは必要でしょう。

法務上の弱点

クラウドサービスの中でもAWS特有のデメリットとして、法務の弱点があります。
具体的には、日本の企業が国内でAWSのサービスを利用していても、AWSに適用される法律(準拠法)はアメリカの法律で、なにかあったときに裁判で判断してくれる管轄裁判所もアメリカの裁判所ということになっていました。つまり、AWSを使っている日本の企業は、日本の法律とアメリカの法律両方を気にする必要があったということです。
この点を他社に散々攻撃された結果、2017年4月から利用者が任意で準拠法を日本法、管轄裁判所を東京地方裁判所へと変更することが可能となり、AWS特有のデメリットではなくなりました。
ただ、これは任意となっており、選択を変更するのを忘れてしまうとアメリカの法律適用のままになってしまうので、そこだけ忘れないように注意が必要です。

Azureの弱み

仮想マシンの起動速度が遅い

仮想マシンを起動する際の時間ですが、AWSは1分程度なのに対し、Azureは2分30秒以上かかってしまいます。起動完了までの時間がかかり、運用面において差が出てしまうのが難点です。

情報量が少ない

現在のところAzureの一番の欠点は情報が少ないことです。ヘルプトピックもあまり充実していませんし、オンラインフォーラムのコミュニティの情報もあまり多くありません。Microsoftのプロフェッショナルサポートを受けるのが前提としたサービスなのかもしれません。

使い分けと併用で両サービスの強みを活用する

AWSとAzureの最も単純な使い分けは、消費者向けのアプリやサービスはAWS、社内のIT基盤や企業間のシステム連携にはAzureがおすすめです。
障害や災害の対策として、AWSとAzureを併用するという方法もあります。例えばAzure Site Recoveryは、AWSを物理サーバーのインスタンスとみなすことで、Azureへのレプリケーションと一方向のフェールオーバーをサポートしています。これを利用すれば、万が一、AWS側で大規模な障害が発生したとしても、最新のレプリカを用いてAzure IaaSで早期に復旧することが可能です。

無料枠もある

AWSの2種類の無料枠について

1つめは、期間限定で1年間のみ利用できる無料枠です。以下が代表的なものです。

  • Amazon EC2 – 特定サーバーが無料
  • Amazon RDS – 20GBのデータ及び特定のサーバーが無料
  • Amazon S3 – 5GBのストレージが無料
  • Amazon CloudFront – CDN転送量50GBおよび200万リクエストが無料

※期間内(1年)でも無料枠を超過した場合は請求が自動的にされるため、要注意となります。

2つめに、各種サービスにおける一部機能が常に無料で使えます。サービスごとに条件が変わります。詳しくご覧になりたい方はAWSの公式サイトをご覧ください。

Azureの3種類の無料枠について

1つめは、AWSと同様に期間限定で1年間無料で使えるサービスです。一覧はAzure公式サイトをご覧ください。
2つめは、GCPと同様の無料クレジットで、22,500円分まで利用可能枠があります。ただし有効期限が1ヶ月と短めであるため、期限切れには要注意です。
3つめは、一部サービスに限り1年間限定の無料枠が設定されています。こちらは仮想サーバー・ストレージ・データベース等が対象です。
それぞれ詳細や利用条件などは異なりますが、いずれも期間を問わずに無料利用できるサービスが提供されています。これらを上手く活用しクラウド環境の検証や学びなどに役立てていきましょう。

仮想サーバーの機能

AWSにおける仮想サーバーは「EC2」

AWS仮想サーバーの特徴

  • 定められたマシンタイプから選択して起動
  • インスタンス作成時間は1分ほど
  • 1秒単位の課金
  • 日本国内のリージョン: 東京・大阪

EC2に限らず、AWSはインターネット上で得られる情報が豊富で、導入実績・豊富な情報量のある大手を利用したい場合にお勧めします。
※大阪は特殊なリージョンとなっており、限られたユーザのみ利用が可能

Azureにおける仮想サーバーは「Virtual Machine」

Azure仮想サーバーの特徴

  • 定められた構成から選択して起動
  • インスタンス起動時間は数分ほど
  • 1分単位の課金
  • 日本国内のリージョン: 東日本・西日本

Microsoft が提供していることもあり、Windows Serverの実行環境としてよく利用されます。また、オンプレミスのActive Directoryとも相性が良いので、国内2拠点に展開する場合や、日本国内で災害対策環境を構築する場合には、Azureが有力な選択肢となります。
どのクラウドを選択しても大差はほとんどありません。既存システムがそん時する場合は、同クラウドに載せる案が確度が高いでしょう。

まとめ

AWSとAzureについて様々な角度からご紹介いたしました。一言でまとめると、AWSはメリットにもデメリットにもなりうるほどの多機能さと、実績から感じられる安定さが特徴です。
Azureはその開発元の専門で高度な技術によるサービスと、Windowsとの相性が特徴です。
どちらも世界的に最上級の評価を得ていますが、より細かく見ていくと強みや弱みなどの特徴があるので、自社に合ったサービスを導入することで業務効率化やコスト削減を図ることができます。

どれが一番優れているかということは一概には言えません。サービスを利用する目的を明確にし、それぞれのサービスの特徴と照らし合わせながら自社にあったパブリッククラウドを検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献:
https://itpropartners.com/blog/11740/
https://www.wafcharm.com/blog/difference-between-aws-and-azure/
https://www.geekly.co.jp/column/cat-technology/1909_009/

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