Amazonが提供するコンテナ管理サービス「AWS Fargate」とは?

そもそもクラウドサービスとは何か?

直近10年ほどの間に「クラウドサービス」という言葉がほぼ一般的なものとして定着し、個人向けから法人向けまで、様々なクラウドサービスが利用されるようになっています。

法人利用としてのクラウドサービスも現在では一般的になってきました。クラウドサービスとは、インターネットを介して提供される様々なサービスの総称です。具体的には、データストレージやデータベース、アプリケーションの実行環境などが含まれます。これらクラウドサービスにおける最大の特徴としてあげられるのは、ユーザーは自社でサーバーやインフラを用意することなく、必要なリソースをオンデマンドで、なおかつインターネット上で利用できるという点です。

インターネット上で利用できる=インターネットに接続できる環境があれば、場所を問わずにアクセスできるという特性があるため、例えば自社サーバー内に設定した「共有フォルダ」の代わりとして使用するケースなどが代表的な使い方の1つです。クラウドストレージを例に取ると、インターネット上のストレージにファイルやデータを保存することになります。自社サーバー環境内(オンプレミス環境)の共有フォルダと同様に、ファイルやデータそのものは1つしかありませんが、リアルタイムでの同期が可能なので、オンプレミス環境とは異なり「誰かがファイルを開いている間は他の人が開けない」ということが無くなります。

非常にメリットが大きいと考えられていることから、現在は多くの企業でも導入が進んでおり、クラウドベースでの業務システムを運用する企業も増えているのです。

オンプレミスとクラウド

そもそも、以前であれば企業のITインフラというのは自社内に設置され、自社のエンジニアや外注先の企業やエンジニアが自社内で保守や運用、そしてメンテナンスを行うのが常識とされていました。この「ITインフラが自社内環境になっている」状態のことを「オンプレミス環境」と呼んでいます。

クラウドというのはご説明したように「インターネット上で利用する」システムやサービスの総称で、現在はストレージなどの他にもインフラ系設備そのものをサービス化してクラウド=インターネット上で使用するサービスが一般化しています。

つまりオンプレミスとクラウドというのは、ITインフラやコンピューティングリソースの提供方法に関して明確な違いを有しており、それぞれに特徴があります。

オンプレミス

オンプレミスは、企業が自社の物理的な場所にあるサーバーやネットワーク機器を使用して、ITシステムやアプリケーションを運用・管理する方法です。この場合は企業が自前でリソースを設置し、なおかつ自社内でインフラやリソースを管理・保守・運用するので、セキュリティやデータプライバシーに対する制御を思い通りに強化して運用することができます。

ただし、オンプレミス環境構築のためにはコストをかけた投資が必要であり、運用面での費用や設備の更新やメンテナンスなども発生するため、全体的にコストが高くなる傾向があります。また、一旦設備投資をしてしまうと簡単には設備の交換や変更がしにくいため、柔軟性や拡張性が低く、需要の変化に対応するためには時間と労力がかかることがデメリットとしてあげられます。

クラウド

クラウドはインターネットを通じて、サーバーやストレージなどのインフラやコンピューティングリソースをサービスとして提供する方法です。このようなインフラやリソースをクラウドで提供する企業のことを「クラウドサービスプロバイダー」と呼んでおり、主なクラウドサービスプロバイダーには、Amazon Web Services(=AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(=GCP) などがあります。

クラウド最大の特徴は、まず第一にインフラやリソースなどの設備投資コストが基本的には不要だということです。また、運用コストに関してはクラウドサービスプロバイダーが用意したインフラやリソースの使用量に応じた料金をクラウドサービスプロバイダーに支払う従量課金制がほとんどです。そのため、オンプレミスと比較して、インフラとリソースの設備投資コストを自社で負担しない分、運用コストが抑えられるという点があげられます。

インフラやリソースはクラウドサービスプロバイダーが保有しており、ユーザー側の要望や使用状況に合わせてクラウドサービスプロバイダーが追加・更新するので、柔軟性や拡張性が高く、需要の変化にも迅速に対応できます。そのため、自社ビジネスの成長に合わせたスケーリングが可能です。データセンターとして活用する場合でも同様です。クラウドサービスプロバイダーが設備を管理します。ただし、この場合の設備保有者はクラウドサービスプロバイダーであるため、セキュリティやデータプライバシーに対するポリシーは設備の保有者が設定した内容に準拠することになります。

最終的にオンプレミスとクラウドのどちらを選択するかは、企業のニーズ、セキュリティ要件、そして予算の大小や柔軟性の要求度合いなどによって異なります。一部の企業では、オンプレミスとクラウドの両方を組み合わせたハイブリッドクラウドという形態を採用していることもあります。

オンプレミスの利用シーン

オンプレミスの利用が適しているケースは、機密性が高いデータや厳格なセキュリティ基準が求められるケースが考えられます。また、既存のITインフラが充実しており、移行に伴うコストやリスクを避けたい場合や、レイテンシーが重要なアプリケーションを運用しているケースも当てはまるでしょう。オンプレミス環境でITインフラを運用することで、ハードウェアやソフトウェアの選択、設定、アップグレードなどを柔軟にカスタマイズできるので、自社内で完全なコントロールを要求される可能が高い場合はオンプレミス環境が適しています。

ただし、オンプレミスには初期投資や維持管理コスト、専門スキルが必要なため、総合的なコストやリソースを検討することが重要です。

クラウドサービスの利用シーン

クラウドサービスは、既に様々な業界や分野で利用されています。実際に利用している方も多いと思いますが、改めてクラウドサービスが使われるのに適しているケース、あるいは典型的なケースをいくつかご紹介しましょう。まず最初にあげられるのがWebサイトやアプリケーションのホスティングです。かつてはWebサイトを運用するためのWebサーバーなども自社で設備投資していましたが、現在ではクラウド上の仮想サーバーで運用するのが一般化しています。データのバックアップやデータストレージに関してもクラウド全盛と言っても良いでしょう。Google DriveやDropboxなどが代表例です。さらに、仮想マシンやコンテナを利用した開発環境の提供、さらにAIや機械学習のリソースを活用した分析や予測などもクラウドサービスを使って行われるケースが増加しています。

代表的なクラウドサービス

クラウドサービスは、インターネットを介して提供される様々なサービスであるということ。そして代表的なクラウドサービスとして、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)があることは既にご紹介しました。これらのサービスは、インフラストラクチャやプラットフォーム、アプリケーションを提供し、コンピューティング、ストレージ、データベース管理などを行うことができます。それぞれどのようなサービスなのか簡単に説明していきましょう。

Amazon Web Services (AWS)

Amazon Web Services(=AWS)はAmazon.comが提供するクラウドサービスで、世界最大のシェアを持っています。AWSでは、Webサイトやアプリケーションのホスティング、データベース管理、機械学習など幅広いサービスが提供されています。初心者向けとしても使いやすいと言われていて、AWSでは簡単に始められるサービスが多く用意されています。

Microsoft Azure

Microsoftが提供するクラウドサービスで、企業向けに導入されるケースが近年急増しています。世界シェアではAWSに次いで第2位に位置づけており、Azureでは、Webアプリケーションの開発やホスティング、データベース管理、仮想マシンの提供などが可能です。また、同じMicrosoftが提供する他の製品との連携が可能なので、Office 365などを利用している企業にとっては導入のしやすさが魅力です。

Google Cloud Platform (GCP)

Googleが提供するクラウドサービスで、高い拡張性や安定性が特徴です。GCPでは、Webアプリケーションの開発やホスティング、データ分析、機械学習などが強いと言われています。理由としてはGoogleの技術を活用した画像認識や翻訳などのAPIが利用できる点があるためで、世界中で利用されておりGoogleも製品としてリリースしているAPIが使えるということで、開発者にとっては嬉しい機能が充実しています。

これらのクラウドサービスは、Webアプリケーションやモバイルアプリの開発・運用、データベースやストレージの管理、ビッグデータ分析、機械学習など、様々な用途で使われています。また、ほとんどのクラウドサービスは基本的に従量課金制のため、必要な分だけ利用し、使用した分だけの支払いが発生するシステムです。そのため、固定が大幅に増えるということはあまり無く、オンプレミスから移行する場合はコスト削減の効果もあります。

AWSとは?

ここからは、Amazonが提供するクラウドサービスプラットフォームであるAmazon Web Sevices(=AWS)について解説していきましょう。

AWSは、Amazonが2006年にスタートしたサービスで、現在では世界最大規模のクラウドサービスプロバイダーとなっています。AWSは、コンピューティング、ストレージ、データベース、機械学習、IoTなど、幅広いサービスを提供しています。クラウドサービス市場で、世界シェア第1位のAWSを筆頭に、シェア第2位のMicrosoft Azure、そしてGoogleが提供するGoogle Cloud Platform(GCP)など、他にも大手プロバイダーが存在します。その中でもAWSは最も早くサービスを開始したクラウドサービスプロバイダーの1つでもあり、競合各社の中でも独特な立ち位置を持っています。AWSが持つ強みや特徴をいくつか紹介します。

AWSの強み&特徴

AWS最大の強みと言えるのは、200を超えるサービスを提供しているという「サービスの豊富さ」でしょう。AWSは他のプロバイダーよりも多くのサービスを提供しているという点で幅広い選択肢をユーザーに提案することができます。これにより、様々な顧客の多様なニーズに対応することが可能です。

また、AWSは世界中にデータセンターを持っており、多くのリージョンとアベイラビリティーゾーン(AZ)が設定されています。これにより、データの冗長性や耐障害性が向上し、グローバルなサービスを展開しやすくなっています。

コスト効率やパフォーマンスに応じてリソースを迅速に拡張できるなど高いスケーリング性能も持っており、ビジネスの成長や需要の変化に柔軟に対応できます。

AWSの導入に適しているユーザー

AWSは、以下のようなユーザーが導入するのに適しています。

【スタートアップ企業】=インフラのコストや運用負荷を抑えながら、スピーディーにサービスを立ち上げることができるので、スモールスタートからグロースアップを狙いたいスタートアップ企業には最適です。

【中小企業】=自社でのインフラ運用に比べて、低コストで高品質なインフラとリソースを利用できます。資金的にIT系インフラの設備投資に回す予算を確保するのが難しい中小企業の場合はクラウドサービスを利用することでITインフラに関するハンデを克服することが可能です。

【大企業】=中小企業と同様に、ITインフラやリソースへの設備投資は大企業であっても一定以上の金額が必要になるため、コストの削減に役立ちます。同時に、グローバルな展開や大規模なデータ分析など、様々な用途でも活用できます。

【開発者】=AWSは、豊富にドキュメントが用意されており、開発者コミュニティやサポート窓口も準備されています。開発者にとっても学習リソースが充実しているので、独立している技術者や企業に所属して開発に従事する方も多く使っています。

AWSはインフラの運用コスト負荷を軽減し、柔軟にスケーリングできることから、様々な業界や分野で活用されています。また、AWSは幅広いサービスやグローバルなリージョンが特徴であり、スタートアップ企業から大企業まで多くのユーザーに適しています。

AWS Fargateとは何か?

AWSが世界最大級のシェアを持つクラウドサービスであることはご紹介しました。AWSを利用する、法人を含むユーザーがコンテナベースのアプリケーションを開発、デプロイ、運用している場合に重要になるサービスがAWS Fargateです。コンテナ技術は近年急速に普及し、多くの企業がアプリケーション開発とデプロイメントの効率性と速度を向上させるためにコンテナを採用しているからです。ただし、コンテナ技術を使用していないユーザーや、オンプレミス環境でコンテナオーケストレーションを行っているユーザーにとっては、Fargateの重要度は低いと言えるでしょう。あくまでもユーザーの使用状況やニーズによって異なることは覚えておく必要があります。

AWS Fargateは、AWSが提供するコンテナオーケストレーションサービスの一つです。Fargateは、サーバーのインフラ管理を気にすることなく、コンテナを実行・管理できる環境を提供するので、開発者はアプリケーションの開発や運用に集中することができます。

既にご紹介してきたように、AWSは数多くのサービスを提供しており、Fargate以外にもコンテナサービスとして「Elastic Container Service (=ECS) 」などがありますが、Fargateはこれらのサービスと組み合わせて使用されることが一般的です。

ECSとFargate

Amazon Elastic Container Service (=ECS) と AWS Fargate は、どちらもコンテナオーケストレーションサービスですが、運用方法と責任範囲がそれぞれ異なります。

Amazon ECS は、Docker コンテナを実行、管理、スケーリングするための、スケーラブルで高速なコンテナ管理サービスです。ECS は、EC2 インスタンス上でタスクを実行することもできますし、AWS Fargate と組み合わせて実行することもできます。ECS を使用する際には、クラスタ、タスク定義、サービスなどのリソースを作成して管理する必要があります。

AWS Fargateは「サーバーレスコンテナエンジン」であり、EC2インスタンスを直接管理することなく、ECSのタスクを実行することができます。Fargate を使用すると、開発者はタスクの実行に必要なリソース(CPU、メモリなど)を指定するだけで済むので、インフラ及びリソースの管理やパッチ適用などのオペレーション作業が不要になります。

つまり、Amazon ECSはコンテナ管理サービスであり、AWS Fargate はその実行エンジンの1つということになります。ECS は EC2 インスタンス上でコンテナを実行することもできますが、Fargate を利用することでインフラ管理を AWSに任せることができるので、開発者はアプリケーションに集中することができます。

コンテナ管理サービスとは?

そもそも「コンテナ管理サービス」とはどんなものなのでしょうか?

「コンテナ管理サービス」というのは、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、運用を簡素化し、管理するためのプラットフォームまたはサービスです。「コンテナ」というのは、アプリケーションとその依存関係にある要素をパッケージ化し、環境に関係なく一貫性のある動作を提供する技術です。コンテナ管理サービスは、コンテナのオーケストレーション、ネットワーキング、セキュリティ、および監視などの課題を解決するためのサービスです。

既に解説したように、AWS FargateはAWSが提供するコンテナ管理サービスの1つで、サーバーレスのコンテナオーケストレーションサービスです。AWS Fargateは、Amazon ECSやAmazon Elastic Kubernetes Service(=EKS)と統合されており、開発者はインフラ管理を気にすることなく、コンテナベースのアプリケーションをデプロイできます。

どのような場面で使われているものか?

AWS Fargateは独立した小さなサービスに分割されたアプリケーションを簡単にデプロイ・スケーリングできるため、マイクロサービスアーキテクチャを採用した開発を行う現場に適しています。また、Fargateを使用すると、リソースの追加や削除が容易になります。これにより、需要に応じてシステムをスケールアップ・ダウンすることが簡単にできるので、システム全体のスケーラビリティを向上させたい時に重宝します。

また、継続的インテグレーションや継続的デプロイメントのパイプラインを効率化するのに役立ち、新しいバージョンのアプリケーションを迅速にデプロイできます。加えて重要なのは、Fargateは使用したリソースに対してのみ課金される従量課金制であるため、インフラの運用コストを状況に合わせて最適化できるという点です。

まとめ

AWS Fargateは、開発者やDevOpsエンジニア、システム管理者、スタートアップ企業など、様々なユーザーにとって有益なコンテナオーケストレーションサービスです。インフラの管理を気にせずにアプリケーション開発に集中できるので、現在のようにクラウドの利用が当たり前になっている時代においては重要な知識として知っておいて損はしないでしょう。今後のアプリケーション開発や運用において、AWS Fargateを活用した効率的なシステムを構築することに繋がる知識です。また、AWS Fargateはコンテナの起動や停止、スケーリングなどの管理を自動化することで、運用コストを削減することができます。さらに、AWSの豊富なサービスとの連携も可能なので、セキュリティやモニタリングなどの面でも高い信頼性を誇ります。AWS Fargateを活用することで、より迅速かつ効率的なアプリケーション開発・運用が可能となります。AWS Fargateに関する知識を深め、今後の業務に活かしていきましょう。

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