大量のデータ処理や複数のジョブを並行して自動化。AWS Batch導入の効果とは?

AWSとは?

Amazon Web Services=AWSとは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。AWSはインターネットを通じて、仮想マシンの提供などをはじめとする「サーバーレスコンピューティング」サービスや、仮想のデータストレージなどITリソース全般を提供するクラウドサービスです。想定ユーザーは主に法人ですが、個人でも契約して利用することが可能です。利用者となる企業や個人は、自前のインフラ整備やサーバーの設置といったオンプレミス環境を用意することなく、必要なリソースだけをオンデマンドで利用することができます。

どのような時に使われるのか?

AWSは様々なシーンで使用されます。例えば、Webサイトやアプリケーションのホスティング、データベース管理、ストレージやバックアップ、機械学習やAIの開発、インフラストラクチャの運用・監視など、ITインフラに関わる多くの業務で活用されています。また、AWSはスケーラブルなので、利用量に応じてリソースを簡単に増減できるため、急激なアクセス増やプロジェクトの変更にも柔軟に対応できます。

AWSは個人から法人まで幅広い利用者に対応しています。個人の開発者や学生が学習や試作のために利用することもできますし、スタートアップや中小企業から大企業まで、多様な規模の法人が業務で利用しています。また、AWSはプランやサービスが豊富であり、利用者のニーズに合わせて選べるため、幅広いユーザーが利用できます。

AWSの世界シェアは2022年時点で約32%とされており、これだけの高いシェアを維持している理由として、AWSの使いやすさ、コスト効率、豊富なサービスラインナップが理由だと考えられています。また、世界規模でデータセンターネットワークが整備されており、安定性が他社に比べて優れていることなども大きな理由だと考えられています。

AWSが提供する様々なサービス

AWSは様々なサービスがあり、多種多様なシーンで使用されます。具体的にはどのようなサービスがあるのか、いくつか具体例をあげて説明します。

 


 

Amazon EC2

Amazon EC2(=Elastic Compute Cloud)は、クラウド上で仮想サーバーを提供するサービスです。EC2では、必要に応じてリソースをスケーリングでき、柔軟性と効率を両立可能です。インスタンスと呼ばれる仮想サーバーは、さまざまなサイズやスペックで利用でき、オンデマンド、リザーブド、スポットといった異なる課金オプションを選ぶことも可能です。EC2の利点は、起動が速く、ハードウェアに依存しないため、アプリケーションのデプロイやスケーリングが容易になることです。これにより、初心者から上級者まで、ITインフラの運用をよりシンプルに行うことができます。

Amazon S3

Amazon S3(=Simple Storage Service)は、インターネット経由でデータを保存・取得できるオンラインストレージサービスです。S3は、データを「バケット」と呼ばれるコンテナに保存し、ファイルや画像、ビデオなどのオブジェクトとして管理します。S3は耐久性、可用性、セキュリティが高く、データのスケーラビリティも優れていて、ウェブサイトの静的コンテンツホスティングやバックアップ、データアーカイブなど幅広い用途に利用できます。また、オブジェクトストレージなのでファイルサイズや総容量に制限がほとんどなく、大規模なデータも簡単に保存できます。

Amazon RDS

Amazon RDS(Relational Database Service)は、クラウド上でリレーショナルデータベースを簡単に設定、運用、スケーリングできるマネージドサービスです。MySQL、PostgreSQL、Oracle Database、Microsoft SQL Serverなどの一般的なデータベースエンジンをサポートしています。これにより、アプリケーションに適したデータベースを選択できます。

最大の利点は、データベースの運用管理が容易であることです。バックアップ、パッチ適用、スケーリング、フェイルオーバーなどのタスクを自動化でき、管理負荷を軽減でき、リードレプリカ機能を利用することで、読み取りパフォーマンスの向上や負荷分散が可能になります。

セキュリティ面でもデータ暗号化やネットワークの隔離、アクセス管理を提供しており、データの保護が容易です。さらに、マルチアベイラビリティーゾーン(Multi-AZ)機能を利用することで、データベースの耐障害性を高めることができます。

これらのサービスは、AWSの数あるサービスの中で代表的なものです。AWSはこれら以外にも多くのサービスを提供しており、開発者や企業が求める機能やニーズに応じて選択できるため、初心者から上級者まで幅広いユーザーが利用しています。そして、数あるAWSサービスの中で、大量のタスクやプロセスを実行するためのサービスがAWS Batchです。

 


 

AWS Batchとは?

AWS Batchは、端的に言えば「大量の仕事を効率的にこなすためのお手伝いをしてくれるサービス」です。これにより、ユーザーはコンピューティングリソースの管理やタスクのスケジューリングに時間をかけず、自分たちの本来の仕事に集中することができます。AWSの数あるサービスの中でも、大量のコンピューティングジョブ(タスクやプロセス)を効率的に実行するためのフルマネージドサービスに位置づけられるサービスです。

AWS Batchを使うのはどんな時?

複数の仕事を効率的にこなす手助けをするサービスがAWS Batchだと紹介しましたが、もう少し整理して説明してみましょう。

AWS Batchは、バッチ処理を自動化・管理するためのクラウドサービスです。バッチ処理とは、大量のデータやタスクを一括で処理することで、これにより効率的にリソースを利用できます。主に以下のような場面で使われます。

【1】データ解析、変換、エンコードなど、大量のデータを一度に処理する必要がある時。

【2】AWS Batchは、タスクの実行に必要なリソースを自動的に調整して、コストと処理時間を最適化する必要あるなど、コンピューティングリソースを最適化する必要がある時。このような時につかうことで、リソース管理にかかる手間を削減できます。

【3】複数のタスクを順番に実行する必要がある、つまり「ジョブのスケジューリングとキューイング」を行う必要がある場合には、AWS Batchを使用することでタスクの順序や優先度を設定し、効率的に処理を行うことができます。

【4】複雑な数値シミュレーションやモデリングなど、高性能コンピューティングが求められる場合に、AWS Batchがスケーラブルなリソースを提供して、迅速に処理を行うことができます。

【5】エラー処理とリトライの自動化ができるので、ジョブが失敗した場合に自動的にリトライを行い、エラー処理を容易にしてくれます。AWS Batchを使うことにより、手動でエラー処理を行う必要がなくなります。

以上のように、簡単にまとめるとAWS Batchは、大量のデータやタスクを効率的に処理するためのサービスなので、リソースの最適化、ジョブのスケジューリング、エラー処理などを自動化して、処理の手間を削減することができます。自動で処理を行ってくれるため、慣れていない方が担当者になったとしても簡単にバッチ処理を実行できるようになります。

 


 

AWS Batchの特徴

AWS Batchを使う場面についてご紹介しましたが、AWS Batchの特徴についても説明していきましょう。

ジョブ実行に依存関係を持たせることができる

「ジョブ実行に依存関係を持たせることができる」というのは、AWS Batchで複数のタスク(ジョブ)を順序や条件に応じて実行することができるという意味です。つまり、あるタスクが完了しないと次のタスクが始まらないような関係を作ることができるということになります。

具体的な例えをあげて説明してみると、例えば料理を作る過程を考えてみましょう。まず、野菜を切るタスクがあり、その後で調理するタスクがあるとします。調理を始める前に、野菜を切らなければならないため、これらのタスクには依存関係があります。AWS Batchでは、このような依存関係を持つタスクを順序や条件に従って実行することができるのです。

この機能により、複雑なタスクの流れを効率的に管理し、処理することが可能になります。これによって、ユーザーは自分たちの業務をよりスムーズに進めることができます。

 


 

自動的にリソースをスケーリング(増減)する

「自動的なリソースのスケーリング」というのは、ジョブの実行に必要なコンピューティングリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を、実行中のジョブの量や要件に応じて自動的に増減させることです。これにより、リソースの利用効率が向上し、コストも最適化されます。

実際にスケーリングが行われるプロセスとしては「ジョブの要件を定義する→ジョブのキューイングを行う→コンピューティングリソースの自動スケーリングを行う→ジョブの実行」というものになります。

もう少し内容を説明すると、ジョブを実行する際にはそのジョブが必要とするリソース(CPU、メモリ等)を指定する必要があります。こうすることにより、AWS Batchはジョブごとのリソース要件を把握できます。そして、AWS Batchに複数のジョブが登録されると、それらのジョブが順番に実行される「キュー(待ち列)」に入ります。ジョブの優先度や依存関係なども設定できます。この段階を「キューイング」と呼びます。

必要なコンピューティングリソースを確保するために、実行中および待機中のジョブのリソース要件が分析され、ジョブが最適なリソースで実行されることが保証されます。これが「自動スケーリング」です。ジョブの量が増えると、リソースは自動的に増加し、ジョブが減るとリソースは自動的に減少します。自動スケーリングによって必要なリソースが確保されたら、AWS Batchはジョブを実行します。ジョブが完了すると、そのリソースは解放され、他のジョブに再利用されます。

つまり、簡単に言うとAWS Batchが「自動的にリソースをスケーリング(増減)する」とは、実行中および待機中のジョブのリソース要件に応じて、コンピューティングリソースを自動的に増減させることです。これにより、効率的なリソース利用とコスト最適化を実現できます。

 


 

フルマネージドサービスであるため、ユーザーはジョブの管理やリソースの調整に手間がかからない

「フルマネージドサービス」とは、サービス提供者がシステムの運用、管理、保守などを全て行ってくれるタイプのサービスのことです。フルマネージドサービスを使えば、利用者はシステムの設定やメンテナンスに時間をかけず、自分たちの本来の業務に集中できます。

AWS Batchが「フルマネージドサービス」であるということは、AWSがサービスの運用や管理に必要な多くのタスクを代わりに行ってくれるということを意味します。具体的に言うと、ジョブの管理やリソースの調整、スケーリング、エラー処理などの面倒な作業が自動化されるということなので、利用者は自分達のジョブの実行のみに集中することができます。

簡単に言うと、「フルマネージドサービスであるため、ユーザーはジョブの管理やリソースの調整に手間がかからない」というのは、AWS Batchがジョブ管理やリソース調整、エラー処理などの面倒なタスクを自動で行ってくれるため、初心者でも簡単にバッチ処理を実行できるということです。

大量のタスクを効率的に処理するための面倒な作業を、利用者が手間をかけずに済むようにサポートしてくれるのがAWS Batchの特徴です。

 

AWS Batchを使うメリット

フルマネージドサービスとしてのAWS Batchには特徴的な利点があります。「ジョブ管理の自動化」「リソースの調整とスケーリング」「エラー処理の自動化」そして「セキュリティとアップデートの自動化」です。AWS Batchを使うと、ジョブのスケジューリングや実行、失敗時のリトライなど、ジョブの管理が自動で行われます。これにより、利用者はジョブの管理にかかる手間を削減できます。

また、既に説明したように、実行中および待機中のジョブのリソース要件に応じて、コンピューティングリソースを自動的に増減してくれます。リソースの調整とスケーリングが自動化されるので、それらの調整にかかる手間を削減できます。ジョブが失敗した場合にも自動的にリトライを行い、エラー処理を容易にしてくれるので、手動でのエラー処理が不要です。さらに、AWS BatchはAWSが提供するセキュリティ対策やサービスのアップデートを自動的に適用してくれるので、これまでは人の手を使っていたセキュリティ対策やアップデートにかかる手間を削減できます。

AWS Batchを使うことが推奨される場面とは?

大量のデータやタスクを非同期で一括処理する必要があるときや、リソースの最適化とコスト効率を重視する場合にはAWS Batchを使うことが推奨されます。具体的には、以下のようなジョブやシーンが考えられます。

データ変換・解析

大量のデータを取り込み、変換、解析する場合、AWS Batchを使用して一括処理を行うことができます。例えば、ログファイルの解析や、CSVファイルからデータベースへのデータ移行などが挙げられます。

画像や動画の処理

画像や動画のリサイズ、圧縮、エンコードなど、多数のメディアファイルを一度に処理する場合にも、AWS Batchが役立ちます。

機械学習モデルの学習・評価

大量のデータセットを使って機械学習モデルを学習させたり、複数のモデルを評価・比較する場合にも、AWS Batchが効率的なリソース管理とスケーリングを提供します。

 


 

シミュレーションやモデリング

複雑な数値シミュレーションやモデリングが求められる場合に、AWS Batchはスケーラブルなリソースを提供して、処理を迅速に行います。例えば、気象予報シミュレーションや金融リスク評価などが該当します。

バックアップや定期的なレポート作成

定期的に実行されるバックアップ作業や、日次・週次・月次などのレポート作成にも、AWS Batchを使用してジョブをスケジュールすることができます。

 

導入検討の際に考慮すべきポイント

このように、AWS Batchは効率を重視する場面で使うことが推奨されます。導入を検討する際には、次のポイントを考慮すると良いでしょう。

【1】現在のタスクは手動で行っているが、自動化できるかどうか。

【2】ジョブの規模や頻度が一定ではなく、変動する場合。AWS Batchの自動スケーリング機能が有効かどうか。

【3】複数のジョブを並列して実行する必要がある場合。ジョブの管理とスケジューリングを効率的に行えるかどうか。

料金体系

AWS Batchに限らず、AWSのサービスを導入する時に気になるのは「料金体系がどうなっているか?」でしょう。

AWS Batchの料金体系は、主に使用したコンピューティングリソースに応じて課金されます。AWS Batch自体の料金は無料ですが、実行されたジョブで使用されるEC2インスタンスや関連サービス(Amazon S3、Amazon RDSなど)の利用料金が発生します。リソース使用量に応じた課金方式なので、必要なリソースだけを利用してコストを抑えられます。

まとめ

ここまで、AWS Batchの特徴や導入のメリットなどについて解説してきました。AWS Batchを活用することで、さまざまな業務やプロジェクトでの大量のジョブ処理が容易になり、効率的な作業が可能になります。クラウドベースのサービスはITインフラやデータ処理においてますます重要になっています。AWS Batchや他のAWSサービスについて学ぶことで、これらのテクノロジーを活用し、ビジネスや研究などの分野で競争力を高めることができるでしょう。他のAWSサービスと組み合わせることで、さらに効果的なソリューションを構築できる可能性もあります。AWS Batchを含むクラウドテクノロジーについて学び、プロジェクトや業務に活用してみてください。

 


 

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